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エターナル・ワールド・ストーリー  作者: 蒼雲騎龍
K編
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K特別編 セカンド 8

K特別編:理由





                      エピローグ




                      理由と真実





Kとステュアート達は、仕事の終了を祝って市内の安い居酒屋風の飲食店に夕方から入り。 テーブル席を借りて打ち上げをしていた。


「ん~。 なんかー、なんかーね。 久々にまともに飯を食う気分だぜ・・・」


Kが、いい加減な言い方で、ジャガイモの刻み揚げをポリポリ食べながらしみじみ言う。


セシルは、ビールジョッキ片手に。


「アンタ、一体何をしてたの? あの聖騎士様の・・え~、ジュリア様とかさ~。 凄く親しそうだったじゃない・・・」


と、言って。 “ウンウン”頷いている復活した男二人を他所に、急に眼を細めて。


「まさか・・・アンタ・・、あの美人を・・何かしちゃったんじゃ~ないでしょうね?」


エルレーンとオーファーが、飲み掛けたビールグラスを止め。


ステュアートとアンジェラは、顔を真っ赤に染めた。


Kは、軽く前髪を弄り。


「ま、深い事情はご想像にお任せ~・・・」


と、言って。 その場の全員を蒼褪めさせた後で。


「って、するか。 高嶺のオハナ~だろうが。 公爵家当主だぞ、ジュリアは」


と、塩茹でされたタコの足を千切り、ワインから出来た酢のドレッシングを着けて口に運んだ。


「ハフ~、ハフ~・・・、冗談を言わないでよっ!!!」


セシルは、一気に上昇したエロスのボルテージを怒り変えて吐き出す。


ステュアートは、まだ分けていない金袋を脇に見て。


「でも・・・、何で僕達のチームだけ報酬が・・・3倍なんでしょうね・・」


Kは、サラリと果汁の入ったグラスを片手に。


「俺が、ボディ~で稼いだ分も入ってるからな~」


また、全員がエロスの妄想に突っ走る。


漸く、一同が揃い。 世間話や、思い出話に現を抜かし。 夕日は落ちて、夜に変わった。


店の中は、集まった住人や冒険者などの活気に溢れ。 腹も満たされて、ステュアートが勘定を全て払う頃には、星空が美しかった。


「フウ~、食ったぁ~」


背伸びするセシル。


Kは、デカイ銃を背負うセシルを見て。


「お前・・・また悪化したな・・・大食い病・・」


セシルは、キィッっと睨み返し。


「パワーアップって言って欲しいわっ!!!」


オーファーとKは、並んで静かに手を左右に振っていた。


所が。


ブラブラと夜の繁華街である通りを南下して、宿を探していると。 前から、フィリアーナの刺繍を胸に見せる僧兵役人が、数人の塊で橋の下のトンネル街路を走っている。


エルレーンは、それを見て。


「や~ね~、まだ何か騒動在るのかしら・・」


Kも、力の抜ける眼で。


「まぁ~、ジュリア達のやってる一件は、年内は忙しく掛かると思うぜ。 何せ、30年前に在った不正とか、今更に調べてるからなぁ~」


オーファーは、生じ自分の父親が大臣なだけに。


「全く、偉くなっても悪い事してはな。 ウチの父上も大丈夫かどうか・・」


と、呟く時。


僧兵役人が、ステュアート達を見て。


「あっ、居たぞっ!!!!」


と、指を指す。


Kは、眼を細め。


「いや~ん・・・な、感じ?」


先頭に立つステュアートは、理解に達せず。


「アレ、僕達の後ろ?」


と、マヌケに振り向いた。


僧兵役人は、急ぎ足でステュアート達を囲む様に向かってきた。


そして、ステュアート達と対面するや。


