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エターナル・ワールド・ストーリー  作者: 蒼雲騎龍
K編
66/222

ポリア特別編サード・中編

ポリア特別編~悲しみの古都オールドシティ~中篇・古都で惹かれ合う絆






               ≪それは彼からの言伝、新たなる先へ≫






ポリアは、斡旋所に仲間と共に入った。 


「おぉっ、来たぜっ!!」


「話有るんだっ!!」


地元組の冒険者達10名以上が、入って来たポリア達を見て群れる様に長椅子の彼方此方から立ち上がる。 奥に立つ主に向かって歩くポリア達の前に、彼らは下世話な褒め言葉を上げて立ち塞がった。


「伝説の冒険者さんのポリアさんよ、教えてくれよ。 現場で何が有った?」


「そうそう。 一流の冒険者だからって情報の独り占めは、いけないいけない」


「所で、ブロッケン達はどうなったんだよ? 川じゃ死体上がったんだろ? どんなだった?」


次々と来る質問。


「・・さい」


俯き加減のポリアが、何かを言った。


「あ???」


最悪、脅しがてらでも何かを聞き出そうと考える輩共が、声を何人か合わせた。


その時だ。


「まぁ~ったく、薄汚い輩ってイヤねぇ~。 あ~、ウルサイウルサイ」


と、怒鳴ろうとしたポリアより先に誰かが声を発した・・。


ポリア達を含め、皆一同が声の方を向くと・・・。 斡旋所の主が居るカウンター近くに、数人の少し派手な井出達をした者達がテーブルを挟んで座っている。


地元組の一人である盗賊の様な無精髭男が向き直り。


「あぁっ? カマ野郎が何言いやがるっ!」


と、ドぎつい睨み目を向けて言葉遣いを荒げ始める。


だが。 ヌゥっと立ち上がったやや伸びた黒髪の長身な人物は、紅いマントを羽織り黒光りする鋼の鎧を纏った体をポリア達に向けて。


「誰が“カマ”だぁぁぁぁぁぁっ?!!!!!! 俺は心も体も女だっ!!!!! ブッた斬って遣ろうかぁっ?!!」


と、吼え上げた。 


「なぁ・・」


その声と姿に驚いたのは、地元組の冒険者達。 筋骨隆々とした姿はゲイラーにも似ていて、その圧倒たる大声など迫力満点。 更に、顔は完全なブ男なのに、可愛らしく見せる為か頬に紅い化粧までしている顔。 確かに、“異種”な人物では有った。


「なぁ~んだありゃ、スゲ~の現れたな」


小声で呟くゲイラー。


「人・・・だろうな。 新しい新種・・ではなさそうな」


と、珍しくマルヴェリータの青筋以外に怯えるイルガ。


「・・・」


顔を背けて拒絶の意を示すヘルダー。


しかし、マルヴェリータは。


(ポリア、知ってる顔?)


(知らないわ)


(なんか・・、タイミング良過ぎる感じしない?)


(多分、待ち構えてたっぽい。 入って直ぐ地元組が私の名前云った時、視線みたいなの注がれる感じしたし)


実は、死体の上がった川で、ヘルダーが見られているとポリアに教えた。 確かに、対岸に人が集まり出した頃。 川沿いの道の上に歩くも黒いフードを被ったマントに身を包む何者かが歩いていたし。 大型施設に向かう前。 道に上がったマルヴェリータとヘルダーが、顔の判らない紅いマントの誰かに見られた。


ポリアは、気圧された地元組の隙に踏み込み。


「情報なんて無いわ。 ただ、誘拐された冒険者達が・・・遺体で見つかった。 それだけ」


地元組の悪党面した者や、ガラの悪い者が。


「嘘云えっ」


「そうやって情報を独り占めする気だろうっ?!」


と、喚くも。


ゲイラーは、かなり呆れた顔で。


「そんな重要な情報持ってたら、今頃役人に取調室へご招待されてるぞ。 頭が悪いな、顔以上に」


そう言ったゲイラーを見上げるシスティアナは、悲しみの目を潤ませていて。。


「ゲイラ~さん。 ケンカはイヤイヤです」


死体を見た上に、その遺体が信じられない程に痛めつけられていた事が、僧侶として以前にシスティアナにはショックだったのだろう。 珍しくゲイラーの言う事に釘を刺した。


ゲイラーもまた、システィアナの気持ちを知るだけに。


「あぁ。 スマン、システィ・・」


と、口を噤んだ。


ヘルダーやイルガは、威圧する様な憎らしい睨み目をしてくる地元組の者共に対し。 逆に憐れみの視線を向けていた。 喋れないヘルダーに代わり、イルガはポリアの後を追いながら。


「同業者が死んで、良くもまぁそうがっつけるモノだな。 それだけ情報をメシのネタにするんなら、犯人でも捜して来たらどうじゃ? 明日から生活の心配が要らない程に謝礼が貰えるかも知れんぞ」


