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エターナル・ワールド・ストーリー  作者: 蒼雲騎龍
K編
27/222

third episode

              冒険者探偵ウィリアム 3部








ウィリアムの切った短冊状の紙は、見事なまでに黄緑色に変色した。 薄い色では無い。 緑色に近い黄緑で、確かに反応したと思える色合いだ。


下級の警備役人を叱り付けたミレーヌだが。 直ぐにその変色した色合いには注目する。


「ねえ。 何が含まれてるの? なんか、木の葉っぱみたいに緑色じゃない」


と、ウィリアムに話を振る。


それまで考え込んでいたウィリアムは、ミレーヌを斬るぐらいの鋭い視線で見つめると。


「医療用の麻酔に使われる猛毒です」


「はあっ?!!」


驚くミレーヌ。


雫の垂れる紙を持ったままの中年役人は、ウィリアムに驚きの顔で。


「ど・・毒なのに・・医療に使うのか?」


頷くウィリアム。


「ええ、毒を活用する事はありますよ。 麻薬や毒の特性を、痛み止めや抵抗力促進に逆利用するんです。 ただ、使用する量は、本当に微量ですがね」


ミレーヌは、驚くままに変色した紙を見る。


さて、異常事態となりそうな雰囲気の中で、クローリアと見つめ合ったスティールは緊張を持って。


「ウィリアム。 お前の結論からして、事件か? 事故か?」


一番の問題点を、ズイっと突いた。


「・・・」


黙るウィリアム。


ウィリアムに、捜査する皆の目が集まった。


見られたウィリアムは、自分から動く立場では無い事を弁えているだけにミレーヌと目を合わせ。


「自分が判断していい立場では有りませんね」


だが、ミレーヌは以外にも柔軟に。


「そうかしら。 毒の意味合いが解る君なら、それも可と思うけど。 役人の意地だの詰まらない事よ。 問題は、正確で正しい結論」


と、軽く云って退けた。


捜査をする主任のミレーヌの言葉で、ウィリアムは一つ頷くと。


「この毒は、“コンゴウオウユリ”と云う名前の百合の一部から採れる特殊な毒です」


ミレーヌは、その名前を知っていた。


「コンゴウオウユリって・・・、あの大きい花の咲く百合の事? 私の胸元ぐらいにまで届きそうな背の高い百合よね?」


「はい。 コンゴウオウユリは、このマーケット・ハーナスとフラストマド王国の山間部や森林地帯にだけ生える百合です。 何年も掛けて成長し、約16年から20年程で花を付け。 受粉すると球根を残す珍しい百合・・。 純白で、大人の手程に大きく咲く百合の花は、昔から商人や王侯貴族の間で好まれた歴史が有ります。 ですから、今では森の奥に行かないと見つけられない希少種に近い位置です」


スティールは、腕組みをして。


「ナルホド・・。 じゃ、買うのも高価な値段がするな」


しかし、其処にウィリアムは“待った”を掛ける様に。


「いえいえ、実情はそんな甘いモノでは有りませんよ」


「ホヘ?」


「買う事など出来ないと云う事です」


「だって・・お前・・・」


スティールは、チンプンカンプンに成り。


代わってミレーヌが、キリリと引き締まる捜査モードの顔で。


「詳しく説明してくれる?」


ウィリアムは、桶に入ったタオルを指差した。


「基本、コンゴウオウユリは毒は持ちません。 凄く茎や葉が硬く。 一般の動物も食べるのに適さない為です。 ですが、芋の様に1株から多数の球根を残すコンゴウオウユリですが、発芽してからの2ヶ月の間だけ。 柔らかい葉を食べられない様にと毒を持ちます」


ミレーヌも、タオルを指差し。


「その・・毒?」


「はい。 ですが、もう自然のなかですら見つけ難いコンゴウオウユリの毒は、採れる量も非常に少ないので店頭に並ぶまで数が出来ないんです。 ですから、医師が薬の分配の基本優先権を握っていますから。 予約の時点で売り手が決まります。 薬師の元から、決まった医師の元に直接ですからね。 しかも、猛毒なので。 一般の何者かが買うのには、薬師か医師の仲介が必要です。 そんな毒で、自殺しますかね? 安価に手に入る毒は幾らでも有りますよ」


ミレーヌは、顔をウィリアムに向けて固まった。


「・・・じゃ・・殺し?」


「可能性は強いと思います。 家族や、事件当時に居た中で、薬師や医師は?」


ミレーヌは、直ぐに事情聴取をした役人を見て。


「全員調べた?」


云われた男性役人は、直ぐに調書の内容を読み返す。


「え~っと・・確か・・、毒物かもしれないと云った時にですね・・。 誰か・・、有った。 我々が、毒物かも知れないと云った時にですね。 簡単な疲労回復の薬などなら、死んだダレイ氏の孫娘の“エレン”と老僕の“ポルス”と云う二人なら調合出来ると聞き込んでいます。 云ったのは、メイドで調理場に居る中年女性です」


