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エターナル・ワールド・ストーリー  作者: 蒼雲騎龍
K編
160/222

K特別編 秘宝伝説を追って 第二部 ⑪

K長編・秘宝伝説を追い求めて~オリヴェッティの奉げる詩~第二幕



               ≪遂に、一つの運命が待ち受けるその場所へ≫



その小高い山一つが入りそうな落差をした縦穴の底は、然程育ち切らない木々の密林だった。 もう薄暗く、視界が良くない。 オリヴェッティは、Kから光の小石を貰い受け。 ガウ団長とウォルターが光の魔法を遣い、この島に上陸して初めて先頭に立ったKの後を追う。


「痛い・・。 凄く痛い・・。 痛いよぉ・・」


余りにも遊び過ぎたリュリュは、Kからゲンコツ一発を頂いた。 云うぐらいしか反抗出来ないので、ブツブツと文句を云っている。


(フン。 良い薬だ)


そう思うのは、メルリーフやルヴィアだが。


「大丈夫? あんまりはしゃいじゃダメよ」


等とオリヴェッティが甘い言葉を掛けるから、リュリュは彼女に引っ付いてしまう。


だが・・。


「しかし、不思議な場所じゃぁ。 これだけ暗いのに、モンスターが居無い」


と、クラウザーが云う。


事実だった。 蝙蝠が住まう洞窟が、この縦穴の側面に見える。 もしモンスターが棲んでいるなら、この逃げ場の無い穴に来た彼等は、それこそ格好の餌だろう。 だが、全く襲われる気配は感じられず。 また、穴の上の周囲に遣ってきたモンスターも、何故か鳴いたりするだけで消えてゆくのだ。


この、クラウザーの云った感想に、ウォルターが応えた。


「クラウザー殿。 この穴の下から、何やら強い力を感じる」


「ほう。 では、それがモンスターを寄せないのですかな?」


「恐らく。 この波動は、神聖魔法に近いモノです」


「神聖・・魔法とな。 それは、結界の事ですか?」


すると、ウォルターは頭を被り。


「いや、あの様に神聖な力に偏ったモノでは無い。 もう少し・・こう・・、根源的な感じが致す」


「ふむぅ」


クラウザーは、Kの黒い影を見て。


(解っているのは、カラスだけ・・か?)


一方で、ニュノニースも。


「此処は、何だか目の島で行った地下神殿に近い感じがするわ。 やっぱり、何か在るのね」


同じ思いのガウ団長で。


「そうだな。 しかし、まぁ~何と云うか・・・。 たった数日の内に、あれよあれよと云う感じで此処まで来た。 本当に、私が護るべき何かが在るのだろうかもな」


と、溜め息に近いぐらいの感心を言葉に含ませた。


その二人より一つ下がった間に居るアンディは、何故か目だけを爛爛とさせながら。


「そうなんだぁ。 感じられないから解らないけど、それはきっと素晴らしいモノなんだよ。 ・・きっと、きっとね」


「うん、そうかも」


応えたニュノニースは、素直にそう頷いた。


だが、横のガウ団長と、アンディの脇に居たメルリーフは違う。 “モノ”と限定した事に、違和感を覚えた。 何が在るのかを見た訳でも無いし、此処をそう感じただけ。 場所に限定するならともかく、モノに限定したのがどうしてかと思ったのだ。


此処で、先頭を行くKは、皆を引き連れて穴の中心に来た。


「皆、少し下がってろ」


と、Kが云う。


視界を照らす物を持つ者の周りに、それぞれが移動してKを見守った。


「・・此処がか。 噂には聞いたが・・、まさか自分から訪れる事に成るとはな」


そう独り言を言ったKは、徐ろにその場へと屈んだ。 そして、左手を地面に置くと、何かを探す様に少し動かす。 そして・・。


「・・見つけた。 これが入り口を開くモノだ」


と、左手に黄金のオーラを現し、小さく小さく押し込める様に地面へと付ける。


固唾を呑んで見守る一同の中で、リュリュだけが。


「開いた・・」


と、呟く。


間近のオリヴェッティとルヴィアは、リュリュを一回見たが。 目立って何事も起きないままに、Kは立ち上がって数歩下がる。


それから、どれ程の時が経っただろうか。 もう陽が暮れて、辺りが真っ暗に成った頃。


“何も起きないじゃないか”


と、メルリーフ等が思う時。 いきなり、いきなりに何かが地中から飛び出して来る。


「わぁっ!!!」


「きゃぁっ!!!!」


急に、“ズボォ!!!!!!!!!!”っと、凄い音がするので。 それは誰でも驚くだろう。 


「あ・・あぁ?」


「な・なに、何よ?」


驚くメルリーフと、アンディに寄ったニュノニースだが。 目を凝らして見れば、それは円形・・いや、円筒形の石で在った。 そして、その円筒形の石碑が光って破れて行く。 いや、本当に紙でも切り裂く様な様子で破れて行くのだ。 そして、その破れた石碑が消えた後には、円形の石が残っている。 淡く金色に光る石で、どうやら浮いている様である。