其処に、マルヴェリータが。


「そんな勇気の在る事出来るなら、地元で屯なんかしないわよ。 死んだ者の情報で金稼ごうなんて、死体漁りと同じだわ。 空気読めない上に、非常識・・・。 在る意味、犯人に一番近い人に説教だなんて、とっても勿体無いわよ。 イルガ」


言われた地元組の者共は、イルガとマルヴェリータにギラギラとした視線を送る。 堕ちても人、馬鹿にされれば悔しくも成る。


「何だとぉ?」


「言わせて置けばぁっ」


怒る地元組に対し、途中から口を差し挟んだオネェ口調の人物が笑い出した。


「アハハハハ。 可笑しいわねぇ~。 自分達から礼儀を弁えず死んだ同業者の情報を聞き出そうとしたクセに、言い返されると被害者ヅラぁ? 他のチームは、“次は自分達が被害に遭うんじゃないか”って思ったり。 打ちのめされて戻る被害者の居たチームを気遣って、あえてココに来てないチームも多いってのに・・・。 アンタ達って、芯まで腐ったゴミねぇ」


地元組の者達も、流石にこうまで言われると自分達の行動が恥ずかしくも成る。


「フンっ。 何だ偉っそうに・・」


「情でメシが食えるか」


「クソ・・・」


と、返す言葉を無くしていた。


ポリアは、大声を上げた人物に右手を上げて感謝しながら、主の立つ場に向かった。


「おう。 上に来な」


主は、ポリア達を4階に案内して話を聞いた。


行方不明となった8名の内、7名が惨殺と言っていい様子で死んだ事。 また、学者の遺体に紙で三角形の書かれた物が入っていた事。 そして、悲しみにくれる冒険者達は、キャタピコームの宿に泊めさせた事を次々に語ってから。


「マスター、少し見張って。 もしかしたら、怒りと悲しみで先走りするかも知れないから・・」


主は、ポリアが冒険者達を心から心配していると悟った。 その昔は、自分も駆け出しの頃は熱い冒険心を湛えていたのを思い出し。


「あぁ。 この上、あいつ等まで死なれちゃ敵わん。 だが、こう成ると犯人達をどう捜していいか解らないな。 まだ、あと一人遺体の見つからないのもいるし」


ポリアは、これ以上の遺体は御免だと。


「見つかるまで遺体にしないでよ・・」


と。 だが、言ったが語尾が弱くなって行くのは、やはり7人の遺体を見てしまっただけに言い切れない心境が膨らんだ所為だろう。


主も。


「ま、生きてたらスゲーな。 逆に怪しい位だが・・、犯人に接近した者として生きてると有り難いかも知れん」


皆、主の言わんとしている意味は良く解った・・。


さて、1階に下りてみると、地元組の冒険者達の姿が見当たらない。


まだ居残るのは、口を差し挟んだ長身な人物とその一団。 その中で、立ち上がりポリア達を支援してくれたあのオネェ口調の人物がポリアへ向き。


「みぃ~んな出て行ったわぁ。 バツ悪そうにね」


ポリアは、その人物の間近に近寄り。


「さっきはありがとう。 私は、“ホール・スラス”のリーダーで、ポリア。 大声上げなくて助かったわ」


ポリアより頭一つ以上は背が高い人物は、紅いマントの前を解き、ゆったり紅茶を飲みながら頷く。


「ふぅ~、おいし~。 アタシは、“アマゾネシア”のリーダーでウコォン。 貴女方のお噂は、こっちに来て聞いてるわ」


そう言ったウコォンの後を繋ぐのは、紅い髪に碧眼の褐色肌をした美女で。


「私は、学者で剣士も兼ねてるレヴィックよ。 風のポリアさんに逢えるなんて光栄だわ。 事件が無ければ、お近づきに一杯交わしたい所ね」


紅の髪が背中や首筋に纏わる様な大人びた美女。 マルヴェリータと似た雰囲気が在るミステリアスな人物で、その豊満な胸元が見えているワーンピースのドレスの様な服装がまた色めかしい。


