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エターナル・ワールド・ストーリー  作者: 蒼雲騎龍
K編
99/222

ウィリアム続編・新たなる魔域 5

ウィリアム続編~新たなる魔域へ




巨大な大岩の下に潜る様な形で、地下に入り込む様な洞窟が作られいた。 其処は、魔法の結界に護られていた。 かのスカイスクレイバーの司祭リルマリアが、仲間を休める為にと作った結界である。 岩の自然洞だが、中々広い洞窟内で。 小さく焚き火を熾したウィリアム。


洞窟内に、皆がそれぞれに焚き火を囲む形で腰を下ろした。 夏の入りでも、山はやや冷えた。 


「ふぅぅ・・。 久しぶりに、大魔法の入り口を使こうたわえ」


ラングドンは、疲労が滲む顔を微笑ませる。


「すいません。 お疲れさせまして」


ウィリアムが謝ると。


「いやいや、リーダーの薬で身体が元に戻った御蔭さ。 久々に、こう~燃える様な気持ちの昂ぶりを感じて、出来るかと思うた。 まだまだ、若いモンに負けんぞ」


ラングドンは、快心の笑みを出した。


干し肉を炙るロイムは、洞窟を見回して。


「でも、何でこの洞窟って安全なの? リルマリアさんが結界張ったのって、3年近く前なんでしょ?」


それには、クローリアが応える。


「先程、私が結界強化の魔法を遣いましたの。 この洞窟は、リルマリア様が張った後も、度々他の方々に利用されたのでしょう。 立ち寄った僧侶が魔力を注いで、こうして結界を維持させています」


アクトルは、便利だと感心し。


「僧侶って、こんな事も出来るのか。 大したものだな」


しかし、クローリアは首を左右に振ると。


「いえいえ、僧侶の誰でも出来る事では有りません。 普通、結界を張るのは、中等魔法が遣える方なら可能です。 ですが、その継続期間は魔力や信仰心などによりけりです。 フィリアーナ様の御身を模る何も無いこの場所で、他の僧侶の魔力を注がれるだけで数年も結界を保たせるなど・・。 それこそ、大司祭でもなければ難しいと思います」


横に成って乾燥したパンを齧るスティールは、


「さぁ~すがに歩く伝説。 遣る事も、残す物も半端無いね」


と、他人事である。


しかし、此処でリネットは、ウィリアムにズバリ。 


「リーダー、アンタも戦えるんだね」


顔色も変えぬウィリアムは、水を少し含みながら。


「・・当然でしょ? 何もしない学者なんて、居ても居なくても変わらない様な足手纏いですよ。 ま、弱ったオーク2体ぐらいなら、ナントカ」


スティールとアクトルは、見合って食えないと笑い合う。


コウモグラに頬や手の甲を引掻かれ、クローリアに傷を塞いで貰ったリネット。 ウィリアムの素っ気無い言い方に、難とも不満げな様子であり。 食事をしたりする傍ら、殆ど塞がった傷痕に指を当てていた。


だが。


カタニスは・・。


「それでも、大したものだ。 オークの死体を見たが、外傷が殆ど無い。 眉間にと、こめかみに刺し傷らしきものが有っただけだ。 あれは・・格闘の技かい?」


と、火を弄って薪を入れる。


細かい傷痕に、痒み止めを塗り込むマラザーフも。


「そぉンだよ~。 ラングドンさんがあのデカいの倒しちゅう~間に、もうオークは死んでたダス。 随分と早業な気がするダ~スよ」


流石に、ブレンダが見込んで揃えた面子である。 何が凄いかくらいは、容易に感じ取る実力を持っている様だ。


だが、ウィリアム本人はと云うと・・、シレ~っと緩い食事をするのみ。 暗殺闘武の事を云う気は無い様だ。 見られたらしょうがないのだろうが、自分から言う気は無いのだろう。


ウィリアムは、幅が細く厚みも薄いカタールダガーと云う反りを持った短剣を両手に、踵の具足から飛び出す短い刃を用い。 向かって来たオークを、直に倒していた。 ラングドンの魔法がド派手だけだった為に、誰にもその様子を見られなかった・・。 そんな処である。


