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エターナル・ワールド・ストーリー  作者: 蒼雲騎龍
K編
185/222

ウィリアム編・Ⅳ―2

                 冒険者探偵ウィリアム Ⅳ―2



               森の奥深くに広がるは、隔絶された神秘



                    ≪いざ、森へ≫




昼前に山道へと入り、そのまま森に入って昼を過ぎた。 時間が経過するにつれ、山の空も曇りは取れて青々とした空が広がる。


山道の途中から北に分け入って森の奥地に向かったウィリアム一行は、高い木々や、隆起・沈下をする巨大な木の根っ子の道を行く。 大木の大森林は、独特な根っ子のむき出した奇妙な風景を描く。 地面が中々見えない中ではすっぽりと森に入っている様で、見上げても晴れた空がよりより遠く高くに感じられた。


苔、寄生草、極まった環境に育つ植物を採取しながらの行軍で、アクトルやスティールにバヴロッディの二人は、身体が立派過ぎて邪魔者の様な感じであった。


あの農村の森は、差ほどに奥深く無く。 森林の奥地へ行くと、根っ子の大部分を見せる地帯へと出た。 土砂部分がやや削れた代わりに、大きくむき出した岩の上に大木が乗っている様な感じなのだ。 平面が無いので、根っ子を道にして上ったり下ったりの迷路の様な中を行かなければ成らず。 時折、根っ子の下の洞窟を潜り抜けるなど面倒な部分も在る。


ジョンと父親のフランクには、ロイムやハレーザックやラングドンが付き。 ウィリアムには、アクトルやスティールやリネットが付く。 知識が豊富で、見れば直ぐに解る二手で採取の指示を出す。 あの大病に見舞われ、チームの全員が全滅し掛けた出来事が相当に効いているらしい。 ハレーザックやギルディは、文句無く採取に徹底していた。


さて。


「ウィリアム」


ギルディが、採取を終えて声を発す。


天候や森の動きに気を配っていたウィリアムは、間近の盛り上がった木の根の上に居て。


「はい?」


ギルディは、周囲を見渡し。


「この様な地形は初めて見るが。 こんなに木の根が剥き出して、この森の木々は良く生きていけるな」


「あぁ・・。 この巨木は、“岩抱きの木”と云う名前でしてね。 川原の土が少ない場所や、岩場に生える性質があるんですよ。 一番の特徴は、この風景通りですがね。 その根っ子で岩を抱き包む様に癒着してしまう所です。 重い大岩すらも大木に成ると抱えてしまい、木は倒れない様にする重り代わりにしてしまう」


「ほう・・、だから岩の上に木が・・」


「しかし、自分もこれだけの原生の森は初めてです。 実はこの木の苗、結構高価な値段で輸出されてましてね。 島国のコンコース島、商業王国マーケット・ハーナス、ギャンブル王国なんかも、川の氾濫を抑える治水工事に使うべく買っていると聞きましたが・・・。 在りのままの姿をこうして見ると、確かに氾濫時の水の起動を変える事や。 また、水の流れの勢いを削ぐ支柱に使えそうです」


そこに、スティールとアクトルが戻り。


アクトルが。


「実際に俺達の村じゃ、川の氾濫避けに使ってたんだ」


スティールも。


「そうそう。 川が真っ直ぐの時は、流れの勢いを抑える為に、川の真ん中に置き。 蛇行した川になら、その蛇行部分の曲がり角に置くのさ」


ウィリアムは、その二人の言葉から。


「はぁ~、川の流れで転がる岩を引っ掛けて、其処に土砂や岩を溜めさせる狙いですか」


アクトルは、ウィリアムがどんな頭をしてるんだかと思い。


「お前、良く解ったなぁ。 その通りだ」


スティールは、キザに前髪を揺らし。


「俺達の絆は、もはや余計な言葉は要らんのだ」


後から戻るロイムやクローリアなどは、気持ち悪いと言う様な雰囲気でスティールを見ている。


それを岩の上で見ていたエメは、


「ジョン、冒険者ってのは、無駄話が好きだね」


と、冷淡な言い草でそう言う。


だが、ジョンは少しムキ気味な様子で。


「無駄じゃない・・・」


と、だけ。 こんな話、ジョンも父親のフランクですら知らなかった話である。


さて、その森を抜けると、やや下る感じの地形に常緑・広葉樹が生い茂って。 枯葉が地面を覆い隠す場所に変わっていった。 もう季節的には、秋に移り出す頃合いであり、既に紅葉をする木々には色が変わり始めたものも有り。 熟れても無い青々とした果実も目立つ。