ポリアは、“学者”と聞いて。


「皆さんは、今日此処に?」


その答えは、尖った耳に黄緑色の眼をし。 ブラウンの髪が肩に凭れ掛かる可愛らしい少女の様な女性が受け答え。


「昨日のお昼よ。 ワタシ、ラファエル。 すご~い、ポリアさんと喋っちゃったぁ~」


ラファエルの無邪気な様子に、心が少し和んだポリアだが。


「レヴィックさん、学者なら気を付けてね。 今朝、誘拐された学者の皆が遺体で見つかったばかりだから・・」


褐色肌の美女であるレヴィックも頷き返し。


「えぇ。 昨日、他の冒険者達から聞かされたわ。 私を含めて、今だに街に残る学者は4人。 皆、警戒して仕事に向かえないみたいね」


其処へ。


「でも、アンタ達って犯人らしい冒険者崩れを撃退したんだろう? 相手の手の内ってどんなよ」


と、男っぽい口調で聞いてくる女性の声が。


「・・」


ポリア達が眼を移せば、短めの黒髪をした眼の釣り上がり気味な女性を見る事に。


見られた女性は、


「あ、ワルい。 アタシはエアリノア。 仲間が襲われる危険も在るから、解る情報は欲しいのさ」


それには、ゲイラーが答え。


「俺は、ゲイラーだ。 よろしくな」


座ってるアマゾネシアの皆が頷いたり、手や持つカップを上げたりして返す。


ゲイラーは、少し変わったチームを見回しながら。


「相手の総数は不明だ。 だが、人数はかなり多いと思ってくれ。 自然魔法遣い、魔想魔法遣い、丸い針型のダガーを投げるスカウト能力に長けた奴に、ハンマーを使う大柄の野郎と、細剣を使う痩せた男。 今解るだけで、下っ端の悪党達とは少し違う奴等がコレだけ」


ウコォンは、仲間のレヴィックを見ながら。


「相手って組織的な多さねぇ~。 襲われたらあっぶなぁ~い」


ポリアは、直ぐに頷き。


「当たってるわ。 私達の捕まえた手下の一人を調べたら、世界的な勢力で組織的に犯罪を請け負う集団の刺青が在ったって言ってたわ。 それに、まだリーダー的相手を見てない。 冒険者と同じ技能を持つ者が、今言ったゲイラーの5人だけとは思わない方がいいかも」


アマゾネシアの面々は、実態として一度戦ったポリア達の話が生きた情報で在る事を知り。 同時に、相手がかなり大掛かりな組織集団だと言う事も理解した。


ウコォンは、ポリアに。


「貴重な情報ありがとう。 お礼じゃないけど・・、コレ」


と、手紙を取り出して差し出して来た。


ポリアは、手紙とウコォンを何度も見交わし。


「コレ・・は?」


ウコォンの正面に座るおっとりとした雰囲気で、中々上手な化粧を施す男性らしき人物が。


「わたくしは、自然神にお仕え致しますアチャランと申しますぅ。 実はぁ、わたくし達は雪山の山道街道で怪我した男女の冒険者に逢いましてねぇ。 その怪我をしたのが男性の方なのですが、貴女のお知り合いで、危険から逃げて来たと言いましたの。 そして、この手紙を届ける様に頼まれましたわぁ」


「・・・」


イルガやヘルダーは、声色は完全に男の良い声なのだが、何故かシスティアナの様に喋るアチャランと云う人物に絶句。 明らかに女装趣味な男性と思われた。


だが。 一同は、手紙の主は誰か直ぐに見当が付く。


「ポリア・・」


手紙を取らず動かないポリアの肩に、そっと手を差し伸べたマルヴェリータ。


「・・・追伸かよ」


ゲイラーは、複雑な思いに顔を歪める。


そんなゲイラーの手をシスティアナが触り。 そして、握った。





                      ★★★




ポリアは、人気の居なくなった斡旋所の片隅に行き。 仲間と共にダグラスと思われる人物からの手紙を封から出した。 白い紙で封された手紙を開くと、少し震えた文字で綴られていた。




ー                  ポリア達へ。


俺だ。 ダグラスだ。 


この手紙を見る頃は、ポリア達も俺の犯した事を知ってると思う。 だから、告白する。


俺は、クリスティーと云う女と知り合った。 彼女は、或るチームから抜け出した女性だった。


俺とクリスティーは深い仲に成っちまったが。 彼女の居たチームのリーダーのカオフと、そいつの仲間のメズロって奴がクリスティーを取り返しに来てな。 暗い中、腕が似通って手加減出来ない中で、俺は二人を斬った。


どさくさでもう仕方なかったが、言い訳に為らん。 チームに迷惑を掛けない為にも、俺は逃げる事にした。 チームから離れた者の罪は、チームには問わないルールだからな。


だけど、この手紙はその事の告知じゃない。 俺達、逃げる途中の街中で急に襲われた。 盗賊の様な奴等だが、何人も居るし誰かに雇われた奴等だ。


そして、街の南門前で襲って来た奴が、俺にこう言ったんだ。


“アルロバートを出せ。 お前達は、誰の差し金だ? 宝を狙うのは誰だっ?!!”


