虹
先希が身構えると目の前にローブを身にまとった青年が現れた。
「初めまして。私はアラン。元々勇者をやっていたものだ。」
「ご丁寧に。初めまして。私は先希。いきなり現れて何の用かしら。」
「君のやり方は世界に混乱を招く。ここで倒させてもらう。」
アランは剣を抜く。先希は群青の魔分でアランを包む。しかし、アランはその魔分を自身の魔分で中和し、無力化する。どうやら幻覚の類は通用しないようだ。
「あれは虹色の魔分。嘘でしょ。」
先希は一瞬驚くが、すぐに剣を精製し、身構える。
アランは瞬時にカイルに距離を詰め、切りかかる。それに反応し先希は間に入りアランの剣を自身の剣でたたき折る。
「元勇者という割には随分卑怯ね。」
「まさか、想像上最強の剣技を使えるとは。」
アランは虹色の魔分を針状にして2人に向かって大量に飛ばした。
先希は想像上最強の盾を精製しすべて防ぎきる。
先希が使用した能力はかつてアランが使用していたものであるが勇者職であるからといって必ずしも習得できる能力ではない。ましては能力敵情視察により先希の職は魔導士となっている。まるで状況に応じて最適な能力を使い分けているようだ。まったく危険な戦闘兵器である。
「厄介ではあるが君はただの偽物だ。」
アランはそう言い放つと世界干渉系能力歴戦の英雄譚を展開する。世界干渉系能力とは独自能力の中でも特に世界の法則そのものに干渉できるものである。
「ここではいままで戦ったものすべての力を上乗せできる。」
アランが手を振ると強大な力の渦が発生し、先希を盾ごと吹き飛ばす。
「先希ー!」
カイルが倒れた先希を見て叫ぶ。カイルは自分の無力さに絶望する。
「さてとどめを刺すか。」
アランが手をかざす。
「私は負けない。大切なものを全部守る。」
先希はよろよろと立ち上がる。その眼からは凄まじい闘志を感じられる。何が彼女をそこまで駆り立てるのか、アランは理解ができなかった。
先希は最後の力を振り絞り、世界干渉系能力理想郷を展開する。
アランは手を振り下ろそうとするが手が動かないことに気づく。何が起こったかわかななかったが何かしらの影響を受けているのは確かであった。
しかし、先希が意識を失い、倒れるとアランを縛っていた力は消え去った。しかし、アランはもう2人にとどめを刺す気にはなれなかった。
「まさか、偽物の君から本物以上のものを感じ取れるとは思わなかった。あの魔物は退治させてもらうけどここで退散としよう。」
アランはその場を立ち去った。




