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自己満足
「あともう少しだったのに。」
元の世界に戻されたカイルは悔しがる。目の前にあの世界のすべての元凶がいた。もう少しでとどめがさせそうだった。
また、無力な世界に戻された絶望を感じていた。1回目はさほど感じていなかったが自身の心が歪んでいくのが分かった。目の前には涙ぐんでいる先希の姿があった。
「どうしてこんなにつらそうにして。わからないよ。」
「私にもわからない。ただどうしても自分で変えたかった。」
上手く言葉では言い表せなかった。状況をすべて把握しているわけではないので当然ではあるが。
あの世界では進みすぎた文明により人類の歴史は終焉を迎えようとしていた。そこで秘密結社Zは徹底した管理体制を敷き、世界の延命を図ろうとしていた。人を道具としか扱わない世界を許せない自分がいた。
「本当は時間が必要だけどこのままでは断罪されるのを待つだけ。私もできることを一生懸命するよ。ついてこれる?」
カイルは頷くと先希は転移魔法の詠唱を始める。