ウィリアムは、虫除けの粉を洞窟の入り口に撒いて有るので、余計な心配は必要無いと思い。


「ふぁ~。 さて、疲れたので寝ますかね」


と、荷物の何かを枕にと引き寄せる。


逃げられたと思う皆は、それぞれの思い思いにする。


カタニスは、今日も一応目に付いた樹香などはウィリアムと採取したので、その仕分けや、保存をして。


リネットやマラザーフは、もう休む構えだ。


ロイムとアクトルやスティールは下らない話をして笑うし。 クローリアは、結界に相当魔力を注ぎ込んだ様子で、ラングドンと同様に眠たそうにしている。 夜の入り頃で、夏とは云えど朝まではたっぶりと有る。


「あ、剣は大丈夫かな?」


と、スティールが自分の剣を見れば。


「・・・」


黙りながら、リネットもスピアを確かめたり。


アクトルがマラザーフに。


「その剣、随分と変わってるな」


「そうダスね。 自分用に特注したものダス」


と、話し合ったり。


晴れた夜は、半月を夜空に灯していた。




                      ★




朝に成り。


目覚めたクローリアは、起き出しているリネットやマラザーフなどを見てから。


「あら・・、ウィリアムさんは?」


リネットは、首を傾げ。


「今起きた処だが、見当たらない」


目だけ覚ましてたアクトルは、


「さっき出て行ったなぁ。 真夜中に、外の離れた場所が騒がしかった。 モンスターの有無でも見に行ったんじゃないか?」


マラザーフは、ギョッとして。


「ひ・一人で・・ダスかぁ?」


「逃げるだけなら、一人の方が気楽だろう」


話し声で目を覚ましたラングドンは、


「どうした?」


と、寝ぼけ眼を擦る。


クローリアがウィリアム不在を云おうとすると。


「戻りました」


と、ウィリアムの声が聞こえて来る。


アクトルは、横に成った体勢から。


「おう。 どうだった~?」


火の傍に来たウィリアム。


「随分モンスター来てたみたいですね」


「やっぱり、なぁ~んか唸る声してたからな」


「皆さんの倒したコウモグラ、もう千切れた翼膜や遺体の一部しか残ってませんでしたよ」


「ほ~。 オークは?」


「血の跡のみですね」


「少しは、腹が膨れたか?」


「一部は・・。 死体や血の臭いが残ってますから、新手が来ないウチに散策へ出た方がイイですよ。 早くしないと、明日の午後とかには雨も降るかもしれません。 何か、空気が随分と潤んでる」


「そか。 最低でも、峡谷の散策は、雨までに終わらせたいな」


「はい」


其処で、スティールが顔を起こし。


「ウィリアム・・」


と、神妙な顔で名前を呼ぶ。


アクトル以外は、何事かとスティールを見た。


ウィリアムは、淡々とした何時もの声で。


「はい?」


と、返すと・・。


スティールは、真剣にウィリアムを見ると。


「・・スゲ~腕が痒いっ! 薬くれぇぇぇぇーーーっ!!!」


聞いたウィリアムは、仕方無さそうに荷物に向かい。


「そんなに量塗っても、効きませんよ。 患部を、キチンとキレイにしないからですよ」


「どーでもい~ってっ!! 塗ってくれいっ!!」


ロイムは、その場にコテンと転び。


「なんで・・そんなに真剣に言うのさぁ~」


クローリアは、またバカが発症したと目を細める。


一時加入の4人は、ポカ~ンとして黙っていた。


ウィリアムの面倒見の良さに、イイ年したスティールが甘えている様なものである。 其処に起きたアクトルが横槍を入れ、ロイムがスティールを言葉で突っつく。 呆れたクローリアが無視をする、何時ものチームが此処に居る。