ウォルターは、誰よりも早く歩み出しながら。


「ほう、魔法の力で昇降するアレか」


一番最初に円形の石へと乗るKは、淡く黄色い光を湛える下を見ながら。


「見ろよウォルター。 この文字・・創世記から使われてる最初の魔法文字だぜ」


円形の石にへばり付く様な様子で光を宿した指輪で照らし、その石にビッシリと刻まれた魔方陣と魔法文字を見るウォルターは、見る見る興奮する様な顔に変貌し。


「おっ、おぉ・・。 これはすご・・凄い。 ・・いやいや・・、長生きするのも悪くないとはこの事だ」


と、今度は円形の石に乗り上がり、その床に屈んだウォルター。 急に若返った様に煌く瞳をして、石に刻まれた文字をなぞる。


「うはははっ、文献学者なぞこれだから下らんっ。 ワシは、まだこの様な遺跡が残ると思うて居った。 だが、あの頭でっかち達は、図書館から出ずして否定しよる。 これは面白い、これは面白いぞよっ!」


ウォルターの話に、包帯から見える口を笑ませたKで。


「あったりめぇよ、外に出ずして真偽や有無を確かめられるか。 さぁ、もっと凄い所に行くぞ」


こう伝法な言い方をした彼は、今一に事情が飲み込めて無い他の仲間へ。


「ホラ、早く乗れよ。 この真下に、俺達の先祖が助かった秘密が在る。 ここら数百年を見ても、誰が行ったか解らない伝説の場所に行くんだ」


だが、云われてる誰もが、その言っている意味が解らない。


クラウザーは、円形の石に近付き。


「何処だそら。 カラス、解る様に言え」


だが、少し興奮したウォルターが。


「クラウザー殿、御託は抜きですぞ。 この石が下る場所は、何処でもない。 地下なのじゃ」


「・・」


クラウザーは、ウォルターに急かされた様で。 素直に乗る事にする。


「アラ? あ・・まぁ」


オリヴェッティは、自分の後ろに居たリュリュを捜した。 見つけると、もうKの脇に乗っていた。


魔力によって昇降する魔法陣を刻まれた円盤石。 “魔法床陣”に皆が乗れば、Kは真ん中の出っ張りに足を乗せて踏み込む。 すると、円盤の石は、一同を乗せて落下する様に一気に下へと降り始めたのだ。


「うわわぁ~、凄い凄いっ」


黒い磨かれた石の壁には、四方に光の筋が刻まれていた。 魔法床陣は下っているが、その光の筋が脈打つのは誰でも解る。


Kは、その周りを見て。


「ほほぉ、コイツは珍しい。 超魔法時代に出来上がった形式で、マジックモニュメントの初期型だな。 封印に使う保存遺跡の様式か」


誰も意味が解らない話の様だが、ウォルターだけは違う。


「そうかっ、これがか。 では、超魔法時代の先駆け、魔法遣い達が神話の場所を封印して回ったと推測されているのは・・間違いでは無いのっ?」


「かもな。 神と魔王の干渉を無にし、その両世界の力だけを欲した時代だ。 神や魔王が出現出来るゲートや、降臨の神地なんかは、使えない様に封印したのかもな」


こんな二人の話を前にして、ルヴィアはオリヴェッティに。


「何を言っているのか・・解るか?」


聴かれたオリヴェッティは、困惑の滲む苦笑で。


「おぼろげ・・だけ」


クラウザーは、今一・・。 いや、さっぱりである。


リュリュは、その降りる石の上でステップを踏みながら。


「スゴィ~、すごおいぃ~」


と、何かを喜んでいた。


魔法床陣が降りる最下層まで辿り着くと、降りてきた壁と同じ様相の通路が延びていた。 見た事も無い建造物を見ていると言う顔をするのは、Kとウォルター以外の全員で。 ガウ団長は、おぼろげな知識から。


「此処は丸で、“超魔法時代”に作られた魔法建造物の内部の様だ・・。 文献では挿絵が少しだけ在ったが・・、これは凄い」


オリヴェッティは、学者ながらにその知識が乏しい。 話を聞いて、もう誰も目にする事が出来ないと噂されたものを見ている事が驚愕に近い事だと思う。


「これが、あの失われた異端時代の遺跡? まぁっ、もう全てが失われたと云われていたのに・・」


ガウ団長やオリヴェッティがこんな感じである。 それこそ、何が何か良く解らない他の者は、技術的に今には無いものだと云う事ぐらいしか解らなかった。


だが。


少し長い通路を開ける所まで行く時、一同から言葉が消えた。


“目の島”に在った神殿の奥、神を祭った本殿に、クリスタルらしきものを使った楽園の庭が在ったが。 此処の中心は、ああゆう場所ではなかった。 広くすり鉢状の広間が在るだけだ。 黄土が固く固まった古い地層が地面と成り。 良く見れば、床には何か絵らしきものが刻まれている。 一同が出た場所から、やや右斜め真っ直ぐの奥に、太陽らしき形を描いた古代象徴像が在った。


