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エターナル・ワールド・ストーリー  作者: 蒼雲騎龍
K編
96/222

ウィリアム続編・新たなる魔域 2

ウィリアム続編~新たなる魔域へ




仕事を請けたウィリアム達は、待合場で待っていた。


最初に来たのは、背が低く。 ずんぐりむっくりとした体型の中年男性だ。 身体に似合わぬ月輪の様に湾曲した剣ショーテイルを背負う形で装備し、黒い鎧を上半身に着ている。 剣は、特注の物で、普通のショーテイルより太く長い。 だが、それ以上に、髪の毛がヤマアラシの様に長く、顔が特徴的だった。


「いや~、遅くなったゴス」


低い声で、訛りを窺わせる語尾。


ウィリアムは、席を立ち。


「どうも。 今回の仕事を任されたチームリーダーのウィリアムと言います」


と、進み出れば。


丸いタブが垂れた耳に、潰れた下がり鼻、円みを帯びて垂れた眼じりをしたその男性は、汗を腕で拭きながら。


「あぁ、こりゃぁ~ご丁寧にダス。 ワイは、マラザーフと言いンでガス。 おっ母が咳しちまぁって、薬ばぁ~飲ませデから来たガス」


スティールは、独特な容姿や喋り方に。


「はぁー、オッサン・・ドワーフかよ」


マラザーフは、そう言われて。


「そンダス」


僧侶であるクローリアは、それよりも遅れた理由の内容が気に成り。


「私は、フィリアーナ様に仕えるクローリアと申します。 あの、お母様の具合が悪いなら、無理をしなくても・・」


すると、ドワーフと云う亜種人族のマラザーフは、クローリアに向き。


「勘違いしな~でガス。 おっ母は、ワイの嫁さんダス。 それに、アンタ達の採りに行く樹香が、おっ母の薬なんだわ~。 どうしても、一緒に行くダスよ~」


ウィリアム達は、これはしくじれないと思う。


次に現れたのは、食事をし終えた二人。


一人は、長い黒髪を身に纏う様に、身体の前面と後ろに流した女性だった。 身体にピッタリとしたスレンダーメイルを着た戦士で、腰から下も金属製の具足などで武装している。 短い槍のスピアを背中に背負い、腰にはショートソードを佩く。 見ては良い感じながら、やや強気な面持ちで、生意気そうな雰囲気も漂う若い娘だ。


もう一人は、50代に最低でも届きそうな男性である。 丸で、怒っているのでないかと言った顰めっ面。 古びたボロい杖を持ち、ウィリアムと同じくらいの背丈だが。 丸で、“何処かで遭難でもして来たのでは?”、と思える程にボロのローブを着ている。


先に、女性の方が中に入って来て。


「リーダーは、誰?」


と、棘の効いた口調で聞いて来る。


前髪を掻き上げたスティールが立ち上がるのを、アクトルが抑え付け。


「俺が、リーダーのウィリアムです」


と、ウィリアムが名乗り出れば。


「アタシは、戦士のリネット。 知り合いのブレンザさんから言われて、加勢するわ。 正直、噂なんて信じないからね。 殺人事件を解決するのと、モンスターとの戦いを潜り抜ける仕事なんて、全く違う。 足手纏いなんて、ゴメンよ」


と、歯に衣着せぬ物言い。


呆れ笑いをしたウィリアムは、一礼し。


「了解しました~」


所が・・。


初老の魔術師が進み出てきたら。 ウィリアムは、その男性を見て一言。


「へぇ、麻薬の匂いがしますね」


初老の男性は、進み掛けた所でピタリと止まった。


アクトルやスティールは、ウィリアムとの出会いで薬に関わる事件が多い事もあり。 その魔術師を素早く見た。 ロイムやクローリアも驚き、ウィリアムを見てからその初老男性に向き。 マラザーフとリネットは、ほんの少し身構えた様子で向きを変えたのである。


