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エターナル・ワールド・ストーリー  作者: 蒼雲騎龍
K編
30/222

third episode

                冒険者探偵ウィリアム 3部






席に座ったウィリアムは、素早かった。 手早く店に置かれた西の輸入品の事を語り。 密輸の疑いが持てる商品が店の店頭に在るのを知っているエレンに写しの書類を見せた。


「あ・・・あああ・・・そっ・そんな・・」


流石に、いきなり密輸の事を知ったエレンは激しく動揺した。 震える手を伸ばして奪い取る様な勢いで持って紙を受け取り見る。 何度も見返す写しの書類に、愕然として空を見つめるエレン。


ウィリアムは、ゆっくりとした声で。


「恐らく、船で持ち込んでいるのでしょうが。 ダレイ氏以前から、エレンさんの家では交易の船を?」


すると、涙を浮かべて蒼褪めた顔のエレンは震える様に顔を左右に。


「い・・いえ・・違うっ。 交易の船は・・・私の父がやろうとしていた事なの・・。 ああ・・あああ・・・、なんてバカな御祖父ちゃん・・。 これが公に為ってしまったら・・営業権は剥奪だわっ」


と、嘆き出す。 恐らく、何人も人を抱えて遣っている商人だけに。 営業権を剥奪されたら、使用人も一家も路頭に迷うだろう。 エレンは、全く商業に触ってない母親のルイスしか居ない家族の中では、跡を継ぐ主。 まだ、20前後の歳で、その襲い来る絶望の海を泳がなければ為らないのだ。


ウィリアムは、紅茶を運んで来た若いウェイターに。


「すいませんが。 何か甘い物を・・・」


と。


だが、涙を滲ませるエレンは、ウィリアムに。


「ウィリアムさん・・。 是非・・是非に、ケウトさんに会って頂けませんかっ? ケウトさんは・・、ち・父の事を・・知っています・・」


と、縋り付く様に言うのだ。


「エレンさんの、お父さんですか・・。 確か、海で溺死したとか・・・」


「はい・・。 でも・・父の死は只の事故では無いとケウトさんは言ってました。 こう成った以上、私も今の内に知りえる事は知って於きたいと思います・・・。 ウィリアムさん、逢って頂けますか?」


ウィリアムは、冷静な瞳でエレンの目を射抜く様に見据えた。


(急展開・・・か。 まだ、何か飛び出しますかね)


「・・・、解りました。 実は、店から我々に尾行が着いている様ですし。 そのケウト氏に逢って、色々とお聞かせ願いましょうか」


エレンは、“尾行”と聞いて。


「そんな・・、あっ!!」


と、驚きを見せる。


ウィリアムは、エレンの顔を見るに。 彼女は、“尾行”をする人物に心当たりが在ると思えた。


「どうやら、お知り合いですかね?」


エレンは、短い時間にどれだけの衝撃と困惑を覚えただろう。


震える肩を、ウィリアムに向けたエレンは・・・。


「わ・私の・・・こ・婚約・・者の・・」


「ほう。 そう言えば、そんな事をサレトンと云う方がが証言していましたね」


「ああ・・、私はまだ婚約だなんて・・」


顔を手で覆うエレンは、写しの書類を膝に落とした。 一部が、床に落ちて。 個室の入り口でエレンの嘆きに驚き戸惑い動けなくなったウェイターが立って居た・・・。


ウィリアムの想像以上に、エレンと云う女性は強い人間だった。 嘆く事も短く、書類を拾うとウィリアムに返し。 ウェイターの男性を伴って店のオーナーであるケウトと云う人物に面会を求めに行った。


ウィリアムは、一人個室に残って時を待った。


店が、開店したのであろう。 静まるウィリアムの耳に客の話し声が響き、近くの個室に入った。 男女のカップルであると思われる声。 楽しそうに何かの話題を共有し、和気藹々と笑い合って居る。


さて、エレンがウェイターと迎えに来るのに時間は然程必要としなかった。 ケウトと云う人物は、自分からウィリアムにも逢い。 エレンに全てを話したいと言って来たとか。


エレンと二人で個室を後にしたウィリアムは、店の最上階である5階に通された。 ケウト氏の事務所で在り、出勤してきた店の一部の従業員の詰め所でも有る階。 5階に上がると、屋根裏が吹き抜けで高い空間を見せ。 Yシャツに蝶ネクタイを着けた従業員が歩いていたりする廊下が伸びる。


階段から左に廊下を曲がって、正面の奥に赤い扉が見えた。 マーケット・ハーナス生まれの模様で、糾える縄が入り組む幾何学模様が表面に画かれる。 “ディアマスク”と云うこの模様は、織物やインテリアのデザインとしてブランドに為っていた。