「・・、はぁ~」


この広間を見渡して深い溜め息を出したKは、その像の方に向かって一歩を踏み出す。


一方のウォルターは、柄にも無くその目に涙を浮かべ。


「こんな・・、嗚呼。 此処に来れた私は・・何と果報者か。 恐れ多い・・、この幸せは恐れ多い」


と、身を震わせ。 たどたどしい足取りで歩き出す。


だが、この場所がどうゆう場所なのか、その意味が解らない者達は取り残される。 いや、オリヴェッティとガウ団長は、この場所を何となく知っている様な気がしていたが。 ルヴィアやメルリーフは、こんな何も無い場所が、どうして“恐れ多い”場所なのか理解出来なかった。


そして・・。


「クソっ」


リュリュと並んで、なだらかな下り坂へと向かうKを見てアンディは、苛立ちを隠さず声に出した。 そして、何を思ったのか、猛然と追い掛ける様に走り出したではないか。


「あっ、アンデル?」


急に走り出したアンディを見て、ニュノニースは何事かと思った。


秘宝を本格的に探し出したこの旅の中で、今までに無い緊張が走ったのはこの直後だった。


Kに追い付いたアンディは、その前に大きく離れて出て。


「おいっ、こんな何も無い所はどうでもイイんだっ!!!!!! 秘宝は何処だっ?! 海旅族が残した、莫大な遺産は何処だっ?!!!」


と、叫び上げたのである。


「・・」


「フム」


歩みを止めたKと、同じリュリュ、ウォルター。 無言のKに対し、ウォルターは何かを察した。 凝らした目をしてKを見るウォルターは、


「我が友よ。 もしかして・・、この若者は最初っから・・・」


すると、Kは静かに。


「あぁ」


と、返す。


「フム、そうか・・そうなのか」


ウォルターは、一人で納得に至った。


一方、Kに怒鳴ったアンディに驚く皆の中で、ガウ団長が。


「アンディっ、止めぬかっ!! お前の魂胆は、途中で見抜かれて居った。 もう止めろ」


と、云うのである。


ガウ団長に云われたアンディは、目を大きく見開いて。


「なんだとぉっ?!! 嘘を言うなっ」


ガウ団長は、急に険しい顔と成り。


「煩いっ!!! アンディっ、アポカリボン島でイヴィルゲートを開こうとした馬鹿は、ワシの息子のイシュラムであろう? 違うかっ?!」


その言葉が出た時、瞬時に衝撃を受けた顔に変わるアンディの様子が、酷くゆっくりと・・ハッキリと皆に解った。


ニュノニースは、余りの話に理解が出来ない。


「ガウさんっ、何を云ってるのよっ!! イシュラムは、魔法学院自治領のエリートで、中央の学院に居る筈じゃないっ」


だが、険しい顔のガウ団長は、その顔をそのままに。


「いやっ、隠れて暗黒の魔法になんぞ興味を持って、アレは謹慎を受けたのだ」


「えっ?」


「謹慎を言い渡されたが、まだ年も変わらぬ三月以上も前の事。 アポカリボン島へワシの許可も無く行けるとするなら、こっそりと漁船で行くか。 用意周到な密航が必要で、ワシの情報網を掻い潜らねば成らん。 そんな事をしてゲートを開くなど、ワシが知る限りではあの馬鹿しか居らぬ。 そのイシュラムと仲が良かったのは、何故かこのアンディよ」


こう云われた後、ニュノニースは何も言えなく成った。


ガウ団長の次男で、秀才肌のイシュラムと云う人物が居た。 元々、本家が学院に住まうガウの一族だが。 この島の見張りを代々で引き受けていた。 本家を弟に任せたガウは、学院に入れた子供達を本家に預け。 奥さんだけを連れ、同じ職の仲間と共にこの街に来た。 彼が引き継ぐまでは、ガウの叔父がその役目をしていたから、世襲に近い慣例で引き継がれたのだ。


さて。 ガウの次男のイシュラムは、才能は在るが欲望が強く。 特に魔術を極める野望と、女性に対して淫らな強い欲求を併せ持っていた。 父親の居る街に来ては、街の歴史などを調べる傍らで。 金で女性を買い遊ぶ為に来ている様な素振りが在ったのだ。 学院の在る方でそれやると、人目につくのが出世に響くとでも思って居たのだろうか。 ダークエルフの血を引くニュノニースは、一度は襲われそうに成ったし。 イシュラムは、彼女を“天性の娼婦”と嘲笑った過去も在る。


しかし、こんな性格のイシュラムだ。 それこそ、例外に当て嵌まらずプライドも高ければ、人を見下す高慢な人物。 なのに、アンディにだけは、不思議なほどに対等の立場を見せていた。 休暇で遊びに来ていた或る時、危ない冒険に借り出されたアンディに助手として島に同行し、モンスターの脅威からアンディを護る様な事もしている。


イシュラムの名前が出た事で、ガウを睨むアンディ。 今までの爽やかな彼とは、今は似せようとしても似合わない。 視線に険が現れ、顔つきに怖さが滲んでいた。


それを見ていたKは、こう切り出した。


「最初な・・。 後ろの団長に、こう言ってみた」


“何で、地元の者を連れて行くんだ? アンディとか、島の薬草などに知識が深い者は居る。 採取は、こっちに任せればいいんじゃないか?”


