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031.試用

「……試してみたいわ」


 私は早速自分で試してみることにした。


「マリア、桶を用意してちょうだい」


 お願いすると、すぐにマリアが私の前に出してくれて、その中に私は純水を満たす。


 その後、一度水に濡らして手でたっぷりと石けんを泡立てる。泡は、粒子が細かく非常にきめ細やかだ。


「……ん。すごくなめらか」


 手全体を泡で包み込んでから、次に顔を石けんの泡で包み込むようにくるくるとマッサージしていく。


「……気持ちいい……しかも、バラのオイルの香りに包まれているみたいで幸せ」


 できあがった石けんは極上の出来で、いつまでもこのままこの泡に包まれていたいと思うほどだった。そうは言っても、ほどほどで泡を落とさないと、肌に必要な油分まで落としかねない。


 後ろ髪引かれる思いで泡を洗い落とす。そして、マリアが手渡してくれたタオルで顔を優しく拭う。すると、その肌は、手と頬が吸い付くようにしっとりと仕上がっていた。


「すごいわ。もっちりしっとりしていて、肌がまるで吸い付くみたい」


 私は何度も手のひらで、肌の弾力を確認する。


「姫様、先ほどのスクラブと、化粧水もお試しになっては?」


 マリアが、前日作ったスクラブと、さっき作ったフラスコに入れた化粧水を私に差し出してきた。


「スクラブは混ぜただけだから普通だけど……私も初めて使うわね」


 まずは手のひらにスクラブを載せてなじませて、顔に載せてくるくるとマッサージしていく。


「使ってみてもらうのと、自分で使ってみるのとはやっぱり違うわね……そういえば、敏感な顔には砂糖だけれど、角質が溜まりやすい場所には塩のスクラブもいいのよね。今度試してみたいわ」


 そんなことを考えながら、くるくると顔中をまんべんなくマッサージする。砂糖が溶けたら、それが終わりの合図だ。


「初めてだから特になのかしら? 意外と鼻の周りとか耳の裏辺り、額なんかは、凝り固まっていたところがあるみたい……肌が前より全体的にやわらかくなったわ」


 これは是非、体全体をマッサージする用のスクラブもほしいものだとこれからのことを夢想する。


「さて、次は化粧水ね! 石けんだけでも段違いに品質が良いのだから、こちらも期待できるわ!」


 十円玉大ほどの化粧水を手のひらに載せて、両手になじませる。そして、手で優しく叩くようにして肌に化粧水を載せていった。


「はあ……。もちもち。ずっと触っていたいくらいだわ」


「まるでお肌が真珠のように艶やかですわ」


「エリスいい香りにゃ~。やっぱり私の嫁になるにゃあ~」


 ラズロなんて、精霊王としての威厳はどこに? というような有様で、デレデレスリスリしてしまっている。


 やはり、出来は上々のようだけど……。


「かといって、私が作る物を商品化って訳にはいかないわよねえ……」


 ポーションを定期的に雨のように降らせて、領民みんなのために役立てるのとは訳が違う。あれは、民が健康に生活するために必須なものだ。


 けれど、化粧品は必須のものではない。それを私が時間をかけて量産するというわけにもいかないのが現実だ。


「姫様が必要な分だけとか、特別なお客様への贈り物とする分だけお作りになればいいのでは? 姫様はそれでなくても領に降らせるためのポーションを作るのにお時間を割いているのですから」


「そうね。私と近しい人や、特別な方への贈り物として作ることにするわ」


 そうして、一般の錬金術師達が作る品を一般への普及品としてあつかう。結局、そう結論付くのだった。

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