ってな。 


どうやら、クリスティーと逃げる俺は、見張られていた上に女と秘かに逃げる曲者みたいに思われていた様だ。 一時的にポリアのチームに入り、宝とやらの情報を探る密偵の様に思われてた。 斬り合った相手の口振りを窺うに、そう思えて成らない。 


ポリア。 あの遺跡調査で捕まえた男、だが。 確かに誰かに雇われた者で。 その男の身柄を求める輩が暗躍してる。


俺はもう戻れず。 ポリアやゲイラー達に手を貸せないが。 せめてもの罪滅ぼしに、この事を伝えて置くよ。 済まない・・ポリア。 ゲイラー、謝っても謝りきれんが、スマン


                     


                      ダグラス                    ー





手紙を読んだポリアは、何も知らされないままだった事に肩の力を落として俯く。


行き場の無い怒りと親友の窮地を解らなかった自分の情けなさに、ゲイラーは握り拳を作って黙った。


だが、一同が言葉を失って黙りこくる中。 ポリアは顔を上げると。


「・・忙しいだろうけど、ハソロさんに逢わなきゃ。 冒険者同士の斬り合いは、喧嘩両成敗で役人さん任せに成るけど。 ロバートの事は無視出来ない。 今、思うと・・。 ロバートの体にも刺青が無いか調べて貰わないといけないわ」


陰痛な思いに沈むマルヴェリータだが。


「そうね・・。 クシュリアントさんの息子さんが、もしもオッペンハイマー様やアラン様を襲った相手と繋がりが有るのなら。 これは、事件解決の糸口に成るかも知れないわね」


イルガやヘルダーにしてみれば、ダグラスが抜けた経緯が解っても釈然としない。 だが、起こってしまったモノはどうしようもない事実である。 


席を立ったポリアは、ウコォンの傍に行き。


「手紙、ありがとう」


ポリアを優しく見上げるウコォンは。


「恋人?」


そう言われたポリアは、どうしてか素直に首を左右に振れて。


「チームの一人だったの。 好きな女性と、・・一緒に成るみたい」


「そう」


「じゃ。 これから、事件を捜査してる役人さんに会いに行くから・・。 また、何か有ったら・・」


ポリアは、そう言い残して斡旋所を仲間と共に出て行く。


仕事を請ける雰囲気でも無くなってしまったウコォン達。 だが、ポリア達が出て行った後に、唯一ポリアと会話を交わさなかった物静かで俯き加減の年配女性が。


「どうして、用が在るのかしら・・・」


と、呟いた。


ウコォンを始めとした仲間一同は、ユマと云う名前のその女性を見る。


リーダーのウコォンは、


「確かに、ね・・。 用が在るなら、手紙を受け取りゆっくり読まずとも直ぐ行ってしまっても良かったハズだわぁ~」


胸元の肌蹴た加減が男目を惹きそうな美女レヴィックも。


「そうね。 もしかして、手紙を見たから行く必要が出来たんじゃない?」


「かもねぇ」


ウコォンは、仲間の事を考えると直ぐに南に旅立つ事も考えた。 だが、自然魔法遣いのユマに因れば、明日から雪が降り。 その後にブリザードが数日に渡り断続的に続くと予測を聞いた。 ブリザードの中を、整備されたとは云え山間の道を通るのは危険である。 更に、もし其処で襲われたら・・・。


(残るのも・・行くのも、心配しかないわねぇ)


ウコォンは、懐の許す限りこの街に居る事を決めた。







                ≪悲劇の連鎖は続くのか・・・≫






ポリアは、今朝の死体発見で忙しい中だが、ハソロに直接会おうと警察局の施設を訪ねた。 一連の殺人事件で慌しい施設内に入ったポリア達は、見張りの役人に捕まり質問を受け。 それがハソロとの面会を早める結果と成った。


「お前達、冒険者か? 警察局に何の用だ」


ポリアは、施設内の刑事部内側の門前で、見張りをしている下級役人に問われた。 仲間の先頭に立つポリアは。


「済みませんが、私達はオッペンハイマー様のお屋敷に間借りさせて頂いてる冒険者です。 事件の事について、至急にハソロさんにお聞かせしたい事が出来まして、こうして参上致しました。 どうか、取次ぎ願いえませんか?」


「何ぃ? 冒険者風情が、態々ハソロ様に会わせろと云うのかっ。 この忙しい中で、誰が怪しいとも解らぬ中。 そんな事が出来るかっ」


困るポリア達だが、其処に通り掛ったのはポリアの事を警戒警備で見知っていた役人。 彼が話しを通して、ハソロはポリア達の来訪を知った。


取調室でも構わないと思っていたポリアだが。 ハソロは、ポリアの事情を知っている。 そのままハソロの私室へ通された。


「おぉ、ポリア殿」


私室に入れば、応接用ソファーやテーブル、絨毯に一応のソレと思える落ち着いたインテリアが配置され。 暖炉の前には、ハソロが立っていた。


「ハソロさん、ごめんなさい。 でも、至急どうしてもお伝えしたい事が出来て・・・」


ハソロに駆け寄るポリアの言葉に、ハソロは頷き。


「何の。 事件の事も含めて、貴女を邪険には出来ませんよ」


ポリア達を案内して去る下級役人は、


(珍しい・・。 あのハソロ様が美人だと優遇なさった。 あ、オッペンハイマー様の一族だからかな?)