「・・ってな。 そしてら、地元のハンター達が、在り得ない速さで情報を聞き付けた・・、と。 明らかに、斡旋所で話し合った内容が漏れてると思った。 しかも、道具屋の婆さんがな、野営地の島で俺に愚痴を言うんだ」


“こんなに怖いとは思わなかった。 アンディの云った事は、間違いだらけだ”


「・・と。 その後、あのゲートの開いた島で、突然ハンター達が暴走した。 お前、あのハンターの馬鹿共に何て言って唆したんだ? 俺に、ガウの息子を捜させる為か?」


すると・・。


「フッ・・、あは・ははははは・・。 戦う事だけじゃ無く、そうゆう処も凄いんだ。 困ったなぁ・・、全部バレた」


と、アンディが少し弱く、呆れと疲れた笑顔を見せる。


メルリーフも、ニュノニースも、アンディの事は幼い頃から知っていると思って居たから・・。


「アンディ・・、おま・お前・・・」


「アンデル、それってどうゆう事? な・な・・、何かの間違い・・でしょ?」


と、震えた言葉を漏らす。 凡そで、アンディが仕出かした事が解る二人は、それを理解したくないと云う様子を見せてしまった。 二人の認識していたアンディとは、その事実が合わない。


だが、Kは・・。


「お前の性格からして、祖父さんの死に方に割り切りが良過ぎた。 お前、結構・・祖父さんを嫌いだったろ?」


Kにそう云われたアンディの顔は、他人から見るとどうゆう顔だろうだろうか。 苦痛と云うか、憎しみと云うか、複雑な感情が入り混じっている表情で、今までの彼では無い。


「・・そう云われると、甦るよね。 本当の・・血の繋がった孫と祖父なのにさ。 物心つく頃から、一族の掟を酔って俺に云い散らす・・クソジジィの顔をさ」


「“本当の・・孫”? お前・・、拾われたんじゃないのか?」


すると、食い掛かる様な鋭い睨み目を見せたアンディで。


「“拾われた”よっ! 詰まらないぐらいに、近い血が繋がってるから・・。 俺は、クソジジィの一人息子で在るバカ野郎が作った子供だもんよ」


其処に、ガウ団長が加わり。


「お前のジサマの子供は、女ばかりだっただろうが?」


「フンっ。 若い自分に、クソジジィが遊んだ女の子供さ。 後から知ったクソジジィが、金で俺を引き取ったみたいだね。 家に入らないって逆らった父親を、生意気だと見下してた。 昼間は、冒険者に手を貸したり、島の案内をして回る好々爺みたいなジジィだったけど。 夜に成ると豹変するんだぜぇ? 酒をカッ喰らっては、昔抱いた女がどうの。 街に居る若い女がどうの・・、5・6歳のガキにそんな事が解るかよっ!!!!!!!!!」


怒鳴り散らしたアンディは、一度大きく深呼吸をしてから。


「でも、口答えは許されず、ジジィの跡を継ぐ分身みたいに育てられた俺なんだ」


こう話したアンディに、Kが。


「お前、以前にもアポカリボン島に行った事が在るよな? 最初の話では、上陸した様な素振りで話したのに。 あの島に行った時では、10年以上は誰も入って無いと云った。 ゲートを開こうとした痕を見てから、俺はおぼろげに推理出来た。 お前も、あの時に悪魔が居て驚いたんだと。 だが、お前はその原因を知っていて、あの場をやり過ごす為に嘘を言った・・じゃないかとな」


アンディは、反論の隙が見当たらなかったのだろうか。 渋い感情を顔に浮かべる。


Kは、それで大体読みが合ってると思えたので。


「やはり、お前も関係者だったか・・・。 あの結界が張られた島には、夥しいモンスター居た。 封印された島でモンスターが繁殖したにしては、ちと多過ぎる数だった・・」


そう言うKを睨んで見ているアンディだが、もう解られてると思ったのだろうか。


「ケイさんの推察通りだよ。 あの島には、前はもっとモンスターが少なかったから、上陸もし易かった。 悪魔の門が大昔に開いた事も在る事実は、ウチの秘蔵書に書かれて在った事だから知ってた。 ジジィの様に、冒険者にくっ付いて行くだけの捜し方じゃ、秘宝は見つからないと思ったんでね。 どうにかして、突っ込んだ調査をさせて、その調査に同行して秘宝を盗もうって考えたんだ」


ガウ団長は、そこでモンスターを暴れさせようと、息子にゲートを開かせようとしたのかと思い。


「おま・お前っ、その為にイシュラムをっ?!!」


「違うよ。 悪魔の門を開きたいって云ったのは、イシュラムの方さ。 世界に破滅なんて呼んで、俺に利点なんて無い。 完璧に狂ってたのは、アイツの方だよ」


だが、Kはこうも聞く。


「だが、教えたのは事実だな」


「あぁ。 それは確かだよ」


ガウ団長は、親として聞きたかった。


「アンディ。 お前とイシュラムが其処まで仲良く成れたのは、何が切欠だった? 女か? それとも、その情報かっ?」


此処で初めて、アンディが狡猾な笑みを見せる。


「あぁ・・、それを聞くのね。 フッ、今でも忘れないね、イシュラムとの出会いはさ。 イシュラムがこの街に初めて来た時、夜に女を買う為に街を歩いててさぁ。 酔っ払いとケンカして、魔法で殺してやんの」


