ウィリアム編・Ⅳ―2
冒険者探偵ウィリアム Ⅳ―2
森の奥深くに広がるは、隔絶された神秘
≪経過と、新たな始まり≫
涼しい風が、高原に在る都市ロファンソマを吹き抜ける。 避暑地として、夏季の今が一番賑わうこの都市にて、密かな騒動が勃発したり。 また、街を揺るがすとも限らない事態が起きたり・・。
ウィリアムと云う存在が居たから、書き記した形に収まったが。 居なければ居無いなりに、収まるのは事態と云うものだ。
だが、挑戦者として彼は居る。 そして、彼が行動して事態が収まり、今に続く。
・・・。
或る日の朝。 アクトルは、食事後にリネットに付き合っていた。
―ガキン―
金属の打ち合う音が、人気の少ない湖の前の砂場で響く。
「リネットっ、一撃を遊ぶな。 俺が本気なら、その一撃を跳ね上げて攻め込むぞっ」
「おうっ、解ったっ!!! せいっ、やぁっ」
男の様な雄雄しき掛け声で応えたリネットは、全力でアクトルへと連続突きを見舞う。 駆け出しの仕事を重ねて体を動かし、身のこなしがよくなったと思うリネット。 今朝は、食事後にアクトルへ腕試しを申し出た。 スティールに言わなかったのは、彼がウィリアムに付いて行くと云ったからである。
クローリアとロイムは、試合う二人の近くで、精神修行としてイメージマジックをしていた。
そして、湖で遊ぶ観光客が増え出す頃。 一人で居るご老人は・・。
(んふふふ・・、今日も若いコが多いのぉぉぉぉ~~~~~)
街の滞在客が湖へと出ている姿を、遠目から嘗め回す様に観賞するラングドン。 間近の砂場へ降りる階段を、水遊び用の露出の多い服装で行く若い娘を目で追い。 じっくりと妄想に浸るのが・・彼のイメージトレーニングらしい。
国境の中継都市にして、高原の避暑地でもあるロファンソマ。
ウィリアム達が、他の冒険者達に因ってこの街に持ち込まれた病気を、一部の知る人のみだけで蔓延を阻止してから3日が経つ。 この平和な様子が、もしかすると無かったかもしれないのだ。
その事態を救った男は、軽薄な行動ばかりする仲間と大きな寺院病院に来ていた。
「其処の君、昼に何処か行かないかい?」
キザな顔して、病院で働く僧侶や手伝いの女性を口説くアホ・・、いや。 スティールが居る。 毎日、人の生死に関わり、裸を見ている働き手の女性達は、早くももう彼に慣れていた。 適当な挨拶などで誘いをかわされ、皆に笑われているのを彼が解っているのか。 ・・甚だ微妙な処である。
ウィリアムと共に病気を防いだ老人医師は、そのスティールを廊下の遠くに見て。
「あの男、仕事を遣らす方がモテるんと違うかのぉ~。 あんなキザ、付ける薬も無いわい」
と。
廊下を行き来する女性の手伝い人や寺院から来ている僧侶が、老人医師の一言を聞いてまた苦笑い。 クスクスと彼を見て仕事に散っていく。
一方、ウィリアムは・・。 この大型施設の病院部分に在る個室にて、白いベットの上に座る女性を診ていた。 歳の頃は、30半ばから・・40までどうか。 普段なら、葬儀の時に婦人が被るウィドゥベール(未亡人のみが被るベール)を被り、黒皮の特注ドレスを着ているモナ=リサと云う女性だ。 彼女は、かの有名なチーム“バブロッティ”の一人。 薬学にも歴史学にも通じた者の筈だった。
だが。 今の彼女は、ウィリアムに身を委ねている。 下の下着すら着けて居無い彼女で、その体表には病気で発疹が出来た箇所が所々に見受けられ。 その部分を女性相手だがしっかりと触診しているウィリアム。 乳房周りにも多く、何度も部分を触った後に立ち上がり。
「もう服を着て結構ですよ。 傷の治りは順調です。 そうですね・・・、体表に見える発疹が治まるまで、先ずは後5日。 しっかりと薬を飲み続けて下さい」
触診をしたウィリアムが、近くに用意された手洗い用の消毒薬湯に近寄って言えば。
「済まない・・。 全ての原因は、私に在る。 薬は現地調達すると、仕事を急がせたから」
