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017.久しぶりの再会

「エリス!」


「ユリウス!」


 私が待ち合わせの場所へ馬でやってくると、先に来ていたらしいユリウスと思われる青年が笑顔で迎えてくれた。


 忘れもしない濃い金髪に青い瞳。幼い日々に交流を深めた面影はそのままだ。


「どう、どう」


 私はスノウにストップの合図をして、足を止めさせる。そして、ヒラリとスノウから降りると、ユリウスと思われる青年のもとへ駆け寄った。


「また会えるなんて!」


「それはこっちの台詞だよ、エリス!」


 子供の頃のように手をつなごうとして、互いにはっと顔を見合わせて動きを止めた。


「ちょ、ちょっと待っていて。スノウを木にくくってくるから」


「あっ、ああ……」


 久々の再会は、ちょっとぎこちない。


 私はそのぎこちなさから逃げるようにして、一度スノウの元へ行って、彼女を木にくくってきた。


 ――だって、とても素敵な男性になっているのだもの。

(あのまま、いやそれ以上に彼女は美しく成長しているのだから)


「あっちの、景色のいいところで話をしない?」


 戻ってきた私に彼が指をさしながら提案してくれる。


「そうね。お互いに積もる話もたくさんあるものね」


 そうして、私達は小花が咲き乱れる丘の上で並んで腰を下ろして話をすることにした。


「それにしても、戻ってきてくれて嬉しい……と言ったら失礼かな」


 なにか事情がありそうな感じがして、ユリウスが言葉の途中でしまったといった様子で苦笑いをする。


「気にしないでユリウス。私、相手の王太子に婚約破棄されたのよ」


「えっ!? 見る目ないんじゃない、そいつ」


「……ぷっ」


「あはは」


 不意に出たユリウスの率直な感想に、互いに緊張もほどけて笑い合う。


「でもね、すっきりしているの。まあ、成人したばかりの年頃で婚約破棄されたなんて、一般的には痛手なんでしょうけど」


「婚約破棄だなんて、相手が見る目がないと思うけれど。君は十分その……綺麗になったし。いや、もともと綺麗……なんだから」


「えっ……」


 ちょっと気恥ずかしげに互いに顔を見合わせてから、視線をそらす。


「そうだ! 私、成人式で錬金術師の職をいただいたのよ。それで、私はこれからが楽しみで仕方がないの!」


 気恥ずかしい雰囲気を戻そうと、私は別の話題を振った。


「すごく楽しそうだね」


 微笑ましそうな顔をするユリウスに、私は、さらに私の事情を説明していく。


「だってみんなの役にたつものがたくさん作れるのかと思うと、わくわくするの!」


 そんな、自分のことばかり喋っていると気がついてはっとしてユリウスの顔を見ると、ユリウスはそんな私を、変わらず微笑ましそうに笑顔で耳を傾けてくれていた。


「人に傷つけられたというのに、君の心は明るく健康的だ」


「傷ついていないもの」


「本当に?」


「だって、好きでもない人と婚約していたのよ?」


「本当に?」


「本当に? しか言わないの?」


「……ぷっ」


「あはは」


 繰り返す問答に、再び笑い合う。


 私の性格が、前世のものも入り交じって少し変わったことも、好意的に受け入れられているようで、それも嬉しい。


「そういえば、手紙にも書いてあったね。薬草を摘みたいって。これから一緒にやろうか?」


「ええ!」


 そうして、その日は薬草摘みをしながら最近の生活ぶりを互いに語り合いながら。


 また会う約束をして、久々の再会を終えたのだった。


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