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6.良い人

 こうやってルディスと話していると、意外と話しやすい人なのかもと感じていた。

 ゲームの方ではルディスルートはプレイしていなかったので、どういう人物なのかは分からないけど。


 見た目はイケメンだし、家柄も公爵家で申し分ない。性格も優しくて紳士的で悪いところが見つからない。だからこそ逆に怖いと感じてしまう。

 私がプレイしたメインヒーローのカエサルは表向きはまさに皆が憧れる王子様そのものだったけど、内面は真っ黒で歪んでいた。

 乙女ゲームはこれの他にもいくつかプレイした事はあるけど、全てにおいて完璧系に設定されてるキャラは高い確率で本性を隠しているパターンが多い。

 だけど私はヒロインではないし、攻略対象を狙っているわけでもない。

 仮にそうだとしても私には関係はないだろう。


「ルディス様の好きな方ってどんな方なんだろう」

「え…?」


(やば…、心の声が…!)


 私は考え事をしていると、思っていることをつい口にだしてしまう癖がある。


「ルディス様には、ずっと思っている方がいらっしゃるんですよね?だから、どんな方なのかなーって…、ちょっと気になってしまいました」


 私は苦し紛れに笑って誤魔化そうとした。

 そんな私の姿を見てルディスは困った顔を見せた。


「もしかしてグロウから聞いたのかな?」

「はい…、何度も求婚されている方がいらっしゃるとか。ルディス様を振る方なんているんですね。こんなに素敵な方なのに…!だけど、ルディス様にこんなにも思ってもらえる方は幸せですねっ…」


 私が笑顔で答えるとルディスは少し驚いた顔をしていた。


「まさか…君にそんな風に言われるとはね。でも何度振られても彼女の事は諦めたくはないんだ」

「なんか素敵ですね…!私は誰かを好きになった事なんて無いから、そういった気持ちは良くわからないけど、いつか私もそれくらい誰かを好きになってみたいです。ルディス様の思い、その方に伝わると良いですね」


 私だって恋をしてみたいって気持ちはある。

 乙女ゲームをやるくらいだから恋愛への興味はそれなりに持っていると思う。

 だけど前世ではリアルで誰かを好きになったことはなかった。

 だからこの世界で私も誰かを好きになってみたい。


(そんな人…私にもいつか見つかるかな…)


「誰かを好きになってみたい…か」

「はい、だって恋をするのって楽しそうじゃないですか!私は経験はないですけど、それだけで日常が変わるって聞くし…」


 私が胸を躍らせる様に楽しそうに話していると、不意に優しく微笑むルディスと視線が絡んだ。

 その瞬間、胸の鼓動が速くなる。


「恋をしてみたいなら……」


 ルディスが口を開いて言いかけた瞬間、扉の方から聞き慣れた声が響いた。


「姉さん!遅くなってごめん…!」

「あ、グロウ…終わったの?」


 そんな時、グロウが扉の前に現れた。

 息を切らしている様なので急いで来てくれたのだと分かった。


「うん。あれ…ルディス様もいらしたんですね」

「ちょっと君のお姉さんに話があってね」


「……そうですか」


 グロウは少し驚いた表情をしていた。

 私とルディスが一緒にいることが珍しくて、きっとそんな顔をしていたのだろう。


「話は終わったから俺はこの辺で失礼させてもらうね。ライラ嬢、頼みを受けてくれて本当にありがとう。感謝してる…」

「私でお役に立てるなら…」


「じゃあ、二人ともまたね…」


 そう言ってルディスは教室から出て行った。


 私達も帰りの準備をして学園を出た。

 そして待たせていた馬車にグロウと一緒に乗り込んだ。



***



「姉さんって、ルディス様と仲良かったっけ?」

「そうでもないと思う。ルディス様とまともに話したのは最近だし…」


 私達は向かい合うようにして馬車に座り、揺られながら話をしていた。

 グロウはやっぱり私とルディスが一緒にいたことが意外だった様だ。


「姉さんはルディス様に何を頼まれたの…?」

「うん、再来週の王家主催のパーティーに一緒に行ってくれないかって…」


「……姉さんは、それ受けたんだ…」

「うん…。私も婚約者はいないし、一緒に行く予定の人もいなかったから」


 私がそう答えるとグロウは拗ねたような顔を見せた。


「どうして…。僕も姉さんと一緒に行きたかったのに…」


 寂しそうな表情を見せるグロウに胸がキュンとしてしまった。


(ああ、なんてかわいい弟なのだろう…!)


「グロウはナーシャさんのこと、誘わないの?」

「え…?…僕なんか無理だよ…!絶対断られると…思う」


「そんなことないわ!グロウは少し気弱な所はあるけど、優しいし容姿だって素敵だし…。思い切って行動してみないと今以上の関係には進めないと思うよ…!」

「……そうだよね。姉さんが応援してくれるなら頑張ってみようかな…」


「私はいつでもグロウの味方だからね!」

「うん。ありがとう、姉さん」


 その時のグロウの表情は何処か寂しそうに見えた。

 そんな姿を見て胸の奥がきゅんとなり、私はグロウの隣に移動するとそのままぎゅっと抱きしめた。


「えっ、ちょっ…姉さん!?」

「そんな顔しないで。私はいつだってグロウの事、応援しているからね」


 顔は見えなかったけど、焦ってるのは声を聞けばすぐに分かった。


(本当にグロウは可愛いな。私の大事な弟…)


「やっぱり僕…姉さんのことが好きだ」

「私も大好きよ」


 グロウはそう呟くと、ぎゅっと私の事を抱きしめ返してくれた。

 こうやってグロウを抱きしめていると心が落ち着く。


 ブラコンって思われるかもしれないけど、うちの弟は一番可愛い。


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