希望
アリアが静止空間に引き戻された後、その体に先希の魂が宿った。全てはアリアの計らいであった。先希の死亡が確定する直前に自分が乗り移った体を媒介にし、仮死状態でつなぎ留める。全能に近い能力群をもって行われる芸当である。しかし、その力をもってしても静止空間からは逃れられないことをわかっており僅かな思い出と共に地獄のような世界に戻った。
先希は意識が戻ると同時にアリアから記憶を引き継ぎ現状を把握した。先希はカイルが最後の力を振り絞り、生き残る手段をとったことを察した。カイルはどこかの世界で必ず生きている。
先希がこの場をあとにしようとするとシンが立ちはだかる。
「奴らはこの世界を憎んでいた。だからアリアはその危険性を直接確認し、排除した。貴様にはこの世界を支え、希望となる役割がある。」
「そんなの知ったことか。数々の絶望に立ち向かい、1つの世界を救った私の英雄を救えない世界なんて不愉快なだけだ。」
先希は冷静に諭すシンに対し、怒りを抑えながらその場を後にする。
「我は間違っていたようだ。我の望みは絶たれた。希望を持ち続けられるものにどのような策も通じないものだ。」
シンの思惑ではカイルを失った先希が心を失い、王としてこの世界を導くシステムとなることを期待していたがそれが外れ、落胆した。
かすかに感じ取れるカイルの意思を頼りに先希は数々の世界を旅することとなった。
ー《END》ー