ガウ団長は、殺人を犯したと聞いて驚愕の顔と変わり。


「嘘じゃぁぁっ!!!!」


と、大声を出す。


だが、アンディには、その様子が滑稽に見えた。 ガウは父親であるのに、息子の汚い部分を解って居無いと。


「くはは、息子の悪行を知らないのは、その飼い主の親だけとはね。 街の漁師で、飲んだ暮れの男が水死した事在っただろ。 7年ぐらい前だったけ? 港の沖で人がモンスターに食い千切られてたのを、俺が態と発見した様に見せかけたヤツ」


思い当たる出来事は、確かにガウ団長だけでなく。 ニュノニースやメルリーフにも在った。


ガウは、見開いた眼がアンディに焦点が合わないぐらいの衝撃を受け。


「あ・・あの男を? い・イシュ・・イシュラムが・・か?」


「そうだよっ!! 絡まれた上での諍いで押し倒した相手に、追い討ちで魔法だぜぇ? クソジジィの言いつけで酒買いに行った俺が、その現場に居合わせたのさ。 怒って殺した後で、イシュラムのヤツったら慌ててよ。 バレたらどうのこうのってメソメソ泣きやがる。 ま、俺も子供の頃にその野郎に捕まっては、預かった酒代を何度も巻き上げられたからな。 その度に、ソイツにも殴られ蹴られ、戻ればクソジジィに殴られ蹴られだったから。 イシュラムがアイツを殺しても、マジ気分は悪くなかったよ」


冷静に聞くKが、その心情を察し。


「ほう。 お前も仇を晴らせたから、死体の処理に手を貸したって訳か」


何度も頷くアンディ。


「あぁ、ああ、魔法で飛んだ首をモンスターの餌にしちまえば、もう水死だからね。 一回助けただけなのに、イシュラムのバカったらよ・・。 うははははははは、俺の事を親友みたいに思ってさぁ~。 ま、ガウさんの子供だし、魔法も遣えるしね。 仲良くして、損は無いって思った。 イシュラムには、クソジジィを殺す手伝いもして貰ったから、お互い様よ」


聞いている皆は驚き、ニュノニースはもう狂いそうに嘘だと云う。


だが、Kからするなら。


「なぁ~る。 それで解ったゼ。 今まで島には何度も行って気付かなかったジサマが、どうして急に気付けたのか・・。 お前達の共謀か」


アンディは、もう隠す気が無いから、返って愉快に成ってきたのだろうか。 笑みながら。


「そうそう、そうなんだよっ。 文献に在った異常な状況は、先に俺が見つけてたの。 だぁ~けどさぁ、俺一人で秘宝を探しに行ける訳も無いし、クソジジィが生きてたら勝手も出来ないじゃん。 秘宝を探す機会は後回しにしても、もう~あのジジィに扱き使われるのが嫌に為ってさ。 イシュラムと文献を調べるフリして、異変の事を植え付けさせたのさ。 何回も案内に行けば、それは一回ぐらいは異変と符号する天候にも成るよ。 うひひひ、まんまと引っ掛かって死んでやんの」


そう話すアンディは、心の底から愉快だと云わんばかりの顔だった。


Kは、大筋で話が読めてきた。


「そうか。 お前、島の調査を行える力量の冒険者を、ずっと待ってたのか。 だが、中々来ないから、そのイシュラムとか云うガウの息子を利用した訳だ」


「そっ、そそ」


腹を抱えながら、何度もKに指を向けるアンディ。


「はぁ~、おっかしい。 イシュラムのバカ、遂に生け贄を使って暗黒魔法を極めたいとか言い出してさぁ。 仕方ないから、あの悪魔の門が開いた事の在る島を教えてあげたの。 アイツが何か仕出かしたら、絶対に有能な冒険者チームが来るって解ったモンさ。 行方不明に成ってる漁民居たけど、それがイケニエ~。 財宝を取って来る話を持ち掛けてたら、ヒョイヒョイ話に乗って来た使えない漁師のバカ息子達。 多分、島に着いたら、護衛の冒険者と一緒に殺されたんじゃない? 街の外から、人知れず冒険者を連れて来るってイシュラム言ってたしさぁ」


ウォルターは、そのアンディの様子に眉間を抑えた。


「若さと幼き頃の虐待が招く狂気か・・。 嗚呼、何時の時代も、この巡りは消えぬのか」


その、イシュラムの事を喜ぶアンディを見ていたKで。


「お前にとって、俺達は格好の狙い目と云う訳か」


この問いを受けた時、アンディは怖い程に真面目な顔へと豹変する。


「・・そう。 俺の考えた思惑内で収まってくれる人達って、助けられた時に読んだのにさ。 まさか、そっちから島に行きたいなんて云うとは思わなかったケドね。 でも・・でもでもっ、アンタ、アンタが凄過ぎるっ!!!!!!!!」