一体感が在る・・。 見ている4人は、そう思えた。 自分達が思う無駄な緊張感が無い。 5人が、お互いに信頼を持ち合っている証なのかも知れない。


さて。 食事を終えて。


「では、此処に今夜も泊まりますから。 残しても構わない物は、置いても構いませんよ」


ウィリアムは、そうだけ言って洞窟の外に出た。


アクトルは、余計な食料をシッカリ布に包んで置くし。


ロイムは、パンツのスペアを持っていくかどうかを悩んで、スティールにからかわれる。


リネットとクローリアは、無用な物を確かめ合って同じ袋に入れて置いた。


皆が出るのを待っていたウィリアムは、カタニスの案内で森林峡谷の裏側を行く自然洞に入った。


「なるほど・・これが・・・」


黒々とした光沢を窺わせる鉱石質の洞窟が広がる。 緩く下るままに行くと、峡谷に突き出たテーブルの様な台地に抜ける隙間が壁に見えた。


隙間から外の台地を見るウィリアムは、


「細い木が多いですね。 樹香が出来そうな木は見当たらない」


アクトルは、ピンポイントで捜索に踏み切る方が良いと思っているウィリアムを察し。


「んじゃ、次に行くか」


「はい。 この先の突き出た場所、結構茂っててイイ感じですね」


スティールは歩き出し。


「次だ、次」


しかし。 次の台地を見てもそれほど高い木が在る訳では無い。


スティールは、隙間からこじんまりと纏まって生い茂る林を見て。


「ウィリーアム、さっきと変わらない気がーするんだがー」


台地側に抜け出たウィリアム。


「変な言い方しないで下さいよ。 限られた栄養しか無い場所で、そんなに木がバカみたいに育つ訳無いじゃありませんか。 台地に生える特有と云いますか、固有種を狙ってるんですよ」


今一解っているんだか・・いないんだかのスティールは、腕組みして考えながら。


「つまり・・俺みたいなスペシャルな木?」


手の届く小振りの木々から樹香を採取し始めるウィリアムは、詰まらなそうな口調で。


「スティールさんみたいなのは、“固有”と云うより“爪弾き”じゃ~ないっすか?」


酷い形容に、失笑したりして笑う皆。


スティールは、腕組みをを解いて。


「俺ってそんなに異端?」


と、少しでも良く言わせようとするのだが。


「えぇ。 限りなくバカに近い・・バカ?」


「あぁ・・ダイレクト過ぎる・・・」


落ち込んだスティールを他所に、ウィリアムは細い木の曲がり部分に出来た小さい樹香を採る。


一緒に採取へ加わるカタニスは、今採取するのが気が付かなかった樹香であり。


「これは知らなかった・・」


「図鑑で調べましたが、結構値が張るものらしいですよ」


と、ウィリアム。


ウィリアムとカタニスが台地を回って採取する樹香は、“樹”と云う区分に留まらない。 多年草の茎に出来るゴマ粒の様なもの。 日陰に生える苔や茸の乾燥して硬結晶化したものなど様々。


幸いにモンスターにも出くわさず。 昼過ぎまでに、結構な量が採れた。 急ぎであり、昼の休憩や食事は軽くだけ。


午後に入り。 峡谷の向こうと此方を繋ぐ回廊の様なつり橋を渡る。 但し、つり橋と云っても普通の橋では無い。 低い谷底近くに突き出た岩と岩の間に出来た洞窟を行く。 上り下りは当たり前、横に螺旋を描く様に崩れた部分を抜ける為に、身体の大きなアクトルやマラザーフは苦労するし。 毒蜘蛛などの虫にも気を付けなければ成らない。


抜けたウィリアムは、峡谷に向かって右側より。 渡って来た左の方が、洞窟の幅も高さも大きい事に気付き。


「此方は、モンスターでも悠々と通れますね。 気をつけましょうか」


その云った先から、あのウィリアムが珍しがった“ブッカー”に遭遇した。 黄色い肌をした狂人の様なモンスターであり、結構数も居た。


鋭い爪を武器に、力任せに突っ込んでくるブッカー。


スティールは、踏み込んで抜き打ちに先頭のブッカーの腕を切り落とし、二の振込みで斬り倒す。


アクトルも一振りで倒すのだが・・。


別のブッカーを刺したリネットだが。 踏み込みが浅くて刺さりきらず、力んで倒そうとするのだが・・。


「くそ・・このぉぉ」


逆にブッカーにスピアの先を握られ、力の押し合いに。


此方の峡谷側の壁には穴が開き、まだ沈まない日差しを受けて光を通す。


乱戦で魔法を遣うのを見定めるラングドンに対し、ロイムが粋な行動に出る。


「魔想の力は、創造の力。 創造は、我が想像より生み出されん・・。 ダガーよっ」


ロイムの頭上に、無数のダガーが生み出される。


しかし、此処からがロイム初の試みだった。


(助ける・・助けるんだ・・・)


