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17.目指すもの

 ガタガタガタ…


 ――と、耳に心地よく馬車の輪が回る音が響いていた。

 ゆっくりと意識が戻って来て私は静かに瞼を開いた。


(あれ…、私寝ちゃったのか…)


 どれくらいの時間が経っているのだろう。

 時計が無いので正確な時間はわからない。


 不意に視線を窓の方に向けると、外はまだ明るかったが景色が一変していた。

 緑豊かな木々が揺れ、その奥には広大な丘が広がっている。

 その光景に胸が高鳴った。


 視線を前の席へと向けると、グロウは寝息を立てて眠っている様子だった。

 そういえばグロウの寝顔を見るのは、なんだか久しぶりな気がする。

 昔と比べたら顔立ちは大人っぽくなったが、どことなく寝顔は可愛く見えた。

 私はそんなグロウの寝顔を見て表情を緩めた。


(やっぱり弟ね…。可愛く見えるわ)


「ふふっ、グロウったら気持ちよさそうに眠ってるわね」


 寝ている間だけは今も昔も変わらず、私の良く知っているグロウの姿がそこにはあり、私は嬉しくなった。


 暫くの間はグロウの寝顔を眺めていたが、不意に視線を窓の方に向けた。

 初夏の暑さを感じるけど、窓から入ってくる風はとても気持ちがいい。


 叔母さんの別荘は郊外から離れた自然の中にある。


(ここに来るのはもう5年ぶり位になるのかぁ…)


 以前ここに来た時は兄とグロウと私の3人だった。

 毎日森の中を探索してみたり、湖で水浴びをして遊んだり、洞窟で冒険したり…と、楽しい記憶が蘇る。

 あと叔母さんの家には沢山の本があって、それを3人で読むのも楽しかった。


 叔母さんは少し変わり者だった。

 一人でこんな森の中で住んでる時点で変わってると思う。


 叔母さん曰く賑やかな場所は騒がしくて性に合わないらしい。

 月に2回程度食料品や最低限のものを届けてくれる人がいて、貴族なのに自給自足の生活をしている。

 薬師である為、薬草を自分で取りに行っては調合も自分でしている様だ。


 そんな叔母さんの姿は私にとっては特別だった。

 まるで魔女の様に見えていたのだろう。

 元々私は転生していて前世の記憶を持っているせいか、こういうファンタジー要素には興味津々だった。

 逆に貴族令嬢としてのマナーや堅苦しい作法などは窮屈で仕方が無かった。

 だからいつしか私は貴族令嬢としての道では無く、自由気ままに好きな事をして過ごす叔母さんみたいな存在に惹かれて行ったのだと思う。

 私もいつか叔母さんの様に薬師になりたいと思うようになっていったのはそれが理由だ。


 この世界は私がいた前世とは違う部分が多い。

 前世では薬は薬局に行ったら割となんでも簡単に買えてたけど、この世界では薬は高価なものとされている。

 ポーションなどの回復薬は濃度によって値段が違うし、粗悪品も多い。

 薬師の数も少なく、資格を取る為には厳しい試験を受けなくてはならない。

 知識はもちろんの事、実技試験もある為経験も必要になって来る。


 叔母さんはそんな狭き門を突破して薬師になった。


 折角異世界に来たのだから異世界ぽい事をしてみたいし、薬師になればお金に困ることもない。

 私は現在学園では2年生で、来年には今後の進路について決めなければならないことになる。

 だから叔母さんに会いに行くことを決めた。

 この休暇中に出来る限り薬師について知って、今後の目標を立てる為に…。


 ちなみにこの世界には魔法は存在している。

 貴族は特に強い魔力を持つと言われていて、私も魔法を使うことが出来る。


 初めて魔法を使えた時はそれはもう感動した。

 強い魔法を使うために努力したこともあった。

 だけど思った以上に魔力を使うことは体力を削られる事に気づいた私は諦めることにした。

 使いすぎると激しい頭痛に襲われたり、吐き気もしたりで辛過ぎて私には無理だった。

 体力的な問題もあるようだが個人の魔力量にも関係しているみたいで、魔法については向き不向きがある。

 私は不向きの方だった。


 そして次に魔法が無理なら剣を極めようと考えた。

 女剣士には少し憧れを持っていたからだ。

 実は前世でやってたゲームでは、キャラクターを作る際には剣士ばかり選んでいた。

 剣を振りかざして無双するのって滅茶苦茶気持ちが良いからだ。

 そう思って始めたのだが、実際にやってみると剣が重すぎて手は疲れるし、思ったように触れなくて直ぐに無理だと気付いた。

 魔法使いになる夢も、剣士になる夢もあっけなく散った。

 

 元々薬師には興味はあったし、現実的には一番堅実な職業だと思う。


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