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Piero and Cats  作者: よた
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6


 アパルトマンの外に出ると、雪はさらに大粒に変わっていた。冷たい風がびゅーびゅーと吹いて、白い息がすぐにどこかへいってしまうのだった。


《どうして出て行っちゃったんだろうな……ぼくは……》


 ジャックは後悔しながら、家へと向かう通り道にある、いつもの公園へ向かった。


 広い公園には誰もいなかった。アスファルトの歩道や芝生は、境目がわからなくなるくらい真っ白になっていて、街灯に照らされた白樺の木にも雪が積もっていた。街灯りで星はほとんど見えなかったが、東の空に輝くシリウスだけはしっかりと眺めることができた。


 ジャックが立ち止まって星を眺めていると、――ザ、ザ、ザ、ザ……、という音が聞こえてきた。彼はなんだろうか、と思って、白樺が並ぶ道を眺めた。すると、前から長い髪を風になびかせた小さな子供が歩いてきた。毛糸の帽子とマフラーで顔をかくして、ダッフルコートを着ていた。


 友達の家で遊んでいる間に日が沈んでしまったのだろうか、とジャックは思って、その子供の脇を通り過ぎようとした。すると、子供がジャックに声を掛けてきた。


「ねぇ、あなた、ちょっといいかしら?」子供はマフラーの位置を直しながら言った。


「ぼくかい?」


「えぇ、あなたしかいないじゃない。あなたに聞きたいことがあるの」


 ジャックは辺りを見渡した。


「たしかに、そうだね。それで?」


「わたしね、ラッキーを探してるの」


「ラッキー? 犬か何か?」


「いいえ、ラッキーはね、どこにでもいるんだけど、見つけようとしてもなかなか見つからないの、姿形もいつも違ってね。自分の目では見れないときまであってね、だからあなたに聞いてるのよ、あなたの目なら、わたしのラッキーを見かけたかもしれないでしょ?」


「きみが言ってるラッキーって? せめてどんな特徴か言ってもらわないと……」


「わからないわ、とにかくラッキーはラッキーなのよ」


「うーん……ごめんね……ぼくはちからになれないよ」


「あら、そーう? いいわ、ありがとー」


「どういたしまして、それときみ」


「なーに?」


「なるべく早く家に帰るんだよ」


「うん、わかった! じゃーね」


「バイバイ」


 子供は彼を通り過ぎると大声で言った。


 「ラッキー、おーい、ラッキー、出ておいでー」


 ジャックは彼女が見えなくなるまで、ときどき振り返って確認するのだった。


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