「ケウト様、エレン様をお連れ致しました」


ノックをして、ウェイターがドアに声を掛けると。


「おお、早く中にお通ししなさい」


柔らかい声をした年配の男性が返して来た。 声の響きは、中年を越えた渋みが在ったからだ。


「失礼致します」


ウェイターがドアを開き、エレンを先頭に中に進むウィリアム。 進んで入った部屋の中は、落ち着いた雰囲気の漂う洒落た空間だった。


「ケウト小父様・・」


「エレン、連れて来たね」


エレンを迎える形で、窓辺の机に備わる白い椅子から立ち上がった男性。 白い肌には、所々皺が見える。 口周りに髭を生やし、碧い目で白髪混じりのブラウンヘアーを真ん中分にしているスッきりとした紳士だ。 黒い上質のスーツが、懐の力を見せている。 赤いネクタイには、獅子のデザインが刺繍された一品だった。


エレンは、その男性の前まで歩き、ウィリアムに向いて。


「ケウトさん、この方がウィリアムさんです」


ウィリアムは、一応の礼を見せて。


「お初にお目に掛かります」


ケウトと云う人物は、ウィリアムを見て頷き。


「中々賢そうな若者だな。 初めて、私がケウトだ。 私は、このエレンの父親・・・、そう“シェルハ”とは幼き頃からの親友だった。 今の私が在るのも、シェルハの御蔭だ。 だから、エレンは私の娘と云ってもいいと私は思っている」


ケウト氏は、ウィリアムに情け深い目を向けて。


「どうか、このエレンの窮地を救ってやって欲しい」


身を正したウィリアムは、少し暗い声で。


「理解は・・。 ですが、不正を働いた事実は消えませんよ」


すると、ケウト氏はウィリアムの前まで歩いてきて。


「君は、何処の出身かね?」


いきなり、生まれを聞かれるとはウィリアムも思っては居なかった。 ウィリアムより先に、エレンが。


「小父様、その方はコンコース島のご出身です・・、それが?」


ケウト氏は、一端エレンを見て頷くと。 ウィリアムに向き直し、こう続けた。


「では、君は知らないだろうが・・・、このマーケット・ハーナスは商人の国だ。 そして、商業には厳しい掟と云える法が有る。 だが、厳しい掟だが、優遇策も在るのだよ。 役人が、その不正を追求する時に、その不正に率先して協力をして不正を自ら正す者は、恩赦を受ける資格在り・・とな」


理解の早いウィリアムだ。 ケウトを見返して。


「つまり。 エレンさんに協力をして、エレンさん自身に不正を告発させ、問われる罪を和らげろ・・・。 そうゆう事ですか?」


飲み込みの早いウィリアムの返す言葉に、ケウトと云う人物は何かを感じたのか微笑み頷くと。


「うん。 流石に、理解が早いね。 依頼と云う訳では無い・・、だが、エレンとあの家の者はみんなダレイと云う悪魔に怯えて暮らして来た。 いや、彼らだけでは無い。 街の人々の中で、あの薄汚い老人に関わっていい事など何一つ無い・・。 金の亡者だけが、腐臭を撒き散らしてあの悪魔の様な老人とつるむだけだった。 エレンも、そして・・、死んだ・・。 いや、殺されたかも知れないシェルハだって、不幸にしか成らなかった・・。 選りによって、エレンを業つくな商人のローウェルなんぞに嫁へ差し出そうと・・・。 そして私も・・、我慢をした・・」


ウィリアムは、顔に苦渋と憎しみを仄かに匂わせるケウトを見て。


(相当な方だったんですね・・、あの死んだ老人は)


と、思う。 ケウトは、人目で解る列記とした紳士であり。 人前で早々に感情を崩して見せる事などしそうに無い人物に見える。 その男が、顔を歪ませて言うのには言い尽くせぬ過去が在るのだろうとウィリアムは感じた。


だから・・・、ウィリアムは単刀直入に事を確かめる事にした。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





窓の外から、事件の起こった店を見張るスティールが、何の気なしに有る男に目を惹かれた。


「あの男、さっきから店の周りを見回ってるな・・・。 これで、5度目だ。 俺の視界に入るの」


声のトーンを上げず、寛ぐ素振りから云うスティールに、クローリアとロイムは驚いて窓の外を見回す。 


「ドッ、何処?」


「まぁ・・誰だか解りませんわ・・」


だが、アクトルはケーキの欠片を口に放り込んで、窓の外を見ないで。


「赤いジャッケトを着た目の鋭い男か?」


スティールは、紅茶の注がれたカップを持ち上げ。


「ん。 店の周りを睨んでる。 どれ、ちっとカマ賭けてみようか」


アクトルは、残る優先順位トップの自分なだけに。


「誰と行く?」


スティールは、ニヤニヤとロイムを見て。


「決まってんじゃん・・・、お漏らし小僧にビビって貰おうか」


ロイムは、ギョッとした顔でスティールを見て。


「ま・・マジ?」


「おう。 根性を鍛えよう。 な、ロイムセンセー」


「アヒィ・・・・」


ロイムは、魔法の掛かった杖を握り締めた。 もう、口がガチガチと恐怖で噛み合さって音を出し。 顔は、蒼褪めている。


アクトルは、目の前なだけに。


(不安丸出しじゃないか・・・、バレない方が奇跡だ・・・)