「包帯の男、我々と一緒に来て貰おうか」


Kは、ポカ~ンと。


「ワラス・・・ですか?」


と、方言の様な言い方で自分を指差す。


ステュアート達が、驚いてKを見る時。 息切れしそうな呼吸をした僧兵役人の一人が頷き。


「ブルーローズ様が・・おっ・・お呼びだ・・。 御主に、即刻のはっ・話が在ると・・」


Kは、ジュリアが緊急の用も無く職権乱用する女とは思って居ない。 突発的に、何かが起こったと考えるのが自然と。


「解った。 俺が、直に行くっ」


緊張した顔のステュアート達を見るKは、


「明日、斡旋所にでも居てくれ。 今夜は、ちと戻らないかもしれない」


ステュアートは、直ぐに頷いて。


「手伝う事が在るなら、幾らでも手伝います」


「ああ、解った」


Kは、直ぐにジュリアの屋敷に向かった。 一々僧兵役人と行ってられないので、単身で向かう。


夜も更け始めた頃。 Kは、ブルーローズ家の庭先の正門前でオロオロしている執事を闇夜の中で見つけた。


(あらら・・どうしたよ)


これは、徒事ではないとKは老人に駆け寄った。


「おい、どうした?」


Kに声を掛けられて、老執事はハッとして歩み寄って来たKを見て。


「あ・・あああ、たっ大変なんだっ!!! ジュ・・ジュリア様がっ!!!」


この執事の案内で、教会風の屋敷の本館に近付いたKの耳には、何者かの叫び声が何処からか聞こえて来た。


「なんだ、誰か叫んでいるのか?」


逸早く気付いたKに、執事の老人は歩みを止めて向き。


「ジュリア様です・・。 夕方、レイチェル様とお戻りに成られるや否や、私共の古い使用人に狂わんばかりに同じお尋ねを為さるのですっ」


「・・・何を?」


Kの見る執事はかなり狼狽している、非常に困らせた嘆きの滲む顔色。


「先代様の・・・事を」


(まさか・・)


その話に、Kはピンと来た。 いや、ジュリアがそんなに狂乱する事と云うなら、一つしか無かった。


(チィ・・・ヴァイオレットめ。 ・・・嫉妬・・・か)


流石のKも、人の心は自由に出来ない。


「爺さん、ジュリアの居る場所に案内してくれ。 それから、俺とジュリアの話し合いが終わるまで、誰も部屋に近づけるな」


こうして、案内されたのは、ジュリアの両親が住んでいた二階の一室だ。 廊下を行けば、ロザリアや泣いてジュリアを心配するレイチェルが、礼服の使用人やメイド達と共に部屋のドアを叩いてジュリアの心配を訴えていた。


ジュリアは、


「父上っ!!! 私が何を・・何をしたのですっ!!!!! あああああ・・・兄と父上が・・私の何の犠牲に成ったのですかっ?!!!!! どうして・・・どうして・・・私の何があああ・・・・」


と、狂気して泣き叫び。 すすり泣いては、もうおかしく成り掛けた声を発していた。


「おおお・・・ケイ殿・・」


ロザリアが気付いた。


頷きながら廊下を歩んで、Kはレイチェルやメイド達を見る。 部屋の前に来たKは、執事に頷きを見せて。


「ジュリアっ、俺だ。 どうした? みんな心配してるぞ」


と、声を。


すると、部屋の中を何かが転げ回る音がして。


「ケイっ・・本当にケイ・・お主かっ?!!!」


ややハスキーな大人の声をしたジュリアの美声が、叫び過ぎて枯れ声の様に・・。


Kは、レイチェルやロザリアに。


「後は、俺が引き受けた。 皆、少し外してくれ・・。 ジュリアの為に・・」


レイチェルは、そんな事は聞き入れられないと言った顔だが。 執事の老人に抱えられ、メイド達と共に下に連れて行かれる。


Kは、皆が居なくなるのを見ながら。


「人を遠ざけて、中に入る。 鍵を、開けてくれ」


ペタペタと床を何かが這う音がして・・・鍵が・・・開いた。


(ヴァイオレットのバカが。 だが、ジュリアは其処まで弱くは無い・・)