と、思いながらドアを閉める。 厳格なハソロは、美人相手に下心で優遇などしない人物だった。 冒険者達の遺体が見つかった今日の昼前で、のんびり他人と会うなど在り得ない事であった。


さて。


「実は、ハソロさん・・・」


ソファーに座ったポリアは、先に遺跡の護衛調査で捕まえた曲者二人とアルロバートの事。 そして、その直後に殺された冒険者二人と、南門で殺害された冒険者風の人物の事件について語る。


「・・・」


ハソロの顔は、直ぐに捜査官としての厳格なモノに変わった。 全てを聞いた上で、手紙を受け取り。


「そうか・・。 だが、その実名の解ってる人物の詳細な報告を、私はショーターから受けては居らぬ。 なるほど、遺跡でポリア殿に捕まった者達と、学者達を襲う者達には不思議な共通点が在りそうだ」


と、ハソロは語った上で。


「ポリア殿。 貴女のチームのお仲間ですが、事と次第では指名手配を致しますぞ。 斬った相手が悪党の手先などで仕方の無い正当な防衛なら良いですが。 自ら進んで殺したと成るなら、これは捕まえる義務が発生致します。 そのアルロバートと云う人物と、一緒の曲者達が如何なる人物に雇われ、また如何なる用事で遺跡に居たり、お仲間だったダグラス云う人物とクリスティーと云う者を襲ったか。 隅々まで調べます」


ポリアは、何時に無い神妙な面持ちで深々と頭を下げ。


「ハソロさん。 アルロバート・・、いえ。 ロバートは、我が祖父の執事であったクシュリアントの子供です」


「なっ・・何ですと?」


「私とは、・・祖父から共に剣を習う間柄でも在りました。 そして、その父親であるクシュリアントは、今は叔父の屋敷に居ります」


「おぉ・・、何と云う事だ。 嗚呼・・この様な因果が巡るとは」


ポリアは、ショーターが酷い態度でクシュリアントに事情聴取をした事。 そして、ダグラスを襲った何者かが、執拗にアルロバートの身柄を求め。 また、ダグラスを誰かの密偵と間違えた様な言い草だった事を指摘。 その上で。


「ですから、ロバートの体に刺青が無いか調べて下さい。 それからロバートは、誰かに仕官の口利き

頼んだ可能性が在ります。 ですが、祖父の執事であったクシュリアントのお父上と云う人は、中央で不正を働き。 それが元で、クシュリアントは此方へ堕ち流れた身。 私の祖父の伝か、元々の実家が在った中央の伝以外に、クシュリアントの子供であるロバートが仕官の口利きなどを頼める相手は居ないと思うのです」


ハソロは、難しい顔で腕組みをし。


「ふむぅ・・。 確かに・・、不正で“都堕ち”した貴族に関わり合いたいと思う貴族は、恐らく殆ど居ないでしょう。 他に考えると・・。 例えば、その仕官の口を餌に、彼を事件に引き込んだとも考えられますが。 ポリア殿にお心当たりは?」


真剣な決意すら持ったポリアは、


「それは、解りません。 ただ、私は遺跡に関係が在るのではと思っています」


「アラン殿とオッペンハイマー様のお調べに成った?」


「はい。 ロバートがあの遺跡に近づくなと、私が地上部に残したダグラスとイルガに云ったとか。 あの遺跡と他の遺跡を長期に渡って調査すると、アラン先生が私達に新たな依頼として仕事を回したいとも仰っていました。 恐らく、ロバートを雇った人物が居るなら、あの遺跡についても関係が在る人物なのではないかと思えます」


「ふむ。 確かに、そう云えなくも無いですな。 しかし、そんな情報は、ショーターから一つも知らされて来て無い。 一体、何をしているんだか?」


此処で、ポリアは手紙を見てから此処に来るまで必死で考えた事を軸に。


「ハソロさん。 クシュリアントを強引に連れて行き、拷問すらも仄めかした兵士長のショーターと云う人物は、恐らく此処までの情報を得て居ないのでは有りませんか? 解っているなら、叔父や周りの貴族・高位の役人達に、ロバートの事を聞き回っていると思います。 ですが。 噂では、兵士は巡回警備と人相検めばかりしていると・・」


これを聞いたハソロは、大いに納得の頷きを見せ。


「それは、私も同意見だ。 ショーターの奴、極秘に調べて居る中で行き詰まり。 突破口を求めてヨーゼフ様の執事の方の下に行ったと思えます。 解りました。 私も、ポリア殿の情報を部分的に隠して調べてみましょう」


「お願いします。 それと・・。 ダグラスの事は、役人であるハソロさんに一任致します。 仲間ですが、人を斬った以上は、私達の個人感情で済まされる事では有りませんから・・・」


そう言うポリアの顔・・。 必死なまでに何かを堪える様子でもあり、決意をした様な顔でもあり。


(ふむぅ・・、余程に仲間思いならしい)


ハソロは、ポリアの心情を慮り、その苦悩を悟る。 もし、自分の身内か配下の者に同じ者が出たら・・。 実際に経験するだけに、まだ若いポリアが悩むには大変な事だと思えた。






