表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々の依頼、面倒なんですけどっ!  作者: はなを
第4章 人材
93/172

アドバイザーになるみたいです

領地を空間拡張した2日後、馬車にて船乗りたちがクーラの街へやってきたのはお昼前だった。執事長のウィリアムは彼らを船乗り男棟へと案内し、お昼ご飯後は自由にして貰っている。そして船長のチャドと副船長のカーディスはハジメの家の応接室で会っていた。


「あの・・・・、こっちが副船長を・・・していた・・・・カーディスです」


と相変わらずの小声でカーディスを紹介した。彼はため息を付くと


「初めまして、船長を補佐しておりましたカーディスと申します。以後は私がハジメ様の言付けを仲介させて頂きます。船長は昔からこうなので」


と言う。その言葉にチャドは安堵の表情を浮かべる。それを見た彼はため息をもう一度付いた。


「よろしくお願いします。私はハジメ、そして専属執事の(ひかり)と専属メイドの(あい)です。そして執事長のウィリアムとメイド長のパトリシアです。何かあれば基本的にウィリアムを通してお願いしますので」


とハジメが言うとウィリアムが


「執事長のウィリアムと申します。以後お見知りおきくださいますようお願いいたします」


と綺麗なお辞儀をする。その後給金の話など雇用条件を相談した後、カーディスは船に乗りたいと言う。内港に停めてあるので外観は見たようであるが、内部が気になるようだ。それにかなり久々の船なのである。それはそうかと思い、パトリシア以外の6人で船に向かった。


一通り説明するとカーディスは目を輝かせている。


「もしや、これはモーリーの船なのでは」


と彼は興奮気味に言った。やはり船大工モーリーはその界隈ではスーパースターなのだろう。


「えぇ、そうなんですよ。やはり船乗りさんなんですね、見ただけで分かるなんて」


とハジメが言うと


「ディーは船大好きハーフ小人(グラス)なんで・・・」


と船に乗ったことでやや声を張れたチャドが言う。マニアって異世界にも居るんだとハジメは思っていた。その間にもカーディスは甲板に頬ずりしそうなほど惚けた顔で船を見つめている。


「そ、それで、来週1人の商人が来るんです。その人を乗せてダス国のセルの港町まで往復して貰いたいんです。勿論私と(ひかり)(あい)、そして(まい)という警備も同乗します」


と告げるとチャドとカーディスは嬉しそうな顔をすると


「「勿論です」」


と答えた。そしてその日は公園で歓迎会を兼ねて船上にてバーベキューをした。領民が全員乗っても問題ないほどのスペースがあった。ほぼ全員船に乗るのは初めてのようで、料理人たちは忙しかったが、楽しい歓迎会になったのは言うまでもないだろう。あんまり表情の変わらないメイド長パトリシアもその瞳は輝いていたのだから。



そして翌週頭には船乗りたちは問題なく乗りこなせるようになっていた。ハジメ的には2-3日、出来れば1週間ほどは仕事はなしにしようと思っていたが、到着した翌日にハジメに船に乗らせて欲しいとカーディスが伝えに来たのだ。もう少しゆっくりしてはどうかと提案したのだが、乗りたくてしょうがないと言うので許可を出した。


そして今日イッチーがクーラの街にやってきたのだった。畜産場でブリント、カプリン、コッコンが揃っているのを見たイッチーは


「こ、これって、飼うのが難しいといわれる1位から3位の動物ですよね?」


と言って目を丸くし、料理を運んできたノルに


「貴方はノルさん?一度は行かなければならないと言われるレストラン『アディー』の料理人・・・・」


と口をあんぐりと開ける。そんな有名店の料理人だったのか、だから貴族の妻が取り成したのかとハジメは理解した。


そして乗り込んだ船の大きさに腰を抜かす。あわあわ言っている彼を乗せて船は出航する。そして1時間過ぎたころからイッチーは正気を取り戻しそれなりに船旅を楽しんでいたようだ。更に1時間後無事にダス国のセルの港町近くまで到着した。イッチーが買い付けた品物を倉庫から(せり)に載せて甲板へ運び、小型船へ移す。イッチーがこの大型船が港に近づいたら侵略だと勘違いされる可能性があると言ったので港から近い無人島の裏に錨を下ろしたのだ。小型船は魔石を使ったクレーンで海面に下ろし、セルの港へ入って行った。港にはイッチーが手配した馬車が3台止まっており、そばにはイッチーの使用人が立っている。そこでハジメはイッチーが馬車に載せて来たハーブティーとハイラックの毛皮を買い取り、空いたスペースに仕入れて来た品物を乗せていた。往復2か月が4時間に短縮されたのである。