「・・・、薬だ」


男性が言えば、ウィリアムも頷き。


「ですね。 麻薬の他に、消炎鎮痛剤に使われるキクの根の匂いも・・」


男性は、黙るのだが。


ウィリアムは、更に踏み込み。


「その薬は、一時の痛み止め・・。 治す薬では在りませんし、これほどに匂うとは・・。 少し、量が増えているのでは?」


初老の男性は、やや俯きながら胸を擦り。


「少し・・・胸を。 特効薬には、樹香が必要じゃと」


ウィリアムは、その男性の顔や全身を見て。


「どうでしょう、俺に診せてくれませんか?」


男性は、鈍く目を上げて。


「薬師・・・か?」


と。


スティールは、その割れた声に何か具合の悪さを感じたので。


「オッサン、コイツの薬は、効き過ぎぐらいに効く。 騙されたと思って、いっぺん診て貰えよ。 つか、病人を抱えては面倒だ」


その男性は、困る面持ちを周りに向けながら。


「・・・。 リーダーが言うなら、致し方在るまいな」


ウィリアムは、皆に目配せを。


アクトルは、直に立ち上がり。


「人の身体を見るのも悪い。 外に出るか」


スティールも立ち上がり。


「んだな。 リネットちゃんの事・・二人きりで知りたいね」


リネットは、立ち上がったクローリアに。


「コイツは、バカか?」


と、尋ね。


「はい。 比べる相手が見当らないほどの・・」


と、クローリアは素直に答える。


ロイムは、口を手で抑えながらニヤニヤした顔で出て行き。


「ロイムせんせ~、なぁ~んか文句有るみてぇじゃね~かぁ~」


と、スティールが追って出る。


「面白~な面子ダスね~」


マラザーフも続き。


「最近、仲が良すぎる」


と、アクトルも。


カウンター前の椅子に魔術師の男性を座らせたウィリアムは、


「では、診せて貰います」


と、診察をした・・。


触診をして・・。


男性に服を着させたウィリアム。


「あの、薬をどう言って頂いたんですか?」


と。


「うむっ・・・」


男性は、顔を苦しくさせた。


そして・・。


「その・・、ま・真に・・恥ずかしい事だが。 別の街で・・そのっ、夜を女性と過ごしてな・・。 終わった後に・・少ししてその・・・胸が痛く成り・・・」


どもる様な声は、恥を晒したく無い裏返しだろう。 聞いたウィリアムは、軽く頷き。


「それで、痛み止めだけを貰ったんですか? 強引に、痛みを止める物だけを・・」


「あっ・あぁ。 その・・なんか・わわ悪い病気だと・・困る訳で・・その」


モゴモゴと云う男性の困り果てた顔。 怒った顔は、心配と腹と胸焼けの酷さが原因らしい。


やや呆れたウィリアムだが、穏やかに笑うと。


「失礼ですが、お酒が相当好きみたいですねぇ。 しかも、脂っこい物も」


言われて、即座にギョっとして眼を丸くする老いた男性。


「あ・・あぁ」


「口の中や喉の荒れ、タンの発酵した様な臭う息、様々な様子からして・・少し、特有な肺病を拗らせてますね。 咳を我慢している様子ですが、人に感染るものでは在りませんよ。 それから、胃に炎症が出ています。 薬を正しく調合して貰っていたら、一月で治る物ですよ」


「そっ・そうなのか? 変な・・病気では無い?」


「えぇ。 御歳ですしね、遊ぶのも年齢に合わせた方が・・。 肝ノ臓・腎ノ臓が相当に疲れています。 今のお体に、あの薬は返って毒ですよ」


男性は、急に安堵した様子を見せると顔を赤らめ。


「あ~お恥ずかしい。 実は、フラストマドの首都で、随分と報酬の良い仕事を請けれまして・・。 屯3人と、バラけた者二人の6人で成功させました。 久しぶりに懐が暖かくて、ハメを外し過ぎまして・・。 ついつい、酒場の女性と意気投合しまして。 酔った勢いで、少しの追加料金で楽しめると言われて、そのまま過ごしたのですが・・。 なんとも」


と、その男性は、恥ずかしさや苦笑を交えて話す。


ウィリアムは、随分素直な男性だと笑み。


「気持ちは解りますがね。 それで勘違いして、更に間違った薬を貰っては・・」


「いや、何か悪い病気だと思い込んで・・。 その~・・、急に怖くなりましてな。 死ぬのではないかと、悶々しながら此方を目指したのですが。 旅の途中で、何度も痛みが来まして。 途中の衛星都市で、金を突き付け、その・・薬を貰いました次第で」


