改変
谷山は先希を背負い、念のために備えてあるランプを片手に裏口から近くの洞窟に逃走していた。このあたりの地理には詳しく分かれ道の多いこの洞窟なら逃げ切れる可能性があると感じた。谷山はカイルの足止めを無駄にしたくない一心で足を速めた。
しかし、広い箇所に出るとフードを被った浦川七海と布で全身をぐるぐる巻きにしている小さな子供がいた。辺りは魔法の類で明るく照らされていた。
谷山は絶望し、膝をつく。目をつむりながらとどめを刺されるのを待った。
「特に逃げる必要がないってことを言いに来ただけだけど。」
「嘘だ。私はずっと秘密結社Zに敵対してたものだ。大体、カイルはやられたではないか。」
「あの馬鹿にはムカついただけ。それより、背負ってる実験体を返してくれない?」
浦川七海は谷山に近づく。
「カイルはどうなったのですか。」
先希は、浦川七海に尋ねる。
「さあ、今頃ひどい目にあってるんじゃないの。とっくに用済みだし。」
「お願いします。どうかカイルを助けてください。」
「あたしにそんな義理ないけど。いのりちゃん。どうしよう。」
浦川七海は小さな子供の方を見る。
「ちょっとくらいならいいよー。」
「軽。あなたのちょっとはちょっとじゃすまないでしょ。」
浦川七海はいのりに突っ込みを入れる。
「まあいのりちゃんがそういうならちょっと助けましょうか。」
浦川七海は手のひらにどす黒い塊を出す。
「これはかつて現実に暮らしていた人たちの悪意の塊。副作用は大きいけど。使い方は任せましょう。」
悪意の塊からとてつもない力が溢れていることが感じられた。その塊は宙を舞い、谷山に背負われている先希の中に入り込んでいった。
先希はその力をもとに自身の出来損ないの体を造り変えた。




