ルート1 五関 絢④
目的地である神社に着いた。手を繋いでから恥ずかしくて五関の方を見れないだけでなく、喋ることもできないでいた。
右手に伝わる体温だけが唯一五関が隣にいる証明になっている。我ながら情けない……。
「へー。花火がよく見える場所ってこの神社なんだ。初詣以外で初めて来たかも!」
「! そうだろ? ここ地元の人でも花火がよく見えるって知らない人が多いんだ」
沈黙を破ったのは五関。突然の問いかけに少し驚きながらも得意げに答えた。
その証拠に、ここに来る途中にいた人の群れは半分以下にまで減っていた。
大半の人は神社の先にある第三公園まで行って花火を見る。
「知らなかった! 私は毎年第三公園で見てたからな~。もっと早く教えてくれたら良かったのにぃ」
ぷーと頬を膨らませて抗議する五関が可愛くて、つい膨らんでいる頬をつついてしまう。
空気の抜ける音とともに 「あうっ」 という声が聞こえて思わず微笑んだ。
「も~! 私で遊ばないで!」
ブンブンと両腕を振る五関。手を繋いでいるので俺の右手も自分の意志に反して振られる。
その様子を見て改めて手を繋いでいるという実感が湧く。
「あー……。そういえばなんで今日は髪型変えたんだ? 普段の髪型でも浴衣に合いそうだけど」
少し気恥ずかしくなって話題をふる。
俺の疑問を聞き、五関はパタパタしていた両腕を止めて少し俯く。
「……なんとなく、れいやっちはこの髪型が好きかなと思ったの」
「そうなのか? いつものポニーテールも好きだけど、今日の髪型も似合ってて好きだぞ」
「ほんと?? よかった……」
胸を撫で下ろす五関。そんなに不安だったならいつもの髪型にすればよかったのにと思うと同時に、なんで俺がハーフアップを好きだと思ったのか疑問を抱いた。昔そんな話したか?
―――あれ、そういえば事故にあった日に夢で見た女の子の髪型って……
「ハーフアップだったか……?」
「ん? どうしたの?」
五関に言われてハッと気付く。どうやら考えていたことが口に出ていたようだ。
だが、ここまで考えてあることに気がついた。もう少しで点と点が線になる感覚。
「あのさ。小学生のと 「どーーん!!!!」 ―――っ!」
言葉を遮る大きな音が届いたと同時に、体を内から叩いたような衝撃がくる。
先程まで暗かった空を一気に華やかにした。その正体は、言うまでもなく今日の主役、花火だ。
「わー綺麗な花火。……で、さっきなにか言ってなかった?」
「あ、えっと……なんだっけ?」
「なにそれー。しっかり」
「わるいわるい」
笑いながらも目線はしっかりと花火を捉えている五関。花火の衝撃で言いたかったことを忘れてしまったが、また思い出すだろうと思い、俺は目の前の眩い光を脳裏に焼き付けていく。
花火が打ち上がり始めて早40分経った。花火大会は45分までなので残り5分。現在は空に覆った煙を晴らすために一時休憩中。
「もう少しで終わりだよね。毎年最後が楽しみなんだよ~」
「そうか? なんか残りの花火全部打ち上げてやる! 感すごいんだが」
「もう! れいやっちは風情がないよ! まったくもぉ」
「風情て……。五関も花より団子派じゃなかったっけ?」
「それはそれ。これはこれです!」
「はいはい。すみませんでしたー」
そんなやり取りの最中、五関の方を見る。
五関は 「はい。は一回でしょー」 と言いながらまだ煙が残る空を見つめていて俺の視線に気づいていない。
俺には風情がないらしいが、綺麗なものは綺麗と思う感性はしっかり身についている。
例えば、今俺の横にいる
「あ! 煙晴れったぽい! 最後のくるよー」
そう言ってキラキラした目で花火を待つ君が―――
「綺麗だ」
一瞬の静寂のあと、花火の音が場を支配する。
どうやら花火に集中して俺の独り言は聞こえなかったようだ。
俺は安堵と少し残念な気持ちを残したが、最後の花火を満喫することにした。
その横で頬を染め、俺を見ていた五関には気づかなかった。
今年の花火は例年より騒がしく、記憶に残る花火となった。
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