暴露
「まさか、聖教会の中にこんな形で入ることになるとは。」
カイルは呟く。
この世界で戦士を志す者はまず聖教会に入会することを目指す。この世界の最前線で戦っている組織であり、限られた才を持つものしか入会できない。
カイルは先希とともに聖教会の奥に進む、2人は先希のかけた迷彩魔法により、周りからは認識されない。
それにしても先希はいったい何者なんであろうか。この世界では希少な有彩色である群青の魔分を操り、多彩な魔法も覚えている。この聖教会の聖騎士であってもちっぽけに思えるほどの存在である。しかし、むこうの世界では支配者である秘密結社Zの実験体であると言っており、力はまるで感じられない。それどころか元気な様子を全く見たことがない。まだ、出会ってからそこまで時間がたってないが謎多い存在である。
「これから見るものは少しショックなものかもしれないよ。」
先希はささやく。こちらに気を使っているようだ。いつの間にか大きな扉の前に2人は立っていた。
「もうとっくに開き直っている。かまわないさ。」
カイルはもともとは堅実で努力家な小心者ではあったが、最近の出来事により度胸がついてきたようだ。
先希が壁抜けの魔法を詠唱し、2人が扉を超えると待っていたのは聖騎士ではなく人の形をしていないどす黒い魔分を放つ獣のようなもの。いわゆる魔界からの侵略者であった。
「なんなんだこれは。」
カイルは叫ぶ。
「おい、いきなりあってそれは失礼じゃねえか。小僧。」
侵略者はこちらに通信魔法を送ってくる。口はないので話せないようだ。こちらに向けられてくる殺気によりカイルはふらつく。
「簡単に説明すると聖教会はとっくの昔に侵略者に降伏してるの。」
先希は淡々と説明を始める。