                       ★★★




さて。 一般兵士を束ねる兵士長は3人居るのだが、ショーターは№2で。 年明けの春前には、兵士総長にショーターが成ると噂される。


元々別の国で兵士をしていたと云うショーターを兵士にし、その護衛任務などで兵士長に抜擢したのがフロイムの様だ。 別の国の兵士であった後から、中央で兵士に取り上げられるまでのショーターの過去を知る者は居ない。 


統括に就任する以前に、中央に出向いていたフロイム。 彼の護衛用人として雇われたショーターは、その剣の腕を買われて兵士に成り。 小隊長から大隊長に飛ばし就任し、連隊長として地方のシュテルハインダーに駐屯軍として派遣され。 そして、フロイムの統括就任と同時に兵士長に成った。 総勢数千以上の兵士が駐屯して。 ショーターの5連隊と他の小・中隊を含む一個大隊は、主に警戒警備・要人警護などを担当する。 


下級兵士の長に成ったショーターだが、世渡りも中々心得て居る様だ。 今や、騎士並みの特別な一室を宛がわれる。 兵士長までは地方の財源から手当てが出るらしく、フロイムの息子や貴族の息子に剣術を教えるショーターは、何かと金が入る様で羽振りがイイらしい。


ハソロが剣術に秀でた3名の配下を連れてショーターの元を訪れたのは、昼下がりの午後だった。 曇天の空から、ハラリハラリと白い雪が舞い落ちる頃で、寒さに厳しさが一滴加えられた頃である。


ショーターの部屋に有る暖炉は立派で、ハソロの部屋などに有る暖炉より一回り大きい。 その石の暖炉には、通常よりも多い薪がくべられていて。 壁には、幾つもの勲章代わりの旗が掛けられる。 床には高価そうな大きい絨毯、備わるデスクの黒光りが綺麗で趣が有る。 そのデスクを前に、ショーターは居た。 ナイフで紙を切り刻みながら、大窓を背に一人掛けチェアーに座ってハソロを待っていた。


(フゥ~。 ハソロのバカたれ、何しに来るやら)


前日に厳しく取り調べし過ぎた御蔭で、今日はアルロバートへの拷問を取り止めたショーター。 ミズリーとゾセアに兵士の指揮を任せたので、完全に暇に成っていた。


(はぁ~、脅し道具取り上げられたなぁ。 ど~するか・・)


一向に自分を雇う者を言わないアルロバートに、遂に業を煮やした彼は。 一度アルロバートの父親であるクシュリアントを詮議して。 その後何かいちゃもんをくっ付けては、吐かない息子の脅し道具としてクシュリアントを捕縛しようとしていた。 だが、その寸前でオッペンハイマーとポリアに阻止され訳で、今は非常に歯痒い心境である。


(全く、高々古代文字の解読に偉い時間の掛かるモンだ・・。 ハソロとの面会を終えたら、アルロバート(野郎)にもう一度聞くか・・)


ナイフで紙を切り刻みながら、脳裏ではアルロバートをどうして遣ろうかと妄想していた。


其処に。 ノックがされ、


「ショ-ター。 話が在る」


何時もなら“殿”を嫌そうに付けるハソロが、今日は呼び捨てだった。


(なんだ? 今日は、奴さん偉くご機嫌斜めかよ)


ショーターは、面倒な事だと思いながらも。


「どうぞ。 鍵は開いている」


と、声を出した。


扉を開きショーターの構える部屋に入ったハソロは、ゆったりとした足取りながらショーターの向かうデスクの前に向かう。


それに合わせた様にショーターが。


「用件は早めにしてくれよ」


まだ40前後どうかと云うショーターを見下ろす所まで来たハソロは。


「ショーター。 お前の元に、アルロバートと云う人物が捕われているな。 至急に用が在る故、会せて貰いたい」


「あ・・・」


ショーターは、完全に唖然とした。 フロイムを始め、方々には曲者の他言を言わない様に頼んである。 何の進展も無い今、アルロバートの事をハソロが知るのは考えられない。 遺跡の一件は、兵士に任すと命令を頂いてあったからだ。