「森の様子が変わったなぁ」


と、アクトルが言う。


ウィリアムは、嫌な音を微かに聞いていて。


「皆さん、自分より左側を歩く様にして下さい。 微かですが、蟻の歩く音が聞えます。 群れる蟻を踏まない様にしてください」


ジョンとフランクの親子は、ロイムやギルディに音の近い場所を教え始めた。


ハレーザックは、先頭のウィリアムへ。


「高が蟻だ。 襲ってきたなら、退治してしまえばいいのではないか?」


と。


しかし、ウィリアムは・・。


「それは、迷惑にしかなりません。 森では、森の生き物を刺激しないのが基本です」


「“迷惑”? ・・誰にだ?」


すると、ウィリアムは手に持つ枯れ木の枝で、一歩横の枯葉を捲る。


すると・・・。


「わっ!」


と、驚くロイムやリネットに。


「あ・・・、蟻だ」


ハレーザックは、自分の拳大の蟻が蠢いたのを見た。


ウィリアムは、その枯葉を元に戻すと。


「今の蟻は、巣穴を持たない群れ蟻の仲間で、一番危険な“軍隊蟻”の一種です。 数日毎に棲む場所を変え、森を絶えず移動しながら狩りを行うんですがね・・。 この蟻は、地元住民を助ける生き物でも在りますし、人間に多大なる恩恵も齎す蟻なんです。 ですから、むやみやたらに殺してはいけません。 自分の血を吸いに来た生き物を撃退するだけに留まって下さい」


こんな説明をして歩き出した。


驚くハレーザックは、良く見れば右手側の木の葉がモコモコ盛り上がって蠢いているのだ。


「ウィリアム・・、だが・・この昆虫は餌を探して動いているのであろう? 我々が狙われたら、大事だぞ」


すると、ジョンの父親のフランクが。


「刺激しなければ大丈夫だよ。 先程、ウィリアム君が蟻の嫌う粉を皆に踏ませているから」


「はぁ? 俺はそんな粉など踏んでないぞ」


「いやいや、森の変わり目で、湿った地面の在った場所に彼が撒いたんだ。 歩けば自然と踏んでしまう様にね」


先陣のスティールは、彼の横を通りながら。


「そうゆうのは、抜け目無いぜぇ。 ウチのリーダーは、よ」


歩き出すハレーザックだが、ウィリアムの云っている意味がイマイチであり。


「だが、こんな大きい蟻が、我々に何の影響を与えていると言うんだろうか・・」


と、歩き出す。


其処へ、ロイムが。


「あの・・」


と、声を。


エメが黙って見ている前で。


「ん? 俺に、か?」


クセ者様な印象を受けるハレーザックは、人に好かれるかどうかはピンキリである。 余り会話の得意でない彼だから、受け答えの会話も短くやや威圧的に見えてしまうのだが。


ロイムは、何処か距離を置く様子ながら。


「その事は、昨日に本で読みましたよ」


「蟻の?」


「はい・・」


すると、ロイムと肩を並べるクローリアが。


「何でも、この蟻は群れを成して獲物を一定範囲で根絶やしにする様に狩りをするんだそうですわ。 人や家畜には特に害を為すダニ、ノミ、昆虫は好んで狩るそうで。 別の所では、虫除けの蟻とも言われるんだそうですのよ」


ハレーザックは、蠢く枯葉を見下ろしながら。


「この蟻が、・・か」


ロイムも。


「冬の餌が少ない時期や、春先になるとまた餌が変わりまして。 人が薬草として珍重する植物を、テリトリーの範囲内で虫から護り蜜や果実や花粉を貰うんだそうです。 冬眠が出来ない虫らしく、刺激しないで狩りのテリトリーに入らなければ、大型の生物へは滅多に襲ってこないそうです」


