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エターナル・ワールド・ストーリー  作者: 蒼雲騎龍
K編
200/222

ポリア東の大陸編 モッカグルにて 5

                  ポリアンヌ物語~冒険者の眼力編



                 ~東の大陸へ・大冒険の始まり・それから~







朝。 島の長と住民を乗せ、また折り返して戻るソルドレイクの船を見送った後。 歩きながら話すポリアは、シュヴァルティアスから返って来た話にその足を止めて。


「はぁ? 私達と冒険ん?」


シュヴァルティアスが帰らないので、理由を聞けば・・、なんとである。


呆れるゲイラーで、朝の賑わしくなる甲板上にて、歩きながらに。


「おいおい、御宅がもう主じゃないか。 一緒に冒険って、大丈夫なのか?」


手ごろな仮面を買ったシュヴァルティアスは、もうやる気満々の様子だ。。


「覆面するし、実質の主はもう交代してある。 僕、今年から顧問になったんだもん。 東の大陸の斡旋所の総括顧問~~~」


聞いたポリアやマルヴェリータは、“顧問”と聞いて驚く。


「はぁ、顧問って・・・冒険していいわけ?」


「チョット、ポリアのチームに入って大丈夫なの? 後で問責とかイヤよ」


ポリア達の足に遅れない様に、足早に露店を見回るシスティアナが。


「顧問~顧問~~、何かのこもん~~~」


と、謳っている。


前日に、ワインの瓶をソルドレイクと二人で7・8本ずつ空けたイルガだが。 流石にその酔いも抜けていて。


「では、偽名でも使われて、協力者として入りますか?」


云われたシュヴァルティアスは、


「なぁ~~にお、偽名は使ってもチームに入れてよっ。 一員にしてよ」


その我儘に、大きな溜め息をしたイルガ。


意味が解らないと思うポリア。 こんな高名な人物が加わるなど、それこそチームの築いてきた実力が壊れると。


「いっそう、新しくチームを作ったら如何ですか? 若くて、可愛らしい女の子を選んで」


すると、シュヴァルティアスは、何か苦々しくも悶える様に。


「いい提案だぁ~~~。 でも、ポリアちゃんとマルヴェリータさんを超える逸材が居無い~~~」


仲間一同、困惑だが・・。


「・・・まぁ、いいわよ。 面倒な仕事も押し付けられる事も有るし。 今回の一件で、お力添えも貰ったしね。 今回の東の旅は長引きそうだから、構わないわ。 天才先生」


一緒に、システィアナも。


「せんせぇ~~」


と。


銀色の装飾が入る黒い仮面を着けたシュヴァルティアスは、大して無い力瘤を誇張して。


「よっしゃ~~、偽名はジュリアスって事で~~~斡旋所にいこぉうぜぇぇ~~い」


この天才、一体何を張り切っているのか。


さて。 島を囲む船の街の北東方面。 貿易会社だの、この街にして土地会社が有る。 その働く人が集まる一角の外れに、冒険者の集まる斡旋所が在るのだとか・・。 訪れてみれば、黒い船体の地上部から、大広間、2階広間、3階デッキの広い場所を占めているのが、何と斡旋所だった。 住民が多く住む小さな港街や、集落が周辺に点在している島が多いので、以外に仕事の数が多いらしい。


先ず、一般依頼を請けれる一階の大広間は、休憩する冒険者が、各テーブツに腰を下ろしてリーダーの動きを見ていたりする中。 結構な社交的雰囲気と旅芸人が小遣い稼ぎに曲を披露しているので・・。


