ルート1 エンカウント
五関と遊びに行ってから1週間が過ぎ、今日は8月2日。
約束の花火大会まであと3日で、五関の誕生日まであと8日となった。その誕生日プレゼントを買うため、再び複合商業施設に訪れていた。プレゼントの目安は付いているので真っ先に目的の店に向かった。
「あれ、須藤じゃん。まさか本当に夏休み中に会うなんてね」
「おー八重野。終業式以来だな」
声をかけてくれたのは、何かしらのバンド名ロゴが描かれているTシャツと所々白い足が見えるダメージジーンズを身にまとった八重野だった。
「久しぶりー。で、どうしたの? イヤフォン買いに来た?」
「そうそう。八重野も?」
「私も。もう買ったけど」
目的の店とは、1週間前に五関が最後までにらめっこしていたイヤフォン店だ。
「相変わらず暇そうな顔してんね。そういえば部活の予定って結局無いの? 終業式に呼び出されてたやつ」
「あー、あれね。昨日だったけど行かなかったわ」
「え! そうなの? ただでさえ活動のない漫研の予定サボるなんて不良だねー」
「うっ……。返す言葉もございません」
五関の件があったので、女の子がいる予定は参加しないようにした。生き返ったらちゃんと参加する、と自分に言い訳をして断りの連絡を入れたときの罪悪感が再び胸の中に顔を出した。
「ま、なんか事情があったんだろうし深堀りはやめとくよ。それよりイヤフォン何買うか決めてんの? もしよかったらこの八重野様がオススメを教えてあげようか?」
目の前にいた八重野が両手を後ろに組んで、前屈みで俺の顔を覗いてそう言ってきた。Tシャツの隙間から覗く谷間に目を奪われそうになるが、すぐに目を逸らした。
「っ! あ、ありがと。でももう買うのは決めてるから」
これ、とガラスケースに入っているイヤフォンを指差す。
「これか! 須藤にしてはなかなかセンス良いね! 音質良いってよく聞くよ。買ったら私にもそのイヤフォンで聴かせてね!」
それだけ言うと八重野は、私もう帰るから。じゃ! と言って店を出ていった。
嵐のように一瞬だったな、と八重野の後ろ姿を見送った。
「やっぱり結構いい値段したな……。先月の給料半分持っていかれた……」
お目当てのイヤフォンを買って帰路についていた。外は8月ということもあって暑かったが、俺の財布の中は真冬のように寒かった。
「イフルートだからまだ良かったけど……って、あれ?」
家がもう少しで見えるといった所でなにかの違和感を感じた。
違和感はどうやら家の方からだった。歩くペースを早歩きに切り替える。
家が見えてくると同時に家の近くの電柱から俺の家を覗いている女性らしき姿を捉える。
どうやら違和感の正体はあの女性らしい。ハットを被り、この暑い中ロングコートというのは怪しい以外の何物でもない。
なぜ姿が見えない状態で違和感を覚えたのかわからないが、勇気を出して声をかけてみることにした。
「あの……この家になにか用ですか?」
もうバレているかもしれないが、万が一のため自分の家とバレないように尋ねる。
女性が振り返る。顔を見た瞬間 「あ!」 と声が出てしまった。
「よ! 順調そうだね。『須藤零矢』」
「お前は……神!?」
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