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エターナル・ワールド・ストーリー  作者: 蒼雲騎龍
K編
38/222

third episode

                冒険者探偵ウィリアム 3部







一つの事件が、幕を下ろす時が来た。  ケウトとローウェルが逮捕されて陽の明けた早朝。 霧雨が降る靄混じりの街中を、ミレーヌとウィリアム一行を乗せた馬車と、役人を乗せた馬車二台がエレンの店に向っていた。


全員、何処か疲れた印象が強い。 澄ましているウィリアムはそれほどでも無いが。 皆、一昼夜以上は寝ていない状態だ。 


車内で、向かい合う個別席に座ったウィリアムとミレーヌが喋っている。


「ウィリアム君、何で・・・貴方はケウトが怪しいって思ったの?」


ウィリアムは、塩とワインの事を語り。


「エレンさんと個室の部屋に店で案内されて、メニューを見て気付いたんです。 ですが、あの時点でそれを追求しては、ケウト氏に共犯が居た場合には彼がトカゲの尻尾の様に切られる懸念が有りましたから。 それから、エレンさんに昔話をしていた内容にも疑問がありましたし」


仕切り壁の向こうから、穴の開いた壁に中腰で近寄るエレンは。


「まさか・・、あのお話に?」


ウィリアムは、ミレーヌの馬車の中が特殊で仕切られているのを見て。


「変わった馬車ですね・・・、前も見ましたが」


ミレーヌは、少し言い訳染みた様子で。


「ま~、それなりに利点もあるのよ」


ウィリアムは、丸い小窓に付く雨の水滴を見た。


「ケウト氏は、昔の話でシェルハさんとソレアさんが、エレンさんを連れて夜逃げを計画したお話をしました。 それから、シェルハさんが計画していた新しいやり口の商売。 頭の良いシェルハさんです。 ダレイと云う悪魔の耳にその話が入らないようには注意していたはずなんです。 だれもがその才を褒めるシェルハさんと云う人物が、無能と呼ばれるダレイに出し抜かれる。 その裏には、密告者が居たハズです。 それも、極親しい話し合える誰かの中に・・・」


エレンは、その話に耳を傾け。 じっとウィリアムを細かく空いた仕切り壁の穴からモザイク画の様に見ていた。 


ウィリアムは、更に続けて。


「考えられるのは・・・、シェルハさんを引き止めたかったルイスさん、シェルハさんに出て行って欲しくない下僕のポルス。 そして、買収か弱みを握られてか知りませんが、シェルハさんと親密に相談し合える親友・・・。 その中で、ケウトさんの話は何処か正確過ぎるんです。 言葉の彩にすら成らないかも知れませんがね。 どうして、ソレアさんと二人で待っていただけなのに憶測と言ってもあそこまで語れたのか・・・、俺は引っ掛かりました。 輸入するだけでも難しいワインや塩と共に考えるに、彼がその密告者ではないかと思いましてね。 エレンさんを彼の元にも安易に行かせられないと踏みまして・・・」


ミレーヌが、自分を指差して。


「私の所?」


「はい。 安全で、且つローウェル邸を見張れる位置に有りましたから」


ミレーヌは、更に。


「で? 犯人を逮捕する前に、事件の現場を如何して・・・壊したいの?」


ウィリアムは、もう隠す気も無い。


「多分、ケウト氏の話や、あの浴室の壁の不自然さなど考えるに・・・、シェルハさんが殺されたのは浴室です」


ミレーヌが、眼を見張って息を飲み。


エレンが、口を抑えて後退りして席に戻る。


ミレーヌは、エレンを心配しながら・・・。


「まさか・・・」


ウィリアムは、もう全てが見えている。


「いえ、ダレイをあの浴槽で殺すのは、犯人の望みだったんです。 最愛の夫の命の奪われた浴槽で、その命を奪った相手を殺す・・・。 完璧な復讐ですよ」


その後、馬車はエレンの店に到着した。


降りた後ろの馬車の役人数名が中に入り、関係者を起す。


ウィリアム一行とミレーヌはすぐさまに浴室に向った。 事件の時から、そのままにされている。 ウィリアムは、入るなり。


「天井には、ステンドグラスで周りの壁は、一級石材。 なのに、横の壁は安い素材・・・。 何故、粘着塗料が剥がれて10数年に一度はタイルの張替えをしなければ成らない今の形に成ったのか・・・。 理由は、其処に隠さなければ成らない何かが有るから・・・」