「ねぇ、一人?」


「あ・・、そうですけど」


「一緒に、チームを組まない? 今、面子を探してるの」


「そうですか。 自分は、凡人みたく剣士ですが構いませんか?」


「全然。 コッチは、魔想と僧侶の二人で、戦士や剣士さんが必要なの」


若い冒険者同士が、気軽にこんなやり取りをしていたり。


「なぁ、俺達とそっちと一緒に成らないか? 3人と3人のチームで、戦力的にも不足を補えられるだろう?」


「構わないわ。 でも、リーダーは貴方ってのだけは、私はイヤよ」


「んじゃ、君でいい」


「意見は拾うけど、決断に文句言われちゃ困るのよ?」


「いい、いい」


と、チーム同士の合体も行われている。


仕事の受け付けは、大広間の中央の空中に浮くようなフロアに有るカウンターだ。 整髪したオールバックのご老人が、ちょこんと椅子に座って受け付けをしていた。


一般依頼の受付に上がったポリア一行だが・・。


「お爺ちゃん、俺、ジュリアスって云うんだ。 ポリアさんのチームに加わるからさぁ~、一つ記名を頼むよぉ~~」


と、勝手にシュヴァルティアスが言い出した。


他の一同が見ている前で。


「ほぉ~~、貴女方があの有名なポリアさんと、そのご一行ですか」


穏やかに云う小柄なマスターだが、その視界を遮る様にシュヴァルティアスが出て。


「そーそー、早く仕事したいのさぁ~~~~。 このジュリアス様が加わるからには、それこそあのスカイスクレイバーなんか爪弾きしちゃるよぉ~~。 さっさと加入して、上で激ムズの依頼を請けに行くからさぁぁぁ~~~~」


冷めた目のポリアが居て・・。


そのポリアの肩に片手を乗せたマルヴェリータは、頭痛のする頭を抑えながら。


「ねぇ、早くシメて。 面倒だから・・・」


「解ってるわ」


偉そうに云っているシュバヴァルティアスが、その一瞬で感じた殺気。 振り向いた瞬間、こめかみをポリアの右手で掴まれて・・・。


「うごぉおぉぉ・・・・・」


シュヴァルティアスを気絶寸前に追い込んだポリアは、その手を離して。


「ウルサイ・・わよ。 リーダーに従いなさい、ジュリアス君」


ヘタヘタとその場に砕けるシュヴァルティアスで。


「はぇぇぇぇい」


加入の申請をしたポリアは、その穏やかな様子の老人マスターに。


「聞いた話だと、この上3階まで斡旋所って聞いたんだけど・・。 2階や3階は、どう考えるといいのかしら」


ちょこんと座っている老人は、カウンター向かいの席から。


「行ってみるといい。 2階も3階も、貴女方の名声なら留め置かない」


そう云われたポリアは、老人に深くは聞かずに。


「解ったわ。 では、見学させて頂きます」


「ほいほい。 もし、上まで行って仕事無さそうなら、また戻ってくださいな。 一般でも、ちょっと大変そうなのを回します」


ペコリと頭を下げてくれた老人マスターに、ポリアも会釈を返して2階へと向った。


生き返ったシュヴァルティアスが、2階のやや異臭がする階にて。


「此処は、冒険から持ち帰った物品を買い取る場所だよ。 一風変わってるのは、冒険者が描く絵や遺品なども一切合財買い取ってくれる所だね。 ボロい遺品や、無名の絵なんてオークションに出す手間賃や、鑑定料金の方が飛び出る。 此処は、その心配が無いのさ」


ゲイラーは、なるほど感心と思いながらも。


「んで、一緒に来て大丈夫か? アンタの身元、バレたりしないのか?」


「大丈夫。 今の鑑定人は、斡旋所の主が金で雇うオッサンだから」


「んなら、マスターって一階の爺さんか?」


「そう。 話では、孫娘さんと二人で20年ぐらい前から成った人だが、中々に人格の練れた方らしい。 マスターに文句の出ない斡旋所として、此処は有名だし」


様々な物品が陳列される、店舗の中の様な広間に入っているポリアは・・。


「そのお爺さんより長生きしてるのに、全く人格の良さを感じない魔術師も居るのね」


クスクスと笑うマルヴェリータ。


シュヴァルティアスを指差すシスティアナ。


頷くイルガとヘルダーが居る。


(あれれ・・、ケイみたいに一目置かれない?)