ウィリアムは、この初老男性が面白く思えた。 恐怖から開放されると、何とも屈託の無い顔をする。


ウィリアムでも調合出来る薬なので、後で薬屋を巡ろうと約束を交わした。 男性の名前は、ラングドン・マイニール。 自然魔法を扱える老練冒険者だった。


話し合いが一段落した所へ、スティールが顔を覗かせ。


「ウィリアム、最後の一人も来た」


と。


ウィリアムは、頷いて見せて。


「解りました。 では、外に出ましょう。 北の森へは5日は掛かるそうなので、これからそのまま向かいます。 少々店に寄るので、買い物は其処で」


「おう」


ラングドンは、ウィリアムに。


「このまま・・発つのか?」


笑うウィリアムは、ラングドンの心配を察し。


「大丈夫。 森に近い村まで、馬車を用意して下さるようです。 少し揺れますが、歩かなくてもいいのですよ」


「あぁ・・、そうか。 昼前に主から話を聞いて居る時にも痛みが来て、全て聞いていなかった」


ウィリアムは、最後に遣って来たレンジャーの男性と共に、皆で外に向かった。 見送る様に視線を交わしただけのブレンザは、一つ頷いただけだった・・・。




                      ★★★




それから、3日が過ぎて・・。


幌馬車のやや大型の物が、黄土剥き出しの街道をゆったりと走っていた。


もう夏の暑さが実感出来る。 連日の快晴で、馬に無理はさせられない。 水場や休憩の出来る立ち寄り施設では、必ず休憩を入れ。 夜は、しっかり休む様にしている。


パッカ、パッカと云う馬の足音を聞く中で、昼過ぎ。


「いや~、嘘の様に痛みが無い。 本当に、助かった」


ラングドンは、治った様に快調な身体を感じて、ウィリアムに礼を言う。


夏の風が草原や疎らな林の広がる間を走っている。 ウィリアムは、はためく幌の間近に座っていて。


「いえ、良くなってなにより。 自分は学者なので、モンスターが出たらお願いしますよ」


と、笑う。


「おぉ、その時は、このラングドンは頑張りますぞ」


少し調子の良いラングドンだが。 確かに培った経験が見せる落ち着きは、アクトルやスティールから見ても感じが出ている。


一方で。 スティールに絡まれ、イライラしているばかりのリネットは、クローリアやマラザーフの傍で睨みを効かせていた。 実は、ドワーフと云う亜種人族は、大地の神や自然を司る神を信仰しているとかで、神聖魔法も幾らか遣える。 癒し手が二人居るのは、安心材料だった。


代わって、アクトルと緩い会話を重ねているのは、やや小柄の30絡みといった感じのカタニス。 日焼けした肌に、中々スッキリとした面長の男性で。 目の真っ直ぐさや、落ち着きの窺える様子は、自然と好感が持てる男性だった。


彼は、狩人であり。 薬草採取や動物を狩りし、細々と生計を立てていた。 知り合いの薬屋から頼まれ、道案内やもしもの場合の学者代りとして同行する事になったらしい。


旅立つ初日の夕方。 馬車に乗り、その中で薬の調合をするウィリアムの様子を見て、その技能の熟練度を推察出来たのだろう。 ウィリアムに、アレコレと質問したり、聞いたりとはしなかった。


寧ろ。


ウィリアムが、彼に森の情報を聞くと。 適切で、詳細な情報を述べる。


時々ウィリアムと会話する彼は、お互いに気が合う感じだと思わせる様子でもあった。


さて・・。


「リネット、俺の何が悪い?」


嫌われるスティールが言えば。


「全部っ、存在自体っ!!」


と、キレるリネット。


しかし、スティールは前髪を掻き上げ。


「それは、丸で“愛してる”と言ってるのと一緒だ」


「アンタっ、どんな神経してるのよっ?!! 気狂いじゃないのっ?!」


そのやり取りは、滑稽過ぎて笑いの種。


マラザーフなどは、面白過ぎて毎日笑っている。


ロイムとクローリアは、チームの恥を晒す様で疲れていた。


そして、その更に二日後。


「ほお~。 此処が“モンチン村”か。 結構人が居るな」


アクトルは、降ろされた所から村のメインストリートを見て。 若い村人や、年寄りなどが行き来しているのに目を見張った。 丁度昼下がりで、畑に村人が出掛けていてもいい頃合いなのだが。