完全に気を抜かれたショーターの顔を見据えるハソロは、


「おい、聞いているのか?」


ショーターは、想像もしていない展開に驚きながらも椅子に凭れ。


「これはこれは・・、捜査官の副総長殿が、領域無視の捜査とは・・」


と、嘲笑いはぐらかそうとしたのだが・・。


「ばか者っ!!」


ハソロの怒声がショーターの声を遮った。


「・・」


突然押し掛けられた上に、“ばか者”呼ばわりされてはショーターとて目つきが鋭く成る。


だが、ハソロは堂々とした姿で。


「いいか。 ワシ達が抱えてる事件の一つに、南門と街中で死んだ冒険者の事案が在る。 その犯人らしき人物が、女連れで早朝に襲われていたと云う目撃例が報告された」


「ほう・・。 俺達が遺跡から戻った翌朝に在った、アレか」


ショーターは、見つけたのが門を守る兵士だから良く覚えていた。


「知ってるなら早い。  実はな、その犯人と思われる者を襲ったのは、あの斬り倒されていた者の様なのだが。 争う際に妙な事を言い合っておったらしい」


「“妙”な?」


「そうだ。 “アルロバートの居場所は何処だ”とな」


ハソロの口からその言葉が出た瞬間、ショーターはギョッとして。


「なっ・何だと?」


それを無視するハソロは、更に追い討つ様に。


「声を聞き、何やらいがみ合うその現場を見掛けたのは、郊外から朝市に物を売りに来る行商人と。 たまたま仕事に向かう途中の冒険者等2人。 迷惑に成りたくないからと、書面だけ密告箱に提出して逃げた様だ。 しかも、その人を斬って逃げた犯人とやらは、御主も知っておる遺跡へ護衛に向かったポリア殿のチームに居た、ダグラスと云う剣士だそうな」


「っ?!!!」


ショーターにとってのこの話には、驚きの余り言葉を失った程だった。 あの遺跡に行く途中で会話を交わし、地上に残って曲者を発見したあのダグラスと云うのだから。


ハソロは、強気な眼でショーターを睨み見て。


「門を出る時にダグラスと云う剣士が襲われたのは、御主の受け持つ事案とぶつかるかも知れんが。 冒険者殺しは別件、痴情の縺れの様だ。 その関係が解り次第、事案の半分はそっちに移すにしても。 冒険者殺しの一件と今は一緒に捜査しておる故、納得の行く報告書を作る上でも面会はさせて貰うぞっ」 


完全に不意打ちを食らった顔のショーターは、かわす言葉が見つからず。


「なっ・ならこっちに事件の事案をまっ・まま・回せっ!! 遺跡で襲われた件と合わせてしっ・調べるっ!」


だが。 一応は上に筋を通さなければ、案件を違う局部で移行など出来る訳も無い。 ハソロは、ショーターの焦りを見て攻勢を仕掛けた。


「大体、オッペンハイマー様が2度も襲われたと云うのに、何でその男の身柄及び証言の情報がこっちに来ないんだ? 今日に密告箱からの手紙を見て、オッペンハイマー様やポリア殿など方々に散々聞き込みして。 さっきやっとアルロバートなる者の情報が解ったわっ!! おい、ショーターッ!!! この捜査の遅れ、しっかり責任の所在を明らかにする上で、裁判部に報告する。 お前、場合によっては公安審議にも出廷して貰うぞ」


ショーターは、いきなりの話に青褪める。


「こっ・公安審議だとぉ・・」


怯えたショーターの理由は、至極簡単だ。 それぞれの街の統治を行うのは統括だが、唯一中央の所属領域なのが貴族・騎士の統括と裁判部である。


中央の王の勅命で動く騎士や貴族は、あくまでもその関係は統括や都政などとは“協力”と云う立場に当たる。 それぞれの街に住む貴族や配属された騎士を、その場所で何の役職に据えるかは統括の任命だが。 その権限は仕事に限ってで。 その都市に住んでいる貴族、そして駐屯兵の軍事的な指揮権を持たされる騎士は、また別の権限が在る。 ショーターも、そしてフロイムもコレが在るから、関係上ぶつからない様に仲良くする訳だ。


更に、裁判を開く裁判部は、特別な権限で統括も手出しは出来ない。 中央の勅命無くその権限を脅かそうものなら、即座に弾劾会議と弾劾審議が開かれて、その任を解かれてしまう。 つまり、国の監視の目の役割なのだ。


(コっ・コレはま・ままズイい)


古い貴族や騎士とも仲の深いオッペンハイマーの統括時代から、優秀な捜査官として。 そしてその顔の広い事でも有名なハソロを敵に回しては、今後が危ないと思い。 ショーターは、必死に心を落ち着けると。


「そうゆう事なら、会せずには居れんな。 だが、今日は無理だ」


ハソロは、ズイっと前に踏み込み。


「何故だ?」


「うむ。 昨日までの取調べが祟ってしまったのか、あの者は体調を崩しての。 医者の話では、風邪と心労が祟ったのではないかと・・。 だから、明日以降にして貰いたい。 薬も与えたし、明日か明後日には取り調べも再開出来よう」


すると、ハソロはすんなり身を戻し。


「そうか。 それならば、御主の二の舞は出来ぬ。 今日は、引くとしようか」


ショーターは、何の事かと思い。


「何だと?」


すると、ハソロはニヤりと笑い。


「御主、そのアルロバートの父親だったか。 病床に伏せる歩けもしない人物を脅迫したらしいの。 アルロバート為る者を調べる過程で、御主の凶行も聞けたわ」


「んぐ・・」


ショーターは、悪い事を知られたと顔を歪める。 勢い余った行動だったが、作戦でも在った。 相手を追い込み、クシュリアントが憤り怒鳴り返してくるなら、何か侮辱された故にとか言っていちゃもんと付ける予定だったのだ。