生み出した後、じっくりと集中すると・・。 ダガーは、ロイムの頭上高くに持ち上がる。


そして。


「それっ!!」


ロイムがリネットの相手をするブッカーに目掛けて杖を振ると・・。 無数のダガーの内、一本だけが飛んで行く。 ブッカーに向かったダガーは、片目にグサリと刺さり。 魔想魔術特有の衝撃波を生み出した。


「うぁっ」


驚いて引いたリネットだが、ブッカーは確実に顔を抑えて攻撃が出来ない。


(今だっ)


ロイムは、魔想魔法の応用に踏み込んだ。 生み出した多数の魔法を、意思と集中で細かくより分け自由に放つ。 これは、想像の正確さと、研ぎ澄まされた集中力が成せる事で。 いい加減に大きく具現化した魔法を放つ事や、やたらに魔力を消費して限界の魔法を撃つのとは、一線を画す。


「それっ・・えいっ!!」


次々と魔法で生み出したダガーを操り。 ブッカーの足を狙ったり、突進を止めたり、誰かに集中しに行こうとするブッカーを足止めしたり。 攻撃を防御に使い始めたロイム。


ラングドンの脇に居るウィリアムは、ロイムの判断に。


「上手い使い方ですね。 ロイム、随分と恐怖心を克服してる」


「ふむ。 確かに。 魔想魔法は、狭っこい所でも、中々使えるのがイイ処だわい」


ロイムは、全てを撃ち切ってブッカーを殆ど手負いにした。


「はぁ、はぁぁ・・・。 これってぇ~、チョットしんどいかも~」


大きく肩で息をして、少し膝を折ったロイム。


歩いてロイムの元に行くウィリアムは、ロイムの肩に手を置いて。


「ナイス、ロイム。 凄く魔法の幅が広がったね」


と、前線に出る。 もう、カタニスも矢を随分使っている。 戦いが長引くのは宜しく無いが、ロイムが魔法を終えるまで待っていた。


ブッカーを3体相手にするアクトルと、4体相手にするスティール。 だが、その二人と対するブッカーの背後には、マラザーフが回り込んでいて。 気の散っているブッカーは、精神的に分散された戦いをしていた。


問題なのは、ブッカーの腕力に負け。 マラザーフの応援範囲から外れてしまった、リネットである。 5体の手負いに囲まれ、ピンピンしてる一匹と1対1に成りそうな。


「マズイなっ」


矢を立て続けに放ったカタニスは、筋肉質のブッカーの身体が硬いのに唸った。


其処で。


「行きます」


と、声だけがして。


「あ?」


と、脇を見たカタニスは、走るウィリアムの残像の様な一部だけしか視界に入らなかった。


ウィリアムは、リネットの性格を判断し。 出来うる限り手は出さない様にした。 リネットは、気が強い上に、チームプレイに慣れて居無い。 恐らく、人数の少ないパーティに入っていたか、指図をする誰かから一点の役割しか与えられていなかった様な素振り。 どうこう云うより、考えさせる方がイイと判断していた。 だが、こうなっては別である。


リネットを囲みそうなブッカーの集まりに走り寄ったウィリアムは、既にカタールダガーを抜いていた。


リネットは、ウィリアムの参戦を気付く余裕など無い。 ウィリアムの走って来ている方で、ピンピンしているブッカーにスピアを突き出し。 腹を刺して押し込んだ。


其処でウィリアムは、フワリと跳躍。 ブッカーを飛び越え、リネットの頭上をも一回転で越えると。 その回るままの踵落しを、別のブッカーの脳天に見舞った。


ーブガァっ!!!!-


具足の踵に仕込まれた刃が出ていて。 一撃でブッカーを倒す。


驚くのは、ウィリアムが突然に飛び越えてきたと思うリネットと、人間の女を相手に興奮していた手負いのブッカー達。


「そらぁっ!!」


刺したブッカーをいなして、引き抜いたスピアを叩き付けるリネット。


“余計な真似を”


思い立った言葉だったが・・。


「あ・・」


目の前では、掴み掛かって来るブッカーの顎に、逆手に持ったカタールダガーを突き刺し。 自分の脇へ走り抜けようとしたブッカーの眉間に、同じくダガーを刺すウィリアム。 更に、抜いて半歩引くウィリアムに、倒れる二匹の隙間から襲い掛かろうとしたブッカーだが。