と、もう先が思いやられる。


だが、スティールはアクトルに。


「アーク、アークも一枚噛めよ」


アクトルは、自分も来いと云っているのかと思い。


「ん? クローリアを一人で残すのか?」


クローリアは、急な話に不安げな顔をスティールとアクトルに向ける。


だが、スティールはニヤリと笑うと。


「ちげ~よ・・・」


・・・・・。


雲が晴れない昼間。 事件の起こった店の前の雑踏を行く男が居た。


「・・・」


鋭い目を上目遣いにして、俯く顔は色黒い。 赤い皮のジャケットに、黒い厚手のズボンを穿いて。 腰には長剣を佩いている。 ボタンの外れたジャケットの下には、小さなリング状のチェーンを編んだ鎧を纏っている様だ。 外見は、冒険者かも知れない。 だが、一人でうろついている所を見ると、そうとも言えない。


しかしながら、冒険者から身を崩す者も多く。 殺し屋に成ったり、盗賊に身を落としたり、ちょっとの迷いや苦痛から犯罪者に成ったり、果てまたは用心棒やゴロツキに成ったり・・・。 この男も、その類かと思われる。


「・・・」


目つきが鋭く、人ごみに紛れて事件の有った店を監視するかの様に見ている男。 店とは逆側の右通りを建物沿いを歩いては、役人が立っている店の前をジロジロ見て。 また、行き過ぎては裏道に入り。 店の周りを周回しては、また店の表を見張る・・・。 そんな行動を繰り返していた。


何度目だろうか・・。 この男が、店の前を北側に抜け、店の横を通る斜めの路地に入った時だ。


「おっと・・」


俯いて道を曲がったジャケットの男は、出会い頭に何か固い物とぶつかった。 金属が目に入ったジャケットの男は、ぶつかったのが鎧か何かと認識したので、相手の顔を確かめようと顔を上げて。


「何処に・・」


怒鳴ろうとしたジャケットの男。 だが、目の前には見上げる様な大男が立って居た。


「何だ? オメエ?」


言ったのは、アクトルである。 


「んっ・・」


ジャケットの男は、一般的に言うなれば背は高い男だ。 だが、相手がアクトルであるなら、殆どの男は小さく見えてしまうだろう。 怒鳴り掛けたジャケットの男は、アクトルの背の高さと隆々とした全身で解る筋肉に言葉を呑んだ。


だが、アクトルは目を更に凝らして凄み。


「なんだぁ、オメ~。 人にぶつかって置いて、謝罪もしねえで何を睨んでやがる。 あぁ?」


威圧して、喧嘩を売る仕草に出たアクトル。


「チィ」


舌打ちしたジェケットの男が苦渋の顔に成るのはアクトルの所為だけでは無い。 往来の多い通りを歩く人たちの中に、アクトルとジャケットの男の険悪なムードを感じた人が居て。 連れだって歩く人に声を掛けたり、注目をしたりして来る。


居た堪れなく為って苦虫を噛み潰す顔に成ったジャケットの男は、往来の立ち止まる人々に睨みを見せてから、アクトルに一瞥し。


「邪魔なんだよ。 デケ~図体し腐ってっ」


と、往来の中に人を跳ね除ける素振りで足早に消えて行く。


往来に足を踏み出したアクトルは、ジャケット男を尾行し出したスティールとロイムに目を合わせるだけにする。


「・・・」


目で頷くスティールは、ロイムを小突き回す様にしてジャケット男の後を尾行し始めたのだった。


(上手くやれよ・・・)


アクトルは、心でそうエールを送り。 ジャケット男が見えなくなると、クローリアの居る店の中に戻って行くのだった。


その頃、ウィリアムは・・・。


エレンを自分の坐っていた席に坐らせたケウトは、腕組みのままにウィリアムの前を行ったり来たりして話しを始めて居た。 その顔は、エレンの居る手前か少し辛そうな顔である。


何故なら、ウィリアムはこう質問したのである。


“エレンさんのお父さんは、ダレイ氏の本当の子供ですか? そしてエレンさんは、ルイスさんの子供では無いのでは有りませんか?”


と・・。


聞いたエレンは意味が解らずに言葉を失い。


問われたケウトは、驚きの目をウィリアムに向けた。


そして、ケウトは全てをウィリアムに話す気に成ったのだ。


「君は・・・、人の顔を観察するのが得意ならしいね」


と、ケウト。


ウィリアムは、エレンを見てから。


「エレンさんの顔の特徴は、東の大陸の南部に位置する3分国家“レセアン”・“ウセアン”・“セルアン”の三国と、国交を断絶する西の大陸に住む吟遊詩人部族の特有の物。 彼らは、同部族の結婚を古き古より続けた民族で、他の人種と交わると特徴は顕著に薄まると聞きます。 なのに、エレンさんは、その特徴が非常に色濃い。 エレンさんの父親が、北の大陸に多い人ダレイ氏の子供と云うのが、信じられなかったんです。 彼女を一目見たときから」