鉄筋ハンマーを二つ持ったアクトルから、ウィリアムは一つを受け取る。 そして、緩やかにタイルの壁を打って壁を壊し始めた。 


「なっ!! なんの音だっ?!!」


奥の居間から人の声がする。


「止めてっ!!!!! 壁は壊さないでっ!!!!!」


ルイスの悲痛な叫び声が・・・。


だが、西側の壁を壊したウィリアムは、タイルの崩れた下から壁に現れた黒ずんだシミと白い線状の傷が無数に付くのを見て。


「ああ・・・、酷い。 コレは・・・、酷い」


と、首を左右に振って項垂れる。


仲間の誰も、その後が意味する物が何か解らない。 だが、ミレーヌは長年の経験から、黒ずんだシミを見て。


「コレ・・・、血?」


と、壁に歩み寄る。


ウィリアムは、脇目にエレンを見た後で。


「そうですよ。 その、白い線状の無数の傷は・・・爪で引っ掻いた傷だと思います」


エレンが、ウィリアムに寄る。


「“爪”? 指の・・・爪?」


役人の制止を振り切って、


「駄目っ、止めてっ!!!」


と、悲鳴を上げて浴室の入り口に姿を見せたルイスと、その後ろに来たポルスをウィリアムは振り返って見た。


「あ・・・ああああ・・・」


壊した壁に見えるシミと引っ掻き傷の痕を見たルイスは、その場に力無く崩れた。


ウィリアムは、ルイスにゆっくりと歩み寄った。


「貴女ですね? 被害者を殺害した犯人は?」


慌しく纏めた髪が崩れかかるルイスは、呆然とするようにウィリアムを見上げた。


ウィリアムは、壁の方に指を向けて。


「あれは、シェルハさんが残した物ですね? この浴室は、20年近く前にシェルハさんが殺された場所なんですね?」


震え出すルイスは、顔を両手で押える。


老僕のポルスが、悔しそうな顔でウィリアムを見て。


「何で・・・何で暴くんじゃ・・。 誰も幸せに為らんのに・・・」


まだ、この老人は全てを知らないらしい。


エレンが、涙を浮かべる顔で悲しみを堪えながらに。


「ポルス、控えて。 ウィリアムさんが事件を解決しなかったら・・・、昨日で母が殺されてたわ。 私も、いずれ殺されてた」


と。


「なっ・・何ですと?」


驚くポルスに、エレンは俯きながら。


「ローウェルさんとケウトさんが結託してたの・・。 ウチの財産と店を狙って・・・。 昨日の夜、二人の計画の会話を聞いたから本当よ」


ポルスは、ルイスは此処で安全にしているから意味が解らず。


「お嬢様、ルイス様は安全ですぞ」


エレンは、否定をする。


「ウチのお母さんじゃない・・・、私の・・本当のお母さんよ」


「げぇっ、ソ・ソレア・・・さんですか?」


驚くポルスはエレンを凝視し。 “ソレア”の名前が出た事で、ルイスも顔から手を離して虚空を見つめるような素振りに為った。


「昨日、う・ウィリアムさんが助けてくれたわ」


ポルスとルイスの目が、ウィリアムに移動する。 ルイスは、ガックリと項垂れてしまった。 何か、心の支えが壊れてしまった様な・・・そんな印象を皆は受けた。


全ての時間が停止した様に為った浴室から、全員が居間に移った。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






遂に、ルイスが自供をした。


ローウェルは、ケウトと結託してソレアを探し出した。 実はケウトが買い付けの旅の途中で偶然にソレアを見つけてしまった。 半年前の話だ。 そして、毒殺でダレイを殺す計画をローウェルに持ち掛けた。 ローウェルがその話に乗ったことで、ケウトは秘かにゴロツキを雇ってソレアを誘拐してきたのである。 物乞いの様に、地方都市で薬を売っていたソレアの誘拐は、いとも容易い事だったらしい。 


ケウトが自供した。 全ては、此処から始まる。


ローウェルは、エレンを妻にしてダレイを殺し、その財産の全てを手中に収める事が出来ると喜んだ。 そして、毒殺を実行するのにルイスを選んだ。


エレンと結婚するローウェルの持て成しに何度か代理で出向いたルイス。 ローウェルは、言葉巧みにルイスを慰めて、彼女とベットを共にする間柄にしてしまった。 そして、毒殺を持ちかけて、毒を渡したのである。


ルイスも、ローウェルとは最初は半ば強引でも有ったが。 ひっそりと家に押し込められた時間が長く、20年ぶりに女として見られた事にルイスは心を動かされてしまったのである。 ソレアの存在の事は、ルイスは知らなかった。 だが、エレンを生き人形にしているダレイにルイスも危機感を持っていた。 ローウェルが協力者に見えて、彼に心を許してしまったのだ。


居間のソファーに座るルイスは、死人の様な顔を俯けて。 壁の周りに立つ使用人夫妻や役人の目が在る中、向かい合うソファーに座ったウィリアム・ミレーヌ・エレンの3人を相手に話し始めた。


