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12.王女様の好きな人

「うちの姉上には困ったものだね」


 背後から聞き慣れた声が響いて来たので振り返った。

 そこにいたのは呆れた顔を浮かべているカエサルだった。


「カエサル殿下…」


 カエサルの口調から、恐らく先程の出来事は一部始終見ていたのだろう。

 

「すまないな、強引な姉上で…」

「いえ、そんなことは…」


「本当に懲りない人だ。呆れるくらいにね…」

「どういう意味ですか?」


 盛大にため息を漏らしながらカエサルは近くにあった長椅子に腰かけた。そして、隣の席を指差されたので私は促されるままに隣へと座った。

 こんな場所でカエサルに会う事には驚いてしまったが、一人ぼっちにされてしまったので丁度良かったと思う事にした。さすがに一人で大広間に戻る勇気は無かったからだ。


 そしてあんな場面を見てしまったからか、あの二人の関係に少し興味を持ってしまった。

 もしかして…、ルディスが思いを寄せている相手というのはアイリス王女の事では無いだろうか。そんなことを頭の中で巡らせていた。


 ここにいればカエサルからその真相が聞けるかもしれない。

 そう思ったから、私はこの場に留まることにした。


「あんなやり取りを見せられたら嫌でも気付くとは思うけど、姉上は昔からルディスの事が好きなんだよ。君が知っているか分からないけど、姉上には別に婚約者がいるけどな…」

「え…」

 

 私が驚いた表情を見せるとカエサルは「知らなかったか」と小さく呟いた。

 そして更に話し始めていく。


「姉上はあれでも王族だからな。幼い頃から決められた婚約者がいる。隣国リクレム国の第二王子だ。まあ、向こうも色々と問題がある男らしいけどな。お互い心が通じ合っていないとしても、国の為に結ばれた婚約だ。本人の意思だけでそれを覆す事が出来ない事も姉上は分かっているのだとは思う」


 私はその話を聞いて悲痛な表情を浮かべてしまう。

 本当はお互い思い合っているのに、結ばれないだなんて辛過ぎる…。

 だけど、そう思いながらもどこかロマンティックな話に聞こえてしまい、興奮して胸がドキドキしてしまう。


「先に言っておくが、ルディスが好きなのは姉上じゃないぞ?」

「そうなんですか…?」

 

 私がきょとんとした顔で答えると、カエサルは苦笑した。


「結論から言えば、姉上が一方的にルディスを追い回してるって感じだよ。ルディスって誰にでも親切そうな態度を取るだろう?姉上の気持ちを知っているのに突き放さないルディスも悪いとは思うけどな」

「でも…、それは王女様だから逆らえないとかではないんですか?」


「まあ、それもあるのかもしれないな。それにいつまでも婚約者を作らない事も原因の一つだろう。姉上は自分の事が好きだから婚約者を作らないと勝手に誤解をしているくらいだからな」

「色々と大変なんですね…」


 私が答えると、カエサルはじっと私の方に視線を向けて来た。

 まるで何か言いたげな瞳をしている様に見えたので、私は不思議そうに首を傾けた。


「なんでしょうか?」

「君はさ、婚約者を作る気は無いの?」


 突然そんなことを聞かれると、私は返答に困り少し考え込んでしまう。

 今日まで私に縁談を勧めて来る相手なんていないと思っていた。だけど実際はお父様がそれを全て断っていたのだと知った。

 私はモテないのだと思っていたし、結婚なんてまだ当分先の話だと思っていたから急にそんな話をされてもなんて返したら良いのか分からない。


「今のところは…ないです」

 

 悩んだ挙句に出てきた言葉を素直に伝えた。


 一瞬グロウの顔が頭に浮かんだけど、私達は姉弟だ。

 もし私がグロウの事を好きになって両想いになったとしても、きっと結ばれることは無いだろう。

 そしてその事実をお父様に知られたら、きっと驚いて倒れてしまうかもしれない…。


(そんなの…だめ…)