「・・そうか」


ハレーザックは、そう納得したのだが。 また、別の疑問が湧く。


「ロイム・・だったな」


「あっ、は・・はい」


初めて会話のやり取りを返されたロイムは、カチガチに緊張して返答をする。


しかし、ハレーザックの視線はウィリアムに向いていて。


「リーダーの彼は、皆にその課題を課すのか。 本を読めと」


「え゛っ・・、どうですか・・ね。 強要は・・しないです。 ただ、ウィリアムの知識量を見せ付けられると、チョットは読んで知っとかないと、その・・ブレイン役の魔法使いなのになぁ~んにも知らないって笑われちゃう・・・。 はい」


そんな会話を聞いていた最後尾のラングドン。 アクトルと二人で後ろを警戒しつつ。


「その知識が、在るか・・無いかで、掛かる労力も変わる。 それにじゃ、そろそろ夕方に変わり始める頃合いで、暗くなって行く中を移動しながら戦闘なぞ面倒じゃわい」


と、エメを超えて意見を言った。


若いハレーザックだが、


「そうか・・・、そうだな」


と、納得しているのか・・させているのか。 自分に自信が在る様子が見え隠れする彼だが、仲間を助けられた手前もあるし、自分のリーダーのギルディの面子も在った。 だが、ウィリアムの冷静で面倒を極力無くす行動は、確かに合理的と云う感じで受け入れられるとそれ以上は何も言わなかった。


逆に、先頭を行くウィリアムに近付き、父親と並行して行くジョンを見守る視線は絶やさないギルディで。


「ウィリアム。 この道は、また戻る道に成るのか」


引き返す事も視野に入れたギルディは、その景観や特徴的な木々を覚える事もしている。


神経を研ぎ澄まし、足元の枯葉の動きから行く先の警戒をするウィリアム。


「いえ。 太古に裂かれたと言う大地の裂け目を見れたなら、引き返さずして西側を回ります。 この先は、マドーナ老人ですら引き返した靄の掛かる原生の森。 人と関わりを持たない植物や動物の宝庫ですからね」


「だが、西側はモンスターが出るのだろう?」


「えぇ。 ですが、原生の森の恐ろしさは、時としてモンスターのソレを超えます。 ま、すんなり行ける森で在ればいいんですがね」


「ほう・・」


次第に夕方の暗さが森を染める。


ウィリアムは大きな樫の木の根元にうろが大きく開いている開けた場所を休息地にして、明日までの夜営を決めた。 ウィリアム一行のアクトルやスティールは、ウィリアムに習って枯葉の上澄みをのこして、その下を地面まで捲りまわす。 病気を媒介する蚊やハエは、煙で退治出来るのだが。 ダニやノミは、煙を衣服に付着させなければいけない。 火事が最も怖い事故の一つなので、枯葉の上澄みは燃やす燃料に。 ダニや吸血性の昆虫が棲む下の腐葉部分は、周囲に集めて殺虫性の効果が有る草の灰を掛けて置く。


ラングドンとクローリアにロイムが薪などを集め。 ジョンはリネットと一緒に火を熾して食事の準備に掛かる。


ジョンの父親は、虚の中に虫除けの煙を焚いて虫を退かし。 それが終わるとエメと採取した薬草の保存効果を高める作業に。


高地特有の低温が、昼間は動き易く助かるが。 夜は、晩秋の様に寒くなる。 枯れ木の大きい物をアクトルが叩き割り、バチバチと火の粉を上げる焚き火にくべる頃には、もうすっかり暗くなってしまった。


食事をしながら、ギルディが珍しくアクトルやスティールに話しかけた。 今までの冒険の事を聞きたがったのだ。 ハレーザックも、ギルディも、超魔法時代に建築魔法の真髄を極めた大魔法使いの迷宮には、齧り付く様に聞いていた。 ハレーザックは、ロイムの手に馴染みつつある杖をみて、その真実を確信。 ギルディは、ウィリアムの事件解決の話まで興味を持ち、寝るまで話を聞きたがった程だ。


一方。


口を動かすウィリアム本人は、フランクやジョンと薬草の乾燥や保存や束ねる作業に追われている。 傷に為らない様に、効能の落ちない草は焚き火前で乾燥させるし。 水分を失っては困る苔やカビや特定の部分だけを削ぎ落とした様なものは、密閉の聞く薬瓶(取っ手の付いた銀製などの薬瓶)にいれてしまう。