「一ヶ月前でした。 いきなり、ローウェルさんから毒を渡されたんです。 エレンを・・ダレイが殺そうとしていると・・聞かされました。 ダレイと云う人物は、自分の子供のシェルハを忌み嫌っていました。 利発で・・商才が有ると皆に褒められ事に対しての嫉妬です・・。 ですから、エレンに対しても小間使い同然でした・・。 でも、この家を継ぐのはエレンである事から、生活や服装にはそれなりに見栄でお金を・・・。 ですが、愛情など微塵も無い生活でした」


エレンや使用人の皆が俯く。 その話の内容を裏付ける様に。


ルイスは、鼻を啜り。


「私も、最初は殺害だなんて・・・。 でも、あの浴室で死んだ・・・いいえっ、殺されたシェルハの姿を思い出す度に湧き上がった憎悪が・・・憎しみが私を突き動かしたんです。 ローウェルの話では、ダレイはエレンを嫌うので早く子供を産ませろと命じていたと・・・。 二人も生めば、用は無いから始末すると・・・。 ダレイにとって、自分の血とローウェルの家柄の跡取りが欲しいのであって、その他のなにも求めていないのだと・・・思いました。 なにより・・・、シェルハが死んでから、毎晩の様に私を襲っていたあの獣っ。 私は、長年溜まりに溜まった憎しみが・・・毒を手にしてから蘇る気がしてっ!!」


ウィリアムは、同じ女の身で言葉が出なくなったミレーヌなどの代わりに。


「あの浴槽の底に、少量ですがドロっとした糖分が付着してました。 お風呂を沸かして、貴女は氷砂糖かザラメの中に毒を入れて浴槽に沈めましたね? しかも、最後に少し浴槽の中で温度差が出来るように最後の掻き混ぜをしなかった。 中に入ったダレイ氏が、浴槽で死ぬようにする為に。 ダレイ氏は、中に入って温い下と熱い上を良く掻き混ぜた。 底に流れ出て溜まったあの毒がお湯の中に広がる。 ダレイ氏は、癖でもあるタオルを顔に乗せる行為をしてしまい、タオルや湯船から立ち上る湯気に含まれた毒の中毒で死亡した」


涙目のルイスは、苦笑して。


「丸で見たかのように言うのね・・・、っでも・・正解だわ」


ウィリアムは、エレンを見て。


「ルイスさん、貴女はエレンさんが第一発見者に為ったの知って慌てた。 毒の湯気が充満する浴室です。 一応、天窓も少しずらしたかも知れませんし、小窓も開けておいた。 だが、それでも毒にやられては誰が殺害したか解ってしまう。 だから、浴槽のお湯を素早く抜く為に態と狂乱をしたように振舞った」


ソレアは、全てを見透かされたのか、急に肩を揺らす。


「うふふふ・・・っふふふ・・・。 当たり前じゃない、エレンはこの家の相続者よ。 私は、シェルハが死んだ時点で内縁の妻にされたわ。 相続権は一番最下位・・・、エレンに毒で死なれたらバレて私のこれからが台無しじゃない。 何の為に、この20年我慢してきたと思ってるのよ・・・、自分の子供でも無いエレンを押し付けられて・・・、毎日襲われて・・・。 貴方には解らないでしょ? この苦しみ?」


ウィリアムは、頷く。


エレンが、顔を抑えた。 今まで、母親として思っていたルイスの本心が滲み出たからだ。 


(やっぱり・・、お義母さんは私の事を愛してなかった・・・)


漠然と蟠っていた思いだ。 母親としてルイスはエレンに目立つ接し方をして来た事は一度も無かったのである。


「おぉ・・奥様・・・」


ポルスが、ルイスの嘆きとエレンの嘆きを同時に知って呻く。


ミレーヌも、此処に来てこんな家族の愛憎を見るとは思ってもいなかった。


すると、ウィリアムは立ち上がる。 そして、ルイスの前に来て屈んだ。


「貴女が、取調べの時に来ていた服、随分と明るい色でしたね。 黄色い色の表記には、喜びや自由の意味が含まれる。 貴女は、あの時に自由になれる事を喜んで明るい服装を選んでしまった。 ですが、ローウェルもケウトも貴女とエレンさんを生かしておく気は更々無かった様です。 特に、ローウェルはね」


ルイスの顔が、グッと強張った。 ウィリアムから顔を背ける。


ミレーヌが、後は施設で聞こうと立ち上がった。


「ウィリアム君、もう犯人と決まったから連行するわ」

 