ミレーヌは、ウィリアムを見て。


「どう? 怪しい?」


すると、ウィリアムは大きく一息を吐いて。


「何とも。 あの毒を生成するには、非常に深い知識と卓越した作業が必要です。 段階を経る作業の中で、少しのミスや放置が劣化に成りますから。 軽い調合が出来る程度の素人で作れるかどうかは微妙です」


ミレーヌは、更に話を進める様に。


「買う事は?」


「云った通り、薬師か医師の仲介が必要です。 数が少ないので、一般の何処かから手に入れたなら足は追い易いと思いますよ。 草を探せるのは狩人などで、地方から持ち込まれるでしょうし。 生成を出来るだけの薬師の数も少ないハズです。 遺体の反応にして、尿でこの反応するは1種類だけですから、聞き込んで見ては如何です?」


ミレーヌは、直ぐに事情聴取をした男性役人を残して、二人の役人に指示を出す。


「いい、事務所に残る隊を二手に分けて、半分の隊で直ぐに聞き回って。 残りの隊は、こっちに2・3台の馬車と一緒によこして。 明日に一斉の事情聴取をするから、事務所に全員を移動するわ。 店の見張りは、そのままで。 明日までは現場保存したいし。 これから、応援が来たら家宅捜索する」


「ハッ、了解いたしました」


と、ウィリアム達を案内して来た役人と、もう一人の若い背の大きな役人が外に出て行く。


ウィリアムは、二人が出て行ったのを見てから。


「“明日に一斉”ですか?」


ミレーヌは、困った顔をして。


「それがね。 ダレイ氏の死を見た奥さんが。 動転してアレコレやらかした上に貧血で倒れたの。 しかも、第一発見者の孫娘も、動揺して放心してるし。 あと、ダレイ氏は港に近い商業地で別の店も出してるわ。 其処にも、数日休業を告げに老僕のお爺ちゃんが行ったらしいのよ」


ウィリアムは、ポカンとして。


「行かせたんですか?」


ミレーヌも、少し情けない顔を見せて。


「そ~、行かせたの~。 一応、一人役人は付けたらしいんだけどぉ~。 事故か事件か判断出来ない時だったからぁ~」


スティールは、其処に加わり。


「“全員移す”ってのは・・・、連行?」


頷くミレーヌは、


「此処はこのままにしたいし。 役人の監視の中で此処に居させるより、今日中に連れて行って置いた方が証拠隠滅も少ないでしょ? この国では、疑わしい場合はこうするのよ」


スティールは前髪を掻き上げて、キザに恰好をキメると。


「フッ。 じゃ、ミレーヌお姉さんとも一晩一緒に居れる訳か・・・。 俺も今夜は其処に泊まろうかな」


すると、ミレーヌはニコッとして。


「地下の独房にご案内して差し上げるわぁっ。 ゴキブリとかぁ~、ムカデとか。 淋しくないわよ~」


スティールは、前髪を掻き上げたままに固まってしまう。


ウィリアムは、此処まで来てこうも面白いスティールが凄く思えて来た。 一応、仕方なくと助け舟を出すべくして。


「一緒に行きます? 容疑者の皆さんと・・?」


「え・・、遠慮・・しちゃおうかな・・・」


スティールは、悲しく呟いた。


ウィリアムは、ミレーヌに顔を移すと。


「所で、発見当時はどんな感じだったんです?」


ミレーヌも、ウィリアムの知的な鋭さに何かを感じたのだろう。 直ぐに残した役人の男性に。


「状況を、彼にも教えてあげて」


「は」


役人の男性は、調書の紙を捲り。 読み上げながら説明をし始めた。


ウィリアムは、所々で質問を重ねるし。 役人の男性も出来うる限り丁寧に答えてくれた。


その内容は、こうだ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




役人の男性が、ウィリアムに向いて。


「今日の昼前に、ダレイ氏が別の店の見回りを終えて戻りました。 昼食前に“お風呂に入りたい”と奥さんのルイスさんと云う方に命じたそうです。 この方は、20年近く前に無くなったダレイ氏の息子に嫁いだ方で。 孫娘のエレンとは親子に成りますから、“奥さん”と呼ばれて居ます。 続きになりますが、ダレイ氏が昼食を取っている間にルイスさんは風呂を沸かしたそうです。 手の空いた老僕のポルスと云う人物と一緒にです。 昼食が終わった後、ダレイ氏は新しく買った白いタオルを持って風呂に入ったそうです」


此処で、スティールは桶の中のタオルを再度見て。


「あ? でも・・このタオルは黄色いゼ」

 