困惑のシュヴァルティアスが、気味の悪いモンスターの目玉を見て見つめ合う中で。


「此処は、手数料とかはどうなっているの?」


と、鑑定士をする主に尋ねるポリアがいて。


「そっちのチームは、誰だい?」


片目に、拡大する眼鏡を嵌めている中年の男性。 固太りのコロっとした体型ながら、シャツにサスペンダーをして、ズボンを穿く労働者の様な風体のオヤジであった。


チーム名が売れてるので、話はスムーズだった。 買い取れる物、これだけは無理と云う物差やら、今は多く持ち込まれると在り難い物まで、軽い情報料で聞けた。


昼間にまだあと少しと云う頃合いに、一行は3階へと。 すると、そこには円形で周囲を広々と望める展望広間が広がっている。 ゆったりとした間合いの配置で配された応接セットが、大広間中央のサークルカウンターの周囲に、20ほど備わっていた。


「いらっしゃい、上の階にようこそ」


サークルカウンターの内側に、長身でほっそりとした女性が居て。 穏やかな声でそう話しかけてくれた。


女性に近寄るポリアは、此処が上級の依頼受付なのかと思いながらも。


(・・にしては、随分と広くて静かな場所だこと。 何か、イイ匂いもするし) 


とも、思いながら。


「あの・・、私はチーム“ホール・グラス”のリーダーで、ポリアと云います」


チームの名前を聞く女性は、膝元に置いている黒い本を見ながら。


「あら、まぁ。 随分と有名なチームさんがいらっしゃった事」


「まぁ・・、何とか此処出まで来たのだけれど。 上級依頼は、此処で請けるの?」


すると、長身のほっそりとしながらも穏やかな女性は、その微笑しか印象に残らない様な薄幸の雰囲気を保ちながら。 眼鏡に似合う薄いクリームの様な長い金髪を胸元に流し撫でながら。


「そうね。 此処は上級の仕事を請ける場所でも在り、また相談や愚痴なんかも聞く場所よ。 ホラ、冒険者って、雇い主から大抵は下に見られるでしょ? 初めて仕事した若い子なんて、色々と傷付いちゃうし」


マルヴェリータは、直にこのフロアの彼方此方に花が花瓶へと生けてあるのを見る。


「フラワーアロマ? 随分と香りの出る花が・・花瓶に生けてあるわね」


ほっそりとした女性の主は微笑みを笑みへと変えて。


「お解りになりますか? 水生栽培で育てられるお花を、定期的に変えながら生けて在るの」


「いい香。 これは落ち着くわ」


システィアナが、


“お花~お花~”


とはしゃぐのを見たポリアは、そのままの流れから。


「あの・・、私達に回せる様なお仕事在るかしら? 実力を見たいと云うなら、駆け出しの仕事でもいあるけど」


すると・・。


「ん~~~」


黒い表紙の本に顔を落とした女性主で、また気づいた様に顔を上げると。


「あ、そこの目の前の応接椅子に腰掛けて。 今、見てみるから・・」


花の香りが、丸で移り行く景色の様に香り行く。 ポリアの剣が薄っすらと光る所から、香りが流れて混ざり合わないような風の流れを作っている様な感じがする。 本当に微かな微風を感じる時が在る。