「ウィリアム君、乾燥は終わりそうかな。 寝ずの番なら、私がするが」


フランクが申し出ると、ウィリアムは薄い笑みを見せ。


「深夜には乾燥しますよ。 この森の空気が乾燥してますから。 それより、明日から予想の出来ない進行になります。 睡眠はキッチリ取って下さい」


「そうか。 なら、もうジョンは寝なさい。 初めてこんな奥まで来たんだ。 体も疲れているだろう?」


ウィリアムは、先程に筋肉の痛みを抑える薬湯を村の住人3人に飲ませてある。 疲労回復の効果が高い草を選んだのだが、思いの他に苦かった。 が、大人ぶって飲み干したジョンが、顔を酷く歪めて大丈夫がったのが真新しい。


「うん。 これを結んだら寝る」


人見知りの激しいジョンが、今日は珍しく前向きな一日を見せた。 父とウィリアムが一緒なら、どんな怖い事も大丈夫と云わんばかりに・・。


ひ弱で、何時も祖父の後ろに居るジョンしか知らないエメは、それが非常に不思議で。


(あのジョンが、よくも此処まで来たものだねぇ。 ウィリアムってコイツに、そんなに懐いてるんだ・・)


先程まで、スティールの奇妙な色目を睨み返す繰り返し。 安全を謳って添い寝しようかと云われて、鉄拳の一撃を土産に辞退させたエメ。 冒険者の道案内や、地元の根降ろし組みとチームを組む事があるらしいが。 ウィリアムとジョンの間に隙間を見出せず、短時間でこんなにも信頼できるのかと驚いていた。 日中、アクトルやギルディの手や膝を借りて大きな根っ子を昇り越え、採取する薬草を教えていたのも印象的である。 少し前のジョンでは、口を利くのも怖がっていた筈だ。


(チョット見ない間に、出会いが良ければこんなに成長するんだね)


何処か羨ましく思えるエメ。 そんな出会いをしてみたいと思う彼女も、まだまだ若い19歳である。





                       ★




のんびりとした冒険。 朝が来る此処までは、確かにそうだった。


が。 次の日の朝だった。


ウィリアムの鋭い声が飛ぶ。


「全員起きろっ!! スピアーズが来たぁぁっ!!!!」


寝ていた者も、見張りの交代を終えたリネットとスティールも、その声に反応して直ぐに荷物を持った。


ーギギギ・・・-


枯れ木が擦れる様な音を出し、下から見上げられる巨木の一角を遮るほどの何かが近付いてきた。


“スピアズ・イグニース” 蔦科の移動植物で、木々を逆さに成りながら渡り歩く長い足の様な蔦の部分と、丸で木々の枝から大きな果実がぶら下っていると見せる薄桃色をした大きな苺の房の様な触手部分をも持った生き物であった。


「ウィリアムっ、倒すのかっ?!」


向かう森の先へ、フランクやジョンを逃がすラングドンやギルディに代わり、アクスを構えたアクトルと共に、迎撃も辞さない様子のハレーザックがそう声掛ける。


だが、荷物を背負い、火を消し急ぐウィリアムは首を左右に振り。


「我々を狙って来ているんじゃ在りませんっ。 基本的に、彼らの狩りは待ち伏せ型なんです。 ただ、イグニスが動くと軍隊アリも大きく騒ぐ。 ヤツを相手にしてたら、こっちが危険に陥りますッ!!」


しかし、ハレーザックはラングドンを指差し。


「燃やして根絶やしにすればっ!」


するとウィリアムは、急に怒りを孕む瞳で。


「バカなっ、森を焼いてこの山を火事にする気ですかっ?! 自然の中では、我々が異物。 戦いは、極力避けるのが鉄則ですっ!!!!」


「わ・解ったっ」


逃げるウィリアムに、アクトルとハレーザックが殿となって森を走る。 恵みを受ける側は、森を護る。 我儘で危険だからと、何でもあがらえばいいと云うものではないのだ。


だが、これが自然の驚異を垣間見る始まりだった。


逃げた先で。


「うわわっ、ウィリアムっ」


スティールが、毒蛇の巣窟となっている茂みで隊を止めた。


今度こそ、魔法の出番かと思うハレーザックだが。


「アクトルさん、タバコの葉を買いましたでしょ? アレを軽く噛んでから撒いて下さい」


「おいさ」


ウィリアムに頼まれ、力の有るアクトルはタバコの葉を買い込んでいた。 ウィリアムとアクトルが、タバコの葉を口に含んで噛み潰してから。


「ブッ」


「ぺっ」


と、黒々とした毒蛇の集まる茂みに吹く。


“シャーッ”


