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エターナル・ワールド・ストーリー  作者: 蒼雲騎龍
K編
184/222

ウィリアム編・Ⅳ―2

                 冒険者探偵ウィリアム Ⅳ―2



               森の奥深くに広がるは、隔絶された神秘



                    ≪森の奥地へ≫




良く晴れた朝に宿を出たウィリアム一行。 前金で、10日前後の料金を払いきる一行は、宿の者もサービス良くしてくれる。 毎日、飲み水として用意される水は綺麗だし。 遣うタオルなどの交換も欠かされない。 料金の払い方で、宿のサービスが変わるのは当然の事なだけに、彼等は優良な客なのであろう。


ま、ウィリアムが宿に居ると、話をしにラインレイド卿が御忍びで来たりする。 役人関係と付き合いの出来たウィリアムを、宿側としても邪険にしたくないのは心情だ。 もし、トラブルが有った場合には、便りにも出来るからだろうか。


この日は、湖の向こうに住む現地住民の村民たちを訪ねる事にしていた。 物を売る店が開き始める頃合いに街へ出て、軽い手土産なども用意し。 村では中々手に入らない様な物も買って行った。


湖の向こうに広がる集落を訪れたウィリアム達。 畑仕事だ、家畜の放牧をする住民を擦れ違いながらの道を行き。 かのマドーナ老人に逢った。


「おぉ、若き匠の者よ。 よく参られた」


人見知りをする孫の少年ジョンも、湖で漁師をする民の長たるシロダモ老人まで居た。


「どうも、お話が有ると云うので、やってきました」


長い倒木を縦に切って長椅子にしたものに、メンバーがバラけて座る。 老人の息子の奥さんとなる大らかな中年女性が、紅茶だの食べる物を出してくれた。


ウィリアムは、山仕事で必要な刃物や、採取道具の新しいものを土産にして出し。


「ほう、これは変わった刃物だな・・。 何に遣う」


「あ、これはですね・・」


と、老人二人とジョン少年を交えて雑談に。 そして、その雑談の中で。


「あぁ、ウィリアムよ」


と、マドーナ老人はウィリアムに本題を切り出した。


「実は、幾つか薬草の採取を頼みたい。 どれも森の中腹まで踏み込まなければ為らず、危険な動物も多い場所よ。 行ってくれるか?」


「はい。 構いませんよ」


仕事を請ける事を承諾するウィリアム。


だが、マドーナ老人は。


「しかし、だ。 この集落では、冒険者を良しとしない者も、居る」


「理解しています」


「ん。 それでだ。 ワシの息子、そしてこのジョン。 後、もう一人。 前、集落の長をした人物の孫娘を同行させて欲しい。 森の奥地に生える薬草を欲するのは、ワシの息子とその孫娘だからじゃ」


「なるほど」


「御主達が奥地に行くのは構わぬが、どうしても見張りは必要と成った。 何をしに行くのか、理解を示さん者も居るでな」


「すいません、我儘を申しまして」


「いやいや、貴殿の様に薬学・動物の学を追及する者は、誰でも森の奥地には行きたがる。 嘗ては、ワシだってそうじゃ」


すると、シロダモ老人が不自由な足を動かして横を向き、この周囲に栄える森を見ながら。


「確かに、な。 ワシとお前が、あの神の森の奥地に行こうとして、途中で断念して逃げ帰ったのは何時じゃったか? じゅう・・・8? か、9だったな」


マドーナ老人は、悪い目でシロダモ老人を見ると。


「バカ。 ワシが16の終わりじゃい」


「あ、そうだったか?」


「勝手に嵩ましするな」


「悪い悪い」


その流れから軽い失笑を口に見せたマドーナ老人は、ウィリアムを見て。


「ウィリアムよ」


「はい?」


「これは、あまり良い話ではないのだが・・な」


「はい」


「シロダモの話では、昔に滝を見つけた学者さんと云うのは、西側から森を迂回して見つけたそうじゃ」


「西側・・、森を迂回・・・ですか」


どうゆう意味が在るのか、非常に気に成ったウィリアム。


マドーナ老人は、東側に指を向け。


「もし、御主達が仕事を請けるなら、行くのは東の森を突き抜けていく道筋なのじゃよ」


「西側と東側は、大きな違いが有る・・・と?」


「そうじゃ。 ワシとシロダモが断念したのも、密林奥深くに分け入る形の東側から行ったからじゃ。 西側は、古い昔に山の麓に栄えた古代都市の跡地が多く点在する。 近年にモンスターが出たと云う遺跡も、森の中に残るその跡地の一つじゃ。 モンスターさえ恐れなければ、夜営もし易いし、自然の驚異も少ない。 つまり、学者さんの行った道の方が楽と云うことじゃ」


