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エターナル・ワールド・ストーリー  作者: 蒼雲騎龍
K編
199/222

ポリア東の大陸編 モッカグルにて 4

                  ポリアンヌ物語~冒険者の眼力編



                 ~東の大陸へ・大冒険の始まり・後ノ1~




・・話し合いが決まって、2日後。


島の長と鉱夫の数人とあの盗みに忍び込んできた子供達も含めて、ポリア達を乗せたソルドレイクの船は一路、モッカグルの国内でも最大の都市であるニュッケンロに向った。 同じ地名が世界に幾つか在る都市名の一つが、このニュッケンロ。 半月型の島の上に島民が住む居住区が広がるのだが・・・。


ポリアは、その海上に広がる光景に目を丸くして。


「ひゃ~~~、これが世界唯一の海上都市ってヤツ? 何よ、船と船がくっ付いてるじゃないっ」


一緒に甲板から眺める仲間も、その奇妙な光景に驚く。 半月の島の内海に当る場所では、甲板の広い大型船が、横並び・縦並びで連環に組まれている。 そしてその長さたるや、内海を覆い尽くし、島の外海まで広がっていた。


他所には無い光景に驚くポリア達の背後から、ソルドレイクが子供達を連れて来て。


「おっどろいたか? これが海上都市と云われるニュッケンロの一部さ」


ポリアが。


「これで一部なの?」


「おう。 此処は、ニュッケンロの本島で、古い体系のオールドカッシィー(古き海上)。 北西に程なく行った所に在る島には、ニューレガシティー(新興都市)が作られてる」


すると、一緒に来た男の子の一人が何かを云った。 彼等の面倒を見る役目も有る17・8の若者が。


「本当だ。 これじゃ~~魚捕りが出来ないや」


すると、ソルドレイクが大声で笑い。


「この島の周辺海域はよ、しょっぺぇ岩塩で出来てやがる。 海水も島の周辺で濃度が上がるから、魚が捕れないのさ」


と、教えてくれる。


話を通訳で聞く、赤子を背負う少女のミューが。


「それじゃ、食べ物が無い」


と、呟いた。


若者から、その話を聞くソルドレイクは、目を強く凝らせて。


「ははん。 人間ってのは、それぐらいで死ぬ生き物じゃない。 島のど真ん中では、新鮮な真水が湧く溜め池が有って、此処は医療施設やら自由市やらが有って商人や交易船を扱う船長が立ち寄るんだ。 カジノ、オークション、歌劇や演劇が行われる施設も充実していてな。 立ち寄る船に色んなものを売って、島でやり取りの在る尽く全てを金に変える力が在る。 島民は話術や計算術に長け、必要な物を希望の価格に近付けて買い付けしてくれるのさ。 あの船の上に上がって、その活気を見るといい。 海の上だからって、錆びるものは扱わないなんて云わないゼ。 瓶売り、錆を防ぐ草で包んでの量り売り、人間の強かさが此処に在る」


ポリアは、それは是非に知るべきだと。 一緒に乗ってきた島の長や、数人の鉱夫達にも見物を促した。


船着場・・という船の並びに漕ぎ付けて。 船から船に下りる一堂は、その船の街の上で行われる商売に釘付けられた。


「はいはい、売り買いできるよ~~。 コッチの鉱物は、含有の鉱物もハッキリしたやつだ。 重さの定額で船一杯には量があるよ~~」


「鉱石、宝石、薬草まで買い取るよ。 持込歓迎、相場を軸に買取額の交渉も自由だ」


「肉~~、塩漬け、酒の糟付け、ハムに焼いたものまで色々あるよ。 焼き加減や味付けの注文も受けるぜ」


「武器の買い替えは如何かな? 船の上だからって、錆だの脆いだの言わせないよ。 個人の鍛冶屋が打った一発物(一品・業物)も紛れた量売りだ。 その眼で品定めして、好きなやつをもっていきな~」


