役割を決めるみたいです
~陽編~
「では、皆さまをご案内させていただきます、旦那様、ハジメ様の専属執事である私、陽と申します」
と挨拶を行い、ハジメと同じように一通り街の中と仕事を説明をしていく。そして独身男性棟へ案内する。
「ここが独身の男性が暮らす棟になります。1階は台所と食堂がありますので朝昼晩とここで食事をしてくださいね。そしてこの棟の裏に温泉があります。1日のうちどの時間でも入って頂いて構いません。外からは見えないように柵がありますので心配はありません。なお、船員棟の男性もお風呂は共通ですので、そこはご承知ください」
と告げる。すると1人のアライグマ族の男が手を挙げる。
「はい、なんでしょうか?」
と陽が言うと
「お、、、私は獣人なんですが、入ってもいいんでしょうか?抜け毛が多くて・・・・」
と恐る恐る聞く。
「このお風呂に入る時は全員先に体を洗ってから入って貰いますし、このお湯はずっと流れ出てますので問題ありません」
と言い切る。
「あ、あの・・・」
と今度はキツネ族の1人が手を挙げる。
「お風呂に入るための金はいくらなんでしょうか?」
思い切って聞く。
「なるほど・・・・。これは伝えておかなければなりませんね。このクーラの私有地で暮らすにあたって、日常生活で皆様にお金が発生することはありません。ただし、お酒などの嗜好品は個人で買っていただくことになります」
と陽がきっぱりと言うと
「自分で買う・・・?」
と周囲はざわざわし始めた。
「まぁそのことは後で旦那様からお話があると思いますので。それでは男性棟の責任者を決めようと思いますが・・・。そうですね、あなたとあなたがいいでしょう。お二方のお名前は?」
と先ほど質問したキツネ族とアライグマ族を指さす。
「マイクです」
「ニールです」
とキツネ族とアライグマ族がそれぞれ名乗る。その後キツネ族のマイクが責任者、アイラグマ族のニールが副責任者となったのである。
~藍編~
「では、私は皆さまを案内させて頂く、専属メイドの藍と申します。それでは案内をさせていただきますね」
と一通り街中を案内し、最後に独身女子寮を案内する。お風呂が無料でいつでも入れるということに感謝している女性が多いのは男性と違うところであろう。男性用のお風呂はシャンプーと石鹸だけおいてあったが、女性・家族のお風呂にはその2つに加えて、脱衣所に体力ポーション(クリーム版)を置いている。それも使い放題となっている。また女性のお風呂は木と塀によって遮られており、防音の結界も張られているため、入浴中であるかどうも分からない仕組みになっている。
そして女性の責任者は人族のハンナ、副責任者はアライグマ族のヘザーとなった。
~全体編~
3組の案内が終わったあと、子供も含めて全員を中央公園に集める。そして陽がこれからのことについて説明を始める。
「それではお話を始めさせていただきます。まず食事は1日に3回、朝昼夕としっかり食べるようにお願いします。まず仕事をする方は週に1日、9日で1日ですが、お休みとなります。人数が多いところは問題ないと思いますが、皆さんの食べる野菜などを作ってくれるジェイさんのご家族、ドナさんのご家族、街の木を管理してくれるケイトさんご家族で順番にお休みを取ってくださいますようお願いします。なおご家族の方は全員同じ日に取るようにお願いします。また養蜂をしてくださるアルフさんのご家族は申し訳ありませんが年に50日は必ずお休みをしていただけるようお願いします。なお全員1日金貨1枚を給与として支給します。ですので月に金貨40枚をこの後個別に説明をしますので、暫く座ってお待ちください」
彼らは週に1回ある休みのことでざわざわし、給金のことでもざわざわしていた。普通奴隷となると休みは無く給料は発生しないのである。それを給金をくれ、さらに週に1回休みをくれるというのだ。ざわざわしない訳がなかった。
「まず、裁縫師の方9名。リーダーは犬族のエイミーさんとなります。裁縫師の方々はまずはお布団の作成を至急お願いします。申し訳ありませんが、各部屋にはベッドの枠しかない方が多くいます。時間的に間に合いませんでした。今布団があるのは家族棟と女性棟の一部のみで、あと45組足りません。全員に行き渡りましたら、カーテンもお願いします。現在女性棟しかありません。2週間後からお仕事とお願いしましたが、すみませんが、よろしくお願いします。ですので、裁縫師の方々は本日より給金が発生します」
とハジメが言うとエイミーたち9人の裁縫師は嬉しそうに家族棟にある裁縫室へと向かう。
「続きまして、アルフさんご家族も養蜂場を願いします。安全を期するために、護衛として舞と一緒に行っていただけたらと思います。また、畑と木の管理をお願いするジェイさん、ドナさん、ケイトさんご家族も今いる人数が食事をしますので、その収穫をお願いします。収穫後は私の家に運んで頂けると助かります。そのためアルフさんご家族、ジェイさんご家族、ドナさんご家族、ケイトさんご家族にも本日より給金が発生します。本日はうちでご飯を作り、各棟へお届けしますが、明日以降は家族棟のかはそれぞれの家で、女子棟、男子棟は・・・。料理が出来る方はいらっしゃいませんか?」
