魔女
カイルは目を覚ますと元居た世界の転移する前の場所に戻っていることに気づいた。先ほどの出来事は夢かと思ったがどうやら周りの様子を確認するとあれは夢ではないことを確信した。
自身を別の世界にいざなってくれたNというものは姿を消しており。代わりに白衣を着た青白い髪の少女がいた。
「私は先希。あっちでは助けてくれてありがとう。」
「どういたしまして。私はカイル。ところで状況が呑み込めないんだがなにか知ってるか?」
「私もうまくは説明できないけどこれから私とあなたは2つの世界を行き来するの。そしてこの世界ではあなたは魔女である私を呼びだしたことで聖教会を敵に回した。」
カイルは遠くから白装束の集団が近づいているのに気付いた。恐らく聖教会の聖騎士たちである。
聖教会とはこの世界で最大勢力の宗教団体である。そして、魔界からの侵略者たちを撃退する戦力を最も派遣しているため今や貴族をも凌駕する特権階級となっている。
確かに先希の風貌は古くから伝わる童話で登場する魔女に似ている。しかし、特に何も教理に違反することは特に行っていないはずである。
「おい。災いをもたらす魔女を召還した不届きものよ。おとなしく連行されよ。」
聖騎士団の隊長らしき人物が声を発する。
「勘違いだと思うんですが。」
「なにをたわ言を。大司教様の予言どおり災いの群青の魔分を宿すものが現れたではないか。」
隊長らしき人物は先希を指さす。どうやら話は通じないらしい。
聖騎士たちがこちらに近づいてくる。こちらの世界では見習いですらないカイルは無力に等しく目をつむることしかできなかった。
「この人に触れるのは許さないんだけど。」
カイルが目を開けると辺りには銀世界が広がっており聖騎士たちは動きを止めていた。
「おのれ、魔女よ大人しくつかまれ。」
隊長らしき人物は必死に足を動かそうとするが足が地面から張り付いて離れない。
「あんまり動くとくずれるよ。」
先希は冷たく言い放つ。
聖騎士たちの手足が崩れだす。聖騎士たちは悲鳴を上げてその場に倒れた。
「おのれ。」
隊長らしき人物もその場に倒れこむ。
次の瞬間カイルは銀世界がもとに戻っていくのを目の当たりにした。聖騎士たちは意識を失って倒れたままであるが外傷はない。
「さっきのは?」
「ただの幻覚。それよりまた波が来る。今度はあなたの出番。」
先希の言葉の意味はよく分からなかったがカイルはとりあえず頷く。