船から船へ、渡り歩くと船内や甲板の一角で様々の店を広げている。 しかし、そのまた見に来ている人も多い。 鎧や武器を新調するために、下取りの価格交渉をする冒険者が目立っていると思えば。


「服~~、ボロでも1シフォンから買い取るよぉ~~~。 繕い物も、安く売るよ~~~」


親子で遣っている露店の様な服屋が、太いマストの根元で営まれている。 継ぎ接ぎの服を、継ぎ接ぎとは思わせないデザインに縫い変えて売っていたり。 もう、一度は縫い目を解いて洗わなければ成らない様な布単位の服まで買い取っている。


人と人が、金と物を天秤に掛けて、日々の生活を得ようとしたり、生き抜く為に、ある意味で凄絶な・・しかも当たり前の様な日常のやり取りをしている。 その賑やかさはもはやハッキリとしたある意味の声であり、その人々が集まる活気はまた在る意味で生き様の一端だった。 島を殆ど出た事の無い長や、まだ4・5歳の子供達の眼に映るその光景・・・。 くすねる、奪い取る、騙し取るなどなどの危険も承知で、人がコレまでに培ってきた商売と云う行為のそのままが此処に在る。


“人は生きる為、多かれ少なかれ、何かをせねば為らない。 生きる為に、生き抜く為に・・・”


そう思わせる、形振り構うなんて甘ったれていると思わされる様な、力を客を呼び込み振り回す握り拳に変えて進む勢いがその様子に見えていた。


「長・・、港の村とは訳が違うの・・・。 いやはや、コレが街なのだな」


「うむ・・。 ワシ等が掘った鉱石もまた、商人の手に運ばれてこうゆう所に来ていたのだな。 ふぅ、なんと力に満ちた場所か・・。 弱音を吐いたら、此処では直に負けじゃな」


「あ、長。 向こうで鉱石や宝石を売ってるぞ」


「そっ・そうか。 一応、値段ぐらいは見てみるか」


島の住民が、その生きる為の一歩を踏み出し始めた。


一方で。


「ポリア、お爺さん達・・相当に珍しがってるわね」


腕組みして、白いドレス風の長袖の衣服に、頭から布の様なスカーフ状の物を被っているマルヴェリータが云う。


子供達と一緒に居るポリアは、露店の串焼きを買ってやり。


「そうね。 でも、自分の眼で見て肌身でこの雰囲気を感じて貰えるだけでもいい事だわ」


と、云ってから。 子供達へ通訳を兼ねて同行してきている若い船員に。


「ねぇ、この子と赤ちゃんに服を買ってあげたいの。 通訳して」


と。



不思議な船の街を見回り、その大型・小型様々な船に店が入り。 船内の地上部、甲板の下の下船内部まで色々と使いきって店としている細かさに驚いた一行。 その喧騒に疲れ、連環された船群の一角に作られた休憩の船に向った島の長達。 一緒に着いていったポリア達は、その彼等の口口からでる感想や弱音や驚きに耳を傾けた。 不安が増したのは、仕方の無い事である。


しかし、それでも負けては欲しくないポリアだ。 銀行へと足を進め、大型の客船が一つ丸々銀行だという中に入った。 ソルドレイクも同行して貰い、そこで細かい話まで詰める為に。


ポリアが事の次第を話し合う為に、銀行の各窓口の最後に在る相談口に向った。 オールド・エンブラーとして、貴族の最古のセラフィミシュロード家のポリアンヌが来たのだ。 その対応は、この銀行の幹部の一人が受けた。


が。


最初のこの幹部とポリアの意見が真っ向から割れたのだ。


“島の愚民の手助けをしろと? いやいはや、貴族の中の貴族と云われたセラフィミシュロード家の御嬢さんの言う事とは思われません”


“商人に愚民が逆らうのが間違い。 我慢が出来ないなら、死んで構わないのでは在りませんかね”