泣き出したエレンに配慮したかったのだ。


ルイスは、鋭い目をエレンに向けて。


「もう、本当のお母さんが見つかったのね。 私は牢獄・・、貴女はどうなるのか知らないけど、精精元気にやりなさいよ」


と。


壁に向いたロイムは、最悪の家族の形で終わるのだと・・・確信した。


アクトルやスティールも嘆くエレンが可哀想である。


クローリアは、廊下に出て居た。 自分の父親も横暴で酷い親なだっただけに、エレンのこれからが悲しくなる。


役人も、移動の用意に動き出した。


その時、ウィリアムは脇に来たミレーヌを腕で阻止し。


「俺は、貴女に同情しますよ。 可哀想に」


と、済ました顔を向ける。


鋭い眼をしたルイスは、女王様にでも成ったかのように眼つきを緩めてウィリアムに顔を近づけて。


「そう、それは嬉しいわね。 なんなら・・・罪でも軽くしてくれる?」


だが、ウィリアムは視線を外さず、また声も変えず。


「元々の実家をダレイに奪われ、恋人も殺された。 ローウェルに誘われて、久々に女に成れて嬉しかったでしょう?」


慰みの言葉に毒が含まれ、ルイスの顔が俄に険しく成った。


「何が言いたいのよ・・、説教なんて嫌よっ!!」


「・・・、貴女が密告したんですか? シェルハさんの夜逃げを?」


その言葉に、ルイスは息を飲んで眼をグッと開く。 衝撃を受けた顔だった。


「そ・・・それは・・」


口ごもるルイスに、ウィリアムは今までに無いくらいに声を大きくし。


「別の女の下に行く恋人が憎かったっ?!!!!」


ルイスは、驚いて首を左右に振って。


「ちっ・・ちがっ」


だが、ウィリアムは更に詰め寄って。


「唯一の財産の相続が出来るシェルハさんとエレンさんが出て行く事が嫌だったっ?!!!!!」


この声に、仲間一同全員が驚いた。 ミレームも、エレンも、ポルスなど使用人も。


「ちょっ、ウィリアム君っ」


止めさせようとしたミレーヌの手が肩に乗ったのを弾き、ウィリアムはルイスに詰め寄った。


「どうして逃げなかったッ?!!! 襲われる日々からっ、閉じ込められた日々から今までどうして逃げなかったっ?!!!!!!」


「そっ、それはッ!!」


責められて、ルイスは怯える。


だが、ウィリアムは更に。


「アンタが逃げれたってエレンがどうなろうと知ったこっちゃ無いだろうっ?!!! シェルハさんの事を密告して殺させたのはアンタだろう?!!!」


「違うッ!! 私じゃ無いッ!!! 違うッ!!!」


一気に攻められてルイルスはもう如何して良いか解らなくなって感情的に否定をする様に成った。


「嘘をつけっ!!!! なら襲われてまでエレンを育てる必要があるかっ!!!! アンタの家は、古い商人の家。 親戚も多数居て、何処も裕福じゃないかっ!!!!」


ルイスの否定する顔が悲しみに歪み、涙を流してウィリアムの言葉を必死に否定する。


ウィリアムは、暗殺闘武を遣う時ですらしないような怒りの眼をルイスに向けて。


「じゃ何で逃げなかったああっ?!!!! 騙して死んだシェルハに対する償いかあっ?!!!!」


その言葉に、ルイスの感情が爆発した。


「違うわよおおッ!!!!! エレンがぁ・・・エレンが可愛かったからよぉぉぉ・・・・。 最初は憎かったのに・・・あのダレイに暴力を振るわれて子供の産めないアタシにはぁ・あああ・・・エレンだけが・・・エレンだげが本当の子供だからよおおおっ!!!!!!!」


押さえ付けて、隠そうとした心の蓋が飛び外れた。 大声を上げて喚き、ソファーに泣き崩れるルイスを、ウィリアムは平静の顔に戻って見下した。


「最後に自分だけ棄てる必要なんて無いでしょ。 殺人を犯した自分がエレンさんの傍に居てはいけないとでも思ったんですか? あの女に汚いと有名なダレイが、貴女に食指を伸ばしてエレンさんに伸ばさない訳は無いと思える。 それに、貴女がエレンさんと仲良くしては、ダレイは家族の絆を怖く見て何をしでかすか解らない。 ずっと、その細身でエレンさんを守って来たんだ。 最後まで居てあげるんですね。 ま、長く牢屋の生活は強いられるでしょうが」


丸で、冷静なのに吐き棄てる様に言うウィリアム。


ルイスは、涙で濡れる顔をウィリアムに上げた。


すると、ルイスを見たウィリアムは、何処か悲しそうに為った。


「自分を犠牲にするもこれで最後にしましょう。 助かったソレアさんは、もう半年と生きれるかどうかの身体。 この先、エレンさんを一人にしないほうがいい。 彼女の強さなら、貴女が傍に戻っても大丈夫。 逆に・・励みになる」