と、想いながら、人気の消えた廊下上で、扉を開いて中に入った。


「・・・ケ・・ケイ・・」


部屋に入った目の前の床に、上着などを緩めて無防備な美女が涙で濡れた顔を呆けさせて居る。 上から見下ろすK。 ジュリアはもう何かに狂ってしまったかのように暴れたと推察出来た。 白いシルクのYシャツのボタンが千切れ飛び、ジュリアの胸が露になっていたのである。


ドアを閉め、鍵を掛け、Kはゆっくりとした足取りでジュリアの脇に屈み。


「風邪引くぞ・・」


と、肌蹴たシャツを直して胸を隠した。 着痩せするジュリアの身体は、意外なまでに括れと出っ張りのバランスが際立つ素晴らしいものだった。


(ナルホド・・・マリックとか言うマルフェイスの息子も狂うわな・・)


納得しながら、床に放置出来ないと思ってジュリアを抱き抱えたK。


「ケイ・・・ケイっ!!!!」


座らせようと抱えたジュリアが、Kの腕の中にしがみ付く。


「ふう・・・。 ヴァイオレットに何か言われたか・・」


「あう・・あああ・・・わ・・わ・妾が・・父と・あ・兄を・・・殺したと・・。 わ・妾が犠牲に成れば・・・父は・・父は失脚しなかったと・・」


ジュリアを抱き抱えたまま、Kは赤いシルクの上掛けの掛かるダブルベットに腰を降ろした。 恐らく、ジュリアの両親が使っていた物だろう。 屋根も付いた、帳の掛けられるベットだ。


泣き啜るジュリアを抱えて、Kは首元にジュリアの頭を寄せて身体を擦ると。


「これから言う事は、・・・君の心に仕舞っておきな。 誰も聞いたって、辛いだけで・・聞く価値も無い事実だ」


ギュッとケイにしがみ付くジュリアは、震えながら頷く。 あの高潔さも、鋭い気迫も削げたジュリアは、気品溢れる只の美女だ。 恐らく、こんなジュリアを眼にしたのはKや両親ぐらいな者だけだろう・・・。




         全ては、あのマルフェイスがKに斬られる直前だ。


マルフェイスが、Kを睨んで鬼気迫る顔で叫んだ。


「ああっ!!! したともっ、正義の告発さっ!!!!! 何ぞ文句でも有るかっ?!!!!」


Kは、ジュリアの父親が総括を勤めていた頃の会計帳簿が挟まった封印文書を指差し。


「マルフェイス、証拠は此処にあるぞ。 お前、自分の罪を擦り付けたな」


ヴァイオレットが、Kを見て。


マルフェイスが、ギョッとした眼をした。


Kは、またマルフェイスに身を前のめりに近づけて、眼を睨みながら。


「きったないね。 この、証拠に提出された会計帳簿。 見れば、総括長官の印が入ってるが、紙の上の帳簿名が、“財務部”に成ってやがる・・。 裁判官でも抱き込んで、ゴリ押しで総務部の会計帳簿にしやがったろ? あぁ? マルフェイスさんよ」


ヴァイオレットは、驚いて封印文書に齧り付いた。 確かに青い文字で、一番上の左端に“財務部”の文字が入っている。


「こ・・・これは・・」


驚いてマルフェイスに向くヴァイオレット。


Kは、ヴァイオレットの持つ文書を受け取り。


「いっか、この裁判書類の書かれた紙の上には、裁判を開いた法務部の文字と部課を現す紋章が入ってる。 どの国でも、膨大な書類が整理出来る様に。 必ず、こうゆう風に識別出来る形が取られてる。 なのに、この書類の中に残る証拠提出品の記録紙は、不正をした筈の総括部ではなく。 何故かマルフェイスの居た財務部の紙が使われている」