すると・・。


「精霊さん、精霊さん、お風の流れを変えてるの~~? 精霊さん~~、精霊さん~~」


急にシスティアナが歌いだす。


歌を聴くマルヴェリータが、宙をみながら。


「あ~~、この微かな力って・・風の精霊の動きね」


もう冷静な自分を取り戻しているシュヴァルティアスも。


「風の精霊が、花の香りの流れを操っているみたいだよ。 凄く弱い、生まれたての精霊がやってるみたいだ」


部屋を明るくする証明も、薄明かりとなる魔法の石を遣っている。 天井から釣り下がる天秤の受け皿の小さいものに、小粒の石を乗せているのだろう。


待つと云う事に、心穏やかに望める場所がだった。


知らぬ間に、マルヴェリータとヘルダーが手話で思い出と云うか、軽い雑談をして。 記憶を辿る様にイルガが、


”そうだったか?”・・“あぁ、そんな事も在ったな”


と、返す。


はしゃぐシスティアナと、その光景を見る大男が不気味なくらいに幸せそうな微笑を湛える中。 席を変えるポリアとシュヴァルティアスが居る。 ポリアが、仕切り一つ向こうの応接セットに呼んだのだ。


「そういえば、ケイに会ったって云ってましたよね?」


と、ポリアがシュヴァルティアスに。


「うん。 何度か、主だった僕の所に来たよ。 冒険者として来たり、知人として来たり」


「随分とお知り合いなのね。 もしかして、嘗てのメンバー?」


「いやいや~。 僕はその頃、研究者・探求者としてマスターをしてたからね」


「あぁ、先生は裏側の?」


「うん。 色々と、パーフェクトには・・。 でも、ケイと名乗ってからは、丸で半分別人だよ」


「“半分”・・だけですか?」


「だね。 強さ、才能、推察・推理力は変わらないと云うか・・更に磨きが掛かってるような・・」


「・・そっか。 世界の彼方此方回って、自分の罪を拾ってるのかしら・・・」


「みたいだね。 仮面の代わりに包帯を巻いてるから、過去から逃げてるみたいに見えたけど。 罪を償う気に成ったら、丸で別人の様に力を惜しみなく貸してる。 150年も生きてるのに、僕もあの境地は無理だな」


やや遠くを見る様な、そんな様子で云うシュヴァルティアスの眼を見て。


「ね。 先生」


「ん?」


「ケイの知り合いで、ホーチト王国の宮廷魔術師の総括をしてるジョイスって知ってますか?」


「あ、あぁ。 2年前・・ぐらいだったかな、結婚したよね?」


「知ってるんだ」


「彼がパーフェクトの、変わる前の最初の仲間だとは聞いた。 専ら、僕が知るのはリーダーとしてのジョイスかな」


「随分と有名だったって聞いたけど」


「うん。 物探しとか、魔法の掛かった迷宮を切り抜けたり。 才能を良く活用して、結構な仕事の成功率を誇ってた。 でも、彼は二つの悩みに、常に苛んでいたね」


「“二つ”? ケイの存在? それとも・・彼女の事?」


「知ってるのか。 うん、その二つにね」


「そんなに・・?」


「・・一回だけ。 一回だけ、パーフェクトの事を知りたくて、飲みに誘ったんだ。 魔法についての考察や、これからの発展について長く長く盛り上がったよ。 でも・・、パーフェクの話に成ったら、その豹変は驚かされた。 好きな女性が居て、その女性がパーフェクトを・・・。 だが、パーフェクトは、彼女には手を付けなかったらしいね」


「そうなの?」


「パーフェクトは態と、手を掛けなかった・・・。 ジョイス君はそう言った。 悩む彼にすると、丸で“お前にくれてやる”って云われてるみたいだったと。 自分を哀れんだパーフェクトが、毎日変えて抱く女性の一人を、褒美の様にくれた女性みたいだって言ってた」


