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エターナル・ワールド・ストーリー  作者: 蒼雲騎龍
K編
156/222

K特別編 秘宝伝説を追って 第二部 ⑦

K長編・秘宝伝説を追い求めて~オリヴェッティの奉げる詩~第二幕



                    ≪続、最悪の島≫





「だからっ、危険なのは先刻承知の事実だっ。 危険だから止めるなど、言い訳に成らないぞっ」


ハンターの男の一人が、オリヴェッティとルヴィアに怒鳴る。 女相手だからと、やや押し切ろうとする高圧的な態度が有り溢れていた。


「危険にも限度が御座います。 あのケイさんが止めると云う事は、我々が全滅する可能性も在るから仰ってるんです」


オリヴェッティは、冷静に冷静にそう解く。


一方のルヴィアは、少し頭に血が上っている様子で。


「お前達は、大馬鹿だっ!! 財宝や金目の物が目当てなら、我々たけでも島に上陸しているだろうがっ!! 何がお宝だっ、何がズルイだっ、お前達の目玉が眩んでいるだけだろうっ?!! そんなに島に行きたいなら、お前達だけで入れっ!!!」


別のハンターの男は、余りにも綺麗な男女と云えるルヴィアに言われて、生意気だと更に苛立つ。


「何ぉ? 別にお前達に頼んでは居無いっ!!! アンディ達を連れて、あの黒尽くめに合流するまでだっ!!!」


すると、ガウ団長が。


「我儘を言うなっ!! アンディ達は、お前達の希望でワシが雇ったんだっ!!! 協力関係のこっちには命令しても無駄だが、アンディ達の雇い主の名義はワシ。 絶対に行かせんぞっ!!! これは、ワシの絶対命令だっ」


入り口で見守りながら、外に誰も出さない様に見張るクラウザーやビハインツ達。


其処に、ニュノニースが遣ってくる。


「あ、すいません・・。 ガウ様に相談が在るんですけど」


クラウザーは、僧侶の様子を見に行った彼女なので。


「おぉ」


と、道を譲った。


ガウ団長に近付いたニュノニースは、


「ガウ様、大変ですよ」


イライラしていたガウ団長は、強い視線で睨む様にニュノニースを見て。


「どうした?」


「僧侶の方々、気絶し掛けてます。 結界が張って在るのに、暗黒の力が感じられるともう船酔いみたいになって・・」


ガウ団長は、傷などの癒し手がこれでは、益々島の中には踏み込めないと判断。


「いいかっ、結界の外で僧侶が気を失うなど異常だ。 採取で易々と死人を出す訳にもイカンっ。 ケイが戻り次第、この島を離れてン・バロソノに引き返す。 船から勝手に出た者は、警護対象から外れると思えっ」


ガウ団長は、この場にアンディとウォードも居るので。


「アンディ達は、二手に分かれろ。 一手は、甲板。 もう一手は、船の乗り降りをする場所の見張りだ。 誰も島に行かすな、あの島は恐ろし過ぎるっ!!!」


云うガウ団長が必死なのは、何も乗組員や乗客の事を心配している訳では無さそうだ。 本人が、島に恐怖を抱いていると云う雰囲気が覗える。


「チィっ、儲けが無くなる」


「クソっ、宝石の原石一つでも欲しいのによっ!!」


ハンター達は苛立ちを露にして、手下達に威圧をしている。 行けない事が決まったので、明らかに怒りを撒き散らすつもりだろう。


ガウ団長の決断で、一安心のオリヴェッティ。


「ルヴィアさん、私達も甲板で見張りましょう」


「ふぅ・・、解っている」


こう云ったルヴィアだが、ハンター達の横柄横暴の態度を見て。


「全く、眼が眩んだ者とは、こうも人の忠告が耳に入らぬものなのだな。 勝手にしろと思う自分が詰まらぬが、それでも嫌気が差す」


「さ、甲板に」


オリヴェッティ一同が甲板に上がれば、ニュノニースとメルリーフが来て。 ボルグが階段を降りてゆく。


「オリヴェッティ、説得に回ってくれてありがとう」


メルリーフが云うと。


「ホントだわ。 早くこの島から離れたい」


と、隣のニュノニースが言う。


二人と合流したオリヴェッティ達も、島に伸びる桟橋を見張る傍らで思い思いの本音を言い出した。 


さて、此処にKが居たら、何と云っただろうか。


“おいおい、一番危険な輩を見張らんのかよ”