地方ながら、銀行の幹部のボンボンとして生きてきた若い幹部であった。 その思想は金権力至上主義の塊の様なもので、口を利くポリアが屈辱に似た震えを感じたほどだった。


(別室で待つ長さんや、ソルドレイクさんには聞かせられないわ)


自分に色目を使うその若い幹部に、ポリアは剣を突きつける寸前の気持ちを必死に堪えて抑えたのだ。 そして、この銀行の最高責任者たるプレジロイズ(監督責任者の最高峰の名称)に面会を申し出た。 いや、出来る事なら、面識の深い水の国の銀行に行きたかった。 だが、鉱石の売買は、此処で行うのが一番リスクや労力を軽減出来る。 せせら笑う幹部に申し出て、似たやり取りが行われるのも覚悟で面会を申し出たのだ。


しかし、その銀行に携わる誰も殆どが、常に不在で顔を見た事が無いと云うプレジロイズ・モッカグルの人物。 唯一、話が通せると云う責任者付きの執事へ申し出ると、奇跡的に面会が出来たと教えられたポリア。 屈強な容姿に剣を腰に帯びる紳士服に身を包んだ男に案内され、その銀行となっている船の最上階に案内をされたポリアは・・。


「どうぞ」


と、扉を押し開いてポリアを通した紳士服の人物。


彼に一礼し、その部屋に入ったポリアは。


「ご面会に与れまして、感謝致します。 不躾ながら、どうしてもご相談に与りたく、セラフィミシュロード家のポリア、此処に参りました」


と、先ずは詫びと一礼をしたのである。


が・・・。


「いいよ~、いいよ~、そんなにかタックルしぃぃぃ~~~~~~~挨拶はさ。 お互い、もう知った顔の間柄~~~でしょ?」


と、聞き覚えの有る声がする。


顔を上げたポリアは、カーテンの掛かった窓の前に立っている人物を認識するのに、本当に一瞬以上の時を要した。


「あ・・、あ゛っ! しゅ・シュヴァルティアス様?」


Kの知り合いで紹介した、長寿を生きる魔法使いシュヴァルティアス。 何と彼が此処に居るのである。 赤い絨毯の敷かれた、広くて見晴らしのよい大窓を一辺に持つ落ち着いた部屋の中に・・。


「あ・・どうして、どうして貴方が此処に居るの?」


なにやら丸薬らしき薬を手にするシュヴァルティアスで。


「なにもかも・・ンぐ。 ふぅ・・、貴族の多い此処は嫌いだ。 シャックリが出そうだよ。 丸薬がもう残り少ない・・ヒック」


総身優美にして、容姿端麗とは彼を云ったものだと思われるシュヴァルティアス。 知的で色男な風貌なのだが、今日はイマイチに冴が見えず。


「あ・・出タ、ヒック」


もう緊張の糸が切れたと、スッススッスと赤い絨毯の上を彼に近寄るポリアで。 重厚な木製の机の前に寄りかかる彼に迫りながら。


「私が貴族だから出たんでしょ? それより、質問に答えて」


「ちっ、違うよぉ~~~。 この銀行の幹部等が、殆ど貴族なの。 えばるしか能のない、呼び出しを受けるだけでも気持ち悪い奴等ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっかなんだから・・ヒック」


この150年を生きる大魔法遣いとは、ポリアは驚くべき形で面会した。 水の国に、初めて冒険者として訪れたポリアは、街角でKに出会ったのだ。 しかし、奇妙なユルさと物腰が全く違うのに、ポリアは偽物と見破る。 その時、Kの姿を借りていたのがこのシュヴァルティアスであり。 何でも一緒に、一回だけでいいから冒険がしたかったとか何とか・・・。