「・・・事実にしても、考えすぎにしても、相当に病んでる時ね」


「だね。 今はどうだい?」


「幸せそうよ。 一度は諦めたそのチームの仲間だった女性の、命が危ないって言う救援の手紙を貰ってね。 最後には、地位も名誉も捨てる覚悟で、その女性の事を護ったわ」


「へぇ~・・って、知ってるみたいだね?」


「うん。 一時、マルヴェリータとジョイス様って仲良くて、その伝から助けを求められたの」


「え゛」


シュヴァルティアスは、バッと雑談をする近場のマルヴェリータを見る。


「バカ。 見ちゃダメ」


ポリアがその向いた後ろの髪を掴み、グイっと向きを変える。


「ぬごぉ・・首がぁぁ」


シュヴァルティアスが、奇妙な異音を響かせた首を押さえる時。


「あの~、手始めにこんなのはどうでしょうか。 今、下の依頼受付に入った仕事です」


と、女性の主から声が掛かった・・。長身ながら、細身で穏やかな微笑みの女性である主のクラリスから、こんな仕事の提案が・・。


「あのね、一般の依頼でも出されてるんだけど・・、チョット変わった内容だから敬遠されてるの」


「どんな依頼なの? 嫌われるって・・何か?」


「う~~ん、最近の冒険者って、私達みたいな“人”が多いでしょ? だから、亜種人あんからの依頼って、結構な数になるのに無視なの。 それで、サハギンの一族からのご依頼がね・・」


すると、シュヴァルティアスが顎に指を当て。


「サハギン・・、亜種魚人ですな」


しかし、だ。 ポリアはそうゆう部分に差別を持たないので。


「依頼主は傲慢でなければ誰でもいいわ。 それより、どんな依頼なの?」


「えぇ。 この国の古いシキタリで、この亜種人さんを、人と同じ扱いをするって決められているの。 このモッカグルでは、海洋の亜種人さんも多いから、エルフや人狼さんみたいな感じで扱われてる。 街の人の方が不親切で、島に住む永住の民は嫌わないわ」


ポリアはナルホドど。


「いい事だわ。 モンスターでもないなら、差別しても喧嘩になるだけだもの。 それで?」


「うん。 そのサハギンの一族さんから、人の住んでいた島が見えなくなったって言うの。 問題なのが、仕事を持ってきてくれたのが股聞きの冒険者でね。 その依頼を最初に頼まれた者は、サハギンさんが用意したお金を盗んで消えた訳」


「え? ・・、報酬が無いじゃない」


目を驚かせるポリア。


暢気な主のクラリスは、手身近に話す口調をおっとりとさせて。


「そう。 だから、コッチでその調査依頼を作って出したんだけど・・」


聞いているマルヴェリータは呆れて。


「それじゃぁ~~請ける方もイヤよね。 敬遠されるわけだわ。 仕事の内容がハッキリしないんだものねぇ」


だが、イルガは考え込み。


「確かに。 じゃが、どんな依頼なんじゃろうか。 虐げられているとか、モンスター絡みなら心配にもなるの」


ゲイラーも。


「サハギンが何をしたって訳でも無いし。 問題に上がってるのは、人間の町なんだろう? コレは、何か有るんじゃないか?」


ゲイラーに同じ思いだと頷くポリアやヘルダー。 だが、ポリア自身としては。


「ねぇ、でも主さんの考え云々じゃなくて、これが上級の仕事? もしかして、何らかの危険でも確認できていたとか?」


すると、クラリスは口を手で抑えて間延びした物言いながら。


「あ、鋭い」


これを見ていた見ていたヘルダーは、毎度毎度ながら。


(ぬ・・、可愛い)


何故か、主に恋心を抱く事が多い彼だが、今回もそのトキメキが来た。


何とも緩い仕草をするクラリスで。


「実はね。 別件で普通の依頼を引き受けた冒険者のチームに、様子を見に行かせてるの。 でも、帰ってこないままなのよ」


その仕草や様子に、何を暢気な・・と思うポリアで。


「あ・あの・・、結構・・異常事態じゃない? そ・それ・ってさ」


「はい、そうなんです」


すんなり返してくるクラリス。


元は同じ主であったシュヴァルティアスから見ても。


(確かに・・暢気だな)