薬湯で手を洗うウィリアムは、モナリサを見る事もしないで。
「さ、冷えると障りますから、もう服を着てください」
と、促してから・・少し間を置いて。
「普通の病気は、病気の生息域に治療薬に為る草などが在るのが当然だと云えます。 ですが、異病はそれに当て嵌まらない。 仕事をするまえに、無駄足と思ってでも書物を見るべきでしたね。 次に繋がりましたから・・。 胆に銘じて下さい」
15歳以上は離れたウィリアムに言われたモナリサだが、異病から助けられたのだから不愉快など思わない。
「生きたのだから、・・そうだな。 解った、覚えておく」
ベットに座りながら、衣服を直して頭を下げたモナリサ。
だが、手を洗い終えたウィリアムは、今度は彼女を見て。
「それと、貴女のその御顔ですが・・」
云われたモナリサは、ウィリアムを見上げる。 彼女の顔を見て、何も知らない人は驚くだろう。 顔の左半分だけが、おぞましく歪んでいるのだ。 唇が捲れる様に歪み、目が睨みつける様に釣り上がっている。 怒りと云うか、憎しみ狂った様な顔に歪んでいると言えばよいか。
「・・不名誉の傷跡だよ。 昔・・」
と、説明しようとしたモナリサだが。
「・・・」
何も云わずに、ウィリアムはズィっと近付いて診て。
「神経を固まらせる毒が原因でしょう? 薬だけでは、治すのが無理の症状です。 完治はしませんが、緩ませる事は出来るかも知れませんよ」
云われたモナリサは、右の顔で驚き。
「ま・まさかっ」
と、笑い捨てようと。
しかし、ウィリアムは素のままに。
「東方の王国では、鍼灸と云う技術が有ります。 自分も一度しか見た事が無いのですが、針やお灸と云う技法に揉みを混ぜて身体の血の巡りを改善したり。 神経の活動を変えるんです。 その治療と、強い治癒の薬を服用すれば、引き攣りを緩ませる事も可能だとか」
「シンキュウ・・だと? そういえば・・・ノブナガが昔にその話をしていたな」
そう思い出す様に口走るモナリサへ、ウィリアムは今日最初に病気の具合を診た異国の剣士を思い。
「お仲間に、その地方の出身の剣士が居ましたね。 あの独特な人相や容姿は、その地方の方かと・・。 一度、真剣にご相談されるのも良いかと思いますよ。 では、次の方を診て来ます」
ウィリアムは、一番重症だったサデュアと云う女性の下に行こうとする。
気が付いたのが昨日で、話せる様になって驚きが多いモナリサ。 だが、仲間の事がなにより先だとばかりに。
「次? まさか・・サデュアは、助かっているのかっ?」
部屋から出ようとしたウィリアムは、足を止め。
「死人は誰も居ませんよ。 ま、経験の浅いお二人の冒険者の方々は、もうまともに走ったりは出来ない身体ですがね。 杖つきで歩ける体に戻れるだけでも、良い方だと思います」
「・・感謝しかない。 ギルディも、そう言っていた」
「はい。 では・・・」
その部屋を出たウィリアムは、問題の女性の部屋へと向かった。
運び込まれたバブロッディの面々の中で、一番重い症状だったのがサデュアと云う女性だ。 女性にしては長身の人物で、無口ながら神聖魔法も遣える神官狩人だと云う。 非常に人見知りの様な行動を見せ、リーダーのギルディ以外とコンタクトを取らないとか・・。
だが、部屋に入ったウィリアムは、直射日光を和らげるカーテンの閉まった部屋にて。
「お目覚めですか?」
と、声を掛けた。
「・・・」
薄暗い部屋のベットの上で、黒いシルエットの様に此方を見てくる女性が居るのを確認したからだ。
彼女の事は、ギルディが一番心配していた。 男に近寄られるのを、サデュアは嫌うからだ。 目を覚ましても検診をさせてくれるか、非常に心配をしていた。
が。
彼女の傍らに置かれた椅子に座ったウィリアムは・・。
「御加減は如何ですか? 二日、眠りっ放しでした」
「・・・」