エレンは、ハッとしてケウトを見つめた。


「小父様・・・」


ケウトは、ウィリアムに悲しい目を向けて。


「君は、非常に素晴らしい読みをしている。 何も知らずに、エレンと家族を見て其処まで見抜けるのは、見解としては完璧だろう・・。 だが、実情は少し違うのだよ」


ウィリアムは、自分の存在が急にあやふやに成って不安に震え出しているエレンを見て。


「“少し”? つまり・・・、父親の方では無く、母親・・・ですか?」


ケウトは、ウィリアムに指を差し向けてまた腕組み状態に戻すと。


「そう。 その通りだ。 エレンの父親のシェルハは、ダレイが昔に金ずくでモノにした歌手との間に生まれた子供だ。 その歌手と云うのが、東国の部族出身で駆け落ちをしてマーケット・ハーナスに移り住んだ一家の娘でね。 歌が上手く、印象の強い美人だった。 恐らく、エレンの綺麗さもその辺から発してるのかも知れない」


「なるほど・・。 では、エレンさんとダレイ氏は、完全な孫と祖父では在るんですね」


「ああ。 只・・・、エレンの手前で言い難いが・・、ルイスとは血が繋がっていないんだ」


エレンは、パッと両手を口に運ぶ。 驚く声を、塞ぐ様に・・。


頷くウィリアムは、急速に大体が見えた。


ケウトは続け。


「エレンの母親と云う人物は、名を“ソレア”と云う。 東の大陸で、流れの薬師を営んでいた一家らしいが。 ソレアの父親は一箇所に身を落ち着けたいとこの街に・・。 そして、シェルハと知り合ったのさ・・。 エレンの様に、見て綺麗と云う女性では無かったが。 こう・・何と云うのか。 慈悲深さと云うべきかな。 情け深さは感じる穏やかで優しい女性だった。 幼い頃から、ダレイの奴隷の様に育ったシェルハには、彼女の母性と云うか・・・慈しみの精神は何より感じたかった物だったのかも知れない。 何せ、シェルハは・・、母親を実の父親に踏み躙られていたからな」


「お・・お母さんが・・」


エレンは、直ぐに椅子から立ち上がり。


「小父様っ!!! 私の本当の母は・・・? ど・何処に?」


ケウトは、俯いて首を左右に。


「解らない」 


「どっ・どうしてっ?!!」


胸が詰まりそうなエレンは、全てが知りたくて声が大きく成る。


ウィリアムは、空気が変わる部屋の中でも冷静に。


「先程、シェルハさんにお母さんも“踏み躙られた”・・・と。 同じですか?」


ウィリアムに問われたケウトは、エレンを見た。 窓の前で、両手を組んで自分を見つめるエレンの悲痛な瞳・・。 エレンが子供だからか、それと何か理由が有ってだろうか・・。 


だが、ケウトは思い切って話し始めた。


「これは、エレンの身の上でもあるが・・、女のエレンを前にすると語るのを憚りたくなる事だ。 だが、真実は消えない。 そして、エレンの今の状況を考えると・・・語らずには居れない。 エレン・・、そしてウィリアムさん。 どうか、心して聞いて欲しい・・」


先ず、シェルハの母親と云う女性は、もう生きては居ないそうだ。 金の力で陥れられてダレイの愛人に成った母親だが、シェルハを産んでから数年後。 ダレイは、事も有ろうか商談の餌に母親を使った。 そして、今の母屋と店の融合している一等地の店を手に入れたらしい。 代わって、子供と引き離されて他所の男の下に送られた母親は、ズタボロの様な生活の中で身を壊して棄てられた。 シェルハは、15歳の時に友人の伝から母親が寺院に拾われたのを知り。 横暴で暴力的なダレイから知力と行動でもって金をだまくらかして母親を面倒見た。 だが、その一緒の期間は3月と無かったらしい。


流石のウィリアムも、内心に。


(スティールさんの言う通りですね。 目の前に居たら、俺も我慢出来るかな?)


と、思う。


衝撃を受けたのは、エレンも同じ事だ。


だが、ケウトの話はまだまだ続き。


「エレン・・、君のお母さんの事だが・・・」


エレンの父親であるシェルハと、母親のソレアの出逢いは運命と言って良かったらしい。 


先ず、シェルハと云う人物は、横暴な父親の下でこき使われたが。 学校に行く時は、もうその日その日の全てを吸収して行く様な勉学の才が有ったらしい。 発想は自由で、行動力も強く。 友人達と遊ぶ時間は限られた物だが、全身全霊で生きた。 母親の死後、何時かは独立しようと夢見たシェルハは、頑固な料理人の息子のケウト、船乗りの船長の息子のコッテの二人とは兄弟の様に遊んで、夢を語り合った。