「うっ・・・うううう・・・」


泣き崩れるルイスに、涙で顔を濡らしたエレンが近寄って。


「お義母さん・・・、私にはどっちもお母さんよ。 お願い、私を一人にしないでっ」


と、その肩を抱くと、ルイスがエレンにしがみ付く。


「エレンっ・・・貴女だけ・・貴女だけは幸せにっ・・ううう・・・」


親子の姿に泣くロイムは、


「うぅ・ウィリアムってスゲ~」


母親を最後に亡くしたアクトルは、涙をダラダラ流して。


「うんうん・・・親子だ」


もらい泣きしそうなスティールは、横を向いて黙っている。


エレンは、捕まって留置所に入れられるまでルイスに連れ添う為に一緒に馬車にまた乗り込んだ。 


犯人として、馬車に連れられたルイス。 ポルスも、当時を知る人物として参考人の扱いで一緒に連れて行かれる事になる。


ウィリアム達も、馬車に乗り込んだ





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





馬車の中で、またもやミレーヌはウィリアムに腕組みのままに。


「なんで、ルイスの心が解ったの?」


「・・・、解らなかったんですか?」


ウィリアムは、逆に呆れを見せた。


「はい・・・スイマセン」


項垂れるミレーヌ。


今頃、役人達が乗る馬車の中で親子は支えっている頃だろう。 


ウィリアムは、何処か遠い眼をして小窓を見る。


「本当にダレイ氏もエレンさんも憎いなら、両方殺しますよ。 両方殺して、自分が財産を相続すればいい。 20年・・・20年は長い。 そんなに憎んでいたなら、先ずエレンさんを殺してダレイ氏に絶望でも与えて。 それから本人を殺す方がもっといい。 20年、ダレイ氏の下に居続けたルイスさんを支えた物は何だったか・・・。 ローウェルから渡された毒を使ってまで守りたかったのは何か。 風呂場で誰が死のうと知ったこっちゃないと思わず、エレンさんが居ると聞いて狂った様に換気をしたその真意が、何か・・・。 考えれば解りますよ。 毒素が充満してる部屋に踏み込んだら、自分も危ういのにね」


「な・・ナルホド・・・勉強になります~」


頷くミレーヌ。


ウィリアムは、美しい女捜査官に横目を向け。


「ぶっちゃけて、誰か犠牲者を出した方が良かったんですよ」


「はぁ?」


ミレーヌは、眼を点に。 被害者が二人に為るではないかと思ったが・・。


「だって、その死んだ人に罪を擦り付けられるでしょ? 毒の出所さえバレなきゃなんとでも言える」


「あっ・・・、そうね」


ウィリアムの云う意味は理解できる。 “死人にくちなし”で、死んだ人間に全てをおっ被せればいい話だ。 そうゆう意味で云うなら、エレンは過去から今に記憶の生き証拠だから、真っ先に死んで欲しい人物でもある。 


「最初から、ルイスさんは捨て身だったのかも知れない。 エレンさんの行く末を見守りきるまでの・・・。 母親は、子供を守る時には鬼にでも悪魔にでも為る時が有りますからね」


と、ウィリアムは言い切った。 


聞くミレーヌは、俯いて遠い記憶を思い出す。


「私の母も、病弱だが強かった。 父の仕事上、時には危ない輩に怒鳴り込まれる事も有ったが・・・。 凛として引かなかった。 私が居たから、尚更父の留守を預かる気持ちは強かったと思う。 父の後を継ごうと決めた私を、あの世で嘆いておられるかもしれないな。 “レディには・・相応しく無い”が、母の口癖だった」


ウィリアムは、横目のままにミレーヌを見て。


「ま、いいんじゃ~ないですか? お父さんの方は、喜んでそうですし」


ウィリアムを見上げるミレーヌは、少し笑って。


「かも。 ま~後はイイ結婚相手のみが私の願いよ」


ウィリアムは、スぅ~っと横に顔を外す。


ミレーヌは、ムっとした顔に成り。


「何で視線外すのよ」


「他意は・・・」


その二人のやり取りを壁越しに見ていたスティールが、


「おい。 俺も混ぜろ」


ミレーヌが、キッとスティールを睨むと。


「あ・・いえ。 ご存分にどうぞ・・・」


スゴスゴと身を引いたスティール。


施設に戻り、ウィリアムも入れた取調室に入ったルイスとミレーヌの事情聴取は手短に終わった。 ルイスは実行犯で、計画犯では無い。 自供が取れたので、直ぐに拘置牢に移された。


エレンには、証拠隠滅の恐れが無いので牢越しながら謁見を許す。 ミレーヌ出来る少ない心遣いだった。


さて、ケウトの本格的な取調べをしたミレーヌは、ケウトと云う人物が凡そ紳士とは言えない人物であると解った。


「話すっ、何でも話すから死刑だけは勘弁してくれっ!!!」


取調室に入った者達の中でも、ケウトは一番煩かったし。 一番醜く、何より罪の重さを理解していないと思わせた。


ケウトは、料理人の息子ながら料理には感心が無かった。 厳しい父親から逃げて遊ぶ中、シェルハ達と付き合う一方で。 良からぬゴロツキとも付き合いが有った。 ある時、そのゴロツキの諍いが酒場で起り。 ケウトは人を刺す。 逃げたケウトの姿を見ていたのが、何とダレイの知り合いだった。 ダレイの知り合いは、面白半分のお話でダレイに話すが。 ダレイはケウトの事を知っていて、その事を確かめてからケウトに脅しを掛けて来た。