一度は蹴っ飛ばして別れた優男を前に、真顔のポリアは、


「どうしたの? また、何か用?」


しかし、困惑気味のシュヴァルティアスで。


「誤解だってぇぇ~~。 君、アリンバと会ったでしょ?」


「え? アリンバって・・あの御婆さん?」


「そう。 アリンバとは、僕も古い旧友でね。 斡旋所のマスターの交替に、何か不備が在ったって聞いたからさ。 向こうの斡旋所も暇だから、チョット調べに来たの」


「じゃぁ、交替がまた行われたのは?」


「お察しの通りに・・。 しっかし、君も今回は無茶したね」


「え??」


「ポリア、君は命を狙われてたよ。 まぁ、アリンバさんが、商人の嘘を見破って殺し屋の頭に話し着けたけど」


「命を狙われてるのは知ってたわ。 でも・・、アリンバさんが手を回してくれたの?」


「あぁ。 僕が呼び出されて数日前に行ったら、丁度その話し合いの最中でね。 君にして遣られた商人は、君が鉱山を我が物にしようとしていると嘯いて嗾けたらしい。 役人の話で解ったけど、君は鉱山の所有者で、鉱夫たちに賃金も払わない商人や資産家をシバいたんだって?」


「えぇ、現状に見てられなくて。 本当は国に任せるべきなんだろうけど・・、どうやら癒着が酷いみたいで、任せたら似たような人がまた所有者に成るって思ったの。 だから、思い切って所有権を買い取っちゃった」


すると。


「ぷっ、“買い取っちゃった”って。 百万も出したんだって?」


「うん、まぁ・・。 でもケイから与ったお金や、他にも遺産みたいなお金や、冒険で出来た大金在るの。 私には、人の為に遣うのがいいって思ってたから、別に気に成らないんだけど」


「はははは・・、無駄さえしなきゃ相当遊んで暮せる大金じゃなかい。 流石、“K”(かれ)に認められただけは有るね。 僕でも真似できないよ」


「おべっかはいいわよ。 それより・・、本当に先生がプレジロイズなの?」


「そうです。 ま、此処の管理に、管理は必要ないんで、観光も兼ねてこの街まで羽根を伸ばしてたら、急に銀行から呼び出しを喰らって。 ま、相手が君だって聞いて、目の保養に参りました、とさぁ~」


「斡旋所の主してて、更にこの銀行のプレジロイズもしているの?」


「ま、名義貸しみたいなものですがな。 名前が有名だから、賊も中々来ない」


「まぁ・・」


驚くポリアだが、信頼が出来る相手だから・・と。


「あのね」


事の全てを話した。 応接場において、対面で。


聞いたシュヴァルティアスは、その顔を驚かせ。


「わぁぁ~~お、知らないとは云え・・よくもそんな話を此処の幹部にしたものだ」


「一々、返って来る答えが腹立だしくて・・」


「だろうね。 此処の幹部は、他所の銀行とは大きく違う」


「何でなの?」


「そりゃぁ~~この平和なモッカグルじゃ、僕の名前も在るから襲われる危険が少ない。 危機を管理する事も無いから、機能しなくていい中身が腐ってるみたい。 ぶっちゃけ、要らないんだけどね。 柵がさぁ~~~~~」


「そう・・・。 んじゃ、鉱石の取引を任せられそうな人は居無いのね?」


すると・・。


「いや、男には居無いけどね。 女性には、居る」


と、シュヴァルティアス。


「はぁ?」


「腐ってる幹部ってのは、銀行の相談窓口と、顧客認証係の幹部他5人ぐらい。 最近、危機管理の幹部に成った若い貴族の女性とか、元から貴金属・鉱物の鑑定を任される主任の女性は、実に優秀だよ。 いずれ、僕の推薦で引っ掻き回してやろうかと思ってる、最中」