その話に、シロダモ老人も頷く。


一方、話を離れた所から聞いていたリネットが。


「モンスターの方が、自然よりも恐ろしいのではないか?」


と、口を挟んだ。


ウィリアムは、彼女に。


「リネットさん、それは違いますよ。 ま、詳しい話は、宿に戻る時にでもします」


こう云い、また老人二人へと顔を戻して。


「では、我々が採取ついでに奥地へ行こうとすると、未踏に近いルートを行かなければいけないということですね?」


マドーナ老人は、リネットや此方を見ているロイムなどを悪い目で一瞥してから。


「その通りじゃよ」


シロダム老人は、ウィリアムを見て。


「森の奥地に行くのに、船も使えん。 川が続く訳では無いからの。 船が使えるなら、ワシの肝いりで貸すんじゃが・・。 お前さんには、娘夫婦の危機を救って貰っただけに、何かして遣りたいんじゃが・・・。 今回は、どうにも」


ウィリアムは、大きい素振りで首を振り。


「いえいえ、あれは成り行きでそうなったというだけです。 その様に深く考えて貰うと困りますので、お気持ちだけでも十分です」


前はあれだけ実の娘を毛嫌いしていたシロダモ老人だが、事件の時は何度も警察局部に赴いて無実を訴えたらしいし。 また、孫娘のジュリエットを気遣い、病院で何度も逢ったとか。 身内の危機で、シロダモ老人も家族の大切さを検めて実感したようだ。 だから、ウィリアムには肩入れしたいらしい。 本音の一端には、ジュリエットと結婚させても良いぐらいの気持ちが在る。


そんな事など知らぬウィリアムは、二人の老人に逃げ帰るまでも昔の話を求めた。 情報として、重要だと云って・・・。


夕方まで、話し込みは続いた。 途中で、栽培している薬草の手入れを終えたマドーナ老人の息子で、ジョンの父親であるカイルが戻り。 夕方前には、シロダモ老人を迎えに来た者が、数名一休みを預かる。


この恵みの森で住む民と、一時の交流をした一同だった。


さて。


夕方。 空が、森が薄暗くなり、暇をして戻る帰り道。


「うわぁぁぁぁぁ~~~~~、動物の声とか聞えるしぃぃぃ」


ビビるロイムは、杖に光の魔法まで宿し。 森の中を脅えながら歩く。


一方、先頭のウィリアムは、左手の斜面の遠くに湖が見えているのを確認しながら。


「採取の仕事をするとしたら、明後日・・か。 その後ですかね」


アクトルは、周りの暗い森を見ながら。


「準備にそれぐらい掛かるのか?」


「いえ。 明日は、雨がきそうです。 後、相当に厳しい旅に為るかも知れませんので、準備はしっかりしましょう」


リネットは、先程の話を聞きたく。


「で、モンスターよりも、自然が怖いとは?」


「自然の驚異は、生易しいものでは有りませんよ。 モンスターとは違う生き物達も恐ろしいですし、天候や病も在ります。 普通に生える植物にも、人を食べる物が有ります。 原生の森には、魔草(人や生き物に害を為す植物)なども有りますしね」


「そんなものがいるのか?」


軽々しい了解に聞えるリネットの声。


ウィリアムは、少し脇目に顔を向け。


「モンスターは排除すれば、それで終わりですが・・。 森の物は燃やしたり出来ません。 人には有害でも、自然には必要な物も有りますし。 生物も、また然り。 モンスター化してしまった生物と、闇の力で変化を促されながらも生物としての領域に留まる生き物や植物は、紙一重ですが分けて考えなければいけないんです」


