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短編 63 メカニカル兄さん

作者: スモークされたサーモン


 お兄ちゃんシリーズですねー。なんかビビっと来たのです。空からビビビですね。どれも一筋縄ではありません。今回は癖の強い物語に……。


 え? 今更? いやいや、毎回真面目に書いてますよ?




 ある日のこと。


 朝になったら兄がメカになっていた。


「オハヨウ、妹ヨ」


「誰よ!?」


 メカというかロボだった。四角いボディに四角い頭。腕はホースみたいで先端には馬蹄のようなアーム付き。子供サイズのロボである。


 ブリキのロボだ。兄は昨日まで普通の人間だった。それが朝起きたらメカメカしく銀色に輝いていたのだ。リビングでコーヒーを片手に新聞を読んでるロボに度肝を抜かれた。


「オニーチャンハ、ギンギラ、ダゼッ!」


「あ、うん。お兄ちゃんだね」


 ブリキの兄はポーズをとって決め台詞を放った。いつもの兄だ。見た目こそメカメカしくなったが兄だ。いつもの兄とまるで同じだ。恥ずかしくて友達に知らせたくない部類のバカである。


 兄がアイドルを目指していて学業の傍らで色々とやっているのは知っていた。


 山賊みたいな見た目をしている兄がアイドルとか絶対に不可能だと一族全てが思っていたのだが……まさかのメカニカルである。


「……そのキャラでこれから行くの?」


「……オニーチャンハ、既ニ後悔シテオリマス」


 だろうなぁ。妹から見てもメカの兄というのはドン引き対象である。


 きっと悪魔に魂とか肉体とか明け渡して機械の体を手に入れたのだろう。


 腕の細さ、そして体長から見て『中の人』というオチはない。ガチでメカニカルな兄に成り果てているのだ。


「……オニーチャン、オチンチン、無クナッチャッタヨ」


「知るか!」


 朝の食卓でそんなこと聞きたくないわ!



 こうして私の兄はメカニカルな兄となった。ロボというかメカである。


 人生終わったわね。


 妹の私はそう思っていた。


 だがしかし!


 現実はもっとキテレツであったのだ。


 メカニカルなロボとなった兄はアイドルオーディションに何故か合格した。応募する根性は本当にすごいと思う。


 無駄に熱意だけはある兄は、今年から新しく作られた『ロボ枠』というものに引っ掛かったのだ。


 これにより兄は一気にスターダムへと登り詰める事になる。


「妹ヨ。オニーチャンハ、少シ怯エテオリマス」


「……うん。なんか一気に有名人になって怖いよね」


 今日もテレビのお仕事を終えた兄は私に抱き付いて震えていた。ロボに抱かれる私。不思議と母性が沸いてくる。

 

「……ロボットダンスヲ強要サレルノ。毎回。ナンデー?」


「……ごめん。私も絶対に振るわ」


 今の兄はバラエティー番組に引っ張りだことなっている。アイドルじゃなくて芸人枠なんだけど歌も一応歌えるのが兄のすごいとこ。歌う時は何故か流暢な喋りになるのもウケるらしい。


 でも兄はダンスが致命的に下手だったのだ。それはメカニカルなボディになった今も変わらない。ロボットダンスがあまりにも下手なのだ。ロボなのに。


 それがまたウケるのだ。


 兄の歌は普通に上手い。それは私も認めてる。人間だった頃は見た目が山賊で無理してダンスもするから全てが台無しになっていたのだ。


 多分声優としてならそこそこいけたのではないかと私は思ってる。兄としてはアイドルと声優はまるで違うものらしい。


『俺は歌って踊れるアイドルになるんだぜっ!』


 キラーン!


 そんなことを言っていたのはいつの日か。


 今の兄はメカニカル。そして芸能界の闇に触れてしまい怯えて震えるロボである。


「オニーチャン……プロポーズサレチャッタケド……キット冗談ナンダロネ」


「うん。あのくそアイドルは死んでいいと思う」


 今日は番組内で、とある三流アイドルがメカニカルな兄に告白した。


 本人曰く『わたしぃ~メカが~好きなんですぅぅ~』とのこと。


 今もネットは大炎上してる。ものすごい批判の嵐だ。兄は芸人としてテレビに出ているわけではない。芸人枠で出てはいるのだけど。兄は一応『アイドル』として歌を歌うため、色々な番組にお邪魔しているのだ。


 実際メカニカルな兄の『歌手』としての評価はかなり高い。ダンサーとしては赤点も良いところだけど。


 かたや三流アイドルは歌もダンスも下の下である。見た目がそこそこなだけでテレビに出ているゲスな女の分際で真面目に頑張る兄を売名行為に使うとは許すまじ。


 兄は最初から公表していた。


『自分ハ、アイドルニナル。ソノ為ニ人間ヲ辞メマシタ。ガッツリ後悔シテオリマス』と。


 この真摯な姿勢が逆にウケた。多分オーディションに受かったのもこれが理由なのだろう。ロボ枠なんてあり得ないから。


 そして実力でアイドルになったのだ。私はそう思っている。歌っている時の兄は以前の兄と同じ声なのだ。


「アノネ、オニーチャン……今度ライブスルコトニナッタノ。スゴク怖イ」


「大丈夫だよお兄ちゃん。お兄ちゃんが頑張ってることは一族みんなが知ってるからね」


「……ナンデ一族ミンナガ、チェックシテルノカ、ソコモ怖イヨネ」


 まぁ元は陰陽師の一族ですから。一体何にロボにしてもらったんだか。くふふ。


「一族みんなでライブ見に行くからお兄ちゃん……ファイト!」


「……ウーン。オニーチャンハ複雑デス」


 こうして兄は史上初のメカニカルアイドルとして芸能界をビクビク過ごすことになる。


 山賊お兄ちゃんよりは友達に紹介しやすくなったので……まぁ良かったとは思ってる。甘えてくるメカニカルお兄ちゃんがすごく可愛いのも良かったと思ってる。


 よくやった。我が式よ。




 今回の感想。


 最後の最後に……ん? となるように作ったんですよね。上手くいったかな。のっけから、んんん? という展開なのは、ひとまず気にしません。


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