と、でも云っただろうか・・。


ガウ団長が広い板の間から出て、オリヴェッティ達が出た後だ。 あの道具屋の老婆から物を取り上げようとしていたハンターに、小柄で一番年配と見受けれるハンターが近寄る。


「おい。 前に、あの目の前の島で宝石取って来たのは、お前が若い頃に雇った冒険者達だったよな」


「ん? いや、正式には私の主が雇った冒険者達だ」


「ふぅ~ん。 目の前にお宝が在るのかも知れないのに、指を咥えて見てろってのも腹が立つな」


「本当だ。 あの黒尽くめ、絶対に一人で財宝を捜してやがるんだ。 ・・何が遺跡調査だ。 我々を騙す口実としか思えん」


小柄な、中年ももう終わりに差し掛かっているハンターは、相手のハンターに近付き。


(本当にそう思うか? お前が行く気有るなら、こっちも協力出来るゼ)


脅える手下共を見て、小柄なハンターに彼も近付き。


(だが、出口は見張られているだろう?)


すると、小柄なハンターはほくそ笑み。


(任せろ。 それより、俺の合図でな・・)


(ん?)


アンディに“ソリンドル”と呼ばれたのが、老婆を脅していたハンターであるが。 島で一番意地汚いと云われるハンターは、小柄で40半ばも過ぎた様なハンターの“カーズ=トミット”氏。 小柄で皮製のプロテクターなどもする冒険者風体の人物だが、額が油で光り突き出しているし。 鼻が右側だけ削られた様に欠けている。 昔は追い剥ぎだったとか、盗賊だったと噂されるのだ。


このカーズ氏は、何故か甲板にも向かう外通路に出た。 この外通路の手摺りを伝って左右に行けば、階段が在って甲板に上がれる。 その甲板に上がれる階段の手前に、船の反対側に渡れる渡り廊下が在り。 この廊下を渡ってから、左右の“くの字”階段を降りれば、渡し場に繋がる出入り口と成る訳だが。


(おっ、これは都合がイイ)


カーズ氏の視界には、渡り廊下に差し掛かろうとしていたボルグが見えている。 中央デッキの下に行く前の渡り廊下は、ガウ団長にも見られ難い絶好の場所だった。


(へっ、お前達の好きにはさせねぇぞ)


甲板側の階段を覗ったカーズ氏は、オリヴェッティ達の話し声が聴こえて安心した。


「おいっ、ボルグ」


抑えた声で呼ばれたボルグは、背後に振り返った。


「・・? なんだ、・・・アンタか」


ニヤニヤとして近付くカーズ氏は、馴れ馴れしくボルグに近付くと。


「久しぶりだから、話でもしようとおもってな」


「・・俺は・・無い」


片言の様なボルグへ、カーズ氏は張り付く様に成ると。


「カタい事言うなよ。 お前の望み・・、敵えてやろうって話さ」


すると、ボルグは露骨に嫌な顔をして。


「うそ・・だ」


と。


だが、カーズ氏は渡り廊下の手摺に身を預けながら。


「嘘じゃないぜ。 てか、方向を変えようって話さ」


「ほう・・こう?」


「そうだ。 お前は、俺に嫁さんの斡旋を頼んだ。 そうだな?」


「う・・うん」


急に気恥ずかしそうにして、目を泳がせたボルグ。


そう、このボルグ。 若い頃に自分の母親の様な歳の熟女と結婚したのだが、数年前に奥さんが先立った。 まだ30終わりのボルグからするなら、もう一度、今度は若い女性と結婚したいとカーズ氏に見合い相手の斡旋を頼んだ。


ま、見てくれも良くなく、片言の亜種人みたいなボルグだ。 街の方では、相手が見つからず。 カーズ氏が言葉を選んで、それこそ半ば騙して連れて来た醜い娘ですら、ボルグを一目見て怖がり破談。 こうゆう経緯が在る為、ボルグも最近は少しイジけて来ていた。


カーズ氏は、周りを一度見てから。


「前は、お前を受け入れてくれそうな相手を、この俺とも在ろうが探した。 だが、お前の容姿やクセを愛せる相手は、早々には見つからん。 だから、捜さない」


眼を細めるボルグで。


「それ・・約束・・破る」


すると、カーズ氏はニヤつく笑みで。


「違う違う、確実性を取るんだ。 ・・買うんだよ」


「・・・」


結婚相手を買う・・、それは人身売買だ。 犯罪だと思ったボルグは、益々怪しんだ。


「おいおいボルグ、そんな目をするな。 いいか、社会の裏側に回ればな、数万シフォンで身売りをする女が居るんだ。 確かに正当な繋がりじゃないが、絶対に裏切らないし、逃げない嫁だぞ?」