穴を突かれたマルフェイスは、慌てて躍起に変わり。


「そっ、それがどうしたっ!!! 書く紙を間違えただけでは無いかっ!!!」


しかしKは、言い掛かり染みたマルフェイスを見下ろして笑いが出る。


「フッ、阿呆。 此処に、お前が発見に至る経緯が書かれてるじゃないか。 お前は、スタウナー氏が不正に資金を流用しているのを内部告発で知り。 役人数名と共に総括長官執務室に入った。 そして、長官の机の引き出しを見たときに、表に“総括部隠封”と書かれた総括部の帳簿用紙の一冊を見つけたと・・・」


「あ・・・」


マルフェイスは、ハッと顔が青く成る。


Kは、書かれた調書書類の文章を見て。


「お気づきでか? 総括部に配布された専用の帳簿用紙の一枚を切って、それが財務の帳簿の一枚だなんて在り得ない。 魔法による自動書記の文字が間違うなんて、在り得ない。 だって、別々の人物が、別々の場所で、これを作るんだろう? 複製を禁じる為に? もし、魔法で掛ける文字を間違えたのなら、同じ帳簿の中に在った仮初の会計を記した帳簿用紙も、“財務”と成っていなければ成らないのに。 こっちは、ハッキリと“総括”と書かれてる。 こんなの、しっかり見てれば子供でも解る。 裁判官や捜査する役人が何人も居て判らないなんて、不正があったとしか思えない」


と、書類の表面を指で弾いた。


マルフェイスの焦った顔が、Kとは逆の方向に向いた。 母親のメリッサと一緒に、権力で秘密裏に関係者を脅迫して抱き込んだのだ。  


Kは、封印文書を机に戻し。


「お前、執拗にジュリアと自分の息子の結婚を押し通そうとしてたらしいな。 狙いは、お前の息子を行く行くは教皇王にして、お前が後ろで糸を引いてマリオネットにしたかったとかか? 公爵家筆頭のジュリアの家だ。 下爵前に結婚出来れば、爵位統合で公爵にお前が・・・いや、マリックが成れる可能性が出てくる。 更に、おまえさんが総括をしているんだものな。 エロールロバンナを失脚させれば、夢物語とも言えない現実味を佩びた事だ。 ま~ったく、お腹が黒いよ。 お前」


「うぐ・・・な・・何で・・・」


マルフェイスは、腹の中を全て読まれている様でKが怖くなった。


「お前の性格だもの。 母親は、教皇女王で公爵家なのに。 お前は、偽りの男爵家だ。 何時までもそのままでは居られない。 爵位整理でも起きれば、偽りがバレる事もある。 そうなる前に、何処かと縁を結ぶ必要性が出るだろう。 だが、お前もジュリアの父親のスタウナー氏を失脚させて迫るとは、随分と悪知恵が働くな」


其処で、途端にマルフェイスは狂った様に、湧き上がる様に笑い出す。 マルフェイスの心の箍が外れたのだ。


当時、政治の舞台での総括長官であるジュリアの父親の信頼は、微妙な均衡状態に在った。 現教皇女王メッリサでは無く、まだ若きエロールロバンナや他の公爵と縁が深かったからだ。


だが、メッリサは事も在ろうか・・。 幼い頃から美しさの覗けるジュリアを欲していた。 そう、行く行くは自分の傍に侍らせる為に・・。 父親のスタウナーは、まだ4・5歳の我が娘を守る為にメリッサとは距離を置いていた。 


実際、その餌食に見初められた貴族の若き娘や美男はジュリアだけでは無い。 中には、爵位を上げる為の奉げ者として、メリッサの元に献上された者も居たのである。


だが。 マルフェイスが国に仕官し、息子を思うメリッサは、なんとまだ年端も行かぬジュリアをマルフェイスの嫁に迎えたいとスタウナーに迫った。 公爵家筆頭の家柄と、ジュリアを両方手に入れようと画策したのである。