ハソロは、完全にショーターの鼻っ柱をヘシ折ったと思い。 あえて普段の世間話でもするかの様な口調で。


「うふぁふぁ、住民からも統括部に苦情が行ったらしいの。 お前、易々と兵士総長に成れるかえ?」


知恵の回るミズリーが此処に居ないのは、ショーターには完全に誤算だった。


「では、面会が出来る様に為ったら連絡をくれ。 私は、今朝に上がった遺体の事も含めて忙しいからの。 早めに面会を頼むぞ」


ハソロは、そうショーターに言って部屋を後にする事に。


そして、部屋を出て行き際だ。


「おう、そうだった」


と、ハソロが言うので、まだ何かと思うショーターは身構えた。


「何だ?」


「オッペンハイマー様がの。 忙しい中で、自分の代わりにポリア殿や奥方様にアラン殿を見舞わせたいとの事だ。 私の許可も付けたが、一応言って置く」


自分の良い様にしていた領域を崩され、ショーターは顔を歪めながら。


「フンっ。 今だ意識不明のままのアランだっ、見舞いなどにケチを付けるかっ! 好きにしろっ!!」


怒鳴ったショーターは、完全に負けであった。





                    ★★★




さて。 夕方に為り。


「ミズリー。 大変な事に成ったっ」


ショーターの部屋で、戻ったミズリーとゾセアが報告を終えた後。 ゾセアを帰らせて二人に為った所で、ショーターは少し前の事を全て語った。


「書面による密告ですか・・」


ミズリーは、ハソロの来た話にやや顔を曇らせた。


事件などの目撃情報を得る上で、警察局が街の彼方此方に作っている“密告箱”。 時折、下らない情報に混じって、とんでもない事件が発覚する事もあって。 警察局は重宝している。


頭を抱えたショーターが。


「あぁ。 ハソロが今日に為って、急にその事を解ったのは、恐らく密告が在ったと云う証拠だろう。 そっと探りを入れた処に因れば、確かに遺跡の調査に同行したあのポリアとか言う美人のチームが、昼前に警察局の刑事部に来たらしい。 良く解らんが、ハソロが呼んだと云う話だ」


ミズリーは、雪で濡れた前髪を除け。


「ダグラスと云う仲間及び、遺跡でのアルロバートの事を聞いたに違い在りませぬな・・」


「多分は・・。 ミズリー、これからどうすれば良いか。 一応、アイツの拷問の傷跡は、魔法で消せる。 だが、まだ折れた骨などは完全にくっ付いてないし。 視る者がハソロなら、何をしたか解る。 ヨレヨレで、まともに動けないからな・・」


ミズリーからするなら、其処まで遣ったショーターが恨めしい。 だが、過ぎた事など気に掛けるのも時間の無駄である。


「・・・。 こうなったら、局所対処で行きますか?」


と、云うミズリーをショーターは見返し。


「殺る・・か?」


「あの者共に頼みましょう。 まだ数名街に居る冒険者の学者ですが、恐らく解読出来ますまい。 ハソロは、帰り掛け自分の馬車を住宅区内の大通りで止めて、其処から歩いて家に戻ると云いますから。 其処を襲えば、簡単でしょう」


「そ・そうかっ」


ミズリーは、此処で。


「ショーター様、ついでにですが」


「ん? 何だ?」


「えぇ。 明日のハソロの帰宅を遅らせる為に、一つ騒動を起しましょう」


「騒動? 誰か殺すのか?」


「はい。 病院で死線を彷徨ってるジジイを、です」


ショーターは、アランを殺すと聞いては驚きを隠せない。


「だが・・、アランなら解読が出来るかも知れんぞ?」


ミズリーは、至って冷静な面持ちで。


「それが、他にも見つかりそうです」


「ほ・本当か?」


「はい。 アランの愛弟子で、ルフィムアイリーンと云う娘が居るとか。 アラン以上の才女として有名だったらしく。 数年前に結婚をして何処かに移り住んだとか。 明日にでも中央のアノ方の方に手配し、探して頂きましょう」


「おぉ。 漸く解読の兆しが見えたな」


「はい。 ですから、老い耄れは不必要です。 下手に目覚めても、此方の動きを気付かれるとも限りません。 どうやら、あの老い耄れは裏側に気付きそうだったとか。 不安要素の芽は、発芽仕立てでも摘み取りましょう」


ショーターは、深く頷き。


「お前に任せる。 上手く遣ってくれ。 ハソロが死ぬそれまで、俺は動かん」


「賢明なお考えです」


暗い外に雪が降る。 そんな様子が窺える窓の前で、ミズリーはショーターに一礼して下がった。

どうも、騎龍です^^


ご愛読、ありがとうございます^人^

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