「うそ・・だ。 そんなの・・いない」


すると、溜め息を大袈裟にして。


「はぁ~、お前は何も解っちゃいない。 買うのだって、立派な人助けだぞ」


ボルグは、ジト~っとカーズ氏を見る。 明らかに真偽を探る眼だ。


だが、こんな事で真偽を確かめようとするのが幼稚である。 カーズ氏にすれば、こうだからこのボルグを騙すのに易いと思える訳で。


「いいか、ボルグ。 多額の借金を抱えていたり、家の体裁を繕うにも金の無い貴族なんかには、娘を売ったりするんだぞ? お前、酷い男に買われた女が、どんな酷い目に遭うのか知ってるのか?」


「・・・」


黙って首を左右に振ったボルグ。


「よし、なら実例を挙げよう。 街の顔役で役人の長である魔術師バロッズは、お前でも知ってるだろう?」


「うん・・、街で・・いちばん・・えらい」


「そうだ。 アイツの嫁さん、凄い美人なのは知ってるだろう?」


「うん」


「あの女は、買われてバロッズの嫁に成ったんだ。 だが、バロッズの気性は、周知の事。 毎日、あんな喪服みたいな執事の衣服を着せられてるのは、暴力で痣を見せられないからさ」


「・・・」


カーズ氏の言った話を、直ぐに“嘘だ”と言えなかったボルグ。 彼が本当かもと思う要因が、現実に在った。


街の統括をしている数人の者の一人に、偉ぶったバロッズと云う男が居る。 気性が激しく、人を見下して止まない人物だ。 魔法学院の大臣を歴任した一族の者で、魔力は中々凄いのだが。 それを鼻に掛ける人物である。 彼の奥さんは、街でも一・二番の美人と云われるのだが。 何時も黒い召使いや執事の女性が着る衣服を纏い、“感情”の“かの字”も覗わせない冷血女と評判だった。


「・・ホント・・か?」


ボルグが探る様に問えば。


「おう、ホントだ。 何せ、嫁をヤツに斡旋したのは、誰でも無い俺だからな」


「え?」


「落魄れた貴族の娘でよ。 どーしても金が必要だからって、自分から売りに来たんだゼ」


「・・・」


俯くボルグに、カーズ氏は手を掛け。


「お前の良さは、バカ正直な素直さと優しい所だ。 どうだぁ? 可哀想な女を、一人だけでも買ってみないか? 組織経由だから、逃げる事も自殺も無い。 お前の言う事を聞く、従順な女だぞ」


すると、ボルグは・・。


「・・ない」


良く聞こえなかったカーズ氏は、近寄り。


「あ?」


すると。


「かね・・・ない」


この時、カーズ氏の顔が意味深に歪んだ。 笑みなのだが、悪意が滲んで歪みにしか見えない。


「おし、なら・・・稼ごう。 目の前に、お宝の山が在る」


ボルグは、カーズ氏の顔を見る。


「島だ・・島に行くんだよ。 あの島は、鉱物資源が豊富なんだ。 宝石や純度のたか~い鉱石をみっければ、お前の望みが叶う。 最初に見つけたのは、お前にくれてやるから・・、な」


ボルグは、怪しむ目をそのままに。


「おれを・・騙す気・・・」


「冗談言うな。 お前だけを頼りに、あの強い黒尽くめの居る所まで行きたいんだ。 お前を騙したら、誰が俺達を守る? いいか、ボルグ。 お前一人で島に行ってみろ、アンディ達に怒られたとしても・・だ」


と、カーズ氏は一度周りを見て二人だけなのを確かめてから、また話を続け。


「俺達が無事で戻れば、お前の実力は認められる。 お前は、街で一番の腕っ節だ。 街で一番の勇気在る冒険者と成れば、次からは仕事が選べる。 その気が有るなら、お前がリーダーでチームを作れ。 そうなれば、俺が仕事を回す」


「・・リーダー」


ボルグは、甘い誘惑の声に気持ちが負けた。 閉鎖的な街では、冒険者の出入りが少ない。 殆どが根降ろしの様な地元出身の冒険者達だらけだ。 一応、街でも100人近い冒険者が居るが。 チームを組むのは、数人程度。 アンディやニュノニースの様に、仕事に因って必要な手数を揃えてチームを組むと云うのが殆ど。