「魔に犯された物と・・モンスターに違い? なんで・・分けるんだ?」


「大地が嘗て魔の力に侵食された古代の頃、人が食べられる物は少なく。 寧ろ、毒草や魔草の方が多かった。 つまり、動物も植物も、魔の汚染に適応する為に凶暴化・危険化と云います。 それから今日までの長い年月の中で、魔草の中には薬として欠かせなくなった物も多く。 生物の中には、モンスターとは隔離される擬似種の生物も居ます。 人は、森や自然と共存し、モンスターのみを排除する事で今までの繁栄を維持してきた。 それは、これからも同じ。 人を襲うからと、何でもかんでも排除する行動は、その土地で生きる民に迷惑を掛けると云う事です」


冒険者として、仕事をしてきただけのリネットである。 その境がどの様に違うのか、想像が追いつかなかった。



・・・。



次の日は、朝からシトシトと冷たい雨が降り出した。 山に囲まれた台地の地形の関係から、風と雲のかみ合いにより冬の入りに似た冷え込みが夏場にも訪れる事が在る。 曇りで更に低温となり、街を歩く人の格好も長袖が大半を占め、また皆が薄っすらと吐く息が白かった。


斡旋所に行き、仕事を請けたウィリアム。 晴れが続きそうな明後日から行くと主の女将に告げ。 必要な物を買い込むと、その後は自由にした。


行動を自由としたウィリアムは、街の図書館に行くと云う。 ロイムやクローリアやラングドンは、尚の事。 アクトルもついて来たし。 この天気では女の子も逢引に誘いにくいとスティールも・・。


各々が見たい本を探す為、図書館の方々に散って行く。


リネットは、自分の近くにずっと見えるスティールへ。


「貴様、文字が読めるのか?」


と、つっけんどんに云う。


だが、前髪を掻き揚げるスティールは・・。


「フッ、このスティール様に、読めぬ文字は無い。 弟子のロイム、ウィリアムが、見事に読みぬくさ」


「・・とことんアホで、知恵も無いバカか」


リネットは、斬り捨てる様な言葉を残して本棚に向かっていく。


「・・・」


キザなスタイルで固まったスティール。


近場で見ていたアクトルは、これで少しは静かに成ると思って無視した。


さて。


ロイムも、クローリアも、読みたい本や図鑑をサッサと選び、吹き抜けで本棚が見下ろせる二階のリーディングルームへと向かう。


一方、ラングドンは、この前の時にウィリアムが異病に処方した薬の事を調べようと色々な本を探していた。


アクトルとスティールだが、何を読もうかと困り。 ウィリアムに頼んで、冒険に必要な知識の書かれた本などを探して貰う事にする。


こんな感じで、夜まで過ごす一行だが。


「おっ、アーク見てみろ。 これから行く森には、俺達の村でもオッかながられてたハンター・デスが居るってぞ」


「あ、マジか?」


「おう。 それに、スピアズ・イグニースも」


「あんな植物まで居るのか・・。 こりゃ、ウィリアムが云う以上に危険かもな」


山の鉱山に作られた村の出身であるこの二人は、山・森で育っただけあって危険な植物の確認は早い。


ウィリアムが。


「動く植物で、一番危険な代表格ですよね。 どちらにしろ、刺されたらほぼ一撃で死にますしね」


スティールは、図鑑に描かれた大型の蔦の絵を見ながら。


「このハンター・デスは、巨木に取り着く移動型だったよな。 何年か一人とか、二人が必ずヤられるんだ。 俺達も、ガキながらに真っ先に教えられた脅威だよ」


アクトルなど、その植物を見た事が在るらしく。


「俺は、樵のモブ爺ぃが殺された時に見た。 真緑の光沢が在る蔦が、丸で矢の様に飛んで来てよ。 あっという間に、モブ爺ぃは刺された。 太い蔦が胸を貫いて、爺ぃさんを持ち上げる時。 モブ爺ぃさん、俺に“逃げろ”って言ったっけか。 あのオッそろしい植物だけは、記憶から離れねぇな」


と、しみじみ云う。


静かになる二人に。


「ハンター・デスは、寄生植物の一種でしてね。 数年に一度、種を残すべく花を咲かせる雌株と、雌株を探す雄株が森を動くんです。 問題は、その実が非常に硬くて大きいんです」