ミレーヌは、少し小難しい顔をして。


「そう・・。 だから、いきなり私達が呼ばれたのよ・・。 本当なら、白いタオルが有るのに、黄色いタオルが残されてたから・・」


と、タオルの入っていた桶を指差す。


ウィリアムは、冷静な口調で。


「つまり。 部外者が入って、ダレイ氏を殺したのではないか・・・と?」


頷くミレーヌと役人。


ウィリアムは、死んだ老人を見て。


「そんなに恨まれてる人なんですか?」


これには、ミレーヌが答え。


「まぁ、商人なんて他人の店を潰して伸し上がるから恨みは有るわよ。 ただ、この人は特別多いわ。 気まぐれで店に勤めてた女性を襲ったり、気に入らない使用人は無一文で追い出したり・・・。 探せば探した分だけ恨みが出て来そうなタイプ? そんな感じ」


スティールは、軽く口笛を吹き。


「ヒュ~、敵だらけなオジイサンって訳か・・・」


「そ。 だから、必ず外に出る時は用心棒の男を連れて居たそうよ。15年位前に、命を狙われた事が有ってからず~っと」


ウィリアムは、タオルの入った桶を持ち上げて。


「“新しく買った”と言ってましたね。 このタオルも、綿の具合を見る限り使い古した物では有りませんが。 どうして、“新しく買った”と?」


役人の男性は、調書を見ながら。


「ん~と。 ダレイ氏は、使い古した物は嫌いな性分なんだそうな。 今日の午前中に、ダレイ氏の孫娘に成るエレンと云う人物と、老僕のポルスが二人してダレイ氏の身の回りで使う下着ヤタオルを買いに行ったらしい。 ダレイ氏は、月交換で身の回りの下着やタオルは買わせて居たそうです。 根っからの浪費家で、子供の頃からそうやって育てられたそうで」


スティールは、桶を置くウィリアムに小声で。


「“無駄な人”まんまだな」


ウィリアムは、頷いて見せてから。


「では、続きをお願いします」


「はい。 ダレイ氏が風呂に入って少ししてです。 大量のお湯を使って身体を洗うダレイ氏は、長湯の時には大抵お湯の継ぎ足しを頼むそうで。 その伺いに孫娘のエレンが聞きに来たのですが・・全く返事が無く。 様子を窺う為に浴室に入って死亡に気付いたそうです。 エレンは、大慌てで部屋に戻って助けを呼ばせようとしました。 その時、エレンさんの慌て様を見掛けた奥様のルイスさんも、浴室で倒れたダレイ氏を見つけて大慌てに錯乱し。 お湯を抜いたり、換気をしようと上の窓を開けたりとしたそうです」


ウィリアムもスティールもクローリアも、この話で浴室の北側の壁のかなり高い所に二つ有る換気窓と。 天井に設けられたステンドグラスの窓を見上げる。


ミレーヌは、壁側の換気窓の一つは、ダレイ氏が死んだ時に頭を預けていた浴槽の縁の真上だと云う意味で。


「家族の証言では、あそこから色の違うタオルを降ろしたのではないかって云ってるわ。 ダレイってお爺ちゃんは、遺体の姿で顔にタオルを置いて寝る癖が有ったらしいの」


ウィリアムは、とても難しい顔をして。


「つまり。 ダレイ氏が浴槽で横に成って寝ている時に、あの小窓から何かをして毒を染み込ませたタオルでも降ろしたと? そして、元々有った白いタオルも回収したと?」


「そう。 死体の変化に驚いた家族は、み~んな毒殺だって疑ってないわ。 だから、医者じゃなくて私達が先に呼ばれたって訳」


腕組みをしたウィリアムは、肘を杖の様にして口に左手を当てると。


「ですが・・。 あの壁の窓は子供でも通れるかどうかって云う小さい四角窓ですよね。 それに、この屋敷には、階段を上がって高く成っている所に出来てる。 外からあの高さの窓に届くには、3メートル以上の背丈が必要と成りませんか?」


ミレーヌは、同じく腕組みして窓を見上げる。


「でしょう? 外を見ても、別に窓の外は高くも成ってないし。 足場に成る様な物も無いの。 聞き込みでも、スッゴク背の高い人物なんて見掛けられて無いし・・・。 正直、殺人なら家族全員がグルで嘘を言ってるとしか考えられないのよ」


ウィリアムは、ミレーヌの心を読んで。


「では、ミレーヌさんは、一家が嘘を云ってると?」


「君が毒を見つけてくれた中で、壁や床以外でタオルにも毒が出たでしょ? 最初から、タオルに毒を仕込めば、ダレイってお爺ちゃんは癖で死ぬ訳じゃない」


スティールは、ナルホドと思い。


「あ~、流石は美人の役人様。 頭イイな~」


と、褒める。


「何にも出ないわよ」


と、ミレーヌは得意顔。


だが、ウィリアムは腕組みのままに考えて。


(本当にそうか? 体の彼方此方に壊死が見られる以上は、全身に毒を被った筈だ。 タオルだけでこう成るのかな?)