 それに私が傍に居すぎてしまったから、きっと好きの意味を履き違えているだけだ。

 ナーシャと仲良くなれば、きっと私ではなくナーシャに惹かれて行くだろう。

 だってここは乙女ゲームが舞台の世界で、二人はヒロインと攻略対象者の関係なのだから、そうなるのは当然の流れだ。

 そして私への気持ちが勘違いだったと気付くはず…。


「ライラ嬢はルディスの事、どう思っているの?」

「ルディス様ですか…?優しい方だと思います」


「それだけ…?」

「私はそれほどルディス様と親しくしていたわけではないですし、素敵な方だとは思いますが…」


「なるほどな…。あいつは誰にでも優しくするから…誤解を持たれやすいけど、ああ見えてルディスは案外一途だぞ…」

「カエサル殿下はルディス様の好きな人を知っているんですか?」


「そうだな、ルディスとは長い付き合いだからね。姉上の事で相談される事もあるからな。ライラ嬢はルディスが思っている相手が誰だか知りたい…?」


 カエサルは口端を僅かに上げてクスッと小さく笑みを浮かべた。

 気になっているので知りたいと言えば知りたい。だけどルディスは誰だか私には教えてはくれなかった。という事は、余り詳しくは話せない相手なのかもしれない。

 そう思うと聞いてしまっていいものか悩んでしまう。


 しかしカエサルが私の返答を愉しそうな顔で待っているので、思いついた名前を口に出してみた。


「ナーシャさん…?」


 思い当たるのはナーシャしかいない。

 ヒロインだし、一番の有力候補だろうけど…多分違う。


「ナーシャが好きなのはグロウだよ…?それはルディスも知ってるし、寧ろ二人事を協力している位だからね」

「私の知っている人ですか…?」


 知っているなら教えてくれてもいいのに…!と思いながら私は再び問いかける。


「うーん…そうだね。まぁ知ってると言えばそうなるかな」

「……誰だろう」


 私が真剣な顔で悩んでるとカエサルはクスッと小さく笑い、私の前に手を差し出した。

 

「ライラ嬢、折角だし私達も少し踊らないか?休憩も出来たよね?」

「……私と、ですか?」


 突然の言葉に私は困惑の表情を見せた。

 するとカエサルは「君意外に誰がいるの?」と聞いて来たので、私は咄嗟に辺りをキョロキョロと見渡してみた。当然ながら近くには私達以外の姿は見当たらない。


「ぷっ…、本当に君は面白いね。逃げない様にこの手は握らせてもらうよ」

「え…あの…私本当にダンスが下手で…。それに、ルディス様が戻って来るかも知れないですし…」


 私は思いつく言い訳を並べてみた。必死になればなる程焦ってしまう。

 そんな私の姿をカエサルはクスクスと笑いながら見ていたが、私の手を握ったまま立ち上がった。


「ルディスの事は放っておいても問題は無いよ。君を誘ったのはルディスの方なのに、姉上が来たら平気で置いていったのだから。少しくらい焦らせてやった方が良い薬になるはずだ」

「でもっ…」


「大丈夫。そんな事より、折角来たのだからライラ嬢も楽しんだ方が良いよ」



***



 そう押し切られてしまい、私は渋々カエサルに連れられて大広間へと戻ることになった。


(なんで私…カエサル殿下と一緒にいるの。それにダンスなんて…無理…!どうしよう…)


「私、本当にダンスが下手なんです。きっとカエサル殿下の足を踏んでしまいます」

「ふふっ、君に踏まれたところで大して痛くはないし問題ないよ。だからそんな顔してないで、楽しもうか…」


 カエサルは優しく微笑んだ。

 好きな顔であるカエサルの笑顔の破壊力は大きく、私は思わず真っ赤に顔を染めてしまう。

 私は慌てる様に視線を逸らした。


「緊張しているの…?耳まで真っ赤だよ…、可愛いな」

「そ、そんな事無いですっ…!気のせいです…気のせい…」


 私が必死に答えるとカエサルは小さく笑った。

 からかわれているみたいでますます恥ずかしさが込み上げてくる。


 そんなやり取りをしていると、気付けば中央広場まで到着していた。


「やっぱりあの二人は目立つな」

「本当に…」


 カエサルに言われ視線を先の方へと向けると、ルディスとアイリス王女の姿がそこにはあった。


 アイリス王女のドレスは真っ赤でそれだけで存在感を感じる。

 それでいてあのドレスをしっかりと着こなしていて、さすがだなと感心した。


 ルディスと一緒にいるアイリス王女は誰が見てもお似合いに見える。

 二人とも大人ぽくて色っぽくてどちらとも見劣りしない。


 私が二人に視線を向けてるとカエサルは私の顎をグイっと持ち上げた。

 そしてそのまま視線をカエサルに向けると、カエサルは私の腰を引き寄せた。

 カエサルとの距離が近くなりドキドキして鼓動が速くなる。


「今の君の相手は私だよ…。だから余所見をしたら駄目だよ」

 

 カエサルそう私の耳元で囁いて来た。

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