正直な処。 その愚直さをバカにされ、殆どチームには縁が無い状態のボルグである。 そんなボルグが、チームのリーダーなど・・。


だが、甘い話を久しぶりに聞くボルグで。 何時もは自分をバカにしているカーズ氏が、謙って対等以下の親しげに話しかけてくれる事が気分良い。


「おれ・・何をすれば?」


すると、カーズ氏は。


「流石、利口なボルグだ。 アンディの様な狡賢い奴じゃ、その利口さは無い」


と、話をし出した。




                         ★





誰もが予測をしない事が・・起こった。


「止めっ、イヤだぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!」


船の後尾か、男の悲鳴が上がったのである。


「何事だっ?!」


操舵室デッキで悲鳴を聞いたガウ団長は、大慌てで出入り口のドアを開いた。 船の前後に渡される渡り廊下にも繋がるデッキから出たガウ団長は、何事かと慌てて叫び声のする後尾に向かうオリヴェッティ達を見た。


(彼等に任せるか)


非常に嫌な予感を感じるガウ団長は、渡り廊下の方まで出ると。


「何が在ったか、教えてくれーーーっ」


と、大声を出す。


すると・・。


「人が海に落ちましたーーーーっ!!!!」


アンディの声で、そう聴こえた。


(何だってぇぇっ?!!!!)


このサニー・オクボー諸島の海域は、鮫やカマスなどのモンスターが多い。 人の臭いが海に流れれば、その臭いを辿って、様々なモンスターが来るだろう。 結界の力は、主に海面に働いている。 力の波動を嫌って、向こうからこの近場に来る事は無いが。 人が落ちたと成れば、それは違う。


「早く助けろっ!!! 海の中もモンスターが・・」


と、云う処で。


「ぎぃ・や゛ぁーーーーーーーーっ!!!!!!!!」


やや不規則な発音ながら、先程の悲鳴と似た男の声がたぎる。


渡り廊下で立ち止まろうとしたガウ団長だが、その声にもう身体が動いてしまった。 板の間への入り口も在る、甲板の前後に行ける外通路を右に曲がった。


「一体なにがっ?!!」


と、口走ったガウ団長だが。


「チョットっ」


板の間の部屋の出入り口から、あの道具屋の老婆が出てきていた。


「あぁ、何が在ったんか?」


ガウ団長が問えば、老婆はもう脅えた様子で。


「大変だよぉぉ。 ハンターのバカ共、手下を一人殺すって連れてったぁっ」


と、甲板後尾に指を向ける。


ガウ団長は、老婆の胸元が妙に乱れている上に、脅え方が違うと思い。


「何か在ったのか?」


老婆は、板の間の彼方此方で蹲る薬師を見てから、ガウ団長を見て、


「こ・声を出すなって・・脅された」


ガウ団長は、


(まさかっ?!)


と、驚愕に近い顔をした。


其処へ、大変な慌てようでオリヴェッティが来て。


「団長さんっ、大変ですわっ!! ハンターさんの手下の方が一人、モンスターに食べられてしまいましたのっ!! それから、ウォードさんが頭から血を流して倒れてましたっ!!」


「あのバカ共がぁっ!!!!!!!」


ガウ団長は、振り返るままに甲板の船首へと走る。


後からオリヴェッティに追い付く仲間と、ウォードを抱き抱えて居るビハンイツとメルリーフも通りに見えた。


「イヤッホーーーーっ!!! 野郎共っ、お宝を探せっ!!!」


その声を聞いたガウ団長は、見るまでもなくハンターの年長者カーズだと解った。


船首に飛びつくガウ団長は、島に入って茂みに消えるハンター達とその手下を見る。 桟橋から島に入った直ぐ其処では、ボルグが猿の様なモンスターと戦っていた。


「嗚呼っ、何て事っ」


遅れて見たオリヴェッティは、茂みの中から飛び出してくる大きな昆虫のモンスターが、誰かに飛び掛って殺す所を見た。


「オリヴェッティっ!!」


「どうなってるっ?!」


ルヴィアとクラウザーが来るのだが、オリヴェッティは直ぐに皆を見て。


「島の入り口に居る方々を助けますっ!!! ウォードさんは、ガウ団長に預けましょうっ」


「くっ、面倒な事をしよって・・」


と、剣を抜くクラウザー。


「全くだっ!!」


と、踵を返すルヴィアだが・・。


「いいっ!!!! 助けるなっ!!」


その場に居る全員を立ち止まらせる言葉が、ガウ団長の声で飛んだ。


「え?」


「今、何と?!」


走り出すオリヴェッティとルヴィアが声を出して振り返り。 クラウザーも非情の声を聞いて立ち止まる。


「ねっ、いくの?」


飛ぶリュリュと、飛行魔法の掛かるカバンに乗るウォルターが、船首の外に出て来た。


だが、ガウ団長は怒りに染まる顔を皆に向け。


「助けなくていいっ!!! お前達やアンディに怪我されたら、それこそ困るっ!!! 明日に行く島へと調査に行くのが、今回の目的だった。 街に必要な薬草などを採る為にな」