サデュアは、専用の白いローブに着替えさせられている。 そして、ローブの下が裸である事も判っている様で。 手術を受けた右の胸を見てから、再度ウィリアムを見た。
彼女の動きを見たウィリアムは、検診をしようとカーテンを半分開くと宣言してから光を入れる。 窓の前に生えた巨木の木の枝で木漏れ日の様に為った陽の光によって見えたサデュアと云う女性は、非常に長い黒髪をした女性である。 パッと見た目、30前後の女性に見える。 だが、よくよく見ると、その顔付きは10代から20歳ぐらいの若い女性にも見えるのだ。 しかも、無口で表情が無い。 その、変化の無い静かな様子は、見た目の美人とは一味違った美を感じさせる。
カーテンを開けてから、席に戻ったウィリアムで。
「いいですか。 右の胸の下部に、モンスターから受けた傷が有りました。 病気は、其処の中で病巣を作りました。 女性には失礼でしたが、その病巣を抉らずして助けれなかったので。 その処置を致しました」
ウィリアムが此処まで云い、彼女の反応を見る。
―コク―
静かなるままに、一つ頷いたサデュア。
ウィリアムは、自身も頷いてから更に。
「気がついたと云う事は、助かったと思って下さって大丈夫です。 ただし、完治しても右の胸は少し低く、赤子が出来た後も左胸しか母乳が出ない事をご理解下さい」
ゆっくり、静々と語る。
全てを聞いたサデュアと云う女性は、緩やかに首をまた縦に振った。
「ありがとうございます。 では、触診をさせて下さい。 全身を診ますので、衣服を緩めてください」
すると・・。
「・・・」
無口なサデュアと云う女性は、白い綿地のローブシャツの前に掛かるボタンを全て外した。 そして、脱いだのである。
ベットの縁に座るウィリアムもまた、何事も無かったかの如く彼女の顔を診て。 目、口の中、首周りと診てから。
「失礼」
と、布の巻かれたサデュアの胸を触った。
「・・痛みは?」
ウィリアムが問えば、頷くサデュア。
「痺れや・・焼ける様な痛みは?」
と、ウィリアムが問うと、首を左右に振るサデュア。
ウィリアムが肌身を触っても、ピクリとも動かないサデュアと云う女性。 その後は、モナリサ同様に、体表で目立つ発疹を触診してゆくウィリアム。 また、触られてもピクリとも動かないサデュアと云う女性だった。
そして、全身を診たウィリアムは、一つ頷いてから・・・。
「では、体内で一箇所だけ調べたい場所が在ります。 力を入れないで下さい」
そう言ったウィリアムの右手は、なんとサデュアの陰部に・・。
「・・・」
女性の普段は決して人に見せぬ部分を触れられ、そのままに体内へと指を入れられたサデュアだが・・・。 ギルディが云う心配とは違って、変わらず動かない。
一方のウィリアムは、目を瞑って緩やかに手を動かしていた・・。
然程の時も使わずに・・。 触診を終えたウィリアムは、サデュアの体内から引き抜いた指に絡みつく白濁しかけた体液を、窓から入る木漏れ日の様な陽の光に翳して診ている。 そして・・・。
「失礼ですが、陰部の内部に発疹が出来ているのが解りますか? 少しチクチクと痛痒い感じで、熱っぽいと思います」
問われて、静かに頷くサデュア。
薬湯で手を洗おうと立つウィリアムで。
「もう構いません。 衣服を着て下さい」
と。
サデュアが服を纏い、ウィリアムは手を洗ってまた相対した。
「サデュアさん」
ウィリアムが彼女を見て言うのに対し、彼女はやや俯き加減にしている顔をウィリアムに向けた。
「貴女の身体で発症した異病は、完治に向かっています。 ただ、幾つも異なる病気が併発している事をお忘れなく。 体内を始めに、首周り、手足の関節、そして唇と顎に出来た発疹は、完全に完治に向かうに従って消えてゆくでしょう。 その発疹が消えるまで、薬を飲み続けて安静にしてください。 体内に出来た発疹ですが、触っても破れていません。 血も出て居無いし、体液の変色も薄い。 ちゃんと直せば、確実に完治します」
