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5.意外な繋がり

 教室に戻ると窓際の方に人影が奥に見えた。

 まだ誰か残っているのだろうか。そんなことを考えながら教室の中に入ると、そこにいたのはルディスだった。


 昼間変な所を見られてしまったから、なんとなく気まずさを感じる。

 そもそもクラスも違うのに、どうして私の教室にいるのか不思議だった。

 

(誰か待っているのかな…?)


「ルディス様、どうされたんですか…?」

「良かった。やっぱりまだ帰っていなかったんだね。君の鞄が置いてあったから待っていたんだ」


 ルディスは私に気付くと優しい笑みを浮かべながらそう言った。

 

(待っていたのは私…?)


「あの…私にどういったご用件ですか?」

「君は、殿下の事が好きなの?」


 私はその質問に思わず苦笑した。


「あの、まだその話題続けますか?さっきも言った通り、殿下は…顔が好みだったっていうだけで好きなわけではないです」


 本当にそうなのだから、これ以上答えようがなかった。

 私は誤解の無いようにはっきりと伝えた。これ以上この話題を長引かされても困るからだ。


「それなら質問を変えさせてもらうね。ライラ嬢は、他に誰か好きな人はいる?」

「いませんけど…」


「そうか。それなら君に頼みたい事があるんだ…」

「頼みたい事…?」


 私は質問の意図が分からず不思議そうに顔を横に傾けた。


「ライラ嬢、君にはたしか婚約者はいなかったよね?」

「はい…、いませんけど」


「再来週王家主催のパーティーが開かれるのは知ってるよね?恥ずかしながら俺には婚約者もいないし、一緒に連れて行く女性がいない。もし良ければ君にお願いしたいのだけど、どうだろうか」

「えっ…?わ、私ですか…?」


 ルディス様って求婚されている方がいるんじゃなかったの?

 でも…断られ続けてるって聞いたし、今回も断られたのかな…?


 私はそんな事を考えながら、ルディスの顔をじっと見つめていた。


「さすがに一人で行くってわけにもいかないし、かと言って他に頼める令嬢がいなくて困っているんだ。だめかな…?」

「だめではないですけど…。でも、ルディス様って令嬢の間ではすごく人気あるみたいだし、私なんかよりもっと素敵な方は沢山いるんじゃないですか?」


 ルディスは令嬢達の間ではすごく人気がある。

 この風貌に、優しくて紳士的だ。令嬢達が夢中になるのは当然のことだろう。

 それに未だに婚約者がいない事もあり、狙ってる令嬢は山の様にいるはずだ。


「俺に興味を持ってくれている子を誘ったら変に誤解させてしまう可能性があるから、そうなったら悪いと思ったんだ。その点、君は俺の事を好きではなさそうだし、誤解される心配もないかと思ってね」


 ルディスは困った様に苦笑を浮かべながら答えていた。

 私はその話を聞いて納得した。

 

(モテすぎるのも大変なのね…)


 ルディスは公爵家だから一人で参加するのは格好的にあまり良くないのだろう。しかし、現在ルディスには婚約者はいない。心を寄せている相手はいるようだが、私に頼んで来るって事は恐らく断られたのだろう。

 もしルディスの事を思っている令嬢を誘えば、後で変に誤解させて婚約を迫られる…ってこともあるかもしれない。だからこそ、私みたいに好意を持っていない相手を探しているってことね。


 私は社交界は余り得意ではないけど、さすがに王家主催のパーティーには参加せざるを得ない。

 本当は弟のグロウと行こうと思っていたけど、グロウにはナーシャさんと行ってもらおう。

 それにナーシャさんからルディス様を引き離せると思えば、こちらとしても都合は良いわね。


「わかりました。私でお役に立てるか分かりませんが、よろしくお願いします」

「本当に…?」


「はい」

「ライラ嬢、ありがとう。助かるよ…」


 ルディスは私の返答を聞くと、ほっとしたように安堵の表情を浮かべた。

 その姿を見ていると本気で困っていたのだと伝わって来て、私は助けになれて良かったと感じていた。


「だけど、本当に私なんかで良かったんですか?」

「君の事はグロウから良く聞いてるからね、ライラ嬢なら安心出来ると思ったんだ」

 

 そんなに頼りにされていたのだと思うと、小恥ずかしくなってしまう。


「ルディス様はグロウとは仲が宜しいのですか?」

「幼い頃からなんとなくグロウとは気が合う部分っていうか、似てる所があって…気兼ねなく話せていたからね。それなりに仲良くはさせてもらっているつもりだよ」


 ルディス様とグロウが似てる…?

 どう見ても似てる所があるとは私には到底思えないけど、本人達にしかわからない所があるってことなのかだろうか。

 でも二人がそこまで仲が良かったなんて意外だった。



「幼い頃、俺達…会ったことがあるの覚えてる…?」

「え…?私とルディス様が…ですか?」


 ルディスは当然、思い出す様にそんな事を話し始めた。

 私はそう言われてから少し考えてみたが、思いつく様な事柄は浮かんでは来なかった。


「グロウが初めての大きなお茶会に参加した時…君、必死に泣いてるグロウを慰めていたよね…?」

「あー…そんなことありました。あの時は本当に大変でした。グロウ、中々泣き止んでくれなくて…。それで仕方なく控室に連れて行って…」


「そうそう。あの時俺も途中で気分が悪くなってしまって、控室に行ったら君達二人がいて、一緒にグロウを慰めてくれって君にいきなり言われてさ。あの時は突然の事で驚いたよ」

「……っ!!あの時の子ってルディス様だったんですか…」


 ルディスに言われて、私は思い出した。

 今から10年くらい前、グロウが初めてお茶会に参加した時のこと。お茶会の会場に着いたらいきなりグロウが泣き出してしまい、中々泣き止んでくれないから仕方なく控室に連れていく事にした。

 落ち着いた場所なら泣き止んでくれるかなって思ってたんだけど、それでも全然泣き止んでくれなくて…。


「今更ですが…あの時は本当にすいません…。驚きますよね…」

「ふふっ、そうだな。突然で驚いたけど楽しかったよ。今となっては良い思い出かな」


 ルディスは楽しそうに話していたが、私は少し恥ずかしくなった。

 まさかあの時の子がルディスだったなんて、言われるまで全く気付かなかった。


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