ルート2 昇格
『二条成美』 と表示されているスマホの画面を見て固まっていると、不在着信の表記に変わってしまった。予想外の出来事で固まっている内に電話が切れたようだ。
慌てて二条さんにかけ直す。電話のマークをタップしてから自分が今していることに気付く。
(やば、俺いま二条さんに電話してんじゃん。メッセージ送るのに3日もかけた俺が……やばいやばい! うわ、コール始まったって。どうしよ、今からでも切るか……いやそれは失礼すぎよな。でもなんで二条さんは電話をかけてくれたんだ?? わからないわからないわからな―――)
2回目のコールの途中でコール音が途切れて、俺の思考もそこで途切れた。
これが意味すること、それはつまり―――
『あ、もしもし。ごめんね突然電話しちゃって。大丈夫だった?』
そう、つまり二条さんと電話が繋がったことを意味する。
俺が黙っているせいで不安に思ったのか、あれ? これ繋がってる? と独り言を言って困惑している様子の二条さん。そんな二条さんも可愛いなと思いつつ、これ以上迷惑をかけてはいけないと思い言葉をひねり出す。
「ぜ、全然ダイジョウブだよ」
『あは、なんでちょっと片言なの? 最近の須藤くんの流行り?』
二条さんが笑ってくれた! しかも俺の名前を呼んでくれた!
二条さんの一挙手一投足につい喜んでしまう。
まともに会話したのは中学2年生以来なので、余計に喜びが溢れ出てしまう。
「は、ハヤッテナンカナイヨー。……それよりさ」
また片言ーと電話越しに笑ってくれている二条さんにほっこりしつつ、気になったことを聞いてみる。
「なんで急に電話してくれたの……?」
これまで電話どころかメッセージのやり取りもしたことが無いし、先程も思い出していたが、最後にしっかりと会話したのは中学2年生のとき。悲しいが、現時点で特別親しいわけではない。良くてクラスメイトDの関係性だと自己評価している。以上の点から俺が到達したひとつの可能性……というか願望は、
二条さんはもしかして俺のことが気になっている??
―――だ。
そんな可能性は限りなくゼロだし、前までの俺ならそんなこと微塵も思わなかったが、五関との経験を経て、少しだけ自分にも魅力があるのではないか? という謎の自信がついてしまっていた。
『あー、それはね』
二条さんの続く言葉を待つ。実際は1秒ほどだと思うが、体感はすごく長く感じた。
『私メッセージより電話のほうが好きなの。メッセージってつい溜め込んじゃうから……。それに―――』
メッセージより電話派という話だけかと思っていたら続きがあるようで、無いとは思っていても自分の願望を言ってくれるのではないかと期待してしまう。
『須藤くんから来たメッセージの内容的に電話の方が良いと思ったんだけど……違った?』
へ? 俺のメッセージの内容?
俺は自分が送ったメッセージを確認する。
……たしかに最後の 『今時間大丈夫?』 はそう捉えられても不思議ではない。結果オーライではあるが、やはり文字だけで全てを伝えるのは難しい。
「全然違わないよ! 俺もメッセージより電話派だから寧ろ嬉しい!」
……うまくフォローはできただろうか? 嘘はついていない。二条さんと電話ができて嬉しくないわけがないから。
『良かった! 須藤くんも電話派だったんだね。……で、本題の英語の宿題だけど―――』
『―――と、こんなもんかな? 他は大丈夫?』
「大丈夫! 丁寧に教えてくれてありがとう!」
『ふふっ、そこは片言じゃないんだね』
「あっ! えと……ダイジョブデス」
『もう遅いよぉ』
再び笑ってくれた二条さん。
あの後、5分ほど英語の宿題について教えてもらった。
本当は知っていることもあったけど、二条さんと少しでも長く電話をしようと質問をいっぱい投げかけてこの時間まで粘った。ただ、もう宿題ネタが尽きてしまったので頃合いだ。この夢のような時間が終わってしまう。
「急だったのに本当にありがとう。おかげで助かったよ」
『全然! 私こそ急に電話してごめんね? でも久しぶりに須藤くんと話せて楽しかった! せっかく同じクラスで同じ中学出身なんだからこれからも話そうね?』
「―――っ! も、もちろん! 二条さんが良ければ……」
『良いに決まってるよ。じゃあ約束ね? もし破ったらデコピンね! 痛いよ~私のデコピンは』
「それは怖いから絶対守るよ」
口ではそう言ったが、二条さんのデコピン……良いな。と思わず思ってしまう。
『じゃあそろそろ切るね? 遅くまでありがとう。また学校 「あ、あの!」 で……?』
締めの挨拶の途中で割り込む。二条さんはどうしたの? と言ってくれている。
電話ができただけでも上出来だが、さらにもう一歩進まないといけない。これで満足しているようじゃ二条さんと付き合うことなんて出来ないし、何より五関に申し訳ない……。
「もしよければ、また俺と電話……してくれませんか?」
メッセージはあまり好きじゃないと言っていた。遊びに誘うにはまだ早い。ならこれが現時点での最善。勇気を振り絞って出したこの言葉は、告白するぐらい緊張した。
『うん、いいよ! 今日から私達はテル友だね!』
「!! あ、ありがとう!」
テル友という初めて聞いた単語には触れず、ただただこれからも電話していいという喜びで頭がいっぱいになる。
『また電話しようね。おやすみなさい』
「もちろん! おやすみ」
電話を切った後も余韻にふける。
今日、俺は二条さんと 『クラスメイトD』 の関係から 『テル友』 へと昇格した。
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