ルート1 五関 絢②
謎のパンケーキ早食いを終えた俺達は本日最後の目的地である複合商業施設に来ていた。
ここは地元では1番大きな施設で、友達との遊びやカップル同士のデートはもちろん、家族で訪れる人達も多く、地元の人でこの施設に来たことがない人はいないと言っても過言では無いほど重宝されている施設だ。
「ひっさしぶりに来たけど、やっぱりここはテンション上がるよね~!」
「そうなのか? なんか意外だな。いつぶりに来たんだ?」
「えーと、インナー入れた後に寄ったのが最後だから……3ヶ月ぶりかな!」
「……そういえば詳しく聞いたことなかったけど、なんでインナー入れたんだ?」
今年の4月、赤のインナーカラーを入れた五関と初めて会ったときはあまり触れなかったので、カラーを入れた理由を知らなかった。
「なんで入れたか……? うーん……なんとなく?」
「……そんな気はしたよ」
バレてたかーと笑顔になる五関。五関は昔から 『思い立てば即行動』 を具現化したような女の子だった。そこが危なっかしくもあり、魅力でもあるのだが。
「今日は何を買いに来たんだ? 何か欲しい物があったからここを選んだんじゃないのか?」
「おぉーそうだった! 実は2つあるんだよ! イヤフォンと手帳と可愛いヘアゴム!」
「2つじゃねーじゃん!」
「あれ? ……あ、ホントだ!」
自分の欲しい物を指で数えて3つだとわかって照れる素振りをする五関。これは天然で片付けていいのか? と疑問を抱くが、昔からこの調子なので今更注意することはせず、指摘だけで留めた。
「んじゃ、買いに行くかー」
「おー!」
俺達は2人並んで買い物を始めた。
「む~。イヤフォン買えなかったぁ。次のお給料まで我慢しよ……」
「欲しい物妥協したくないもんな。……ただ1時間イヤフォンとにらめっこは今後やめとけ。店員さん困ってたぞ」
「だって欲しかったんだもーん」
駅までの帰り道、今日の買い物を振り返った。
手帳、ヘアゴムと順調に買い物を続け、最後にイヤフォンを見に行った。そこで五関がひとつのイヤフォンに一目惚れ。しかし思ったより値段が高く、現在の手持ちでは買えないことが発覚。そこから諦めきれず、ガラスケースに入っているイヤフォンをあらゆる角度から凝視している五関と、なんと声をかけていいか困る店員さんという構図が1時間にもかけて繰り広げられた。
俺は知り合いと思われたくなくて、にらめっこ開始10分で別の場所に移動していた。50分後に戻ってきたときもその構図は変わっていなかったので、店員さんには悪いことをしたと思っている。
「そういえば、れいやっちも袋持ってるけど何買ったの?」
「これか? これはヘアピンだよ。ヘアゴム買ってた店で良いの見つけたから買ったんだ」
「え……? れいやっちヘアピンするの……?」
「俺じゃねぇ! 京香にあげるんだよ! お土産楽しみにしてるって言ってたから」
ピクッと五関の瞼が動いた気がした。
「きょかちゃん今日のこと知ってるんだ」
「ああ、行く前にどこ行くか聞かれたから答えた。五関と行ってることも知ってるぞ」
そっか。とうわ言のように言う五関の雰囲気が先程までと違うように感じた。
「あ、私学校に忘れ物取りに行くんだった! だからここで解散ってことでもいい? ごめんね」
「ん? 忘れ物なら俺も一緒に行くぞ?」
「大丈夫! 生徒じゃない人が入るのはダメだと思うし。それに……きょかちゃんが待ってるでしょ?」
気のせいか、目に少し涙が溜まっているように見える。
「急にどうした五関……? 大丈夫か?」
「へ? なになに? どうしたの?? 大丈夫に決まってるじゃん! 私は絢様だよ~」
無理に笑っているようにしか見えない五関にかける言葉を探す。こうなってしまったの俺のせいだろうし、こうゆう時の五関は何を言っても聞かないことは知っている。どうすれば……―――そうだ!
「わかった、今日は解散しよう。その代わり8月5日の夜、予定を開けといてくれないか?」
「8月5日? それって―――」
「そう。花火大会の日。一緒に花火を見てほしい? ……だめか?」
「嬉しい……すごく嬉しい……。けど、きょかちゃんと一緒に見なくていいの? それに……
―――なるみんのことはもう諦めたの?」
『なるみん』 と言われてハッとする。
なるみんとは、五関が二条さんにつけたあだ名だ。
高校は違うが、中学は同じだったので五関はもちろん二条さんのことを知っている。さらに、俺が二条さんを好きなことも知っている。なぜ知っているのか? それは―――
俺が中学時代に二条さんが好きと五関に相談したから、だ。
「……二条さんのことはもう諦めた」
嘘をついた。胸が痛い。俺は今、どんな顔をしているのだろう? その答えは、五関の悲しげな表情が物語っている気がした。
「そう……なんだ。あんなに好きだったのに。変わっちゃうんだね。人の心って」
「……そうだな」
「…………変わらない気持ちもあるけどね」
辛うじて聞こえた言葉の意味を、俺は理解することができなかった。
それよりも、生き返るためとはいえ幼馴染に嘘をついてしまったこと、幼馴染にこんな悲しい表情をさせてしまったことへの罪悪感が頭の中を支配する。
「でも、これはチャンスだよね? 私にもようやく舞い込んできたチャンス……。よし!」
先程まで暗い顔をしていた五関の表情が明るくなる。
「行こう! 花火大会! 今更やっぱりなし。なんて聞きつけないからね~」
「お、おう! そんなの言うわけないだろ!」
「えへへ、じゃあ楽しみにしてるね? また集合場所とか決めてこ~」
バイバーイと手を降ってから背を向けて学校に向かった五関。その背中から哀愁は感じなかった。それどころかスキップをしているようにも見える。
「女の子には敵わねぇ……」
そう強く思う後ろ姿だった。
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