そして、其処に起こるのがエリザベートの事件だ。


メリッサとマルフェイスは、スタウナーの息子のハインリッヒの命を助けて、容疑を消すためにジュリアを要求。 その事を、スタウナーは相談する相手が居らずに、獄中の息子に教えてしまった。


そう・・。 ジュリアの兄のハインリッヒの自殺は、身の潔白を証明するに合わせて、ジュリアを護る為のものだったらしい。


ハインリッヒの自殺を受けて、メリッサとマルフェイスは脅しの相手が居なくなったのを怒り。 今度は、母子で秘かに帳簿を誤魔化して遊興費を捻出していたのを、スタウナーにおっ被せると云う計画に向かった。


それでも、父親のスタウナーにしてみれば、自分が殺した様な息子の死を無駄にしてジュリアを差し出す訳に行かない。 公爵家の意地を腹に、あえてその罪を被ったのである。 スタウナーは、メリッサの子供がマルフェイスと知らされて、メリッサの権力を知るが故に、濡れ衣を払拭する事など出来ないと悟った。


だが、総括の解任を言われる為に、メリッサとマルフェイスの並ぶ場に呼び出されて。 ジュリアの人質を悔やんで居らぬかと、質問された時だ。 ジュリアの父親は、敢然と胸を張り、こう言ったらしい。


「メッリサ様、そして、マルフェイス殿よ。 この長きに渡る権威政治は、我が国の政治を腐らせて来た。 だが、その政治も、何れは破綻しよう。 お前達にジュリアや、高貴な我が家の名前を差し出すなど言語道断。 ジュリアは、新しい政治の動きに働く者と成ろう。 その夢の為にも、今の我が家の最後の宝をくれてやる訳には絶対にゆかんっ!!」


これに、メリッサが憎らしき相手を見る顔で。


「フンっ、ならばその宝ごと貶めてやるまでよ。 次の爵位整理で、ブルーローズの家は只の平民に堕ちようぞっ!!!!」 


「それがどうした事か。 ブルーローズ家の家紋は、現世に在らざる、神秘の青い薔薇。 その意味は、愛と正義を抱く者の心にだけ咲くと謳われた青い薔薇だ。 例え爵位を失うとも、ジュリアに学ばせた剣は正義の剣っ!!! ジュリアの心は、決して曇りはしないだろうっ!!! いつか・・いつかは、新しき政治の助けをするっ!!!! その寝首、何時かはジュリアの血筋が断ち切ってくれるわっ!!!」


マルフェイスの目の前で、メリッサとスタウナーは決裂の別れを見せた。


マルフェイスの無念は、ジュリアを手に入れられず。 そして、ブルーロズの名前を手に入れられなかった事。 本来なら、マルフェイスがブルーロズの名前を告ぎ、マルフェイスがメリッサの跡を継ぐことを望んだメリッサとマルフェイスだった。


マルフェイスは、未だにジュリアに対して偏執的な愛着を隠し持っていた。 その異常な愛情が捻じ曲がり。 今尚も、ジュリアの家を滅ぼそうと執念深く画策を続けて来たのだ。


あの牢屋の中で、Kとヴァイオレットに向かって。 ジュリアを、ブルーローズの家を手に入れたいと願う欲望を大声で喚き。 死んだジュリアの兄と父親を、異常な高笑いで罵り、罵倒するマルフェイスの顔は、正しく悪魔だった。