「・・・」
サデュアは、ウィリアムを見て固まった。 その何か求める様な視線を見つけるウィリアムで。
「何か? 自分が不思議ですか?」
見たままに、一つ頷いたサデュア。
だが、ウィリアムは席を立つ。
「自分は、冒険者ですが。 薬師の見習いの頃に異病と二度遭遇した事が在るだけです。 斡旋所経由で、この事態の事に関わったと云うだけです。 明日からは、老人の医師が来ると思いますので。 では、お大事に」
自分をじっと見つめてくるサデュアを残し、ウィリアムは廊下へと出た。
が。
(奇妙な女性だ・・。 あの顔の若さと、体格のバランスが壊れているみたいに不釣合い。 人の姿とは、色々あるんですねぇ)
サデュアの体を触診したウィリアムは、その体の皮膚が部分部分によって違う事が気がかりだった。 張りは有っても、年齢をやや重ねた部分と。 丸で15・6の少女の様な瑞々しさが出ている部分が在る。 しかも、顔だ、足だと云う範囲ではなく。 脹脛の右上とか、腹部の左下腹部とか。 こんなちぐはぐな肌など、触ったことも無かった。
鎧も何も着ないウィリアムは、旅人とも街の住人とも見受けれる。 サデュアは、起きてから誰とも面会していない筈だから、ウィリアムの事を知らないだろう。 だが、男のウィリアムが触診しても、何とも反応しなかった。 それがまた、少し奇妙だったか。 スティールを探しに歩いたウィリアムは、途中で立ち止まると。
(それにしても・・。 今日で、あれからまだ3日だ。 あの重症の症状から、二日と少しで目覚めるなんて凄い回復力・・。 傷口は略塞がっていたし、体内への炎症が3日目で小康状態に為ってる。 う~ん、何もかもが不可思議ですね)
手術の時のウィリアムの診立てでは、サデュアは生きていればいい方。 冒険者としての人生はもう終わったと思った。 だが、彼女は異常とも云える回復力で再生している。 普通では、到底考えられない事だった。 右の胸の下に巣食っていた病巣は、心臓に掛かる所まで膨らんで膿んでいたのだ。 あの手術時、弱まった心臓の鼓動を聞いたウィリアムと老医は、心臓の外側にまで異病の転移を感じ取った。 薬で病気を殺したとしても、心臓にも何等かの後遺症が残ると思い。 それは仲間に伝えて在る。 しかし、今日の触診で心臓に異常は診られない。 つまり、心臓は無事だったということだ。
廊下を歩み出したウィリアムは、経過を老医に伝えて全てを任せようと思った。 もう、薬は作り終えたし、その調合は老医と薬師のマドーナ老人などに伝えて在る。 かの手伝いをしたジョン少年がいれば、同じものを作れようと思って居た。
では、何故にウィリアムが今日まで診断をしたのか・・。
それは、老人医師に異病をうつさない確実な状態に在るかどうかを見極める為だ。 つまり、自分を緩衝素材的な扱いにしたわけである。 弱まった異病も、老人や幼児などには脅威だ。 もし、老人医師にうつってしまったら、犠牲者となる可能性が在る。 ウィリアムは、そうならないと云う確証を得るまで、自分が検診をするつもりだった。 だが、手術の処置が完璧で、働き手の作業もしっかりしていたのだろう。 助けた全員が、回復に向かっていた。
病気の完治まで、隔離された5階に滞在するバブロッティの動ける面々への通知も含め。 ウィリアムはすべき事を全部終え。 昼前には、スティールと二人で斡旋所に行き、緊急報酬としての20000シフォンを受け取った。
そして、帰り際。
昼に入った街中は、少し往来を行き交う人の姿が多めに見えると思われ。 曇りが混じる空の下、高原特有の涼しい風が吹きぬけ、夏とは思われぬ心地よい気候である。
「なぁ、ウィリアムよぉ」
全て金貨で出された報酬を持つスティールは、その多額な重みに命の重さを感じつつ隣のウィリアムに声を掛けた。