ポリアは、もう引受ける気が満ちて。


「詳しい事、解ってる範囲で構わないので、全て教えて頂けますか? 緊急を要す仕事みたいなので、準備が出来次第に此処を発ちたいので」


「は~いはい、優秀な貴女達に引受けて頂けるなら、此方も一安心だわ。 あのね・・・」




・・・3日後。




木造の風の力を帆に受けて動く旧式中型旅客船にて、南西の端に在る港街ケット・パールハーに向っているその甲板上にて。


「ポリア。 モンスター絡みかしら」


木箱の上に腰を下ろし、黒いツバ広の麦藁帽を被るマルヴェリータが、晴れ渡る水平船上の彼方を見て云う。


甲板の縁にて、風に髪を自由にさせているポリアは、空を飛んでいるカモメを見上げながら。


「さぁ。 文献を調べても、そんなモンスターの事は載って無かったわ。 でも、その島に向かった冒険者や、漁民まで帰ってこないんだから・・可能性は十分に在ると思っていいかも」


「でも、島を丸ごと包む霧って、何か凄いわね」


「大型のモンスターかもね」


美女二人が、船首甲板にて語り合う。 近くには、布を引いた雑魚寝椅子の上で、温かい日差しを浴びて眠るシュヴァルティアスが居たり。 ポリアとマルヴェリータに言い寄ろうとするしつこい客を睨むイルガが居たり。 何を考えているのか、瞑目したままに身じろぎもせずに座禅をするヘルダーが居たり。


「ポリア。 そういえば・・システィとゲイラーは?」


存在が朝から見えないと思い出したマルヴェリータ。


「船内の家畜場で、ロバや馬と遊んでるわ。 ホラ、あの大きなペンギンも居るみたい」


「ビックノンノウノ・・だったかしら。 結構大きいけど、可愛いわよね」


「そうね。 でも、システィの動物好きも、在る意味で筋金入りよ。 マルタ、知ってる? 気に入ってから、ずっと一緒にあそこで寝泊りしてるのよ?」


「はいはい、部屋を取ったお姉さんからしたら、無駄なお金出たりして不満かもね。 でも、私からしたら、そのシスティに付き合って、文句も言わずに一緒に居るゲイラーに脱帽です」