馬車を降りたカタニスは、念の為にと持って来た皮袋の束を纏めた物を背負いながら。


「このモンチン村は、砂金や琥珀が取れる川が近い。 他の村に比べて、住人が多く。 村だが、4000人ぐらい住んでいるんだ。 森林峡谷に踏み込みやすい場所でもあり、狩人も多く住んでいる。 ま、今はモンスターの影響で、砂金や琥珀の量も思う様に取れないって話だ」


すっかり健康を取り戻したラングドンは、村の北側一帯に望める森を見て。


「随分モンスターも増えたのだな。 全く、原因が解らんとは、面倒じゃわい」


スティールを牽制して降りたリネットは、ウィリアムに迫り。


「チョットっ!!! あの男をナントカしてよっ!!!!」


と、怒鳴るも。


もう成れたウィリアムは、耳を指で穿り。


「成れると、意外に可愛いかも知れませんよ」


と、他人事。


降りて来たスティールは、顔に手をやり。


「凄いね、俺。 俺の魅力は、男女の差無く通じるんだ」


クローリアは、既に降りた後で。


(でしたら、男性と御結婚なされたら如何かと)


と、無視。


同じく、先に降りていたロイムは、


「うぎゃ、スティールさんて、どっちもイケるのぉっ?!!」


と、お尻を押さえた。


ロイムをギロリと睨むスティールに対し。


笑うマラザーフは、ノシノシとウィリアムに近寄り。


「んだば、宿を探そうダス」


マラザーフの奥さんは、妹や母親と居るので、一人ではない分心配は少ないが。 治療薬無しのままでは弱ってしまう。 穏やかな人柄のマラザーフだが、やる気は人一倍であった。 到着した日に森に入る気で居た彼だったが、ウィリアムやカタニスに諭されて、今はこのように落ち着いている。