蛇の威嚇音が聞えるのだが、タバコの葉を喰らうと効果覿面。 茂みの奥へと逃げていく。


ロイムも見習ってやると・・。


「ペッペ、苦いぃぃ~」


ギルディも一緒になって、タバコの葉を吹く。


歩ける道幅を確保して、毒蛇の巣窟となっていた薄暗い茂みを抜けると、靄の掛かる暗い森に入った。


朝の食事は、余裕を見ての歩きながらとなって・・。


ギルディがウィリアムに。


「蛇の弱点は、タバコでもあるのか。 あの手の毒蛇は、攻撃すると伸びて噛み付こうとするクセが有る。 いや、いい撃退法を知ったわい」


先頭を行くウィリアムは、その話に。


「蛇の一種には、ショックを受けると先ず噛み付こうとする反射型が居るんです。 タバコの葉や、カタグノの実など刺激物には滅法弱いので、散らすだけならその方が・・」


代わって、スティールが。


「おいおい、ウィリアムぅ~。 何だよこの森はぁぁぁぁぁ~~~~。 木々はどれも不気味な色合いだし。 幹には藍だ、黄色だ、黒だってカビか苔がビッシリ・・・。 森が全体的に腐ってるみたいじゃんかよぉぉぉ」


すると、ジョンの父親が。


「そう。 腐森林ふしんりんだよ」


「ふしんりん?」


気味悪がっているスティールへ、ウィリアムが。


「この森は、毎日続く靄と陽の光の入らない絶壁の裏側に在って、文字通りに腐ってるんですよ。 木々を生かしているのは、木々の幹の奥まで入り込んだカビや菌です。 本来なら枯れてしまう木々が、カビや菌を飼う事で栄養を貰っているんだそうな」


「マジっすか。 気持ち悪いなぁ・・」


森を嫌うスティールやリネットだが。 しかし、ウィリアムやフランクは、そのカビが出す胞子の一部分を採取。 どれも劇毒だが、使い方に因っては、腐食治療法と云う特殊な治療が出来るらしい。


アクトルは、ロイムやクローリアと周囲を警戒。 毒虫や有毒生物を刺激しないように退けたりする。


この森の中では、食事も禁物と云う。 靄の来る方の遠く奥には、断崖絶壁と巨大な瀑布が在る様なのだが・・。


さて。 靄の掛かる森の中で、視界が悪い中でもウィリアムは的確に自分よりどっちを歩けばいいかと指示を出した。 採取も終わり、黙々と森を行くウィリアムが、もうそろそろ腐森林を抜けると思い。 ふと皆を確認しようと振り返った。


「あれ・・、ハレーザックさんや・・エメさんが居ませんが」


靄が薄っすらと立ち込める中で、近くに寄って固まっていた筈の隊列。 誰の顔の間に、誰かの頭が見え隠れしていたと覚えていたウィリアムは、隊列を止めて確認を促す。


「わわ、ロイムやクローリアも居無いぞ」


スティールは、自分の後ろでブツブツ文句を言っていたロイムが見えない事にも気付く。


ギルディは、ハレーザックやエメなどは間近に居ると思い。


「何だ? 小用か?」


と、立ち止まってマントをはためかせては靄を飛ばしなが。


「ザックっ、何処だっ?!! エメ、他の者もっ?!!」

 