しかし、ミレーヌは、こうも続ける。


「でも、タオルは黄色よね。 タオルは、摺り返られたのかしら・・・、何時・・何処で?」


この疑問には、ウィリアムが代わって説明する。


「いえ、多分は・・、このタオルが新しく買って来たタオルですよ」


スティールは、桶ににじり寄って真っ黄色のタオルに顔を見下し。


「コイツがあ?」


「はい」


ミレーヌは、確実に確かめる様に。


「確か? 間違いは出来ないわよ」


ウィリアムは、タオルの入った桶をミレーヌに見せる様に右足のつま先で持ち上げると。


「使用されたと思われる毒は、温度に弱い性質が有りましてね。 夏の高温の温度に晒すと、この色の様に黄色く変色するんです。 さっき、尿で変化した緑が反応が毒の色で。 黄色味がかった色は、尿の温度による劣化です。 本来の色は、白い石鹸の様な固形の滑り気が在る状態のハズですから」


ミレーヌは、確かな確信を持って。


「じゃ、やっぱりタオルに塗りつけたのね?」


「さあ・・、それはどうか・・・」


と、ウィリアムが水を差す。


繭を顰めるミレーヌ。


スティールは、ウィリアムににじり寄って。


「なんの不満があるとか? うぃ?」


ウィリアムは、明くまでも冷静な口調で。


「いいですか? 新しい物を好む被害者に。 あの毒を塗った刳ったタオルを渡したら手触りでバレる可能性強いですよ? 確かに、この浴室はピンクのタイルで黄色は直ぐには判別し難い色ですが。 タオルをお湯に浸してる瞬間から急激な劣化が毒に始まります。 入って直ぐに濡らして顔に被せたとしても、心臓や内臓器官に持病でも持ってないなら、苦しんで叫ぶ位は出来ますよ。 遺体を診てみると、全身に壊死の後が・・・。 石鹸に摩り替えて有るとか、冷たい水に溶かした毒を浴びでもしないとこうは成らないと思います。 そして、こんな希少な毒を何処から手に入れられたのか・・。 毒の発見を急いだ方がいいと思いますよ。 でないと、長引くかも知れません。 この事件は・・・」


と、遺体を見つめる。


「・・・」


考え込むミレーヌは、直後に応援で来た数人の役人。 そして、戻って来たポルスと云う老僕が揃うと。 二階の居間に詰め込んだ家族全員を馬車に乗せて警備役所の方に移動させる形を取り。 家宅捜査を家に残す役人に命じた。


基本捜査は役人でいいと云うミレーヌは、ウィリアム達は明日から捜査に本格的に加わって欲しいと言ってくれた。 


ただ・・。


夕方。 容疑者として一家を馬車で送り出した後だ。 家宅捜査の為にランプやシャンデリアに明かりが灯された家の中。 家宅捜査が始まっている中で腕組みするミレーヌはウィリアムと別れ際にロビーで。


「私の名前はミレーヌ・ロワールフ。 住居区中央のロワールフ邸って言えば、何処か直ぐ解るわ。 もし、夜でも用が有るなら来てもいいわよ。 どうせ独り身だしぃ~、怖い物無いし。 夜は一人だと寂しいしねぇ」


と、流し目をよこす。


スティールは、もう顔をワナワナさせて。 言われているウィリアムを睨んで襲い掛かる素振りを見せた。


クローリアも、露骨に誘うミレーヌに驚き戸惑うばかり。


当の本人は、ポカ~ンと目が点に成って立ち尽くしていた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「お前よ。 マジでマダムキラーだろ? あっ?!! 白状しろいっ」


スティールが、ウィリアムにフォークを向けて隣の席から詰め寄る。


ウィリアムは、シレ~っと横を向いて剥れた素振りをする。


見ているロイムとアクトルは、クローリアから状況を聴いていた。


一同で、宿を出てレストランに入り食事をしている。 まだ、陽が暮れたばかりで、街の飲食店が盛り上がるのはこれからだろう。


またもや年上の女性に好かれた形のウィリアムを呆れて見るのはロイムとアクトル。


アクトルが先に。


「しっかし、お前の知性は凄いな。 お前、スティールよりも世界中で女作れるんじゃ~ないか?」


スティールは、それは癪な意見だがライバル視する故か。


「可能性は十分だぜっ。 全くっ、コンコース島でも、年上のキャリーさんや街の姉さんに好かれたしなぁ~。 どんだけだっ!! お前って奴ぁっ!!! そのポジションは俺だっつ~のっ!!!!!」


ロイムは、マジマジとウィリアムを見て。


「ヤッパリ・・アレかな~。 ウィリアムのスティールさんとは違う近寄り難い雰囲気に燃え残る女心を刺激されるのかなぁ~?!!!」


スティールは、ロイムにナイフを向けて。


「おっ、それいい意見っ!!」


困った顔のクローリアは、


(どんなイイ所が有りますの?)