ウィリアムは、ラングドンとカタニスを連れて、村の彼方此方を回ると言い。


他の面々は、手分けをして。 全員分の食料から必需品を揃え、宿を押さえる行動に動く。


一同がまた揃うのは、夕日も落ちた頃で。 村の中心にある酒場でだった。


最初に、スティールに絡まれるクローリアとリネットが宿にて宿泊を決めた後。 軽く村を見回り、宿屋の裏手に成る酒場に入る。


「シッシ、離れろっ」


と、スティールをあしらうリネットは、広い大衆的な酒場の女将を見つけ。


「済まない、10人ほどで食事したいんだが」


と、声を出す。


木造の大型酒場で、村で唯一の酒場。 メインストリートに面した一番良い立地に在るだけあり。 もう、農家の家族連れや、鉱夫と思える男達数人の客が居た。


スラリとしたやや長身の中年女将は、少し草臥れた感じのする様子。 酒場奥のカウンターの先に二つ在る大型のテーブルが在る方を指差し。


「なら、向こうに行きなよ。 処で。 料理は、大鉢や大皿で料理を出した方がいいだろうか?」


クローリアは、それに反応して。


「はい。 食べる方も居るので、出来ればお願いします」


と、返す。


大きな十字型のテーブルに向かい、三人で席を取ると。


「おーい、そこの三人」


と、声が掛かり。


声に向くスティールが見れば、鉱夫らしき呑んだ男達の一人が手を上げていた。


「ん? 何か用かい?」


ホロ酔い顔をした40前後の鉱夫は、リネットやクローリアを指差し。


「随分とキレイなオネ~チャン達だな~」


と。


こうゆう雰囲気を好きでは無い女性二人は、男の方に向かないが。 スティールは、慣れているだけあり砕けたもので。


「俺のジョノカさ。 そっちの景気はどうだい?」


同じテーブルから非難の目と苛立ちの目を向けられるスティールだが、鉱夫は疲れた様に首を左右に動かし。


「わり~なぁ~。 森にモンスターが居るからよぉ~、今日も砂金取りが中断しちまった」


「そうかい。 明日から、仲間と樹香を採りに森へ行くんだ。 倒せる範囲でモンスターは倒すから、ボチボチやろうや」


「お~、ソイツは助かる。 ウチの村ですら、今年で狩人が5人も怪我しちまってる。 薬が高騰しないように、いっちょガツーンと頼むわ」


手を上げて了解したスティールは、女将の持って来た手拭いで手を拭きながら。


「随分と影響出てるな。 こりゃ、マジで気を引き締めたほうが良さそうだ」


注文を聞く体勢の女将だが、スティールに。


「気を付けなよ。 先月、アンタ達と同じ依頼を請けた冒険者達がおっ死んだばかり。 悲惨な話は、よしとくれ」


と、逆に注文を付ける。


ニヒルに笑むスティールは、女将を見返し。


「生きて帰る。 ウチのリーダーは、その辺のとは格が違うゼ」


「どうだかね。 で? 注文は?」


リネットは、スティールが随分とウィリアムを信用していると思い。 横のクローリアに顔を寄せ。


(コノ軽いヤツ、リーダーを信用しているのだな)


過去を思い出すクローリアは、


(信用するまで学習させてますから)


と、さり気なく。


聞えていたスティールは、水を飲みながら。


(俺は、犬か?)


と、首を竦めた。


その後、買い物を終えたロイム・マラザーフ・アクトルの三人が加わり。 最後は、村人に話を聞き回ったウィリアム達3人が加わり。 全員が揃う。


席に全員が座る頃は、酒場に客が多く成った頃で。 ガヤガヤと騒がしい中だった。


座ったウィリアムに、近くの席に座ったカタニスが。


「随分と慎重な事をするのだな」


と、言えば。


「怪我を為さった狩人の皆さんを見れば、大体の凡そが想像出来ます」


と、ウィリアムが返す。


肉の塊を切るスティールは、ウィリアムに。


「何だ、怪我した狩人の所に行ったのか?」


手を拭くままにウィリアムは。


「はい。 ま、行ったと云っても、病院と寺院です。 今だ、怪我した狩人さんが居ると聞いたので」


「収穫は?」


「モンスターは、相当の多種に亘って蔓延っている様です。 怪我をした人は、皆が怪我の治癒を遅らせているとの事。 恐らく、唾液などの体液に毒や強酸を含む種類が多いのですね」


「ふわ~。 お薬いっぱい必要だな」


「えぇ」


アクトルは、新たに買って来た物を指折って云い。


「なんとか仕入れた分で保ってほしいな。 結構、高かったゼ」


ラングドンは、受け皿を取りながら。


「他にも随分とモンスターの被害が多い。 このままでは、村も危ういな。 ちと大形かも知れんが、結界を張る事も考えた方が良いかもな」


頷くカタニスは、ビアを頼んでから。


「しかも、悪い話だ。 我々が向かう樹香の多い場所に、被害が集中してる」


ウィリアムは、受け皿に野菜を取りながら。


「恐らく、人が分け入る場所に、モンスターが寄って来ているからでしょう。 明日からは、油断は禁物ですね」


アクトルは、大きなグラスでビアを呑みながら。


「ぷは~。 しかし、こりゃ~本当に成功させるのは骨が折れるぞ」


マラザーフも、同じグラスを持って。


「んだんだ。 したども、どうしても成功させなダス」


しかし、命辛々逃げてきた狩人の話は、予想よりも事態の深刻さを証明していた。


ウィリアムは、食事をしながら皆に。


「要注意のモンスターは、擬態を特異としている肉食カメレオン“エビナスカムフラ”の他、吸血・肉食植物。 炎を吐き、双頭の頭を持つグリーンドラウネス他、群れる習性のモンスター。 変わった処では、歩く大型キノコのモンスターの“ポイズンポルニマ”。 森の中でも転がる岩の様に襲って来るナメクジの“スリリニーシッダー”。 話を聞くに、丸で東側の魔域と呼ばれる“ダロダト平原”やその周辺に棲むモンスターの様です」