と、Kを指差すアンディ。 憎しみと怒りが、その双眸に強く孕んでいる。


「フッ。 そりゃ~悪かったな」


余裕を見せるKを睨むアンディは、次にガウを見て。

 

「ガウのジジィっ!!!!! 余計なヒントを与えたのは、テメェだろうがぁっ!!!!! あっ?!!」


一気に裏が明るみとなって、肩を落としたガウであり。 


「・・当たり前だ。 調査だけで良かった今回の航海に、ハンターの馬鹿共が斡旋所に金を回して食い込みを計った。 その御蔭で薬の原料が乏しい薬師や、売り物が少ない婆さんまでが参加を希望してくる。 何かがおかしいと思うたわい」


そして、チラっとKを見ると。


「それをこのケイに云えば、これは裏が在ると。 しかも・・ケイ達は、我々が守ってきた見えぬ物を見せてきた。 今までこの仕事に、何か遣り甲斐が在るのかと問い続けて来たが。 自分でも、この仕事が必要なものなのだと理解が入った・・。 だが、ケイ達を監視せねばと思うた矢先に、今度は悪魔が・・。 挙句には・・、誰かがゲートを開こうとしたと聞いて、閲覧禁止の書物を探してたイシュラムの事を思い出した。 嗚呼、馬鹿息子では無い事を思って居たが・・・」


言葉を弱めたガウ団長。


アンディは、追い撃つ様に言った。


「はっ、祈りも願いも通じなかったねっ。 所詮、ダメな奴は一生ダメな奴なんだ。 イシュラムの奴、自分が新たな魔王に成るって云ってたよ。 地味な仕事で働くアンタが、家族の中でも一番惨めに見えてたってさっ!!!!」


云われたガウ団長は、唇を噛んで拳を握る。 それは、学院を優秀な習得量と速さで卒業したガウが、この出世とは無縁の役職に置かれている事を知り。 誰よりも恥ずかしがった息子、イシュラムの言葉だった。


此処に居合わせたニュノニースは、もうアンディの暴言に我慢が為らない。


「アンデルっ、いい加減にしなさいっ!!! ガウさんが、今まで街の人にしてきた事は、街の人々が知ってる。 偉いとか、出世するとか、そんなんじゃないもっと凄い事をしてきてるっ!!!」


疫病に罹り、ガウに助けられた一人でもあるニュノニース。 なんだかんだと不満を聞いてくれる役人も、ガウが一番だっただろう。 街の住人が、ガウを住人として、統治に携わる役人として受け入れているのは、ガウが人にしてきた事の表れだとも解って居た。


だが、アンディの歪んだ笑みは消えず。


「煩ぇよ、ヤミグロ女。 お前がイシュラムに犯されずに済んでたのは、俺が仲良くしてたからだ。 俺と知り合いじゃなかったら、お前なんかアイツに・・。 いや、他の住人に襲われて売られてただろうゼ。 お前の成長するのを、ウチのジジィですら女として見てたぐらいだからなぁ」


そうニュノニースに云ったアンディは、Kを睨んで。


「もう御託は止めよう。 さぁ、秘宝の在処を教えてよ。 それとも・・」


と、何かを取り出そうとする。


すると、Kが醒めた微笑を口元と目に浮かべ。


「脅しを掛ける為に、爆薬でも出そうってか?」


腰に下げた袋を差し出す前に、中身を云われたアンディは苛立った。


「全くっ、何でそう先々が解るんだよっ!!!!! 一々頭に来るヤロウだっ、コイツを床に叩きつけてやろうかあぁっ?!! えっ?!」


と、袋から紅い菱形のものを取り出す。


それを見たウォルターは、目を丸くさせて。


「魔法爆弾・・か? 強い衝撃で、大爆発を起こす特殊錬金魔法術の産物・・」


その爆弾の威力を知るクラウザーも、また驚き。


「なんて代物を・・、この遺跡が粉々に成る。 我々も一瞬で消し飛ぶぞっ」


嘗て無い緊張が皆の間に走る。


しかし、Kには全くの無縁なものだ。


「アンディ・・」


名前を呼ばれたアンディは、今にもその手に持つ物を叩き付けようかと云う様子で。


「何だっ。 秘宝は何処だっ!!!!!」


と、叫ぶのだが。


Kは、ゆるりとした動きで、奥の象徴像を指差し。


「アレだ。 在る意味、金では値打ちが付けられない秘宝だ」


その普通な言い方は、明らかにアンディの興味を誘った。 しかし、石像を見るには、後ろを振り返る事に成るので、Kを警戒しながらジリジリと半身に変わるアンディ。


「あ・アレ? あんな石像の、何処が秘宝さっ」


その言葉を受けて、軽く俯いて失笑をしたK。


からかわれてると思ったアンディは、


「くっそぉぉぉぉぉぉっ!!! 俺の事をバカにしやがってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!」