と、不満顔。


さて、アクトルはあ~だこ~だとウィリアムに絡むスティールに。


「おい、お前少し黙れ」


スティールは、自分にとってはどっちがモテるかは由々しき事だと強調する様に。


「これが黙れっかっ!!!」


しかし、アクトルは拳を握り。


「クローリアは顎を殴っただけだが。 俺は叩き割ってやろうか? 人前なんだよ・・・あ?」


と、凄む。


「うぐぐぅ・・・、アークぅ・・」


「ウルセエ。 お前のゴミのプライドは要らん」


「ゲフっ」


撃沈したスティールは、椅子の後ろに反り返った。


さて、アクトルはウィリアムを見て、右手にビールの入ったグラスを持ちながら。


「ウィリアム。 その毒は、そんなに作るのが大変なのか?」


ウィリアムは、顔を少し沈む俯き加減にして。


「ですね。 温度に弱いので、井戸水などの冷水の中で草を切り刻み。 半日置いておくと、白い毒の成分が染み出て沈みます。 ですが、絶えず水の上澄みを汲み取り。 冷たい水に入れ替えてやらないと毒が劣化してダメに成りますよ。 しかも、瓶詰めするにも岩塩を刳り抜いて、その中に毒を固形化させて入れないと・・・」


「凄い面倒な作業だな・・。 しかも、採れる草の量が少ない訳だろ? 色々と面倒な毒だな」


頷くウィリアム。 実は、既にある食い違う二つの現実に悩んでいた。 一応、仲間なのでと思い。


「実は、事件で在る歪みと云いますか。 交わらない事実が見えています」


スティールは、“交わる”に反応して身を戻し。


「そりゃあ~お前、女とベットで・・・」


左から、ロイムが杖でスティールの横顔を。


「・・・・」


止まったスティールを見たアクトルは。


「チン(顎)に入ったな・・。 少しは静かになるか」


スティールは、死人の様な顔を横向きに倒れる。


ロイムとクローリアが、同時に合掌。


ウィリアムは、溜め息を吐いてから。


「いいですか。 毒は非常に高価で、おいそれと誰でも手に入れられない物です。 しかも、医師や薬師の仲介が無ければ手に入らない物。 死んだダレイ氏の店は、雑貨を中心に旅や生活の日用品を中心とした店で。 薬の類は、何処でも手に入る常備薬ぐらい物だけ。 更に、以前に薬関係でその手の筋とイザコザを起こしていて、殆どの仕入れルートを絶たれていると聞き込みました。 もし、家族が犯人だったとしたら、毒との接点が見えません。 逆に、部外者だとしたら、目撃もされずにダレイ氏を殺したのか。 手口が皆目見等も付きません。 自殺だとしたら、薬の入手先から動機まで全く解りません。 捜査が始まり、明日の一斉事情聴取で何が見えるのか解りませんが。 下手すると迷宮入りしますよ」


アクトルは、語るウィリアムが本当に何も見えていないと見えて。


「おいおい、お前が心配するとは怖いな~」


ロイムは、大きいハムをフォークで刺しながら。


「ホントだね。 ウィリアムがそんなに悩むなんて、初めて見た」


しかし、ウィリアムは食事の手が進まないままに。


「本当に・・・今回は怖いかも知れません」


アクトルは、口に運んだビールを飲むのを少なくて止めると。


「何だ? 何か悪い要因でも在るのか?」


ウィリアムは、俯く儘に。


「・・・、あの浴室・・・壁に亀裂が・・・」


聞いている3人は、意味が理解出来ず。


クローリアが、簡単そうに。


「古い家ならば、亀裂も在るかと思いますが・・・」


ロイムも、ハムを口に運んで。


「モグモグ・・そうらよ。 古い家・・なんらよ・・」


と、食べながらクローリアに同意をする。


だが、ウィリアムは。


「違う・・」


アクトルは、ウィリアムが偉く何かを気にしてると思い。


「何が違うんだ?」


すると、何時に無い真剣な目でウィリアムは皆を見て。


「ロビーも、廊下も、全て石を表に出す一般石材建築です。 浴室の天井は、瑪瑙の混じる石を切り取った物なのに、壁は安物のタイルでした。 しかも、普通なら石の上にタイルを張るなら、地震などでも壊れない様に枠組みにしてタイルを噛み合わせる・・・。 なのに・・あの浴槽は、やっつけ作業の様に粘着の粘土で貼り付けただけの安物仕上げ。 家の内装のどれにも金を掛けているのに・・あの場所だけそれが無い。 最初、浴室に入って違和感を覚えたんですよ。 ステンドグラスに合わない壁に・・」


アクトルは、ウィリアムが何を気にしてるのか心配に成り。


「お前・・・、何が言いたいんだ?」


「はい・・。 よくよく考えるとですね。 何で浴槽なのかなと思えるんです」


ロイムは、ポカ~ンと。

 

