怠惰
カイルと先希は聖教会の広間にて聖騎士たちに包囲されていた。その数はおおよそ50を超えていた。
先希は先ほどの1戦で気を失ってその場に倒れこんでいた。カイルは手に持っている剣を構えるがこの状況を打破できる手段を持ち合わせていなかった。
「禁忌に触れた者を生かしておけぬ。すぐさま始末せよ。」
聖騎士長ラークは号令をかける。
「悪いけどそれはさせられないんだよね。」
取り囲んでいた聖騎士の一人が陣形から離れる。
「何をしている。落ちこぼれのターニャよ。気でも触れたか。」
「おかしいのはあんたたちなのに。平和ボケもいい加減にしたほうがいい。」
前衛の聖騎士たちが次々に倒れる。ターニャの独自職能力超次元切断の力である。
この世界には魔分が満ちており、想像さえ固めてしまえば指一本動かさずとも敵を倒すことが可能である。ターニャはそれを「才」ではなく実戦形式を伴う試行錯誤によって実現した。
「全部みねうち。さすがに後味が悪いもの。」
力の差を悟ったのか聖騎士達は次々と逃走した。取り残された聖騎士長ラークが叫ぶ。
「戦う相手が違うだろう。この2人を始末しないと世界が滅ぶぞ。」
「こんな悲惨な状況なのに何もできないあんたたちが居座っている世界よりまし。」
ターニャが睨みつけると聖騎士長ラークは失神した。
「助けて頂いて感謝する。」
カイルは頭を下げる。
「お礼はボスに言ってあげて。いまから連れて行くから。」
ターニャは転移魔法を唱える。