「ハジメさんっ、この船往復いくらで乗れますか?」


と食い気味に訪ねてくる。ハジメは


「んー」


と考え込み


「いくらなら使いますか?」


と質問に質問で返した。


「半白金貨2枚なら」


とイッチーが言う。


「その金額払うのなら、護衛を雇うのよりも多くの費用が掛かるのでは?」


とハジメが言うと彼は


「往復2か月かかるのが4時間なんですよ。私なら・・いや商人なら絶対利用します」


と力強く言った。護衛を5人雇えば往復2か月で金貨250枚、それに携帯食代や宿屋代が雇った側に掛かってくる。それでも往復で金貨350枚、350万sほどで済むのだ。ただし2か月かかる。ハジメの船を使うと半白金貨2枚、1000万sとなる。時間は往復で4時間にはなるが。


「時間をお金で買う、ですか・・・」


ハジメはいかにも資本主義的な商人らしい考え方だと納得した。ならば自分の下で働いてくれている人たちのためにも”お金で時間を買うことにしよう”と思った。


「わかりました。では1往復と倉庫半分の荷物で半白金貨2枚で、小さい個室利用なら金貨50枚追加としましょう、大きい方の個室は金貨100枚追加、片道ならその半額ということでどうでしょう?」


とイッチーに告げる。彼は嬉しそうな顔をして


「次の仕入れは2か月後なんですが、小さい方の個室利用で往復お願いしたいです」


と言いハジメの前に手を出してくる。ハジメは


「わかりました。ご予約ありがとうございます」


といい握手をする。イッチーは割と大きな商人なのだろう。


「ところでイッチーさん、この辺りにカレン村があるはずなのですが・・・」


とハジメが言うと


「カレン村でしたらここからアダの街の途中にある村ですね。確か米とかいう穀物の産地と聞いたことがあります」


「米はそんなに食べられないのですか?」


と少し考えたイッチーにハジメは問う。カレン村はハジメの家の裏にあった食器屋の旦那の故郷である。売れ残っていたそこをハジメが買取り、今は自宅用の野菜などを育てている。食器屋の夫婦は母親の介護のために故郷であるカレン村に帰ったのだ。


「・・・そうですね。家畜の飼料や貧しい人の食べ物ですね。たまにお金持ちで好きな方はいますが・・・。あと腹持ちがいいので帝国で騎士たちの戦争時の食料となっていると聞いたことがあります。なぜハジメさんはそんなことを聞くのですか?」


米はあくまで非常用というニュアンスが高いようである。


「実は私のイブの街の家の後ろに食器屋さんがあったんですが、そこのご夫婦がカレン村出身でお母様の介護のために村に帰られたのです。それをふと思い出したので」


とハジメが告げると


「ここから馬車で30分くらいの場所なので、宜しければ馬車で往復しますよ。私の馬車広めですし、こんなに早く帰れたんですから」


と提案してくれる。ハジメはお礼を述べ乗せて貰うことにした。カーディスに3-4時間ほど待って貰えるか尋ねると、


「夜間の訓練になるので是非」


と言われたので、(ひかり)と一緒に馬車に乗り込む。(あい)はウガリット号で待つと言い、(まい)


「んー先に村に行ってるねー。途中で変なの居たら排除しとくー」


と言うのでお願いした。


30分弱で馬車はカレン村に着いた。カレン村は川沿いあったが、気温は高かった。立っているだけで汗ばむ。そんな中でイッチーは折角寄ったからと飼料用の米を買い付けている。

ハジメは元食器屋夫婦、ヘンリーとハンナを訪ねていた。


「ハジメさん、お久しぶりです。ハンナ、ハジメさんだよ」


と夫ヘンリーが出迎えてくれた。出て来たハンナは


「ハジメさんその節は」


と言い頭を下げる。ヘンリーの母は2人が引っ越ししてきた半年後に亡くなったのだそうだ。今は2人で住んでおり、家はそんなに広くはなかったが、畑は広かった。そう畑だ。


「ヘンリーさん、これって畑ですよね?」


と言いながら土を見ると、水分を多量に含んだ泥である。


「えぇ、今試行錯誤しているのですが、水が多い方が上手く育つことが多いんです」


と言う。この世界に水田はないらしい。そもそも稲は陸稲(りくとう)もあり、普通の畑で育てることもできるのだが、養分が水田の倍近く必要であり、雑草も多く生え管理が難しいのである。そこで日本は水田という方法を取っている。川から引いた水は栄養を多く含んでおり、土を水に沈めるため、雑草も生えにくい。さらに水は保温も出来るため陸稲に比べて管理がしやすいのである。


「でもこんなに泥の状態でしたら収穫し辛いでしょう?実がここまで成熟しているなら乾燥させても大丈夫なはずですが」


とハジメが不思議そうに言うと


「ハジメさん作ったことあるんですか?」


とヘンリーとハンナが言う。ハジメは高校は農業科だったので実際に米を作り、収穫していた。その米は文化祭などで花や野菜と一緒に売られており、そのお金は学校の備品の購入や修理に使われていた。


そうしてハジメは米の作り方水田バージョンを解説することになったのである。その後ヘンリー夫婦から今できたお米を買い取った。それなりに美味しかったのだから当然である。そしてよりよい米を作る為春頃から彼らの米作りのアドバイザーとなったのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