そう言うシュヴァルティアスを、横目のジト目で見るポリアで。


「ふぅ~~~ん、早くやればぁ?」


話の雲行きを逸早く感じたシュヴァルティアスで。 


「んじゃっ、直にその二人を推薦するよ。 こんな変わった相談、彼女達なら熱血的にやりたい事案だろうから・・・」


シュヴァルティアスの性格は、ある意味でジョイスに通じる。 が、ジョイスよりその女癖の悪さが酷い様な感じがするのは、ポリアだけ・・か。


「紹介してくれたら、それで帰っていいから・・・」


と、ポリアが言うのに対し。


「つ・釣れないなぁ~~。 一緒に一夜を共にした仲じゃないか」


「そうね。 ケイの姿で、アタシに添い寝してたっけ? 冒険者の伝言で、確実にケイに届くように告げ口しておこうかしら」


「あ゛、そんな恐ろしい事をしゅるんでしゅかぁ?」


「フン。 あの時は、気が済むまで殴ったからいいわ。 でも、二度目は無いわよ」


「ガク」


(もうチョットでおっぱい触れそうだったのになぁ・・・。 あんなに殴られるなら、ゴリ押しで一回触っとけば良かった・・・)


さて・・。


シュヴァルティアスが呼び出したのは、一人は大柄。 もう一人は、システィアナの様に小柄な女性の二人だった。 剣士として、その名声を馳せるポリアが面会と聞いて、その二人はシュヴァルティアスの呼び出しとは気付かずに話し合いに応じてくれた。


ポリアの話を聞いた二人の内、大柄で豊満な全身を以っても、尚にその微笑に大人の色気が覗える鑑定人の主任女性ケイトが。


「その様な大金を使ってまで、島の民を救おうなどとは・・・。 流石に、最古のオールド・エンブラーであるセラフィミシュ様。 鉱石の取引及びその鑑定には、一切余計な干渉はさせません。 是非、取引をお預け下さい」


と、了承した。


一方。 小柄で黒い男装の礼服に身を包む危機管理部門の幹部であるテルジアは、ポリアの申し出を受け入れる上で。


「こうゆうご依頼が増えれば、銀行も危機能力を改めると思います。 しかも、貴女様の様なお方が、私共を信用して下さるのは心強い事。 これからも、当銀行をご利用下さい。 これを機に、この種の依頼をもっと引受けようか、ケイト様」


と、ケイトに云い。


「そうね、プレジロイズ閣下の改革に合わせるべきではありますが・・。 銀行の役割を広げる機会かも知れませんね」


二人は、軽く意識交換を示した。


話を通せたポリアは、ソルドレイクと島の長を呼んで条件の確認と委任の証書を書く作業に入った。 その間、何度か他の幹部がポリアと面識を作ろうと話に来た。 だが、この話し合いはプレジロイズ付きの執事の命令直下であるから、ポリアの横顔を見るだけに留まったのである。


全ての正式な手続きが終わったのは、夜の入りである。 待合室で待たされた仲間と子供達で、システィアナの両腕に抱えられる様に、男の子二人が寝息を立てていて。 マルヴェリータが赤子を抱きながら、その膝には女の子が寝ていた。


「あらら、寝ちゃったか」


そう言うポリアは、幹部の男の不躾な誘いを全て断って仲間の元に戻ったのだが。 寝息を立てている子供達を見て、寧ろ安心した。


次の日には子供達も船に乗り、島の長と鉱夫達も帰る。 自分達は、明日からこの島で冒険をしようと思う。 別れが有るのだ。 ついでに・・と云う話で、シュヴァルティアスを加えた一行は、大型旅客船型の店舗の展望飲食店に入った。


起きた子供達が窓の外の夜景を見れる様に、窓側の大テーブルを取った。 料理と云う代物を、初めて見る島の長や鉱夫達。 ポリアは、島の料理とは違うその料理を前に、味に堪能する島の長に云った。


「私、島に流れる時間を早めるつもりは無いの。 鉱石で生計が立つなら、島に何でも揃う必用は無いわ。 子供達への教育や、親を亡くした子供達でも生きられる環境が在れば、大きくなって自分達で人生を切り開いていけばいいの。 長、鉱石も無限に在る訳じゃないんでしょ?」


