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イフルート  作者: 如月りょう
8/28

ルート1 練習

登場人物紹介


須藤零矢すどうれいや…主人公

五関絢ごせきあや…零矢と要の幼馴染


神…「イフルート」を創った張本人


 家を出た俺は一つの目的地に向かっていた。

それは家から徒歩5分の距離にある自分のバイト先だ。そこで昨日のことを確認しようと思っている。

 昨日俺のシフトと被っていた店長が今店にいることはグループラインで把握している。


「なんかシフト入ってないのにバイト先に行くの、ちょっと気まずいな」


 そういえば昨日五関はあかり先輩に会いに行くって言ってたけど、本当に来たんだろうか。もし来たのなら五関に聞くのもありだったか。と考えているうちにバイト先に着いた。

俺はひとつ咳払いをして店に入った。


「いらっしゃいま……あ、須藤先輩!」

「お疲れ。店長ってどこにいる?」


 迎えてくれたのはひとつ下の後輩、堤春菜つつみはるな。高校1年生の中では一番頑張って働いている子だ。


「店長ならバックヤードで作業してましたよ」

「さんきゅー。堤も今日から夏休みか?」

「そうです! 『も』 ってことは須藤先輩もなんですね! 今日はこれからシフト入ってましたっけ?」

「いや、店長にちょっと用があるだけだから。……堤は今日何時までなんだ?」

「そうなんですね! 私はあと30分で終わります。朝から働いてたんで」


 そう言うとふわっと軽くあくびをしていた。俺と違って朝から働いていたなんて偉いなとシンプルにそう思ったと同時に、少し考えていたことを堤に実践してみるかと決めた。


「お疲れだな。もしよかったらバイト終わるの待ってていいか? ちょっと堤にも話したいことがあって」


 え! と堤は少し驚いた様子を見せたが、「はい、大丈夫です」と快く承諾してくれた。


「じゃ先に店長と話してくるから、またな。あと30分頑張って」

「はい! ありがとうございます!」


 ペコリとお辞儀をした堤に軽くを手を挙げ俺は店長のいるバックヤードに向かった。






「店長。須藤です。失礼します」


 3回ノックしてバックヤードのドアを開ける。


「おー須藤か。そんな畏まらずに入れ入れ」


 奥のデスクからこっちこっちと手招きしてくれている。

店長は気さくで優しい人だ。先月奥さんに逃げられたらしいけど……。


「わざわざすみません。特に大事な用ではないんですけど、聞いてもいいですか?」

「おう、いいぞ」


 いつの間にかノートパソコンを閉じて俺の方に体を向け真剣に聞く姿勢の店長。


「えと、なんか聞き辛いんですけど、昨日の俺ってどんな感じでしたか?」

「ん? 昨日の須藤か? いつも通り働いてくれてたぞ。あ、でもなぁ」


 いつも通りときいてホッとしたのも束の間、店長の 「でも」 の一言に俺の鼓動は早くなる。


「店に遊びに来た五関とイチャイチャしすぎだ。付き合ってるかもしれ 「幼馴染です!!」 ……お、おうそうか」


 さっきまでの緊張感を返してほしくなる。あと五関はやっぱり店に来たのか。有言実行すぎるだろ、あいつは。


「まあなんだ。それ以外は本当に普通だったと思うけど、それがどうかしたのか?」

「いや、昨日の自分の勤務態度とかを知りたかっただけです。忙しいのにわざわざお時間割いてもらってありがとうございます」


 感謝の言葉を店長に伝えた。そんな店長は困惑しているようだった。


「え、本当にこれだけでいいの??」

「? はい、本当にこれだけです」

「なんだよおぉぉぉ。俺の緊張を返せよおぉぉ」


 さっき俺が思っていたことを店長が急に言語化したので俺はつい 「え?」 と疑問が口をついて出てしまった。


「俺はてっきりお前が辞めるのかと思って。お前にも逃げられると俺はもう……」

「ちょ、店長奥さんに逃げられたの引きずりすぎですよ! 俺は逃げませんから」


 ううっと泣き出してしまった店長を俺が慰めるという傍から見ると意味不明な状況に俺は考えることをやめた。






 なんとか泣き止んだ店長を残して、俺は店の外で堤を待っていた。


「すみません! お待たせしました!」

「全然大丈夫。じゃ行こっか」


 堤を待ったのには理由がある。それは俺の目的である彼女を作るために必要なこと 『告白』 だ。

いきなり本命である二条さんに告白しても、告白経験皆無の俺ではおそらく百戦錬磨である二条さんの心をつかむ告白はできないだろうと考えていた。そこで告白の練習をしようと考えていて、堤に白羽の矢が立った。

 堤なら誰かに言いふらすこともないだろうし、二条さんとは高校が違うので万が一でも二条さんにバレることはない。我ながら完璧な人選。

 あと、せっかく練習であろうと初めての告白に変わりはないので、どうせなら少しでも成功する可能性がある子に告白するのは人間の性だ。うん、と自分を言い聞かせる。


「えと、須藤先輩。どこに向かってるんですか?」


 黙々とただ歩いていることが不安に思ったのか、堤が口を開いた。


「近くの公園。そこでちょっとだけ喋ろう」

「ああ、第一公園ですね。あそこ意外と広いし座るところも多いですもんね」


 「いいですねー」 と横で堤が頷いていた。

 ……あれ、もしかして俺緊張してる??

(ちょっと待て。練習でこんなに緊張してたら本番どうなんの? え、死ぬの? 死んじゃうの?? 世の中のカップルはこんな緊張することを乗り越えてたのか。そりゃ公衆の面前でイチャイチャできる度胸があるわ。あーヤバイヤバイヤバイ! なんて言う? 正解とかあんのか―――)


「先輩、今日ちょっと様子おかしくないですか?」

「どっこいしょー!」


 突然話しかけられて変な声が出てしまう。まるで昨日のデジャブだ。堤の表情も何事かとぽかんとしている。


「いや、なんでもないよ。はは、は……」


 告白する前から、しかも練習でこんなに緊張して、あまつさえ後輩に気を使われるなんて……。

 自己嫌悪に陥っている間に第一公園に着いてしまった。空気は最悪。とても告白する雰囲気ではない。しかしこのまま引き下がれない!


「あのベンチに座ろっか」


 いよいよ俺の人生初告白が始まる。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

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よろしくお願い致します。

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