「俺は、脅されたんだっ。 誰が、あんなダレイに懐くかよっ!! シェルハと皆で商売したかったっ!!」


まだ雨の水気を含んだ礼服を着る髪の乱れたケウトの顔を見つめるミレーヌは。


(同じ穴の・・・。 同じね、死んだオジイチャンと、コイツは)


と、冷めた目で話を聞いていた。


ダレイの手先に為ったケウトは、シェルハの行動のあれこれを全て語った。 口の堅いシェルハだが、ケウトが尋ねてくれば追い返すことも無い。 ソレアとの恋愛、新しい商売の事、そして・・・ソレアと逃亡する事。


ああの夜、エレンを連れてソレアと逃げる事を知ったダレイの怒りは頂点に達した。 そして、エレンをルイスに預けて部屋に閉じ込めたダレイは、その時雇っていた悪漢二人と共にシェルハを風呂場に閉じ込めて口を塞ぎ折檻を・・・。 ポルスが、一緒に捕まって折檻を受けたが。 シェルハに対するのは拷問だった。 首に縄を掛けて絞め。 窒息のギリギリ手前で緩めて暴力を振るう。 その行為が死ぬまで繰り返されたのである。


ケウトは、秘かにソレアと別れてからダレイに会い。 死んだシェルハを見てゾッとした。 


そして、20年近くの年月を経て。 まさか、地方都市の片隅で、薬を地べたで並べ売るソレアを見つけようとは・・・。


ケウトは、最初ソレアに何か見つかり難い毒を作ってもらって、それをルイスに渡す事を計画した。 自分の店で毒殺事件を起こすことは出来なかったし。 自分の手を汚すのもイヤだった。 しかし、ルイスに渡すのにはどうしても自分が手渡しする必要が在ると悩んだケウトは。 利用されているローウェルに接近を試みた。 


だが、見かけ以上に悪だったローウェルは。 ソレアを誘拐し、毒薬を作らせてルイスに飲まさせてダレイを殺害し。 エレンを娶って財産を独り占めすると云う大胆な計画を考えた。 ケウトは、それによって自由を勝ち取れると乗ったのである。


手を縄で縛られ、足にも枷を嵌めるケウトは、狭い取調べ室でミレーヌに懇願する。


だが、ミレーヌは、彼を情状酌量する心を持ち合わせなかった。


さて、この事件が思いも由らない方向に動くのは数ヵ月後。


ウィリアム達が、このマーケット・ハーナスの国から居なくなった後の事だ。


ローウェルは、フラストマド大王国の辺境都市で爵位を賜っていた男とされていたのだが。 それが大きく変わった。 ローウェルは、その爵位の有る家の娘を誑かせて結婚し、爵位の地位を奪い取った男であった。 その結婚した娘と娘の父親が殺害されていて。 ローウェルには懸賞金が掛けられていたのである。


ミレーヌは、ダレイの殺人事件の解決だけではなく。 ダレイの不正の捜査で功績を挙げる。 だが、その姿をウィリアム達が見ることは無い。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






さて、夕方。


取調べを受けただけのポルスとエレンが、馬車に乗って先に戻った。


後からミレーヌの見送りを貰いながら施設の外にでたウィリアム達は、雨が上がっているのを見ている。 何故か、スティールの脇にはローウェルの屋敷に居たメイドが居るのはどうしてだろう。