不慣れなスプーンを置いた島の長は、深々と俯き。


「その通りじゃ。 今の穴が、何処まで持つかは解らない」


「うん。 だから、鉱石も、その得たお金も、みんなの為に・・使ってほしい」


「こちらも、私らに縁も義理も無いのに、この様な施しを有難う。 この機に、島を纏めて、新しく生きていく道を模索する。 その足掛かりとして多くは無いが、鉱山と鉱石は確かな足掛かりじゃ。 島民を代表して、有難う・・ありがとう」


同じく、鉱夫の年上の男性も。


「商人に良い様にされたのも、基はと言えばこっちにだって責任が無いとは言えないさ。 気持ちが入れ替わるには時間が掛かるかもしれないけど。 子供や孫の代まで続ければ、それなりに変わるさ。 そう思いたい。 こんな機会を貰えて、俺はアンタ達に感謝してる」


ポリアも、見ているマルヴェリータも、自分達が全てに関わる訳では無い。 相手に任すのだから、これ以上に云う言葉も無かった。


ポリア達の姿を見るシュヴァルティアスは、Kから聞いたポリア達の事を今更に思い出しながら。


(お節介と言えば、お節介か・・。 でも、見向きもしない薄情より、羽ばたく素質が有るね。 ・・・あ、もう有名だった・・・)


ソルドレイクは、窓の外の街灯で彩られた夜景を見る子供達に、若い通訳を通じて。


「ほら、メシが冷めるぞ。 温かいうちに、喰っちまえ」


と、席に戻し。 自身で酒を一気飲みした後に。


「んん・・ぷふぅ、美味いからガンガン喰え。 どうせ、俺の奢りじゃないんだからよ。 あはははは」


すると、近くの席に居るポリアも。


「そうよ。 こっちの天才魔術師さんがご馳走してくれるんだから、遠慮は要らないわ」


と、微笑んでシュヴァルティアスを手で示す。


「え? あ・・僕が払うの?」


キョトンと目を丸くするシュヴァルティアスに、ポリアは細めた目で流し見。


「あら、人を口説くなら、先ずはその懐の深さを見せて貰わないと困るわ」


女性特有の共感反応か。 マルヴェリータも、似た様に流し目で。


「天才魔術師にして、色々お役目に就いてるんですってぇ? 前に私達の入浴を見てたって聞いたけど、言い触らしていいかしら?」


「はぁ?」


「ふむ」


「へぇ」


ゲイラー、島の長、ソルドレイクに見られたシュヴァルティアスは、紳士的な態度で横を向き。 子供達に、


「一杯食べなさい。 子供は、よく食べよく寝るが一番だよ。 なぁに、此処の支払いなんてね、僕様の小遣いでキッチリ払うから心配しなくていいわよ」


最後の語尾が狂っている魔術師に、ポリアは改めて。


「ご馳走になるわ。 ありがと、天才魔術師さん」


イルガは、“ご愁傷様”とワイングラスを持ち上げ、水を飲む様に空とした。




明日が別れと解っても、その夜は穏やかに楽しく過ぎて行った・・・。




次の日、島の長と鉱夫二人を乗せ、ソルドレイクの船は街を去っていった。 別れ際、ポリアに島の言葉で“ありがとう”と繰り返して泣きついた子供達。 男の子二人は、船乗りに成ると約束して別れた。 ポリアは、ソルドレイクを信用して。


「あのお爺さんにしっかり教わりなさい。 君達が船乗りに成って、次の島の子供達が船乗りに成るなら教えるのよ。 この広い世界にも出れるんだから、簡単に泣いたりしちゃだめよ」


と、言い残したのだった。


どうも、騎龍です^^


何の気なしに、PCの不調に疲れてサッカー見てましたが。 何とかWCに進めましたね^^」。


最近は運動不足だから、若い頃に買ったダンベルでも動かしてみるか・・。


ご愛読、有難うございます^人^

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