「・・・それは、システィ信者だから?」


「云えてるわ。 ゲイラーには、システィが神かもね」


笑う美女二人に、寝言を云いながら椅子から転げ落ちる天才一人。 天気にも恵まれた海路は、大きな崩れも無く。 次の日の昼前には、港街ケット・パールハーに着いた。


木製の長い船着場が、一つだけの簡素な港街。 降りたポリアは、小さな漁村とも似たその街にて、先ずは宿をと中心地へ。


「わぁ~~婆ちゃん、冒険者だよ~~。 冒険者ぁ~~」


日焼けした住民の子供に指差されたりしながら、住人に珍しがられたり。


だが、途中でポリアは異変に気づく。


「あら・・・、システィ」


ズンズンと大手を振って行進していたシスティアナが、


「何ですかぁ~~」


と、全く変わった様子も無く聞く。


だが、ポリアも、マルヴェリータも、イルガも、シュヴァルティアスの真横を歩いてる大型生物を見て落ち着けなくなった。


「ポリア・・ア・アレ」


「お嬢様、船はもう折り返しの航海に出てますぞ」


大いに焦り出すポリアは、南国の植物が並木道の様に並んで茂る草むらの道上で。


「システィっ、何でそのおっきなペンギンさん居るのぉっ?!!」


すると、何とも可愛く照れるシスティアナで。


「えへへ、貰っちゃった」


その一言を聞いて、サッと血の気が引いていくイルガとマルヴェリータ。


「嗚呼・・、ひ・貧血が・・」


「うぬぅ・・、眩暈が」


なるべく関わりを持たないとばかりに、そっとマルヴェリータの方に動くヘルダーが居る中で。


「いやぁ~~、仲間が増えたねぇ。 こんなおっきいペンギン、僕も初めて見たよ~~」


一人、バカらしく陽気な色男が居る。 俯き加減に、その色男へと近寄ったポリアは、丸で足元から這いずる様な物言いで。


「ぬぅわぁぁんで、一緒に並列して歩いてんだぁぁぁぁ?」


ペンギンを見るシュヴァルティアスは、何とも陽気な青年調で。


「いやぁ~~、船長さんも困ってたみたいだよぉ~~。 この迷子をど~~するかって。 システィアナ君が、焼き鳥にされそうなコイツを貰いたいって云ったみたいでね~~。 コイツも、僕達に懐いてきてるんだよぉ~~」


刹那・・後。


「ゴルァァっ!!!!」


「ひぃぃぃっ!!」


「これから命懸けかも知れない仕事しようって時にっ、足手纏い増やしてどおおおおすんじゃいっ!!!!」


「ぎゃぁぁぁぁーーーっ、欲しいって云ったの、僕じゃないっすっ!!!!」


「戯れてんじゃなぁぁぁぁぁぁぁいっ!!!!」


・・・・。


昼下がり、街のメインストリートである大きな十字路にて。 十字の四方に、飲み屋、宿屋、宿屋、雑貨屋を持つ交差点に遣ってきた一行。 ポリアに脅えてシスティアナの後ろに隠れるペンギン。 その鰭の右手には、フードが引っ掛かる状態で、引き摺られてきたシュヴァルティアスが・・・。


ペンギンなんか泊まらせる宿なんか在るかと思うポリア。 もう気合いの交渉でなんとかするしかないと思うのだが・・。


「あの~~~~~~~~~~~、すいますんっ!」


納屋も庭も持って居そうな横に長いL字の宿に入ったポリアは、堂々としながらも一礼からして話を始めた。 受付に立つのは、まだ少女の様な容姿の女性である。 おかっぱの頭に、童心の心を映すあどけない笑顔が可愛らしい。


「はい、ようこそ島へ。 お泊りですか?」


少女にどう言おうか困るポリアだが、仕方ないと心に思い。


「・・あの、数日滞在したいんだけど・・。 一匹、動物が居るんだけどね」


「は?」


キョトンとした少女で、一度後ろの壁を見てから。


「ん~~、それほど凶暴じゃないなら、納屋とか在るけど・・・」


「あっ、凶暴なんか全然っ!! ただ、図体が・・・ね」


「えぇっ?」


ビックリする少女に、ポリアは外を指差し。


「あ~~、おっきいペンギンなんだけどね。 チョット・・見てくれる?」


苦笑いの笑顔全面で、こう言ってみる。


「うっうん。 意味が解らないから、見るわ」


受け付けを出て来る少女を伴い、簡素な田舎街の十字路となる地面の大通りに出た。 システィアナと一緒に、気絶しているシュヴァルティアスを突っ突いているビックノウンノ。


「うわぁぁぁ~~~、ホントおっきなペンギンさんだぁ~~。 しかも、あの毛色って南国のものだわ。 遠く遠く離れた小島に居るって聞いたけど・・。 本当に居るんだぁ~~」


ペンギンに近寄った少女が、実に好意的だと胸を撫で下ろすポリア。


だが。


「きゃぁっ、人が死んでるっ?!」


と、少女の声を聞き。


(あ、まだ気絶ってたのね)


と、シュヴァルティアスを引き摺りに向う。


ペンギンを見た少女が気に入り。 納屋に大きな空きが在るので、其処に入れる事で話が決まった。 見た目の年齢より寛容さの有る少女の計らいで、宿に泊まれる様に成った一行だった。

どうも、騎龍です^^



バタバタしていて更新も安定しない中、感想を有難うございます^^



訂正が的確なので、直せる時に参考にさせて頂きます^^




ご愛読、有難うございます^人^

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