この話の間にも、悲鳴や助けを呼ぶ声を島から聞こえる。 人命が第一だと思うオリヴェッティは、走り出したい気持ちを態勢に表しながら。


「で・ですがっ」


だが、彼女の声を聞いても、ガウ団長の気持ちが揺らぐ事は無い。


「う゛ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!!!」


その間近で聴こえた絶命の声は耳慣れた声なのか、アンディやニュノニースが桟橋に出ていた。


「ボルグさんっ!!!」


「あの声はボルグさんだよっ!!!」


と、助けに走る二人。


だが、ガウ団長は、


「アンディっ!!! 行くことは許さんぞっ!!!」


と、船から身を乗り出し、眼下を行こうとしたアンディを止める。


大慌てで焦るアンディは、島の方に指を指し。


「でもっ、ボルグさんがぁっ!!!!!」


「喧しいっ!!! 勝手に行ったバカを助けに、お前達は死ぬつもりかっ!!!!!!!」


激しいガウ団長の声で、アンディとニュノニースが島の方を見た。 ボルグは、あのクラウザーも脅えた猿のモンスターに咬まれてしまっていた。 首を咬まれ、もう何の反応もしないボルグで。 茂みの中でざわめくモンスターが、その血の臭いを嗅いで飛び出して来る。


「あ・・ボルグさん」


「いやっ」


あの腕っ節は強いボルグが、簡単にモンスターへと食われる。


ニュノニースは顔を背け、手で覆った。 


仲間がモンスターに引き裂かれて行く光景を遠目にして、アンディは何も出来ずに立ち尽くす。


「アンディ、上に上がって来いっ。 此処は、あのケイの様な者でないと入れない。 お前達では、助ける処じゃないぞっ」


この時、島の茂みの先を見つめるオリヴェッティは、絶望的な状況だと両手で顔を覆った。


船に降りるリュリュは、


「ダメだぁ~。 もう人のオーラを感じない・・」


と、云う。


そのやり取りや各々の様子から、クラウザーやルヴィアも絶望的と判断する。


ウォルターも宙で俯き、首を左右に振ると。


「情けなや。 欲が眩んで、こうも暴走するとはな・・・」




Kが戻ったのは、それから少ししてだ。




もう見張る必要が無くなった。 ハンター3人と手下が全て出て行ったからだ。


島から聴こえてくるモンスターの唸り声を聴きたくないオリヴェッティ達は、アンディ達と一緒に板の間に居た。


「うっ、ボルグさんが・・」


「うんうん、仕方ないよ」


泣き出すニュノニースをあやし、彼女の背中を鎧越しにさするアンディが居て。


「失態だ・・。 甲板を見張ればいいと、見晴らしの利く船首に居たのが悪かった」


と、落ち込むのはメルリーフ。 ハンターのカーズとボルグは、色々と悪友の様な処が有ると知っていた。 それだに、この事態は悔しさが残る。


死人を大勢出したと云う事実に、敗北感と悲しみに支配された冒険者達。 ガウ団長も、デッキに閉じこもったままの時に、だ。


「おい、何で島の入り口で人が死んでるんだ?」


板の間に、Kの声がした。


座り込んでいたオリヴェッティが立ち上がろうとする前に、彼を感じて立ち上がったリュリュがKに向かう。


「ケイさ~ん」


どこか声のトーンの張りが弱いリュリュが、Kの前に。


「リュリュ、勝手に誰かが出たのか」


と、Kが問えば。 リュリュは頷くのみ。


「そうか・・。 ガウのオッサンと話して来る。 もう出港だ、そのままで居ろ」


Kは、踵を返してその場から消えた。

どうも、騎龍です^^


鼻水と胃腸の調子が悪く、どうもギリギリで掲載してます。 インフルエンザとかで貰える抗生物質も、意外と怖いものですね。


ご愛読、有難う御座います^人^

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