「・・」


右側正面から先に来るブッカーと、パッと体を入れ替えながらに首筋を切り裂き。 左から飛び掛ってくるブッカーへ跳躍し、ブッカーの両手の平をダガーで刺して無力に。 地面に落ちるブッカーの首を捻り落として、瞬殺するウィリアム。


もう残すを一匹づつのアクトルとスティールは、ウィリアムの早業に唸り。


「仕事速ぇ~」


「夜まで時間無いってかぁーっ」


と、一気に双方の相手をするブッカーを斬り伏せた。


驚きと、衝撃。 手が止まってしまった、マラザーフとリネットとカタニス。


ラングドンは、その凄絶な格闘術に、


(なんと・・恐ろしい)


と、畏怖を抱いた。


ダガーの血を拭き取るウィリアムは、


「夕方までに粗方を終えましょう。 さ、先を急ぎます」


と、だけ。


スティールは、剣を仕舞いながら。


「ウィリアムちゃ~ん、今日はやる気あるねぇん」


「もう、夕方まで時間無いッスよ。 スティールさんこそ、手抜きしてませんか?」


「俺の腕にケチ付けるの? 俺は、何時でもハートフルっ、ソウルフルだっつーのっ!!」


「女性だけ・・でしょ?」


アクトルも戦斧を担いで。


「ちげぇねぇ。 コイツ、今は楽してたな」


と、余裕の表情。


クローリアは、少しブッカーが可哀想に思えながらもチームに合流。


ロイムに至っては・・。


「スティールさんっ、リネットさんの戦いチラチラ見てたでしょ? 絶対イイ格好しようとしてたよっ」


歩き出すウィリアムの後ろで。


「うるへぇっ、何時でも助太刀に行く気だったんだよっ」


「ウッソだぁ~。 ニヘラニヘラしてるように見えたモンっ」


「このガキャぁ~」


そんな場違いの雰囲気立ち竦むのは、他の4人。


真っ先に歩き出すラングドンは、


「とにかく行こう。 今は、仕事が最優先だ」


と、3人に。


「・・・」


「・・・」


「・・・」


見合う3人は、それしか無いと動いた。




                      ★



 

ウィリアムが強いと解ったリネットは、何も強気に云えないままに成っていた。 恐らく、心の何処かで自分より弱いと決め込み。 学者風情と蔑んでいた部分も有ったのだろう。


とにかく洞窟を歩き。 手摺代わりのロープを頼りに、洞窟内部を上へ下へと動く。 モンスターが出れば排除する。 台地の外で飛んで来るモンスター在れば、ロイムやラングドンの出番。 逆に、洞窟内なら至近戦メンバーの出番と。 入れ替わり立ち代りで、連戦を潜り抜ける事に成る。


至近戦は、狭い故の横幅に限度有る洞窟内。


洞窟の壁やアクトルの身体を踏み台に、跳躍してモンスターに回り込んだり、奇襲をする遊撃隊と化したウィリアム。 一方で、斬り込み隊長として、牽制と攻撃を上手く行うスティール。 3人の息が合い、マラザーフやリネットは立ち回りに苦しんだ。


リネットは、夕方前に堪らず。


「リーダー、我々に役割の指示をしてくれ」


と、云うのだが。


リーダーのウィリアムは、


「そんなの気が散りますよ。 自分の武器と身体を解れば、どの間合いが合うか解りますでしょ? 解らないなら、我々とモンスターを挟み撃ちにしたり、牽制して敵の連携を絶つなどのサポートでも構いませんよ。 大がかりな戦闘では有りませんし、モンスターが多種な戦闘でもありません。 戦局を見るのは、結構優しいはずですよ」