憎しみの権化と化したマルフェイスは、Kやヴァイオレットを見て叫んだ。


「俺は・・俺は公爵家の縁の者だっ!!!!! この様な無様な姿にさせよってからにっ。 ええい・・縄を解けぇぇぇっ!!!!!」


その時。 Kが、座っていた椅子から姿を消す。


ヴァイオレットは、突然にマルフェイスの頭の向こう側にKが見えて驚いた。


そして、マルフェイスは首を斬り飛ばされて死んでしまったのだ・・・。



            あの時、全てにKが幕を下ろしたのである



全てを聞いて、ジュリアには涙しかなかった。 父親と兄が、事件の裏側で政略結婚を拒んで居たとは思っても見なかった。


「あああ・・・兄上・・・父上・・・どうして・・どうして・・わ・妾を・・・」


泣き叫ぶジュリアを抱きしめるKは。


「君の父も、兄も、全てを知ってしまった。 あの時に君を犠牲にしようとも、後に訪れるのはブルーローズの家がマルフェイスのモノに成り。 この家は汚されて、破滅させられる現実。 君の父親は、それを深く理解していた。 だから、爵位すらも投げ出す気になったのさ。 そして、君をマルフェイスとメリッサの破滅の欲望から遠ざける為に、全てを胸に仕舞ったのさ」


「うう・・・父うえ・・・・・」


ジュリアの爪が、ギュッとKの服に食い込む。 悔しくて、可哀想で、堪え切れない想いが心に噴出した。 もう、余りの衝撃で、心が粉々に砕け散りそうだった・・・。


だが・・・。


「ジュリア・・家は、人が居てこそ家だ。 君を失って、家を守っても。 根絶やしに成るだけだ。 だが、君を護れば、君が子供を生めば、人は続く。 人が続く場所が、家に成る。 君は、知らずと父親の望みを叶えてた。 君の生き方に、何一つの間違いも無い。 君の生き方は、父親と自決した兄の心を汲んでいたのさ・・」 


「ケイ・・・」


ジュリアは、自分の壊れそうな心を繋ぎ止める言葉をくれる男を見上げた。 包帯の隙間から覗ける瞳は、何処までも聡明な強き優しさを湛える。


「ああ・・・何で・・・何で貴方が・・・運命なの・・・」


この出会いは、ジュリアには到底理解の出来ないものだ。


Kは、薄く微笑み。


「お疲れさん・・・・、そしてこれかも、生きろ。 君の生きた道が、この家の未来への道だ」


ジュリアは、Kにしがみ付いた。


「お願い・・・お願いだから・・・今夜だけは・・消えないで・・・」


ジュリアの心に湧いた、全身全霊の願いの迸り・・。


Kは、静かに。


「解った・・」




                   そして、2日後



ジュリアは、レイチェルを伴い登庁した。 同じ仲間の聖騎士や、役人に挨拶をされても顔に陰りは微塵も無かった。


そして、その日の夕方。


ジュリアが、書類を届けにヴァイオレットの元へ。


(あら・・・。 変わり無いわね)


ヴァイオレットが見るジュリアは、2日前と変わりが無かった。


書類に目を通し終えたヴァイオレットは、OKを出してから。


「ジュリア殿、随分と迷われたであろうな」


嫌味を、遠まわしに言ったのだが・・。


書類を受け取り、踵を返したジュリアは歩いてドア前にて。 柔らかく微笑む横顔をヴァイオレットに見せ。


「いえ。 妾にも、慰めてくれる男が居ます故に」


「?!!!」


ヴァイオレットは、ギョッとするしかなかった・・。


・・・。


その頃、Kが戻ってまた飲食店で飲み食いするステュアート一同。


セシルは、何も起こった事を話してくれないKを睨み。


「ずるい~、ズルスケ包帯ヤロ~っ」


皆、興味津々なのだが。 Kは、何も話さない。


「いいんだよ。 関係無い事なんだからな~」


と、枝豆を齧るKは、内心に。


(ヴァイオレットの奴、今頃キレてるだろうな・・。 全く、女はどれも怖い怖いだねぇ・・・)




                     Fin

どうも、騎龍です^^


誰の主人公と決まっていなかったストーリーソースを、強引にK編に製作した今回ですが。 ま~、ギリギリ話になってるかな~と思っております^^;


次回からは、新キャラクターでのお話に成ります^^


世界観として、引き出しから出しているのは都市部中心で、いずれは地方都市のお話なども出して、広い世界を隅々までお伝え出来たら嬉しいかな~っと思っております^^


では、次話まで数日頂きます~^^


ご愛読、ありがとうございます^人^

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