と、手に持った紅い石を持ち上げた。


一同が一気に慌てた時。


「祈り・・だ」


と、Kが云う。


持ち上げたアンディの動きが、ピタリと止まった。


全く余裕の様子で、アンディを見るKと。 Kの言葉に動きを止め、怒りで見開いた眼をそのままにするアンディ。 二人の視線が、噛みあった。


「・・意味・解んないんだけど」


と、アンディが云えば。


「なら、説明してやるよ」


と、K。


「ふん。 聴いてやる」


傲慢とさえ感じる姿で、手を下ろすアンディだが。 Kが話す事が、どれほど意味の深いものか。 その試練を受ける事に成る。


「アンディ。 人がこの世界を支配するには、創世記で語られる神話じみた出来事が在った。 神が作り出した人だが、自由を勝手に得ようとした人に、神の長は加護と救いを止めた。 特異な姿なのに、動物と似た生き方しかしない人に、神に代わって救いの手を差し伸べたのは・・悪魔だった。 炎の使い方を始め、言語、芸術、そして・・魔法の大元である基本魔術の教えをしてやった」


この話に、グッと興味や疑問が溢れ出たアンディで。


「へぇ、神様じゃなくて、悪魔がね」


「いや、そんなに特別な事じゃないさ。 神も魔王も、感情が在る。 悪魔は、神に忌み嫌われて魔界に堕とされた、闇・魔に染まった神でしかない。 神は加護を授けるから、人以外の生み出した精霊や亜種人からも慕われる。 だが、悪魔は何時も忌み嫌われて、慕われる事を知らなかった。 だが、神から一時見放された人は、何でも求めるままに教えてくれる悪魔を慕った。 悪魔が欲しがれば、異性を与え。 魔界から出られない悪魔が求めれば、新鮮な血肉や宝石を探し分け与えた。 悪魔を統べる魔王と、神やその生み出した精霊等を統べる神の長がそれに干渉するまで、人と魔は選り良い関係に在ったんだ」


聴いた事の無い話に、アンディは失笑さえ出て。


「は・あははは・・、はぁ?」


そんなアンディを見返すKは、全く問題ないと云う顔だった。


「アンディ。 お前、お前の祖父や父親、そして親友のフリをしてたイシュラムだかか。 神と悪魔に別けたら、悪魔側に近い性格のお前達だが。 それなりに付き合いはしてたろ? 利害が一致したり、持ちつ持たれつが成り立つなら、欲望を助け合って満たし合っていた悪魔と人は、何の可笑しい処も無い。 ・・違うか?」


「・・・」


あまりにもすんなり理解が出来たアンディで、何の疑問も出なかった。 金だ、物だ、上辺の付き合いだの、謂れの悪い付き合いでも、それなり適当な信頼や馴れ合いが在ったりするものである。 そのお互いに助け合う奇妙な関係が成り立っている間は、確かにそうゆう関係の者でも仲が良い。 これには、小難しい理屈は抜きだった。


Kも、裏側を歩いて来た男。 それが解らない彼では無い。 アンディのダンマリと理解と捉えた上で。


「そう。 人もそうだが、偉い奴ほど潔癖で。 統治をする輩ほど、気に入らない事を潰す。 神の長は、それまで精霊の生きる場所だけに豊かな自然を与え、人が入り込むとその場所を移した。 だが、悪魔と自分の生み出した生き物が仲良くするのを見て、怒り狂ったのさ。 悪魔に救いや安らぎを与える生き物を。 何せ、それを作ったのが自分だ。 飼い犬に手を噛まれる感じだったのだろうな」


「なんだそれ。 神様ってのも、結構我儘だね」


「それには、俺も同感だ。 だが、それから手を返し、神が地上の広範囲に豊かさを齎したのは事実。 人が自由を得て、繁栄し出した。 教育と云う形を覚えた人は、豊かな土地に散った。 そう、悪魔を見捨てて・・。 その結果、裏切られたと思った悪魔で、その負の感情を魔王が利用した。 人を唆し、悪魔と交信出来た場所にゲートを開かせた。 魔王は、神の支配するこの大地を、第二の魔界にしようと企んだ。 こうして、遂に悪魔と人の戦いが始まる」


「それこそ、創世記だね」


「あぁ。 新しく書き直された創世記では、人に言葉や火の使い方を教えたのは、神の使いと書き直されているものも在るがな。 だが、どちらにせよ、纏りの無い人が魔王と悪魔の軍勢に勝てる訳が無い。 人は、悪魔の手を逃れ、各地に隠れた。 そして、必死に祈った」


「・・祈ったぁ? 神様にかよ」


Kは、石像を見た。


「そうさ。 此処は、その一つ。 精霊の力が、悪魔の寄せ付けを拒む場所を隠れ家にして。 人は、あんな物を作って・・。 そして、祈った。 助かりたいと、助けて欲しいと、自分を生み出した神にな」