懐かしむ顔に変わるケウトは、窓の外に広がる曇天の空を見つめ。


「シェルハの人生は、この晴れぬ曇天の空の様に光が見えない人生だった。 だが、アイツ自身が光だった。 今、死んだダレイが行っていた交易船のアイディアも・・、小さな商店街の店を一箇所に集めて、活気溢れる何でも揃う集合店の構想も、全てシェルハが考えた物だ。 ダレイは、・・・シェルハからその考えを盗み。 いやいやっ、奪い取って自分の物にしただけだっ!! ・・・、アイツは、アイツは・・・あんなクズの下で生きる人間じゃ無かった・・・」


ケウトは、こう言ってウィリアムを見て話を続けた。


シェルハは、新しく交易船を自分で運航し。 幾つもの小さな個人商店の仕入れを一括して纏めて、仕入れの効率化とコストを抑える代わりに。 一箇所に様々な商店を集めて、彼方此方に行かなくてもその場で全てが揃う商店の集合体を作り出し。 他店よりも安く品物を提供し、そして売り上げを出す構想を持っていた。 その運航船の権利を取得する段階で、ダレイから金を受け取っていた役人辺りが密告したのだろう。 シェルハは、今の別店の小さな店舗を任されていたのだが、ダレイは怒って母屋の店に引き戻し。 シェルハの自由を奪い。 シェルハの構想を横取りしたのである。


憎らしく語るケウトは、吐き捨てる様に。


「あのダレイはクズだっ。 アイツは、シェルハが自分の子供なのに、自由で新しい先を切り開く能力を持つ事に嫉妬していた。 アイツの自由を奪う為に、半ば強引に潰したライバル商人の娘であるルイスと結婚させたんだっ。 ルイスは、シェルハと同い年で、学校の頃からシェルハに好意を持っていたし、ソレアの事は皆隠して黙って居たから・・知らなかったんだろう。 結婚してから、シェルハに愛する人が居ると・・・知ったハズだ」


さて、肝心なシェルハとソレアは、お互いが18歳の時に出逢った。 ソレアの一家は、有能なる薬師の技術を持っていた。 特に、父親とソレアは、その才能が際立って居たらしい。 しかし、人との交流の上手では無いソレアの父親は、細々と薬屋を営むままだった。 だが、様々な地方から人が押し寄せる街は、時として流行病の爆発的な発生源にも成る。 悪質な熱病がヘキサフォン・アーシュエルに流行った頃、シェルハは薬の原料を求めて原料を売る店の前で懇願して蹴られるソレアを見つけた。 そして、助けたシェルハは、ソレアと彼女の父親の薬師としての腕を見て、薬を何時でも安価で安定供給する店を出したいと願った。 根暗な父親とは別に、差別無く薬を処方したいと願うソレアとシェルハは、恋に落ちるのに時間は要らなかった。


だが、20歳を過ぎた頃のシェルハは、新しい商売の構想を父親に奪われ、ルイスと結婚させられて半ば軟禁状態に。 それでも、ソレアとシェルハの愛の絆は深く。 遂に、エレンが出来た。 二人の密会に手を貸していたのが、親友のコッテと今のエレンの守役であるポルスだった。


エレンは、幼い頃から壁の様に自分を守って来てくれたポルスの事を思い。


「あぁ・・ポルスは・・全てを知っていたのね・・。 お父さん・・・お母さん・・・どうして・・」


嘆くエレンを見たケウトだが、此処まで来たからにはと思ったのだろう。 涙を浮かべる目をウィリアムに向けると。


「ウィリアムさん・・」


「はい」


「私は・・・シェルハと・・ソレアの駆け落ちに・・手っ・・手を貸しました。 エレンが産まれて、1年は隠し通せましたが・・。 誰かが密告したのでしょう。 ダレイは、エレンの存在を知ってしまったっ。 ・・・この国ではねウィリアムさん、生まれた子供は・・父親が責任を持って育てるなんて・・古い掟が有るんですよ。 ダレイは、その・・掟を傘にしてエレンを・・。 ルイスにエレンを渡して、シェルハの自由を完全に奪おうとしました・・。 家庭に入った商人は、家庭と商業にのみ生きるのがこの・・この国の伝統みたいなモノでしてね・・。 だが、私やコッテも、ポルスだってシェルハとソレアの愛を見ていた・・。 だから・・だから・・・あの夜に・・逃がそうと・・」


ウィリアムは、それにピンと来た。


「もしかして、シェルハさんが港で死んだ夜ですか?」


涙を流したケウトは、震える顔で。


「ふ・・2日前の夜さ。 だが、いっ・いくら待ってもシェルハはエレンを連れては来ず。 私は、待つソレアと二人で・・・深夜の街中に停めた馬車で潜んで居たよ。 次の日の昼、隠れて店に向うと・・、店先には顔や体中に痣や暴行を受けた姿でボロボロに成って働くポルスを見た。 血の滲む包帯を片目に巻いたポルスを見た時悟ったよ。 逃げるのに・・・失敗したのだと・・。 それから、一日が開けて、朝。 か・・・変わり果てたシェルハが・・み・港の・・・岸で・・・」