と、ウィリアムが本を見ながら説明をする。


男二人は、自然とウィリアムに目が・・。


「寄生で、殆ど動かないハンター・デスは、そんな大きく硬い実をどうやって作るのか・・。 答えは、人や動物の血を吸う蚊と一緒。 その交配の時期に為ると、雄株も雌株も動物の体液を欲しがるんだとか。 雌株で、大牛2・3頭ぐらい。 雄株で、1頭ぐらいの血肉を欲しがるらしいですね」


スティールが、先に。


「んじゃ、樵が時々狩った動物の内臓とかを置いてくのは、その餌遣りか?」


「まぁ、その意味も在りますし。 その内臓を狙って来た動物が襲われれば、助かりますでしょ? 他の狩人だって、その置かれた内臓や襲われた動物を見れば、自然とハンター・デスなどの危険を察知出来ますしね」


一方で、アクトルが。


「遭遇したら、伐っちまっていいのか?」


と。


問われて直ぐに首を左右に振るウィリアムで。


「ハンター・デスは、別名を“施しの蔦”とも云うんです。 伐るなんて、ダメですよ」


「“施し”?」


「そうです。 種を残し、力尽きて枯れたハンター・デスは、消毒効果が強く高値で取引されますが。 それは、寿命で死んだものだけなんですよ。 しかも、数年に一度だけ産み落とされる実は、核であるタネが奇跡の妙薬エリクサーの原料。 人が被害に遭う分、珍重もされるんです。 ですから、ダメ」


「い゛っ・エリクサーの原料の一つだとぉぉ・・・。 確か、一生掛かっても作れるかどうかって云う妙薬だよな? 飲めば瀕死の人間でも助かり、死人すらも甦ったっとか伝説のある・・・」


「ですよ」


二人の話を聞きながら図鑑を見ていたスティールは、その記述も見つけ。 急に顔を本に近付ける。


(なぬなぬ、奇跡の妙薬には欠かせぬ材料であり。 材料のウチでも保存に適さぬ材料の為、その取引値は数百万から・・数千万・・・マン・・マンマン・・・・マンマンマーーーーーーーン)


ウィリアムとアクトルが話す最中、ガバッとウィリアムに飛びつくスティール。


「うおあっ、自分にその趣味はっ?!」


キスさそうに顔を近づけられ、咄嗟の如くそう言ったウィリアム。


だが、目をギラギラさせたスティールは、


「ちげぇ~~~~~~よぉぉぉぉぉ~~~~~~ウィリアムちゃん」


「え゛?」


「今回のぼ~~けんで、その実をみつけちゃお~~~~~よぉ」


「・・はぁ?」


「大金持ちになりたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!!!」


・・・お馬鹿の遠吠えが、図書施設に木霊した。





                        ★





二日後。


いよいよ出発である。 同行する住民を迎えに、出発始めに大湖の向うにある住民の村に寄るつもりだったウィリアム一行。 準備はしっかりとして、幾分背負い袋が皆膨らんでいる。


しかし、出発前に斡旋所から御呼びが掛かったのが気懸かりであった。


「ふぁ~~ぁ。 ウィリアムぅよぉ、朝から斡旋所のバァさんなんか見たくねぇ~~~よ」


眠そうなスティール。 図書館に行った夜から、この街に来た次の日に捕まえた女性達のお招きを受けて昨夜の深夜まで居なかった。 シャツの襟首の緩みや、女性用の香水の匂いをさせている。 ウィリアムから、その匂いは危険ですと云われたスティールだが、他の着る服が無いのでこうなった。