Kのその話を受け、アンディは思わず石像を見た。


「ま・マジかよ。 それで・・、本通りに助かったって? 神様に・・」


こう口走ったアンディは、Kを見て。


「何でだ? 何で神は助けた? 一度は見捨てたし、人間なんか嫌ってたんだろう? それとも、魔王に攻め込まれる要因作ったからってかよっ?!!」


感情的に、そう怒鳴った。 いや、この何も無い場所だからこそ、ポツンと一つだけ在るあの石像が生々しい。 Kの話を聞く内に、アンディも祈る人の幻が見える様だ。 在る意味で可哀想だが、在る意味では自業自得とも云える。 そんな黒白の混ざり合う人と神と悪魔の因果など、らし過ぎて嫌だと思った。


だが・・。 Kは、軽く首を竦めて虚空を見上げると。


「お前の言う通りかもな。 ま、実際に人を助けに来た神々は、神の長ではない。 必死に祈る人の姿に心を打たれた、長の周りに居た神だ」


と、云い。 また、その瞳をアンディの眼に向けて。


「お前も、此処まで生きて来れて、冒険者を続けて来られた裏を返せばさ。 昔の人間じゃないが、好意や善意や腐れ縁なんかに助けられても来ただろうに。 何も、こんな極端な謀なんざしなくても良かった筈では?」


Kの問い掛けを受けたアンディの顔は、少しずつ複雑な感情に歪んで行く。


「・・さい。 うるさいっ。 そんな、慰め要らねぇよっ!!!!!!!!」


「そうか。 なら、自分で後始末を考えろ。 俺達は、俺達の向かう道を行く」


そう言ったKは、石像の方へと歩き出す。


勝手に動かれたアンディは、涙すら浮かぶ目を怒らせ。


「動くなっ!!! 何が自分の道だっ!!! お前こそっ、俺の前に現れた後始末を付けろっ!!!」


しかし、歩みを止める気配の無いKで。


「バ~カ。 俺やオリヴェッティ達を見て、勝手に秘宝の在処が解ると見込んだのは、お前の思い込みだろうが。 大体な、海旅族の国が在ったのは、今の水の国ウオッシュレール、そして魔法学院カクトノーズ、この二つの国の境目で、西側の海に出っ張った諸島と半島からなる無法地帯エグゼンドと。 水の国の周辺地帯だ。 その国を奪ったのが、今のゆる~い国勢で戦争をしない平和国家のモッカグル。 モッカグルとそれこそグルに成ったのが、台地文明興国のオルカカトだ」


一瞬焦りから怒ったアンディだが、それを聴いては認識していた全てが揺らぐ。 在る意味、財宝が在ると思う根幹が揺らいでしまう。


「何だって? それって、もっともっと南の国じゃないかっ?!! 嘘だっ、この島々だって国の一部だった筈だろう?」


アンディのまん前まで来たKは、足を止めて醒めた眼をすると。


「一応は、そうだ。 ・・だがな。 このサニーオクボー諸島は、あくまでも海旅族が航海に当っての基点を持っていた島の一部であり。 後に追われて滅ぼされた場所ってだけだ。 秘宝だの財宝なんてのは、在るとするならもっと下の方だろう」


と、云ってから、向かう石像を見て。


「ま、歴史的観点からするなら、学者でもある俺には・・アレも立派な秘宝だがな」


と、また歩き出す。


その後をスタスタと着いてゆくリュリュが、


「だがなぁ~」


と、Kの真似をして見せ。


「ケイさぁ~ん、僕達もお祈りしよ~よ」


と、追い掛けて行く。


呆気に取られたアンディだが。


「さ、それを渡して貰おうか」


と、魔法爆弾を取り上げられる。


「何す・・」


振り返ると、ガウ団長やクラウザー等に囲まれていた。 ルヴィアとクラウザーが抜刀していて、その刃先が突き付けられている。


「・・ケッ、負けかよ」


力を抜いて、アンディは肩を落す。


メルリーフとニュノニースが、何か云って欲しくて目の前に行くのだが。


「・・」


クラウザーに拘束されるアンディは、二人から視線を逸らし。 その不貞腐れた様な素振りの片隅からは、軽蔑をする様な雰囲気を出していた。 


メルリーフは、自分達の見ていたアンディは幻だったと思う。


「ニース、向こうに行こう」


云われたニュノニースは、メルリーフに抱きつき。


「メル姐さん、こんな事って・・嘘だよね。 うぅ、信じたくないよぉ・・」


と、泣き出した。


オリヴェッティは、石像に向かったKの背を見つめてしまう。


(こんな事が・・これからも当たり前の様に続くのでしょうか。 私が望んだ秘法を探す旅は、今もその呪縛に取り付かれる方々との戦いなのですね…。 ケイさん、貴方は・・どこまで恐ろしい人なのでしょう。 その普通にして居られる貴方は、どれ程の経験を…)


彼を有したチームのリーダーで在るオリヴェッティは、これから先の見えない出来事に身震えが来る。 Kを介して、この旅が続く限りその試練と直面して行かなければ為らないのだから…。

どうも、騎龍です^^


今日は、お昼からの公開ですが。 雨が多くなって、寒暖が出てきましたね。 偏頭痛や腰痛にヤバイ時期がやってきました・・。


さて。 3月1日に次話が間に合うか微妙ですが・・。 出来る限り、掲載の方向で行きたいと思います。


ご愛読、ありがとう御座います^人^

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