聞くに堪えないエレンが、声を抑え切れずに泣き出した。


悔し顔で、涙を隠さないケウト。


二人を冷静に見据えるウィリアムは、何かを悟る。


(もしかして・・・、ソレなら辻褄が合う。 全部。 後は、発起人が誰か・・と、犯人の繋がり)


ウィリアムは、筋書きが読めて来た。 だが、まだ全てを整然と並べて繋ぐ連結部分がモヤのままである。 嘆く二人を見つめるウィリアムは、この先どう動こうか思案を巡らせた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「いいか。 ロイム・・・、見つかりたくないなら。 見つかりたくない素振りをするなよ。 挙動不審に、相手の反応に反応するとバレる。 大勢の人が居るんだ。 大勢の人に成れ」


「う・・うん・」


スティールは、冒険者の経験が長い御蔭も有って。 こうした尾行には、少し知識が有った。 ロイムと雑談を交わしながら、視界の中に赤いジャケットの男の後姿を入れている。 


ロイムは、もうオドオドしていてぎこちない様子だが。 背が小さく、日中の慌しい人の往来に紛れる事が出来ていた。


赤いジャケットの冒険者風の男は、港の見える大通りに出て。 一路東へと歩き出す。 時折、チラチラと後ろを振り返るのだが。 スティールやロイムを見る気配は無い。 大通りに出れは、ジャケットの男も一般の通行人である。 冒険者も居れば、みすぼらしい姿の芸人も楽器を抱えて歩いているし。 老若男女の通行人が居のだ。 どちらも、周囲に紛れる。


さて、ジャケットの男は。 途中で北東方面に向かう太い通りに曲がり。 斡旋所が有ったり、鍛冶屋や専門小売店が犇く大通りに入る。 歩く人の姿が、冒険者やら、馬車やら、労働者など偏りが見え始め。 メインの大通りよりは、活気が薄まった。


スティールは、ロイムと並んで話す素振りを見せながら。


「いいか、ロイム。 此処からが大変だ。 アイツ、直接こっちに事件の現場の店から来なかったのは、尾行を警戒してる証だ。 恐らく、少しずつ人の往来が減る道を選んで尾行を見極めるつもりだろう。」


「ああ・・・う・うん・・・」


スティールは、にやけた顔を見せて。


「お前なら脇道に入っても集中してれば、人の気配を感じて行ける。 あの男の気配を覚えられるか?」


ロイムは、目を瞬きさせて。


「む・・難しいぃよぉ・・・。 モンスターの居る所や、森の中とか違うエネルギーの中に居る人を感じるなら出来るけどぉ・・。 こんな人ごみの中で人のエネルギーなんて溢れ過ぎて無理・・」


スティールは、解っていたとばかりに。


「フッ、ロイムせんせ~にはまだ無理か」


「当たり前じゃんっ。 そんなのスンゴイ高位の魔術師が出来る事だよっ」


スティールは、ロイムが本気を見せて言い返したのを見て。 少し、緊張が解れたと思って本題に入る事にした。


「ロイム。 こうゆう大通りってのはな、人は多いが、目的の為に出来てるんだそうだ」


「目的?」


「おう。 ウィリアムが言うには、細かい道を繋ぐ太い通りは、その目的の場に近道する意味が在るってよ。 だから、あのジャケット男は、目的が違ってるから大回りする行き方をしてるが。 本来は、この辺の彼方此方に行く為に、逆に細い通りを迷わず回れる為に大通りが在るって訳だ」


ロイムは、微妙に言いたい意味が解る。


「それって、僕達は通行人に扮してる訳だから。 このままあの怪しい人を尾行出来ないって事でしょ?」


「おお~、流石はウィリアムの弟子」


「ぶっ。 僕・・・ウィリアムの弟子なのぉ?」


「何だよ。 不満か?」


ロイムは、少し剥れて。


「だってぇ~、ウィリアムの師匠がスティールさん何でしょ? 僕、一番下っ端じゃん・・」


スティールは、細めた目でロイムを見て。


「おめぇ・・・、俺に勝った気で居やがるのかよぉ・・・」


ロイムは、プイッと他所を向く。


その時、若く綺麗な女だけの冒険者のチームらしき集まりが、弾ける笑らい声を発してこの通りに脇道から姿を見せた。 ロイムとスティールは、自然の法則に遵ってそっちに向く。


