手駒
カイルはアランの屋敷で数日を過ごした。アランの屋敷はそこそこ大きく。使用人が数名いて身の世話をしてくれたりと至れり尽くせりであった。そして言葉が話せない呪いもアランがあっさり解いてしまった。
カイルは疲れもとれたので本題について切り出すこととした。
「私がいない間に何が起こったんですか。」
「あの戦いの後から魔界からの侵略者の討伐に明け暮れていた。それがかつての仲間に報いることでもあったからな。」
アランは話し始める。
「だが、依然として世の中はよくならなかった。貴族たちやお前たちも知っている宗教団体の中に裏切り者がいたからだ。」
「さすがにこの私でも内部からの腐敗は止められなかった。しかし、元滅びの魔女が王の座に君臨し、世の中は一変した。」
「奴は貴族制を廃止し、納税に苦しんでいた小市民を解放した。そして、防衛と統治を少人数で行うことで市民の負担が減り生活が豊かになった。」
「そんなことが可能でしょうか。」
カイルは貴族出身のためこのような状況になっていたことが信じられなかった。王のみでこの広い全土を統治できるはずがないと思っていた。
「奴には「秩序」をつかさどる天井人シンが協力している。貴族の反乱も奴の手先王ノ手駒によって一瞬で粛清された。」
「そして、この私もその手駒として任命された。お前がこの屋敷を出ようとするなら相手しよう。」
いつの間に屋敷は変化し大きな修練場のように広い空間となっていた。どうやら逃げ場はないようだ。




