希望
カイルは意識が移る瞬間を確認する。それは一瞬ではあったが枷が外れていく感覚であった。新しい環境に驚くほど順応していることに驚く。そして、自分の目の前に1人の中年がいることに気付く。
「私は敵ではない。そいつを連れてついてきたまえ。」
中年は意識なく横たわる先希を指さす。
カイルは黒い物体から救出した先希を抱え中年とともに屋上に向かう。
屋上には大きな鉄の塊がありその扉の中に足を踏み入れる。
その中は球体であり扉が閉まると。重力が感じられなくなり体が浮かび上がるとともに上下の感覚がなくなった。
「申し遅れたね。私は谷山。想定通りの活躍だったな。」
「あなたは何か知ってるのか?」
「何から話したらよいのやら。とにかく君たちは秘密結社Zに命を狙われている。」
谷山は逆さまになりながら話す。
カイルは今までのことを振り返る。先ほど倒した黒づくめたちが秘密結社の一員なのであろうか。そして、閉じ込められてた先希が何らかのこの状況のカギを握っているに違いないと思う。カイルが先希の方に目を向けると目を覚ました。
「私はこの世界では秘密結社Zの実験体。失敗作ではあるけど。」
先希の顔色は青ざめている。カイルは自身の魔分を先希に送り込んでみる。そうすると先希は少し良くなったようで微笑む。
「私は君たちを助けたい。しかしここらでエネルギー切れのようだ。」
谷山は残念そうに呟く。
カイルは重力が戻るのを感じる。