「斡旋所には、これから連絡入れておくわ。 何時でも報酬を受け取りに行って」


と、施設の入り口にてウィリアム達に言ったミレーヌは、ウィリアムに寄って。


「なんなら、君はまだ私の屋敷に泊まってもいいけどぉ~?」


ウィリアムは、シレ~っと横を向くと。


「さて、では街中に戻りますか。 今日は、ゆっくりと宿に泊まって休みましょう」


と、仲間に言う。


「う~」


泣き顔のミレーヌは、去るウィリアムを見送って手まで振る始末。


陽も暮れかかった頃、繁華街に戻った一行の中で、スティールはメイドの女の子と共に別れていく。


「今夜は帰れない。 可哀想な子猫ちゃんをイイコイイコしてあげないとな」


呆れたロイムやアクトルは、何時口説いたのかも解らず感心すらした。


クローリアは、無言で無視。


ウィリアムは、ただ何時ものままに。


「明日は戻ります?」


人通りの多い道で、近い飲み屋を探す素振りのスティールは、


「う~ん。 解らない」


ウィリアムは、頷き。


「では、斡旋所でお金を受け取ったらこの前の宿屋に移動してますよ。 2・3日休んだら、何か仕事請けますから」


スティールは、微笑んで。


「おう。 今度は、事件はイヤだな・・・。 ま、人助けならいいがな」


と、スティールに縋る様な目つきをしているメイドの女の子の顎を擦る。


スティールは、そのままメイドの女の子と消えて行った。


ウィリアム達は、宿を探して泊まった。 風呂の有る宿に泊まって、汗を流してから繁華街の飲食店に出かける。 


夜に成れば、何処の店も人入りが多い。 そんな中でも、焼肉を謳う店に入ったウィリアム一行。 肉が焦げる匂いが香ばしく、塊の肉を好みに切って墨で焼く。


ビール片手に野菜を串焼きするアクトルは、テーブルの間を抜けて歩くウエイターを見ながら。


「事件は無事解決・・・だが。 一個だけ謎が残っちまったな」


ロイムは、薄く切った肉を串で刺して炙りながら。


「何が?」


と、あどけない子供の様な素振りを見せる。


野菜ばかり食べるクローリアが。


「ウィリアムさんが捕まえて置いた悪漢の事です。 ローウェルの営んでいた店の裏手に捕らえられていたソレアさんを救い出したウィリアムの話を聞いて、役人の方々が店の納屋に行ったら捕らえられていたハズの男達二人が死んでいたと云う事です」


ロイムは、食べている最中に人殺しの話なんか聞きたくない。 顔を顰めて、


「止めてよ、そんな話」


だが、アクトルも気には為る。


「おかしい話だ。 二人とも剣で殺されていたいらしいからな」


ウィリアムは剣など持たないし、殺す理由も無い。 何よりの大問題は、あのローウェルの館で捕まえた悪党一味ダガン達は、海賊・盗賊・殺し屋を生業とする悪党集団だが、何者かに雇われてローウェルの悪事を手伝う事に為ったらしい。 ソレアを殺そうとした二人は、ローウェルが金で何でも斡旋する男が紹介した殺し屋集団の仲間二人であって、ダガン達と深い関係は無い。 誰かが斡旋したらしいのは確かだ。 だが、その事を話すダガンも、何処か口篭りハッキリと何かを言える素振りでは無く。 深い事は知って居ない素振りだった。


(刑死するのは確実でも、口にする事を危ぶむ誰かが居る・・・、事件の陰に暗躍の人影有り・・・って所ですかね)


ウィリアムは、口にせず。 疲れた皆は大いに食べて飲んで夜更けには宿に戻った。


深夜、雨雲が過ぎ去った星空の広がるヘキサフォン・アーシュエルの街中。 西側の、岸壁沿いの通りを歩くウィリアムの姿が有る。 荷物を背負っている素振りも無く。 街灯ランプの明かりも消えた暗闇を歩く。 海に近い街中は、大きな文化施設や公園が広がり。 太い通りが沿岸の岸壁沿いに延びていた


俯き加減で歩いていたウィリアムの顔が、低い落下防止の石の手摺りの向こうへ。 絶壁の先の海には、明かりを使って魚を捕る船の明かりが見える。 海に浮ぶボンワリとした小さな明かりが、彼方此方に浮んで綺麗と思える。


「大海に浮ぶ小さな炎・・・人の命みたいだ」


ウィリアムは、ポツリと呟いた。 手摺りの向こうから、岸壁にぶち当たる波の音がしている。


その時、ウィリアムの行く先。 折れ曲がるカーブの手摺りに何者かが現れた。


「やっと出て来てくれましたか。 探すの面倒なんで、早々とお願いしたかったのですが」


ウィリアムは、歩みを止めて暗闇の前を見た。


闇の中をゆっくりと歩く何者かは、ウィリアムと15歩の間合いの所まで歩いてきた。


「ほ~お、流石に俺の気配は察知してたか。暗殺者の技を遣うだけはあるな」


少し篭った野太い男の声。 ウィリアムの前まで歩いて来た男は、長身で黒っぽいマントを羽織る何者かだ。


ウィリアムは、その男から強い殺気を感じるのに微動だにせず。


「ええ、ソレアさんを助けた時、アナタは小屋の屋根に居た。 俺は、アナタに気付いていましたが、アナタの視線はソレアさんに有った。 だから、捨て置いたんですよ。 それが、仲間を殺して消えるなんて随分だと思いました」


ソレアを助けたウィリアムが、馬上から一瞬何かを見て居たのはこの男の影だったのだ。


相手の黒ずくめの男も。


「フフフ・・・、無能は要らん。 ゴミを排除したまでさ」


「へぇ、で? 今度は、俺ですか?」


ウィリアムの声のトーンが、少し低くなる。


闇の中の男は、覆面をした顔のままに。


「そうだ。 お前の協力した女捜査官も、あの店で生き残ったエレンとか言う女も、お前の仲間達も殺す。 だが、一番厄介なのはお前だ。 だから、お前から」


首を傾げるウィリアム。


「ヘンですね。 一々関係者全員を殺す・・・。 仕事は破綻しましたでしょ? 其処まで仕事に含まれているんですか」


すると、男の声が少し荒っぽくなり。


「やかましい、仕事じゃない。 お前の御蔭で働きが出来なくなった。 俺達の組織は、働きの出来なかった者は始末される。 お前達を殺して穴埋めし、仕事に見合う貢献を示さねば為らない」 