と、だけ。


スティールも、此処までは大した事では無いと云う態度で。


「リネットもマラザーフのオッサンも、自由でイイ。 確実に、一匹一匹仕留めるだけでも十分だ」


代わって、アクトルはやや優しく。


「“自由”を任されてるって思ってイイぜ。 別に危ない様なら、こっちが補助に入る。 ただ、意固地に無理をするな。 それは、身勝手だ」


一番の年長者であるラングドンは、そんな会話を見て。


「ふはは、一番難しい事じゃわい。 ま、こんな混戦では、一々リーダーとしてあれやこれやと指揮するにあたう場面でも無いの」


ウィリアムは、臨機応変にスティールと共に、弱い者や危ない処へ応援に入る余裕を持っていた。 どうこう指図するより、自分で動いた方が楽なのだろう。


チームとしての戦いに馴染んで居無いマラザーフとリネットは、それが逆に困っていた訳だ。


戦いと採取をするウィリアムは、夕暮れには略無言で。


細かい怪我を繰り返すリネットやマラザーフは、クローリアに世話になる。


午後からの戦いで大汗を流した一行。 寝泊りする洞窟に戻る頃には、蚊や虻の類と喧嘩状態に成っていた。


「くわぁ~。 エラい喰われたなぁ」


スティールは、腕や膝をボリボリしている。


クローリアも腕を食われたらしく。


「森の蚊って、少し大きいですわぁ・・。 痒い」


スティールは、クローリアへススっと近寄り。


「クローリア・・大事な所は喰われてないかい? 俺が届かない所をか・・・」


クローリアの肩に手を回し、其処まで言い掛けたスティールだが。 クローリアの杖の太い部分を、突き上げる様に喰らって顔を陥没させる。


「・・・しゅみましぇん」


謝る言葉が様に成らないスティール。


ウィリアムは、洞窟内に虫除けを焚く中で。 入り口で絡み合うその二人を見るに。


(あの懲りない処・・お金儲けに回せたら凄いのにな・・・)


と、思っていた。


さて。 食事よりも薬を塗ったりするのが先に成る。 ウィリアムは、何故か涼しい顔。


スティールは、採った樹香を選り分けるウィリアムに。


「お前ぇ・・どうしてそんなに喰われない?」


ウィリアムは、アッサリと。


「虫除けの臭いを、衣服にも付けているからですよ。 皆さん、煙たいって逃げるから・・・」


衝撃を受けるスティールは、もう焚いてしまった後なだけに。


「早く・・・云えよ」


「旅立つ前の日と、昨日も言いましたが? 臭いのはイヤだと仰ったのは、何方様でしたっけ?」


醒めた視線を頂いたスティールは、その場で土下座。


「ははぁーっ、 わ・わたくしめでございますー」


リネットは、鎧を縫いで。 クローリアと薬を塗り合った後に。


「リーダー。 正直に言って、やはり指示が無いと困る」


その苦言を聞いても、のんびりと水を飲むウィリアム。 その後、少ない樹香から、木の皮で作られた袋に詰めながら。


「長い期間の仕事ならいざ知らず。 たった3・4日でコンビネーションなど無理ですよ。 大体、お互いに一緒に寝食を共にして、戦いながらお互いの特性を知り。 そして仲間意識が有るから、的確な指示が効くんです。 リネットさんは、そうゆう意味では素人に近い。 一人で何でもしようとするし、仲間の相手にするモンスターの数すら見て居無い。 一匹を倒した後、他の仲間を見る余裕すら無い。 そんな人に指図をすると、俺は胡坐かいてないといけない。 今回の様な場合は、リネットさんを指示して動かすより。 身動きの早い俺か、スティールさんがサポートに回った方が早いです。 気にせず、普段通りに。 寧ろ、指示を待っているような迷いが不要です」


マラザーフは、顔の頬に薬を塗りながら。


「だから、自由にしろダスか?」


「はい。 御二人の内、マラザーフさんは守りにも気が向きますが・・。 その技量や身のこなしから護れる範囲は、1人か2人。 リネットさんと合わせて、今回のメンバーの護りに丁度イイ。 広い森では、お二人には護りを任せましたが。 狭い場所では、モンスターを通さなければイイ訳ですから。 矢も少なくなったカタニスさんに警戒を頼んで、今日みたいな戦い方をした方が実力を発揮します。 ラングドンさんの魔法が強力ですから、護衛を多くする必要も薄いですしね」


アクトルは、其処でリネットへ。


「ウィリアムは、どうこうして欲しい時は言う。 その時以外は、自由でイイのさ。 ま、次の相手に向かう時ぐらい、周りを見る気持ち在れば十分だろうさ。 俺達も、この一月と半ぐらいか。 そうして来た」


スティールも続き。


「そうそう。 大体、戦いなんて、何をするかは大まかで決まってる。 敵を倒す、ヤられない様に逃げる、仲間が危ないなら助ける・・。 自分で仲間を思う気持ちが有ると、自然に見れる様に成るし。 また、助けようと思う。 今回は、そっちは飛び入りみたいなモンだしなぁ。 こんなもんでイイと思うゼ」