声を出して見るも。


「おいおい、何の反応も無いぞ」


スティールが走り出そうとする。


其処へ、ウィリアムが。


「待ったっ」


と、荷物を下ろして、ロープを握る。


「あ?」


動きを止めたスティール。


荷物をフランクに渡したウィリアムは・・。


「フランクさんとジョンは、この先の靄が晴れる場所までロープの端を持って行って下さい」


と、アクトルの背負う荷物からロープを引き取り。 自分のロープと繫ぎながら。


「マズイ。 この微かに香る甘い匂いは、スリープ・セリシラ・ホローリリスかも知れない」


流石に森の民であるフランクだ、この名前の植物を知ってはいたのだろう。


「それはっ、死寵華っ!!!!」


ウィリアムは、驚くフランクに。


「早くジョン君を連れてっ!!!! 匂いがこの辺まで包みますよ」


「わっ、解ったぁ」


更に驚いたフランクは、靄に薄れる様子ながらに大急ぎでジョンを抱えて去っていく。


「おい、ウィリアム」


「どうゆう事だ?」


近寄ってくるスティール、そしてギルディ。


ウィリアムは、全員分のロープを要求した上で。


「事態は、一刻・・・。 いや、一瞬を争います。 スティールさんは、ロープを繋いで。 アクトルさん、ギルディさん、俺と一緒に、仲間を連れ戻す為に行って貰いますよ」


何がなんだか解らない一同だが、ウィリアムに噛めと差し出されたのは、黒いベリーの乾燥させた物の様な・・。 しかし、その物体を3人が食べて噛むと・・。


「うがぁっ」


「ぐぶっ」


「ぐぇぇぇぇぇっ!!!」


苦味と云うには生易しすぎる、それは恐ろしい刺激とエグ味を持った物だった。 誰もが直ぐに吐き出しそうに成る。


「嫌でも齧ってっ!!!! 死の眠りを誘う香りに対抗出来る、唯一の薬ですからっ!!!」


鋭く叱る様に言ったウィリアムは、自身も口に入れた。


ウィリアムの説明では、スリープ・セリシラ・ホローリリスとは魔草の一種だという。 この腐森林にのみ生息し、その花の匂いを嗅いだ者を甘い香りで誘惑。 花の下まで誘ったが最後、安らぐ様に眠りこけ。 そのまま死体になって、死体の腐った栄養で繁殖を行うのだとか。


朝に食べたパンなどを吐いてしまったギルディやアクトルだが、再度あの実を貰って苦しみながらウィリアムの後を付いて行く。 匂いを頼りに、森の奥へと行けば・・。


「うぶっ・・、か・香りが甘くて・うっ、うっ、薄気味・・わりぃ・・・」


丹精な顔が歪むスティールは、その甘い香りが気持ち悪く。 この御蔭で、自分がヤられないのだと確信できた。


腐森林の木々には、最初の段階でウィリアムは極力触れるなと云った。 だが、意識がフラフラする中での進行である。 寄りかかったり、思わず身を預けた時にドロっとする木の幹に付いた衣服に、臭いカビか菌の溶けた汁が付きながらの慣行。 毒の成分が服に凍みて皮膚に辿り着き、ヒリヒリと痺れる様な痛みが4人に走る。


そんなままに、ロープの余りも無くなりそうな頃。 漸く、だ。


「あ・・居たぞ」


目を血走らせ、何か歯を食い縛る様な我慢を強いられて居そうなギルディは、仄かに紫色に光る草の群れる場所を見つけた。 その草の茂る周りに、青いローブのフードを被って寝転がるロイムや、座りこける姿のままに眠るエメなどがいる。


「皆さんっ、全員を一気に・・連れて行きま・ますよ。 こ・この匂いは・・もうも・・猛毒なんで・・・」


「おうっ・・ロイムは・・俺が」


一気に体調不良へと落とされたスティールだが、事態が危険を窮しているのが解っている。 それこそ、命懸けで担ぎ出す。


「リネット・・クローリアは、俺か」


アクトルは、一番奥のラングドンを助けに行くウィリアムを見て、二人は背負うと決めた。


「仲間ながら・・はっ腹立たしいわい」


ハレーザックが、草を片手にしている。 ウィリアムの話では、この魔草は、おとり用の匂いを強く出す誘引株を、根を長く張った先に出すらしい。 その誘引株の花を千切ったり採取される事で、この群れた親株達が誘う匂いを一斉に出すとの事だ。 つまり、千切った花を持っているのがハレーザックな以上。 この事態の引き金を引いたのは、彼と云うことなのだろう。


ハレーザックとエメを担ぐギルディは、戻って助かったら彼を怒鳴って遣りたかった。

どうも、騎龍です^^


自然紀行編ですので、自然の脅威のアレコレなどを色々と盛り込めればと頑張ります~~~。


ご愛読、有難うございます^人^

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