さて。


朝のひんやりとした空気に包まれながら、一行が斡旋所に向かってみると・・。


ドアを押し開いてウィリアムを先頭に斡旋所に入れば、円形受付の内にもう斡旋所の主が居て。


「あら、来てくれたかい。 正直、行っちまうかと思ったよ」


呼び出しの文句は、強制的な要素は無かった。 ただ、なるべく・・の様な文言が使われていたぐらいだ。


ウィリアムは、奥の片隅に誰か立っていると思いつつ。


「主の呼び出しですからね、一応は来ますよ。 で?」


すると、主の初老の女性が。


「出て来ていいよ」


と、声を。


「済まない」


「助かる」


男の声が二つ。 奥からウィリアム達の前に出て来たのは・・・。


「ギ・ギルディ?」


と、口走るアクトルに続き、スティールも目をパチクリと開いて。


「ハレーザック・・」


モンスターキラーと謳われるバヴロッディのリーダーと、魔想魔法使いの異端児と云われる二人が居たのだ。


ウィリアムは、二人がもう旅立ちの出で立ちである事に注意が行って。


「あの・・、どうされましたか?」


すると、ギルディが前に進み出てきて。


「ウィリアム、急な願いで済まないが。 私達二人も同行させてくれないか。 無論、君の指示に従う協力者としてだ。 私達は、率先した行動はせず、何処までも着いてゆく」


在り得ない様な申し出に、アクトルは驚き。


「あ・だってよぉ。 そいつはぁ・・、ちょっとマズイんじゃないか?」


世界に名の知れたリーダーのギルディである。 他の冒険者。 格下の冒険者の傘下に入るマネは、プライドもそうだがチームの名前に傷が付く。


しかし、ハレーザックと云う若者が前に来て、青いロングコートの様な上着を着る出で立ちで在り。


「いや、プライド云々を貫く暇じゃないんだ。 俺達の仲間や連れて行った若い奴二人だけじゃない。 病院のジィ様が言うには、俺達の行為で病気を撒き散らした疑いが在ると。 秋の冷え込みで、病気が出たら薬が足らなくなったり、値段が上がるかも知れネェらしい。 ウィリアムは薬に精通してるんだ、一緒いって原料を採って来れば、俺達の所為で大量に使った薬の補填ぐらいには成るだろう。 仲間全員助けて貰えた仮は、手助けで返させて欲しい」


唐突で驚くべき申し出だった。


混乱するアクトルやスティール。 ロイム、クローリア、リネットは、老練のラングドンにどんな意味が出て来るのかをレクチャーされる。


(驚くのも無理ないわい。 バヴロッディなんぞ、世界の冒険者ランクでは最上位の20傑に入るんじゃぞ。 その面々を助けただけでも、ウィリアムの名声獲得にはもってこいなのに、こんな形で協力するなんぞ・・。 売り込み要素の塊じゃ、名声に拘るヤツなら、バヴロッディの名を貶めて名を広げる事まで視野に入れられる。 普通でこんな事、斡旋所の主が慎重に成るわい。 ま、そんな処を思わせないウィリアムの無欲さがイイんじゃろうがなぁ)


仲間は申し出に慎重になるべきと思う。 しかしウィリアムは、早くも。


「では、一緒に行きましょうか。 採取する糧は多いので、持ち手が多いのは助かりますし。 有名なお二人が一緒なら、生還率が上がって申し分ないです」


と、二人に云ってから。


「アクトルさん、スティールさん、皆さん一緒で此方のお二人に最低必用な道具の買出しの付き合いを。 もう店も開き始めてますし、大通りの方に行けば調達も早いでしょう」


スティールが。


「お前は?」


「あぁ。 一応、参加の手続きと協力チームとして仕事の再手続きをします。 病院の方から、後々で薬草の大きな採取依頼を出す予定だったので、今回は斡旋所主体の依頼を作って貰えれば、現地の方々に文句を言われずとも済む薬草採取が出来ます。 その話を此処で決着させておきますよ」


主の老婆も。


「医者や、病院、寺院からその話は来てたねぇ。 まとめて一括した依頼にするから、チョイト手間を貰うよ」


ウィリアムの事務的でサラリとした様子は、見ている他者からは肩透かしを食らう様で。


「じゃ、教えてくれ。 ウィリアムが来たら、もう行ける様にしたい」


雄雄しき魔物殺しのギルディが、気さくにアクトルへと云った。


「あ・・あぁ」


世界に色々とチームが居る。 しかし、このバヴロッディほどにとっつき難いというか、係わり合いを持つのが難しいと思われるチームも無いだろう。 そのチームから、腰も低く言われると気持ちが悪い。


(ウィリアムが凄いんであって、俺達は・・・)