「そ・・そんなにの拘るの?」


考えるウィリアムは、検死したダレイ氏の死に方に一種の恐怖を覚えた。 一見只の毒死だが、何か今までに見ない死に方なだけに、殺しだとすると犯人の憎悪を感じる。


「考え過ぎかも知れない。 でも、態々・・浴槽で窒息させる遣り方・・・。 苦しんで、下手すれば湯船に沈み苦しみます。 丸で、あの場所が棺の様な殺し方に見えたんです。 犯人は、どんな恨みが有ってやったのか・・。 正直、少し怖いです」


ウィリアムがこう言うのは、アクトルやロイムなどにはとても怖く見える。


アクトルは、ビールを飲む手を完全に止めて。


「お前がそう言うと、間違いでもそう思えてくるゼ。 おぉっ、背筋にブルっと来た」


「スミマセン・・」


「ま、今日起こったばかりだ。 明日からしっかりやろうゼ」


ウィリアムは、頷くだけだった。


スティールを引きずり、宿に戻るとウィリアムは一人に成りたいのか。 ロビーの待合場のソファーに腰掛けて黙って居た。


気遣う仲間は、皆部屋に戻る。


その夜更けだ。 宿の4人部屋で横に成る男達4人。


「う~ん・・・お花・・ばたけがあああ・・・みえちゃうん」


と、スティールが寝返りを打つ。


一番右の壁に近いベットだ。


一方、一番左のベットでは、ロイムが頭に手を擦りやりながら。


「ステ・・ル・・・・さん・・ぶつ・・・いたひぃ~・・・」


真ん中のベットに寝る右がアクトル。 左がウィリアム。


「・・・」


窓の前で曇り空の闇空を見るウィリアムは、まだ寝ていなかった。


(なんとなく・・・犯人は解る気がする。 だけど、意味が解らない・・。 理由以前に、どうしてあの毒を使った? 何処から手に入れた? どうして・・・、浴室でないとダメなんだ? 食事に混ぜてもいいし・・・。 アレ? 何で、お湯に浸かってたタオルに毒の成分が残ってたんだろう? 結構色濃く反応が出たな・・。 普通なら劣化が酷いのに・・。 タオルは、変色してたのに・・・。 あぁ・・、ダメだ。 サッパリ解らない)


ウィリアムは、一人で悩んだ。


実は、アクトルも起きている。


(溜め息が・・・止まねえ~な・・。 ウィリアムの奴・・何を・・・・)


アクトルは、それを考えると。 フッと思う。


「ウィリアム・・・・まさか・・・・」


ウィリアムは、アクトルが起きていたのに気付いて。


「起きてたんですか?」


だが、アクトルはその返事を口にせず。 別の問いを口にした。


「お前、まだ人が死ぬと思ってるのか?」


アクトルは、肘枕で身を横にして下着姿の筋肉の身体をウィリアムに向けた。


窓の外を見るウィリアムは。


「解りません。 何も・・・」


アクトルは、それはそれでいいとしながらも。


「ウィリアム、お前は凄く犯人に近い考え方が出来るんだなぁ。 俺には、何も意味が解らない。 お前みたく、事件の深い処を考えるなんてな」


ウィリアムは、苦く笑って。


「別に、犯人に近いかどうかは・・・」


「だが、お前の考えは当ってるかも知れねぇ~ゼ」


ウィリアムは、アクトルを顔だけ横にして見て。


「え?」


「だってよ。 俺が人をもし殺すなら、毒なんざ~使わずに戦斧で一気に・・な。 でも、犯人はそうじゃない。 お前が怯える様な毒を持ち出す以上、計画性も有るし。 多分、用意周到にやってるんだろう。 すると、事件を終わらせないままにするか? お前と一緒に居て、其処は解る。 事件を短絡的に起こして殺す奴は、大抵が勢い任せだ。 だが、計画性を持つと・・その~・・・なんつ~かな。 ケリまでやるだろう?」


「まぁ・・・大抵は。 犯人は、自分が犯人では無いとして幕を下ろさせようとしますね」


アクトルは、冒険者としてのカンが働いた。 だから・・。


「多分。 お前が関わる以上、事件を解こうとする動きは加速する。 お前は、蟻の巣穴の手掛かりで、洞窟を作るタイプだ。 明日からは、下手すれば止まれないぞ。 ま、今日は寝とけ。 明日までは、自由だからな」


と、アクトルは笑う。


ウィリアムは、アクトルの気遣いに薄く笑って。


「ええ・・」


と、天井を見て目を瞑る。 だが、ウィリアムの心の中で不協和音は成り響いていた。 時間の長短では無く。 何か、凄く因縁の香りの残り香を事件の現場に嗅いだ感覚が抜けなかった・・・。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






