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先希
苦しい。苦しい。苦しい。
先希の全身に悪意が巡り、痙攣する。
先希はとてもつらい状況に陥ったが後悔はなかった。生まれたときから出来損ないの体であり、ずっともがき苦しんでいた。自分が生まれた意味も分からず何度も自殺を試みたがなぜかできなかった。
カイルに出会ってからやっと希望が見え出したのだ。それが謀であったとしても彼のまっすぐさに心動かされたのは間違いなかった。そして今も、上位種たちの手の平で踊っているだけなのかもしれないがそんなことはどうだってよかった。
悪意がだんだんなじんできたようであった。もともと、善意などもっていないので相性はよかったのかもしれない。うまく制御できるかは不明だが動ければどうだってよかった。
先希は目を覚まし、谷山から降ろしてもらう。
「とびらはひらいといたよー。」
いのりはかわいらしい声で先希に話しかける。先希の目の前には異空間につながる扉があった。
先希はためらいなく扉に飛び込んだ。