スティールは、脇目に男を捕捉していながら。


「ロイム先生。 どれが好みで?」


顔を赤らめたロイムは、背が少し高く。 金髪でハツラツとした僧侶の女性を見て。


「髪の毛金色で、スラッとした僧侶・・・」


スティールも、目をギラギラさせて。


「イイトコ突くねぇ~。 俺は、その右脇のお尻ブリンブリンの剣士風の娘がエエわ」


ロイムは、短い太股丸見えのダメージズボンを穿く髪の短めなボーイッシュな女剣士を見てから。


「凄いスキモノじゃないですか・・・」


と、スティールをヘンタイの目で見返す。


スティールは、胸を張り。


「んだ」


ロイムは、呆れてソッポを向く。


すると、スティールは顔を真顔に変えて。


「ロイム。 じゃ、真面目な話に戻るぞ」


ロイムも、パッと顔を真顔にして。


「え?」


スティールは、脇道などを気にして歩くジャケット男を見て。


「この大通りは、この先の住居区まで続いてる。冒険者の俺達が、そこまで堂々と尾行してたらバレる可能性が強い」


ロイムも頷き。


「普通・・用が無いもんね」


スティールは、左側の脇道を指差し。 


「前に、この街で仕事した時に知ったんだが。 この太い通りは新しく出来たんだと。 左に一つ戻った出店の犇く通りが、旧本通りだったらしい。 そんでもって、その通りも住居区まで繋がってる。 そっちに入って、二手に別れようか」


ロイムは、尾行もした事が無い。 一気に焦り出し。


「ぼっ僕は・・」


スティールは、呆れた笑いで。


「トーシローに尾行をしろなんて言わね~。 お前が、俺の前を先んじて歩いて。 脇道の都度で野郎が来るのを待て。 お前が見たら直ぐ先に歩け。 俺は、お前が歩くのに合わせて。 脇道とこの大通りを交互に見張って尾行する。 曲がり角からこっそり見ろ。 相手も監視を気にしてるから、気を付けろよな」


ロイムは、顔を強張らせてスティールを見返す。


スティールは、もう本気だ。


「そんな顔で俺を見るな。 場に合わない表情は、相手に悟られる」


「あ・・ゴメンナサイっ」


ロイムは、慌てて前を向いた。


スティールとロイムの尾行が山場を迎え始めた頃だ。


ウィリアムは、涙を拭き始めたエレンを見据えながら。 ケウトに問う。


「お聞きしたい事があります」


「ん? 何かね?」


涙の跡を拭いたケウトは、ウィリアムに向いた。


「先ず、・・エレンさんの母親であるソレアさんはどうなったのですか?」


ケウトは、難しい顔に成って先ずエレンを見た。


エレンもまた、実の母親なだけに行方を知りたくてケウトを見返す。


ウィリアムは、そのケウトの素振りから。


「何か・・、在りましたか?」


「あぁ・・・。 シェルハが死んでから数日後。 ダレイは・・、ソレアを訴えた。 妻の在る身のシェルハをソレアが誘惑し、その罪の意識でシェルは・・・自殺したとな」


エレンの顔が、驚きのままに固まった。


だが、頷くウィリアムは。


「なるほど・・・、シェルハさんの死んだ時の事件調書の内容と一致しますね。 確か、死んだシェルハさんは、海に浮んで首には絞殺・・若しくは縊死の痕が有ったと在りました。 港で縊死・・・、中々在り得ない。 だが、ダレイ氏は、港の碇を繋ぐ石杭に紐を縛ってシェルハさんは自殺したと主張した」


ケウトは、驚きの顔でウィリアムを見つめて。


「あ・・・どうして・・」


「今回のダレイ氏の事件を担当する役人のミレーヌさんと云う方は。 代々役人職を遣られて居るそうで。 そのミレーヌさんのお父さんが引退前に手がけた事件の一つがシェルハさんの変死事件です。 昨日、その調書や捜査報告書を読ませて頂きました。 ミレーヌのお父上様は、縊死と云う異常な死に方を海で遂げたシェルハさんの死に疑問を持ってました。 ですから、その辺をなるべく伏せる為に、水死として於いたとの記述も在りました」


ケウトは、驚きを持続させてエレンを見てから。


「知ってたのか・・、ソレアの事は?」


「それが、訴えられた女性が居るとは書かれて在りましたが。 事件に関与しているとは認められず、また事件か自殺かの判断が出来ないと云う判断から捜査続行のみの終わり方でしてね。 俺も、その女性の事が気に成っていたんですよ」


ケウトは、ウィリアムの話に深い納得の頷きをして。


「ああ・・その通り・・。 ダレイは、役人が事故か自殺か判断できないなら・・・自分から仇を取ると息巻いて。 彼女(ソレア)の家に圧力を掛けた・・・。 ソレアは、家族を守る為に、自ら追放の様に街を出て行ったよ・・」


知らなかった事実は、予想も出来ない程の悲劇。 エレンは、絶望の追い討ちに全身の力が抜ける思いがしてその場に崩れた。


「あ・・あぁ・・どうして・・どうしてそうまで・・・」


我慢していたダレイと云う祖父への怒りが込み上げる。 ダレイと云う悪魔が、この街には居て。 金の力と欲望の悪知恵の限りを尽くしてのさばっていたのである。 自分も僅かでもその汚らわしい血を引いていると感じるエレンには、これ以上の無い仕打ちであった。


過去を知るケウトは、エレンを見てからウィリアムに。


「ダレイは、噂では何度も事件の匂いを漂わせた経歴が在るとシェルハが云っていた。 もし・・、君が役人と親しいなら。 その辺も調べて貰えないか? 我々では、手が届かない」


と、願う様に云う。 


ウィリアムは、泣いているエレンを見て。


(スティールさんなら・・・なんて言うかな。 俺は、俺でしかないし・・、仕事をするだけだけど。 あの人なら・・迷わず云うなぁ)


“ウィリアムっ、助けようぜっ!!!”