朝、深い霧の中で宿の前に馬車が来た。 ウィリアム達が食事をしようとしている朝も少し早い頃。


役人の馬車が来た事で、地下の食堂で声を掛けられたウィリアム達は店員から白い目を向けられるのだが・・・。


「やっほ~、おはよ~ん」


ミレーヌが、ウィリアム達が着こうしている席に階段を降りてやって来た。 姿は変わらずで、目の周りが少し疲れて見える。


ウィリアムは、もう迷惑を掛けられるのは某一名の御蔭で慣れて来た。 周りの視線を気にする仲間を他所に。


「おはようございます。 眼の下に疲労が見えますが」


ミレーヌは、目元を指で擦り。


「半分徹夜だったのぉ~。 30過ぎた乙女に美容を維持する時間ぐらいは与えて欲しいわ。 あ、一緒に御飯食べる」


姐御肌の一面と、若い女性の一面を併せ持つミレーヌの姿に、スティールはムラムラ来る物を感じ。


「何処までも一緒していいぜ。 でも、30過ぎてるとは見えないなぁ」


アクトルが、別の席から椅子を一つ借りる中。 さっさと坐るウィリアムの横にミレーヌは陣取って。


「そお? これでも34歳。 列記とした大人よん」


ウィリアムは、相応の歳だと思える雰囲気に。


「若く見えるとは思いませんが、年齢に似合った成熟は見られますね」


と。 冷静かつ、素直に返す。


スティールは、褒めに為ってないと思うが。


ミレーヌは、ウィリアムに顔を寄せて。


「ンフ。 悪くは無いでしょ?」


頷くウィリアムも。


「一般的見方としては、十分に綺麗かと」


微笑むミレーヌは、ウエイターに運ばれた水を飲みながら。


「ンフフ・・。 そうゆう硬い言い方も様になるのねぇ。 カワイイ・・・」


アクトルとクローリアの間に坐るスティールは、嫉妬で気が狂いそうな程に喉を掻き毟り。


「ンガーーっ!!!!」


アレルギー反応でも起こしているかの様だ。


アクトルは、義弟ながらに一人でアホに成るスティールを見るに疲れて。


「お前よ。 少し死ね」


クローリアは、横を向いてポツリ。


「モンスター・・・」


ロイムは、早くも波乱が見えるテーブル上で、チビチビと水を飲んでいた。


さて、注文をして料理を待つ事に為ると。 周りにチラチラ見られるのも気にせずウィリアムは、直ぐに話題を切り出す。


「何か進展有りました?」


と、ミレーヌに。


「いえ。 色々聞き込んできたらしいけど。 全ての情報に眼を通してないから何とも」


「ですか・・」


さて、来た料理に向うウィリアムは、何かを考えて黙って居た。


絡むスティールを邪険にあしらい食事を共にするミレーヌは、やはり人生経験から解るのか。 黙るウィリアムにちょっかいを出さずに軽い話掛けに留める。


そして、食事が終わる頃。 ウィリアムは、紅茶を飲む手を止めてミレーヌに。


「聞いていいですか?」


微笑むミレーヌは、


「何でも。 下着の色でも良いわよ」


「なぬっ」


反応するスティールに、アクトルが小声で。


「海に沈めっぞ」


「はぐぅ・・・」


ウィリアムは、真剣な顔でミレーヌに向き。


「我々の事を連れて行った家族に言いましたか?」


ミレーヌは、一瞬キョトンとしてから、首を左右に振り。


「事情聴取の時でいいと思って・・、不味かった?」


「いえ、好都合です」


と、ウィリアムはミレーヌに言い置いて。 次に仲間を見ると。


「皆さん。 事情聴取には、俺一人で行きます」


と。


スティールやアクトルを始めに、5人全員がウィリアムに注目する。


アクトルは、少し力を無くして。


「行っても意味が無いからか?」


ウィリアムは、紅茶のカップを置いて。


「いえ。 皆さんは、事件の現場を少し離れた場所から見張って欲しいんですよ。 舞台に全員上がれば、此方の顔が相手に全てバレます。 もしも、何が有ってもいい様に。 隠しておける駒は、隠したいんです。 外部犯なら、尚更店の事は気にしますし。 もしも、あの一家が全て狙われている対象だと考えて、見守って欲しいんです」


