ルート1 五関 絢⑧
「私の告白、聞いてくれる?」
少し涙目になっている五関に、俺は首を縦にふることしかできなかった。
「私ね、実は小学生の時から……いや、もっと前だね。多分初めて会った時かられいやっちのことが好きだったんだ。きょかちゃんにはバレてたみたいだけど、れいやっちは気づいてなかったでしょー」
五関の言う通り、イフルートの世界に来るまで五関の好意に全く気づかなかったし、そんな昔から好きだったことなんてもっと知らなかった。京香はなんでわかったんだろう……?
「ずっと告白の機会を伺ってたんだー。でもれいやっちは小学校入学してすぐに好きな人ができて……。私はその相談相手になった。自分の好きな人の恋愛相談にのるのは小学生ながら大変だったよー。よく頑張ったよね、小学生の時の私は」
小学生のときに好きになった人…… 『まいちゃん』 。まいちゃんの相談も五関にしてたなんて……。忘れていたことに罪悪感を覚える。
「そんな私にもチャンスがやってきた。小学5年生になってすぐ、その子は転校した。れいやっちは落ち込んでいたけど、私からしたらチャンス以外の何物でもなかった。れいやっちがあの子を忘れたら告白しようと思ってたんだー。でも……」
一息置いて天を仰ぐ五関。すぐに俺の方に視線を戻す。
「中学2年生のとき、また恋愛相談を受けることになった。相手は同じクラスだったなるみん。クラス委員長だったし、女の私から見ても魅力的なのはわかってたから、すぐに手を引くことにしたの。高校も違う高校を選んだ。れいやっちを忘れるために」
やっぱり違う高校を選んだ理由はそうだったのか。予想はしていたが、いざ本人の口から聞くと様々な感情が胸の中を支配して、複雑な気持ちになる。
「でも忘れられなかった……。その結果、バイト先を同じにすることを選んだの。正直、ここ最近れいやっちが遊びや花火に誘ってくれたり、今日だって誕生日を一緒に過ごしてくれたのは本当に嬉しい。でも、やっぱりこれまでのことがあってすごく不安な気持ちになるの。本当に私を選んでくれるのか……って。こんな弱気じゃダメなんだけどね。だけど―――っ!」
言い終わる前に両手で五関の両手を包み込むように握った。驚いたような表情を見せ、続きの言葉を言えないでいる。
「ここまで言わせてごめん。いいとこ取りかもしれないけど、最後の言葉は俺から言わせて? ……その前に」
包み込んでいた手を解いて、その手で鞄の中を漁ってプレゼントを取り出した。
「これって……?」
「誕生日プレゼント。開けてみて」
プレゼント用の包装を丁寧に開け、中身を取り出す。中身はもちろん、この間買いに行った五関が欲しがっていたイヤフォン。
「これ、私が買うのを諦めたイヤフォン……。高かったのに、いいの?」
「もちろん。……で、さっきの続きなんだけど」
途中で終わっていた告白の続きをする。
「こんな形になると思ってなかったし、告白も俺から切り出そうとしてたんだけど……ってこれは言い訳だよな。ごめん。でも、俺の気持ちを聞いてほしい」
わがままな主張なのはわかっているが、五関は何も言わず、じっと俺の目を見つめている。
その視線に応えるように、俺は自分の気持ちを吐き出す。
「五関と今までこの幼馴染っていう関係を築いてこれたのは、五関のおかげだったんだって話を聞いてわかった。俺はそんな五関に甘えてた。五関が隣にいることを当たり前だと思ってた……。高校が別々になって寂しかったけど、それ以上の関係になることを考えたこともなかった。……夏休みに入るまで」
イフルートのことは伏せたほうが良いと思い、夏休みという表現に変える。
「今の関係が心地良いって思っていたけど、夏休みを一緒に過ごして、五関の気持ちに触れて、気づいたんだ。……俺が好きなのは五関なんだ……って。昔からずっと一緒にいて気づけなかったけど、この気持ちは本物だ。だから五関……俺と―――」
「付き合ってください」
前回の告白練習の時には言えなかった言葉と共に手を伸ばす。頭を下げているため、五関がどんな表情をしているのかわからない。しばしの沈黙。緊張で心臓が悲鳴を上げる。耳に全神経を集中させ、五関の言葉を待つ。
「……私はあの2人みたいになんの取り柄もないし、可愛くないけど……それでもいいの?」
「五関は十分可愛いし取り柄だってあるだろ? こんな俺と幼稚園の時から仲良くしてくれるだけの優しさと、関係を壊さないようにしてくれた思いやりが。……でも、その思いやりは今日で終わりにしよう。……駄目……かな?」
下げていた頭を上げて五関を見ると、先程まで涙目だった目からはしっかりと涙が溢れ出ていた。
目があった瞬間、一気に五関の顔が近づいた。
「ダメなわけない!! 私を彼女にしてください!」
そう言って五関が俺の胸に飛び込んでくる。体全体を使った愛情表現にドキドキしつつも、しっかりと五関の背中に手を回す。
「……なんか夢みたいだな」
「本当に夢みたい!! しかも誕生日に……! 諦めなくて本当に良かった……」
「俺も、気づけてよかったよ」
「……さっきは中学2年生の時に諦めたって言ったけど、本当は小学生の時も諦めかけてたんだ」
そうなのか? と耳元で返事をする。確かに、俺も逆の立場だと思うと……考えただけで病みそうだ。昔の俺を一発殴ってやりたくなる。
「そうだよー。だって 『ばんがせちゃん』 可愛かったし……。あの花火大会のときもね、ばんがせちゃんの髪型を真似してみたんだよ。れいやっちが好きかなと思って。……5年生の時に転校してなかったら本当に諦めてたと思うよ」
五関の言う 『ばんがせちゃん』 とは俺の初恋の人、まいちゃんを指す呼び方だ。
五関の話を最後まで聞いて、花火大会の時に繋がりそうだった記憶の欠片がひとつになって、全て思い出す。
事故に遭う日にみた夢の少女は間違いなく、小学生の時に好きだったまいちゃんだった……と。
なぜあのタイミングでまいちゃんの夢を見たんだ……? もしかして、まいちゃんもこのイフルートに何か関係してるのか?
「なぁ五関。そういえばまいちゃんってどこに―――っ!?」
どこに転校したか聞こうとした瞬間、視界が歪んだ。この感覚は、以前ゲームオーバーした時に味わった感覚と同じだ。
五関の涙混じりの心配そうな声が聞こえてくるが、何を言っているのか頭で理解出来なかった。
―――これはゲームオーバー……なのか?
そんな俺の考えをよそに、意識が再び闇の中に落ちていった……。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
明日はこれまでの出来事を簡単にまとめたものをあげようと思っています。
宜しければブックマーク登録、評価、感想、レビューお待ちしております!
よろしくお願い致します。




