表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Piero and Cats  作者: よた
9/9

9


 数日後、ジャックは建設現場で働いていた。これが新しいジャックの生きるための仕事だった。


 彼は大きな綿の入った袋を担いでいた。綿の入った袋は、家の中を温かくしてくれるのである。


 トラックに積まれた、綿の入った袋をすべて運び終わると、また次のトラックがやってきた。今度は重たい壁だった。


 ジャックはトラックから降ろされた壁を持ち上げると、壁のない家の中に入って行って、壁をはめ込んでいく。――バチンッ、と大きな音が鳴ると、またトラックの側へいく。


 一日中物を運んで、壁をはめ続けた。それはまるで、プラモデルを組み立てているみたいだった。ジャックは家がすこしずつ出来て行く様子がおもしろかったので、どんどん物を運んでいった。


 建設現場で働いている人達も、はじめのうちは、声をだして、息を合わせ、建材をどんどん運んでいったが、だんだんと皆、飽きてきてしまうのだった。


 仕事が終わったあと、冷たくなった手を脇に挟んで、ジャックはいったん家に戻った。この日は、雪が降らなかったので、彼は、道具をもって、いつものように公園へ向かうのだった。


 公園に向かう途中、また家を抜け出したパディシャと会った。パディシャは、大道芸の準備をしているジャックのところへ歩いて来て、声をかけるのだった。


「おい、また会ったな」パディシャは公園を歩いているジャックに声をかけた。


「やあ、久しぶり」ジャックは重たい道具を担ぎながら言った。


「元気か」


「おかげさまで」


「ふん……」猫は不満そうにジャックの前を歩いた。「なぁ……なんで、あのとき帰っちゃったんだよ」


「あの時って?」


「おいらとチャーリーのところへ行った時だよ」


「あぁ、そのことか」


「なんで帰っちゃったの?」


「なんでって言われてもな……」


「お願いすればチャーリーの弟子になれた、って言ってんだよ」


「チャーリーの弟子?……まぁ、それも悪くはないけど、ぼくはいいよ」


「そうなのか?……」


「うん……」


 パディシャは立ち止って、荷物を運ぶ彼の後ろ姿をじっと眺めていた。


 ジャックはいつもの広場に荷物を置くと、ロープをだして、舞台をつくった。すると彼のお客さんが集まってきて、彼が曲芸をはじめると、まばらな拍手がおこるのだった。


おしまい

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