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021.治験

「……本当にいいのね?」


「私に二言はないのにゃ!」


 どうしよう、と思ってお父様に顔を向けると、お父様が承認するかのように縦に頷いた。


「鑑定は、間違った結果は見えないとはいえ、『見えないもの』もあります。……本当に試してくれるというのなら、実際に試してみるのが一番かと……」


 鑑定士も、「結果を疑うのか」と怒るでもなく、冷静に同意してくれた。


「……謎のお薬よ? ……本当に覚悟はいいのね?」


「だから、二言はないといったのにゃ!」


 そう言うと、ラズロは私から試薬瓶を奪い取って、蓋を開けて飲み干してしまった。


「「「……」」」


 私を含めた三人は、じっとラズロの様子を見守る。


 すると、ラズロの姿が変化していく。


「ラズロ!」


 すると、あっという間にラズロの猫の姿が、大きな一角のツノを持ったライオンのような姿に変化したのだ。そして、背には翼まで生えている。


「……ああ、これでいい」


「ラズロ……よね?」


 私は、呆然とその場に立ち尽くしていた。お父様も、鑑定士も。


 すると、ラズロらしい獣は、私達の方を向く。


「ああ、ラズロだ。これが本来の姿。ああ、そこの鑑定士。そなたはもういい。部屋を辞するといい」

 お父様でもないのに、ラズロが鑑定士に命じた。


 みながお父様に確認するように顔を見る。すると、お父様はラズロと目を合わせ、頷き合うと、ラズロの言うとおり、鑑定士に部屋を辞するように命じた。


「で、では。失礼します!」


 鑑定士は礼をすると、部屋を出て行った。


 ラズロはそれを見て取って、白銀のライオンの姿で再び口を開く。


「礼を言うぞ、エリス……さてと。本題と行くか。これを知るのはまだそなた達二人でいい」


 再び体の形が変わったかと思うと、人型に変化した。黄金色のたてがみのような豊かな髪、白い肌、金の獣の瞳。額には銀のツノが一つ生えていて、どう見ても人とは違う神々しさがあった。


「これがもう一つの姿だな。ああ、そうだ。従魔の証(コレ)は私には全く力不足。実は私には効果はないぞ」


 そう言ってチャラリとネックレスのように見える従魔の証を手でもてあそびながら、くっくと笑うと、ふい、と私の側にやってくる。


「なあエリス。……私の花嫁にならんか? 私は精霊達の王。その王を救ったのだ。その力、花嫁にふさわしいと思わんか?」


 腰には反対側の手が回され、ぐっと体を寄せられる。そして、くい、と顎を掬われて上向きにされ、唇を触れるか触れないかという距離にまで縮められた。


「力が欲しいだけなら、お嫁に行く気などありません!」


 私は、顎をとられたまま、ぷいっと横を向く。


「くっくっく。精霊王相手にその威勢の良さもよいものだ。……とは言ってもまぁ」


 ぽふん、と再び二本足で立つ猫のラグドールのような姿に戻ってしまった。


「ケットシーを装っていた方がここで住むにはなにかと便利にゃ」


 そうして、私のところまでたどり着くと、紳士風に片手を胸に当てて礼を執る。


「感謝するにゃ、エリス。さすが、私が見込んだだけはあったにゃん。いざとなったら本来の姿になってそなたを守護すると誓おう。エリスの父上、それでよいかにゃ?」


「はっ、はい……。精霊王様に守護をいただけるなど、これ以上頼もしいことはありません」


 慌ててお父様がラズロに向かって頭を下げた。


 そして「ああ、そうにゃ」と付け加え「そなたの薬は本物にゃ。もっとたくさん作って、困っている他の者達のためにつかうといいにゃん」と言われた。


「……ということだそうです」


 私は、自分自身が驚いて目をパチパチと瞬かせつつ、お父様に報告をするのだった。

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