リネットは、自然魔法を扱えると聞いていたラングドンを見て。


「だが、樹木のモンスターは火に弱いのだろう? 火を吐く以外のモンスターなら、魔法で切り抜けられそうだな」


と、楽勝そうな様子を述べる。


しかし、ウィリアムがやや困った視線を彼女に投げたのに対し。 話に上げられたラングドンは、渋い表情で。


「そう簡単に行くか。 地形や環境を考えて言って欲しいのぉ」


ロイムが、当然の様な口調で。


「だよね。 下手に火を使って、山火事起こしたら仕事処の話じゃ無くなるよ」


頷いたラングドンは、肉を食べてから。


「そうだ。 しかも、森の密集した場所では、風が呼び難い。 火事が起こったり、水に弱いモンスターと対峙しても、飲み水すら無い状況なら魔法を発動させ難い。 自然の力が強く影響し、様々な反響を示す我が自然魔法は、いい加減な認識の下で頼られてものぉ・・・」


云った手前に、場を悪くしたと思う顔色のリネットに対し、スティールは素直に。


「んじゃ~、魔法を扱う意味で、水袋に水は欠かせないし。 火を使うなら、昼間でもランタンか松明が必要な訳だ」


肉を細かく切るラングドンは、


「そうじゃ。 ま、雨が降れば水の魔法は強く威力を増し。 強風の時は、風の魔法が強い。 大地が剥き出しの山では、土の魔法は発動させ易く。 しかも、威力が安定する。 大地を走る“龍脈・地脈”と呼ばれる精霊力の巡る近くでは、魔法の威力が格段に増すぞ」


と、説明をくれてやる。


「はーっ、それは凄いな。 ・・でもオッサンよ、ペナルティとかは無いのか?」


「無い事もないの。 魔法が強力に成ってしまうだけ、集中してやらないとな。 罷り間違えば魔法が暴走したり、仲間を傷付ける程に強く発動させてしまう。 結果、自然を痛め付けたり、返って被害を出す事も・・の」


「なるほど。 強過ぎる分だけ、制御が面倒って訳ね」


「うむ」


其処で、話の切れ目に口を出したのは、ドワーフ種族のマラザーフ。 ウィリアムに、確認事項として尋ねたい事が在った。


「ところで~、リーダーさんはぁ戦わンダスか? 森ン中に入ったら、隊列はどうしまんダス?」


軽くワインで口を湿らせたウィリアムは、野菜の炒めたものをパンに挿みながら。


「先頭は、俺とカタニスさんですね。 リネットさん、マラザーフさん、アクトルさんは、隊列の中か後ろにする魔法使いさん3人の守りを優先して下さい。 斬り込みは、スティールさんが宜しいですかね」


「んだか~。 解ったダス」


スティールも。


「オーケー。 俺の華麗なる剣捌きで、かる~くモンスタ~をあしらってやるさ」


だが、またしてもリネットが。


「リーダーさん、戦えないのに前へ行くのか? 怪我なんかされたら、それこそ面倒なんだが」


と、文句を。


アクトルやスティールなど実力を知る面々は、苦笑いすら浮かべる。


当の槍玉に上がるウィリアムは、しれ~っとした物言いで。


「その辺は大丈夫ですよ。 逃げ足の速さには、相当の自信が在りますから」


「はぁ?」


思いも寄らない返答が返って来て、思わず口を開けたリネット。


代わりに。 吹き出しそうに成ったり、喰えないと笑うのはチームのメンバーだ。


スティールは、ワインに切り替えた直後で。


「ははっ、確かにお前の逃げ足は天下一品だゼっ」


と、陽気に言い。


意味が違うと思ったロイムは。


「え゛ーーっ、逃げ足って云うの、アレ~?」


アクトルは、そのロイムに。


「そういや。 逃げ足だけなら、ウチのロイム先生も負けないな」


と、言い。 一時加入のラングドンやマラザーフを笑わせる。


ウィリアムの暗殺闘武の技は、口に出しても伝わらない。 見るに限る。 チームの一同は、それが理解出来ていた。 だから、こうして何も真実を云わなかったのだ。 純粋に戦うなら、アクトルとウィリアムが一番強い。 スティールが、そう思っていたほどだから・・。

どうも、騎龍です^^


ご愛読、ありがとう御座います^人^

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