そう言われて俯くリネットは、何かが不満ならしい。


ウィリアムは、そんな彼女を見ずに。


「と云うか・・。 リネットさんを除いた3方の素性は、大体解りますが。 リネットさんだけ、一人って変ですよね? 一人の冒険者って雰囲気が見られない。 どうして、ソロに成ったんです?」


「・・・、はぁ~」


深い溜め息を吐くリネットは、クローリアやロイムなどと視線を交わすのから逃げる様に横を向き。


「捨てられたのだ・・。 アタイの組んでたチームと、別の腕のイイチームの間で、合同話が持ち上がった。 事の発端は、あの有名な風のポリア殿を見習って、少し難しい仕事を合同で行った事。 その末、意気投合した者達だけで、新たなチームを作る事に・・」


スティールは、リネットの勝気な普段を見れる上で。


「そのチームに馴染めなかったのか?」


「いや・・。 アタイは、個人的に先行し、斬り込みを率先してやっていた。 だが、アタイより腕のイイ槍遣いが、向こうのチームに居たのさ。 長柄の使い手は、二人も必要無い・・ってね。 分け前にも問題も有るし、なにせ新たなチームのリーダーは、女と酒に凄く甘いヤツ。 言い寄って来たアイツを、アタイは罵倒して嫌われた・・と云うトコロだ」


やや呆れ気味のアクトルは、スティールに。


「お前2号?」


「バカ云え、リネットみたいな女を嫌うか」


その二人の話の後。 リネットは、顔を少し起こし。


「チームに馴染まなかったのは、アタイが悪い。 小さい頃から根降ろし冒険者の武人一家で育ったから、世間的に何を話していいか解らないし。 友達も殆ど居無い中で冒険者の事情にも疎くて・・、冒険談議をするのも苦手だ。 チームで孤立するから、せめて戦うだけは率先してと思ったが・・。 この通り上手く行かなかった」


ラングドンは、なんとも無骨な女だと思いながら。


「しかし、斡旋所の主とは知り合いだったのだのう」


小さく頷くリネット。


「実は、二年以上前にこの森でモンスターが発生した時。 村を護る守備依頼を請けた或るチームに、アタイは入れて貰えた。 アタイの兄貴は、ブレンザさんと同じチームに居たんだ。 だから、あの時は便宜を図ってくれて・・・。 今回も、事情を話したら加えてくれるって・・」


ウィリアムは、そんなリネットを見て。


「面倒ですねぇ。 なんなら、ラングドンさんも含めて、気が澄むまでウチのチームに入りますか?」


と、簡単な口調で言う。


ラングドンも、リネットも、マラザーフやカタニスも、言ったウィリアムを見た。


スティールは、格好を付けて。


「フッ。 俺は構わないさ・・。 女が増えるイコール、俺のシアワセだし」


チーズを千切るアクトルも。


「んだな、面倒くさいから・・それもいいか。 どうせ、信用出来ない人間でもなさそうだし」


ロイムは、口に手を当て。


「うわわ。 もっと賑やかなになるぅ」


クローリアは、すまし顔で。


「一人ヘンタイがいらっしゃいますが・・。 それでもイイのなら歓迎しますわ」


と、スティールに醒めた目を向けた。


リネットは、急に困った顔で。


「あ・・いや。 あ~・・・かっ・考えさせて・・貰う」


と、だけ。


逆にラングドンは、大いに微笑み。


「ワシの身体を保養する薬師と、美人のクローリアちゃんが居るなら完璧じゃわい。 ワシとて、後どれくらい冒険者なんぞやってられるか・・。 最後は、シッカリとチームに入って見るのも良かろう」


カタニスとマラザーフは、リネットがどうするのか気に成った。


しかし、アクトルは。


(珍しいなぁ。 アイツ、俺等と居るウチに生臭く成るんじゃないかぁ?)


ウィリアムの小さな変化が見えた様な気がする。 


だが・・。 最後の一日は、激しい戦いが待っていた・・。

どうも、騎龍です^^


前回のセイルとユリア編の前編の手直しと読み返しが終わり、ゆるりと製作に踏み込みました。


ご愛読、ありがとうございます^人^

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