ウィリアムは、事件で冷めきってきた自分の心に火を燈す様な仲間を想う。 もっと冷めて、ただ事件を機械的に解決していた島の頃とは・・、自分の中の何かが違って居た。 島に住んでいた頃は、知人や人の心を汲みはしたが。 自分から率先して御節介を焼く事も少ない日々。 助けを求められて、ただ心の隙間を埋めるように機械的に推理や事件解決をしていた様な頃を思い出す。 


(俺も、所詮はバカなんですかね・・・)


と。 ウィリアムは、カァッと目をエレンに向けた。


「・・」


急に目つきが変わったウィリアムに、見つめていたケウトが驚いて身震えした程だ。


ウィリアムは、曇りの日差しが暗く差し込む窓の前に歩み。 放心して涙を流す人形の様に為ったエレンと目を合わせる位置まで来た。


「・・・」


薄く口を開いて、目に力が無くなっていたエレン。


しかし、ウィリアムはエレンを殺すかの如く強い睨みで見つめる。 そして、口を開いた。


「貴女に与えられた選択は、2つ。 一つは、泣き寝入りして堕ちる所まで嘆き堕ちる。 二つ目は、俺と一緒に来て、事件を解決して死んだダレイと云う悪魔の罪に光を当てる。 今、此処で決めなさい。 時間の猶予は有りませんよ」


エレンは、怖い目に変わったウィリアムに驚き、自分の目の焦点を急速にウィリアムの瞳にに合わせた。


ケウトは、今の絶望の淵でそんなに直ぐ事は無いと思い。


「ウィリアム君っ、そんなに急がなくても・・・」


だが、ウィリアムは窓に近寄り。 縁から外を見る。


「店の外。 前の店の物影に一人。 それから、斜め右の木の陰に一人。 俺達を追って来た何者かが居ます。目つきがキツク、役人の類では有りませんね。 薄汚い殺気も持った奴等です」


「なっ、何だって?」


驚くケウトは、エレンを見る。


「恐らく、ダレイ氏を殺害した犯人に近い者の手下では? ダラダラしていたら、証拠隠滅の為にまた殺人が起こるかも知れない。 死んだダレイ氏が隠していた不味い事実の一番は密輸などの不正・・。 その根幹に関わる事なら、先んじて暴ける事を暴いて隠し切れない様にしてしまうのが一番」


此処で、ウィリアムはエレンをまた見る。 強い意志を秘めたウィリアムの視線は、エレンの目を貫いた。 いや、心まで伸びたかもしれない。


「あ・・あ・わ・・私・・・」


混乱するエレンに、ウィリアムは。


「今から、ダレイ氏の運行していた船へ。 今日の昼過ぎに、港に着くと聞きました。 恐らく、ミレーヌさんが動くのは、明日か明後日の手続きを踏んでの事。 その前に、証拠を掴んで役人に突き出す。 貴女の自らの手で」


と、透き通る程に聴こえの良いシャープな言い方で澱み無く言う。


エレンは、窓の縁に立つウィリアムを見上げて、光を見た様な気がした。


(まだ・・、私に出来る事が有る・・・)


長年、口を利かない影の様な母親のルイスと共に、横暴で我儘な祖父の暴挙に絶えて来たエレン。 今、その地獄から抜け出せる時であり。 見えない闇に光を当てる時だと悟ったのだ。


「い・行きます」


エレンの目が、グッと引き締まり力を湛えた。


ウィリアムは頷くと、直ぐに窓の外に目を向けたのである。

次話予告


ケウトの協力を得て、港に向うウィリアムとエレン。 丁度港に到着した船で、密輸の証拠探しが始まった。 一方で、ロイムとスティールは尾行をして男の行方を掴む。 事件は、どんな様相を見せるのか・・・、ウィリアムが動いて光を当てる。


次話、数日後掲載予定


                                                                          

どうも、騎龍です^^


先ず、お知らせから^^; モバゲー内で作ったエターナルが、小説祭の関係で来月まで変更が出来ないと云う事に気が付かない僕^^; 仕方ないので、2部と作り。 其方で随時掲載致します^^ 


気が付かないお馬鹿な作者を赦してください^^; 

                                      

 

次に、ズレなどは有りますが。 次は、ポリア特別編を予定通り送ります^^ ちょっと長い話なので、息切れするとは思いますが。 途中途中に短編集や、座談会などを交えてお送りしようかと思います^^


                                      

最後に、FF買って・・・更新が遅れたらごめんなさい^人^

                                     

ご愛読ありがとう御座います^人^

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