「はい? 何です?」
「お前と居ると、金に苦労しなすぎる。 俺達七人でこの金分けても、遣う暇が無いじゃないか」
「まさか・・。 豪遊王子のスティールさんが、使う金を余らかすだなんて・・」
「俺一人の事じゃなくてよぉ。 みんなの事さ」
「ま、理解はしてますよ。 そんなに要らないとは・・何度も言ったんですがねぇ」
「ウィリアム、人の命の重みがこの金の額よ。 だが、この額より低い額で動かされる命や運命も多いだろう? なんか、ぱぁ~っと使い切る方法とかないかね」
「武器とか余り壊れてませんし、アクトルさんとロイムは一級品持ってますしね・・」
「おうよ」
「でも、いざって時に無いのも困りますしね。 まぁ、持って於くのも一つかと」
そう云われると、確かにそうかも知れないと思うスティールだが。
「ふむ・・。 あ」
と、何やら思い出した様な声を上げた。
「はい?」
ウィリアムは、今度は何かと思うと。
「そういやぁ・・よ。 この街のど真ん中に、スゲェ大きな建物在ったじゃんか。 神殿みたいな作りなのに、なんかこ~~古風っつ~か、やや地味な感じっつ~か」
「あぁ。 あの建物は、“銀行”ですよ」
聞いたスティールは、まともに銀行を初めて見たと思った。
「ぬぁぬっ?! あれが銀行ってヤツかっ?」
「えぇ。 大抵の主要都市に在り。 普通は地下神殿風の形で、窓口だけが構えの良い館の中に在る~って感じなんですがね。 此処は、随分と大きい建物で在りますよね」
「ほぉ・・って、お前~~今までも銀行とか見てたの?」
「えぇ。 大きい都市には、ソレらしき建物が在りましたよ」
「なっ、云えよっ」
「何でですか?」
「いっぺんぐらいは入ってみたいじゃんかっ!!!」
すると、ウィリアムは目を細めて。
「スティールさん」
「な・ん・だ・よっ!!」
「我々では、入っても何も出来ませんよ」
「な・ん・で?!」
「銀行に、お金を預ける口座と云うものを作るには、開設の金額だけで手数料と逢わせて10000シフォン以上掛かるし。 その開設に当る資格だって、相応の身分や、商人だと年間の商力等の“査定”を受けなければいけません」
「なんだとぉ~~。 んじゃ~~ぼーけんしゃはダメだってかいっ?!」
差別されているみたいで、腹立たしいスティールだ。 口座とやらを作る金なら、今に手元に在るのだから尚更だろうか。
しかし、サバサバとしたウィリアムは、更に話を続け。
「いえ。 スカイスクレイバーの方々の様な、その~~名声が在るとか。 あの“風のポリア”さんみたいに、お家がもうスゴイとか。 何かこう~~正統な身分照明が保証されてますと、冒険者でも大丈夫かと」
「ぬっ。 ぬぬぬ・・、それってよぉぉぉぉ・・凄まじく差別ではぬわいか?」
「何を言ってるんですか。 高度な昔の魔法技術を用い、全世界でお金の預け入れや引き出しが出来る銀行ですよ? 誰でも来いなんて云ったら、犯罪で流れるお金だって平気で入ってくるし、身分を偽る悪い人も平気で来ます。 それこそ、毎日警察役人が銀行に来て金の流れの取調べとか受けないといけないですよ」
云われてみると、正しく納得しか無いスティール。
「・・そらそうね」
「デス。 高価で価値さえあれば、貴金属から鉱石でも換金してくれる銀行は、警備の費用や維持費に機密保持って掛けるお金も大変ですしね。 預け入れる人を特定に限って、それだけ手数料も取らないとやってけないッス」
「うぬぬぬ・・、流石は元銀行の下っ端に居た犬だけあるな。 良く知ってやがるゼ」
「わんわん」
ウィリアムが犬のマネをした所で、スティールは真顔に戻り。
「だけんどよ、ウィリアム」
「はい?」
「あの湖の向こうのジィさんが呼んでるって云ってたろ?」
「ですね」
「なんか仕事か?」
「あ~、多分」
「何の?」
「いえね、自分が森の奥地に興味が有ると云いましたので。 多分、薬草採取の仕事がてら、森の奥に入る事を承諾してくれるものかと」