大声を出さないが、声には明らかなる殺気と苛立ちが込められていた。


すると、ウィリアムは俯いた。 肩を揺らして・・・、


「クッ・・クックックッ・・・、下らないですね。 破綻した仕事の手柄の代わりに、無用に人殺しですか」



長身の男は、ズルリと剣を抜いた。


「それが掟だ。 云って置くが、俺は鎧も装備して居るし。 お前の戦いぶりは見抜いたぞ」


と、勝ち誇ったかの様に言ってのける。


すると、ウィリアムは身を起こして上を向いて大笑いをし出した。 顔に右手を当て、丸で馬鹿笑いの様に。


「アハハハハハハっ!! これは可笑しい、可笑しくて死にそうです」


長身の男が、剣を正眼に構えた。


「何が可笑しいぃぃぃ、たあーーーーっ!!!!」


長身の男が、一気にウィリアムに走り込んだ。 ウィリアムの首を狙った突き・・・剣筋の速さはスティール以上である。


だが。


「あっ」


長身の男が、小さく声を上げた。 ウィリアムは、深く腰を落して後ろに仰け反った。 突きを意図も簡単にかわして、左の足を右足一本の軸で蹴り上げてくる。


(う゛ぐぅ!!)


引こうとした右腕の肘を蹴られる長身の男。 金属のプロテクターを着けているのに、蹴られた痛みが骨に突き刺さってきたのである。


パッと数歩飛び退いた男は、力の入り切らない腕を見た。 そして、直ぐにウィリアムを見ると、其処には居なかった。


「あっ」


思わず右に視線を向けて探そうとした瞬間、左の脇にウィリアムが闇を破って現れた。 右を向いた男の左肩を突き押して、背後を見せた男の股の間に右膝を差し込むと、男の足を左右に蹴って崩しバランスを崩す。


「ぬおわっ」


後ろに倒れそうになった男の身体が、フワリと持ち上がったと思った次の瞬間。 レンガ敷きの通りに突き落とされる。 凄まじい骨の砕かれる音が幾重にも響き、長身の男はそのまま動かなくなった。 黒い血が倒れた男の口の中からタレ流れ出す中で、ウィリアムは男の頭の横にフラリと立って見下している。


「暗殺者の技を見切っただんて、相手を殺してから云うセリフですよ」


ウィリアムは、男の遺体を崖の下に棄てた。 恐らく、身元の解らない人物である事は理解出来ていた。 


そして、宿に戻る前に直ぐ脇のガラス窓が多い大型施設を見た。 3階の窓を・・・。 そして、ゆっくりと商業区の方に消えて行く。


ウィリアムの見た建物の3階で、影の様な人物が暗い部屋の中で立って居た。 美術館なのか、壁には色々と絵が掛けられている。


「アレは・・暗殺者の技か? 一瞬見えなかったが」


何処か偉ぶった口調をする男の声がする。 中年ぐらいと推察出来るハスキーな声だ。


すると、後ろから歩いて来る何者かが。


「如何にも。 本来、暗殺者は一族で営んでいると聞きますが・・・。 あの者は違う様です。 “ハナレ”かも知れません」


後ろの暗闇から出て来た男性は、少し老けた声である。 もし、ウィリアムがこの声を聞いたらどんな顔をするだろうか・・・。


偉ぶった声の男が、顔を少し脇に向けて。


「“ハナレ”?」


「はい。 暗殺者の一族に属さない一人法師の様な者と云えばいいでしょうか。 暗殺者の一族の中には、殺した相手から恨まれて滅ぼされる事もあるとか。 そうゆう者の生き残りを、“ハナレ”と云います」


「ふむぅ・・・、我が仲間に加える事が出来ないだろうか・・・。 あの腕は、実に欲しい」


すると、後ろに一歩控えて立ち止まった男は。


「ムリですね。 どんな手段で仲間に加えようとしても。 逆に主の足元を脅かす存在に為りましょう。 まだ、あの若者は我等が仲間内の輪を知りません。 どうか、放って置く事をお考え下さい。 下手に手を出しても、前に現れても、主とは合い寄れぬ人間でしょう」


「・・・、そうか」






  

どうも、騎龍です^^                               

ウィリアム編も此処で終り、次はポリア編を連載しつつ、小話でも入れようかと思っております^^

                                      

ご愛読、ありがとう御座います^人^


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