と問うと、宿屋の一家が手を挙げる。
「あの、今のところお客さんはいらっしゃらないので、良ければ作りますが・・・」
と言ってくれる。もともと家族経営であったために3人とも料理が出来るらしい。本当にありがたい。
「では明日の朝ごはんからお願いします。後で相談に伺いますので、お帰り頂いて大丈夫です」
とハジメが言うと彼らは宿屋へ帰って行った。因みに宿屋のカウンターの裏は3人の住居となっている。
「次に教師の方お立ち下さい。お子さんがいる方々、立っているのが先生になります。覚えておいてくださいね。また後日打ち合わせをします。今日はお部屋にお戻りください。食事の時声を掛けますね。それと事務関係の方々、清掃関係の方々もお帰り頂いて大丈夫です」
とハジメが言い、該当する人々は帰って行く。残ったのは元鍛冶師1人と酪農家2名となった。ハジメは3人を連れて作業場所へと行く。
「鍛冶師の方、お名前は?」
とハジメが問うと
「サル族カカと言う」
とぶっきら棒に答える。
「カカさんにはこの鍛冶部屋で農具の修理や生活用品の修理をお願いしたいのです。ここは好きに使っていただいて構いません」
とあまり気にせず、ハジメが言うと
「分かった。従おう。ここを使いやすいように配置を変えてもいか?」
と言うので、
「使いやすいようにしてもらって問題ありません」
と返すと配置換えを行い始めたため、そのまま畜産場へと向かう。
「こ、これは・・・・カプリンとブリントっ・・・・。これにあとコッコンがいれば・・・・」
と畜産家のオオカミ族トニーが呟く。もう一人のオオカミ族ドビーは
「この2種を育てられるのか・・・・」
と感動しているようだった。話をするとどうやら問題はないらしい。流石オオカミである。その時航が
「ハジメ殿ー。コッコン捕まえたでござるよー」
といいつつ大きな檻に10羽入れてやってきた。そして一番入口に近いスペースへ放つ。
「3種が・・・幻の3種が揃ったーーー」
とトニーの興奮は最高潮に達したのか空に両手を挙げたまま後ろに倒れていく。どうやら気を失ったようである。
コッコンは鶏とコカトリスの合いの子のようなもので、その嘴は山を崩すとまで言わるほどに硬く鋭いが、その産み落とす卵は栄養価が高く、その価値も高い。そして毎朝20個の卵を産むという凶暴さを外して考えると優秀な家畜なのである。
これで全員の配置が終わった。藍と陽はそろそろ野菜が届くかもとハジメの家に帰って行った。ハジメは宿屋へ向かう。宿屋の夫はハロルド、妻はアイリス、その父はアイザックである。
ハジメが宿屋の入り口をくぐると右手にカウンターが、左手にオープンキッチンがある。キッチンの前には50席ほどのキッチンの中にはコンロと窯が設置されている。その中の扉の向こうには貯蔵庫が2つある。奥の方は永久氷床が設置されており、長期保存が可能となっている。
ハジメが中を見渡しているとアイリスが受付カウンターに出てくる。
「ご主人様っ」
と言うと奥からハロルドとアイザックが顔を出す。アイザックとアイリスはハジメの手を取り頭を下げる。
「本当に、本当にありがとうございます。娘夫婦とまた一緒に宿屋が出来るなんて・・・・。感謝しかありません」
と涙を浮かべて言う。見ると3人の目に涙が浮かんでいる。
「アイザックさんは以前宿屋では何をしてたんですか?」
と話を変えるために聞くと
「お父さんはパンを焼くのが上手なんですよ、ウチの旦那はパスタが得意で、私はケーキとかを作っています」
とアイリスが涙を拭きつつ言う。
「妻のケーキは美味しいんですよ。前の宿でも好評だったんです」
とアイリスの肩に手を置きハロルドが言う。
「まずは酵母作りから始めないといけませんが、ご主人様のお陰でまた家族で暮らせるんです。しかもお給金まで貰えるって・・・。本当に感謝の言葉しかありません」
とアイザックはまた涙ぐむ。ハジメは慌てて明日の朝からのメニューを考える。取りあえずパンと小麦粉はしばらくはイブの街から購入し、酵母が出来次第自家で作っていく事にする。小麦は定期的に購入することになるため既にイブの商人から定期購入をすることになっている。
「・・・では明日の朝はパンと野菜のシチュー、目玉焼きの簡単メニューにしてと、お昼はお肉を中心にしたメニューにしましょうか。夕飯は歓迎会を兼ねて子供広場でバーベキューをしましょう。3人には忙しい思いをさせると思いますが」
とハジメが言うと
「1か月くらい何も出来なかったんで、調子を戻すために頑張って行きますで、ご心配ありません」
とハロルドが言い皆で笑う。
「ではお任せしますね、野菜は何が必要か牛族の3家に伝えてくださいね。小麦粉はすぐにこちらに持ってきますので」
とハジメはお願いし宿を後にする。
「やっぱり御者と料理人が欲しいなぁ・・・」