「んなのお前ぇ~、勝手に探検で入ってもいいだろうに」
「スティールさん、地元には地元の色々ありますでしょう? 見も知らない他人に、大切な恵みの森や大地を歩き回られても嫌でしょう?」
「・・ま、な。 でも、新しい冒険の始まりなら、面白くもあるな」
「でしょう? 殆ど人が奥地まで行った事が無いそうですし。 ホラ、マーケット・ハーナスで、ブレンザさんが色々云ってたでしょう?」
「お・・おうおう、森の中で異変が在っただの。 遺跡でなんだか言ってたな」
「その調査を任せて貰えるなら、成功次第でチームの箔も上がります。 チームが有名に成ったら、銀行で口座開設も夢じゃないですよ」
「・・、凄く面白そうだの~~~」
「はい。 あ、銀行に口座を持つって、金持ちのステイタスらしいですからね。 スティールさんなんか、女性に自慢するタネが増えると思いますよ」
ウィリアムがこんな事を言うと・・。
「フッ。 この俺様の美貌だけでも、女性を口説くのには十分過ぎるステイタスだってのに・・。 それに上乗せたぁぁぁぁぁぁ~、剣士に魔法が遣えるみたいなモンじゃないかぁ~~~~~い」
かなりバカな顔に変わるスティールが、もう嬉しくて堪らないと云った様子で大手を振り始める。
「ですね」
「よし、ソレ行こう。 明日、直ぐに行こうじぇ~~~いっ」
「はいはい。 ま、斡旋所を通してから正式に、ですから。 行くのは2・3日後だと思います。 とにかく、これからにでもマドーナさんに逢って、お話を聞きましょう」
「おうおう、よきに計らえ」
「ははぁ~」
周りの通行人に見られつつも、そんなのもう慣れっこと云うふざけた二人は、そのまま仲間が居ると云っていた湖に。
一休みしているアクトルと合流したウィリアムは、寄って来たクローリアやロイムに経過を説明。
一方、ラングドンに声を掛けたスティールは、スピアを置いて湖で水浴びをするリネットを発見。
「むっ、愛人発見っ」
と、云い。 すぐさまに砂浜に下りてゆくスティール。
そんな彼に、遠目からジロジロと彼女を見ていたスケベジジィが。
「おいおい、喧嘩するんじゃないぞ~~」
と、声を掛ける
手をヒラヒラさせたスティールだが。 少しして・・。
「貴様っ!!!!! 其処に直れっ!! その薄汚い罪の上塗り人生を終わらせてやるっ!!」
「あらら、怒ったの?」
「当たり前だぁっ!!!!」
毎度毎度の痴話喧嘩の様なものが始り、声を聞いたウィリアムがアクトルと湖面前広場と云う公園から見て。
「あ~あ、また始った」
と、アクトルが云えば。
「仲裁がウザいんですよねぇ~~~。 捨てて行こうかな」
と、云うウィリアムだが。 急に風が変わり始めたのを肌に感じ、曇りの空を見上げて。
「あらら、これは一雨来ますね。 行くのは明日にしましょうかね」
と、言い換える。
「ん? そうかぁ?」
アクトルが見上げると。
「よいと」
と、立ち上がるラングドン。
「さ、雨が来るぞ。 宿にでも戻ろうかの」
自然魔法を遣えるラングドンは、天候の変化に鋭い。 彼がそう言うのだ、一行は宿に戻る事に。 宿へと戻る頃には真っ黒い雲が街を覆い、雷を伴った激しい雨が降り出した。
長い雨ではなく。 夕方には、更に冷えた風を伴って晴れ空が来る。
夕食時。 明日にマドーナ老人に遭い、新たなる仕事に向けて動いていくと話し合った一行だった。
どうも、騎龍です^^
夏に肺炎ウィルスによる風邪などやるものでは有りませんね。 咳も少ないのに、病気を仕事場から持って来た母親共々肺炎に行く手前だったとか。 暑いし、身体もシンドイし。 病気はしたくないですね。
ハハハハ・・・;
さて、今回からウィリアム編を載せて行きます。 冒険の物語で、バトル云々と云うより、紀行物語の様な感じに少しなればいいな・・と思います。
ではでは・・、ご愛読有難うございます^人^