ギルディとハレーザックを伴い、商業区のメインストリートに出る面々が思うこと。 馴れ馴れしく出来るとは思えないし、するのが何故か躊躇われた。


陽の高さが見上げる様に成る頃。


「では、農村部に行きましょうか。 同行者を迎えにいかないと」


街中の休憩場である大きな木の下で、まだ入院中の仲間の状態を聞いていたアクトル達と、ギルディ、ハレーザックの居る処にウィリアムが来た。


「おう」


「あいよ」


スティールとアクトルは、やはり旅なれた様にもう二人の人物を許容し始めている。


「・・・」


無言で立つロイム、クローリア、リネットは、何と捉えてよいかで迷う気持ちが無言に出ていた。


「荷物持ちが増えて良かったわい。 あの此処に来た最初の方の雑用なぞ、年寄りにはキツいでのぉ」


と、のんびりを装うラングドン。


歩き出しても、ウィリアムの後ろにギルディとハレーザックが付いて、色々と聞いておきたい事を聞く。 アクトルヤスティールは、その会話に補助的な事を言うぐらい。


一行が昼を前にして村に着けば、旅の準備をして待っていたジョン少年と、その父親の山男風のフランクが。 マドーナ老人、シロダモ老人が外の木の椅子に座っていた。


「おぉ、若者よ。 今日から、息子と孫を頼む」


「ウィリアム、今日から出立じゃな。 気をつけて行けよ。 もし、危なくて逃げ戻るなら、湖に注ぐ川沿いを探せよ」


二人の老人が次々と云うのに、ウィリアムはもう一人の参加者が見えないのを知り。


「あの・・、同行者は3人と聞きましたが?」


ウィリアムが云えば。


「それは、私」


しっとりとした大人びた声と共に、村長の家の脇から女性が出て来る。


「ぬっ」


声に反応して動くスティールを、正に神業的間合いで首根っこを掴んだアクトル。


「たのむーーーっ、イかせてぇぇぇぇ」


宙でジタバタするスティール。


それを見るギルディとハレーザックは、何がどうなっているのかと云う様な顔なのだが・・。


ウィリアムに懐いているジョンの姿を見ながら、ウェーブの掛かるクセッ毛を揺らして色気の強い女性が出て来た。


「珍しい、ジョンが余所者に懐いてるわ」


腰に皮の鞭を下げ、ジャッケトの両腕にはダガーの鞘を装着し、厚手の麻のガードの様なスカートを穿き。 その下には、滑らかな黒い皮の長ズボンと云う出で立ちの女性。 色気の強い化粧の濃い顔は、もう20歳は超えている様に見えるが。 その化粧しない首筋や手首の肌や瞳の若々しさは、10代とも見える。


ジョンは、


「エメさん、このウィリアムさんは凄いんだよ。 僕のお祖父ちゃんより、お薬作るのが上手いんだ」


と。


黙っているウィリアムの前に、麻の布ジャケットの胸元をガバッと空けて豊満な胸元が見える様にしているエメなる女性が遣ってくる。


「なるほど、ジョンが懐く訳だわ。 で? 今から出発?」


何処か此方を信用していないと解る女性であるのだが、此方もまた冷静なウィリアムが。


「先頭は、道案内も出来るフランクさんと、自分とスティールさんで。 真ん中にジョン君を入れて、ギルディさんとハレーザックさんで護ってください。 殿はアクトルさんで、後はなるべく離れないように着いてきて下さい」


と、もう行く形を決めるウィリアム。


エメなる女性は、背負うリュックを片手に持ち。


「随分と簡単に決めるじゃないかい」


と、云うのだが。


これまたウィリアムは、もう先にか目が行ってないのか。


「薬草採取は都度都度に行います。 初日は、全員の慣れを見る為にもガッチリ決めませんよ」


と、ジョンと並んでマドーナ、シロダモの両老人へと挨拶をしに行く。


皆が出発のスタイルを取る中、ウィリアムから透かされたエメに、何とかアクトルから逃れたスティールが近寄り。


「リーダーが冷めてて悪いね、まぁ俺がキミの相手をするよ」


エメの眼が、ジロっとスティールに向かうと。


「全く、女にだけは目敏いな」


「ホントです。 ま、誰でもイイ方ですから」


リネットとクローリアが並んでアクトルの方に行く。


「拗ねるな、拗ねるなよ」


何処か偉そうな、丸で全員の女性でも相手にすると言いたげなスティールで。


(なんだ、コイツは・・)


エメは、スティールを含めて今回の同行する冒険者を見下したのであった。

どうも、騎龍です^^


今年のエターナルの初めですね。 ウィリアムの自然紀行みたいな話ですが、次のⅣ-3に繋ぐ話となるのでしっかり書かせて貰います^^


ご愛読、有難うございます^人^

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