アクトルは、黙る仲間を見回してから。


「ウィリアム、お前が心配するのは・・、毒の事と。 次の殺人か?」


“殺人”と言葉が出て、ハッとしてミレーヌもウィリアムを見た。


ウィリアムは、ゆっくりと首を縦に。


「毒と犯人の接点が見えない。 犯人が絞れない以上、ある程度の予防線は張りましょう。 役人は、見える予防線。 皆さんは、影の予防線です」


スティールは、ウィリアムの腹を知り。 ニヤリと笑うと。


「表舞台にお前も上がるなら、お前も気を付けないと。 ま、お前に抜かりは無いがな」


ウィリアムは、スティールに視線を返し。


「もし、怪しい人が居たならスティールさんとロイムかクローリアさんとで尾行を。 アクトルさんは、体が大きいので目立ちますから」


すると、スティールは口元を微笑ませ。


「任せろ。 フン、お前の舞台を見物させて貰うゼ。 しっかりやれよ」


クローリアもロイムも、何も言えずに頷くだけだ。 何も言う事が無かったのだ。 スティールの納得が、寧ろ一番の疑問であった。


さて、ミレーヌと二人で先に外に出たウィリアムは、霧の立ち込める中で馬車へ。 黒光りのする褐色の馬車で、御者は役人だった。


「御者の方も連れてくれば良かったでしょうに」


ウィリアムが言えば。


ミレーヌは御者の無口男を見て。


「誘ったんだけど・・・、スッゴイ頑固さんなのよ・・。 驕るって言ったのにぃ」


と、口を尖らせる。 


御者の男性は、席に座ったままに微動だにしない人物だった。 深く黒い帽子を被った中年を過ぎた頑固者の顔である。


さて車内に乗り込んで、走り始めた馬車の中。 ウィリアムとミレーヌは向かい合いながらに坐る。


ミレーヌは、直ぐに。


「君に言われて、医師や薬師を当らせたわ。 でも、この数年分のあの毒は、特定の薬師で作られて。 特定の薬師や医師に渡ってる。 紛失や盗難は無いそうよ」


「ですか・・。 ま、大方そんな所だと思ってましたが」


「あら・・・、予定通りなの?」


「いえ・・。 毒を造るのも玄人なら、取り扱う方も玄人でないと。 仮に、実行犯が毒の玄人では無くとも、確かな知識と手解きを与えられる誰かが必要です。 色々と甘い毒では有りませんからね」


すると、ミレーヌも深く背凭れに坐って腕組みし。


「みたいね。 聞き込みに行った捜査員の方が、薬師や医師に尋ね返されたそうよ」


“誰があんな毒を使った?!!!!”


“あの毒を誰でも盗れる場所なんかに置いたバカが居るのかっ?!!!”


「ってね。 どの医師や薬師も、厳重に施錠出来る棚に仕舞ってあったって言ってたわ」


頷くウィリアムは、当然と言える頷きを見せた。 そして、こう口ずさむ様に言う。


「毒とは、使われて危険を知らしめる物・・。 それが劇毒で、効能が恐ろしければ厳重に扱われる。 扱う側が毒を深く認知し、正しく扱うなら当然の反応です。 逆に言えるのは、それだけ人を殺してきた毒だ・・・と云う事ですよ」


ミレーヌは、ウィリアムの呟きの独り言の様な話を心に留めて。しばし黙った。


だが。 馬車が、霧の中で都市の北側に在る役所区に近付いた中で。 ウィリアムは、家宅捜索の事を聞いた。


ミレーヌは、“サ~ッパリ”と言いたげに両手を上げて見せて。


「毒物らしき物は殺虫剤と洗剤ぐらいよ。 ぜ~んぶ探したんだけど・・、な~んにも」


すると、ウィリアムはミレーヌに近寄る様に前屈みに成って。


「実は、お聞きしたいのは・・・その押収物なのですが」


「? ん?」


ミレーヌも、ウィリアムに顔を近づける様に前屈みに。


ウィリアムは、金髪美女と拳一つも無い間合いまで顔を近寄らせて。


「押収した物には、恐らく店の仕入れや輸入品のリスト等の書類も有ると思いますが・・・」


ミレーヌは、少し眼を逸らして思い出してから、また目線を合し。


「ええ。 もしかしたら、こっそりと輸入したとも考えられるし・・・。 押収してあるわよ」


「見せて頂けませんか? ソレ」


ミレーヌは、ウィリアムを見つめる。 “どうして・・・”は、言わずに。


ウィリアムは、視線を外さずに。


「念の為に、ですよ」


ウィリアムの今の時点で、その店の事情を知る必要は無いハズだ。 事件との関連性は、非常に薄い。 だが、ミレーヌは何かを感じて身を戻すと。


「いいわよ、見せても」


ウィリアムも、身を戻し。


「ありがとうございます」


「うん。 でも・・・、見張りは付けるわよ」


「構いません」


「じゃ、事情聴取の前に見ちゃって。 まだ、これからあの一家には朝食取らせないと」


ウィリアムは、早くも目を瞑って考え出した。


(なんか・・、凄いコに逢っちゃったわねぇ~) 


瞑目するウィリアムを見つめるミレーヌは、ウィリアムの全てに惹き付けられそうだった。

次話予告


事情聴取に望むウィリアムは、死んだダレイ氏の一家や使用人に影を見た。 結局、何とも得る物の少ない事情聴取は終わるが・・・。 ウィリアムは、もう別の綻びを見つけていた。


次話、数日後掲載予定


どうも、騎龍です^^


やっと物語の入りも終わりました^^。


モバゲー内での閲覧数やファンの方も少しづつ増えて来て嬉しく思っています^^


物語は、コチラのサイトが優先で。 座談会はモバゲー内が優先と云う形でのらくらやって行こうと思ってます^^


ご愛読、ありがとうございます^人^

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