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神々の依頼、面倒なんですけどっ!  作者: はなを
第2章 ポーショントラブル
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新しい家が出来るようです

それから3日後、リナリーとコウとの3人で完成した家に向かった。コウは相変わらず2人の顔を見て笑っている。まるで悪戯(いたずら)に掛かるのを待っているかのような様子だ。ハジメは不思議に思いながら十数分後家に到着すると茫然と3階建てとなった我が家を見上げていた。


「な、なんで3階建てになってるの・・・・?」


と思わず呟く。


「コウ君、内緒に出来たんだねぇ、偉かったぞ」


「えへへ。内緒にするの大変だったよ~」


と言うコウの頭をエルムが撫でてている。コウの後ろに左右にぶんぶん振れる尻尾が見えそうな感じだった。


「ご主人様が3階建てに決めたんではないんですか。ならなんでこういうことになったんですか?」


とリナリーが聞くと


「それはねー私たちの依頼なのよー」


と商人ギルドのエヴァがハジメたちの後ろから言う。ハジメが後ろを振り返るとエヴァとベスパが笑顔で立っている。


「実はね、商人ギルドに登録している行商人やこの街の住人からハジメさんのポーションをもっとおいて欲しいって言う要望があったのよ」


「でも作れるの一日に30本でも多いんですよね?そうなると夜も作らないといけなくなるんですが・・・」


ハジメはアイテムボックスの機能を使えば制限はないが普通の人間なら24時間作っても本数は限られている。ハジメがそう軽く非難気味に言うとエヴァが耳元で


「そうなんだけどね。ハジメさんって本当はもっと作れるでしょ?」


と囁く。


「なんでそんなこと言うんですか?」


と冷静な顔で両手でエヴァの肩を掴み引き離す。エヴァは


「えー。そこまで拒否されるとちょっと女としてショック・・・・」


としゃがみ込む。そして数秒後すくっと何事もなかったかのように立ち上がり。


「さ、中を案内するわね」


と話し何故かエヴァとベスパを先頭にしてハジメたち3人が続きその後ろにソラとエルムが続く。玄関までに3段の石の階段を上り中に入るとそこは店であったがかなり広くなっている。


「まず最初にハジメさんに謝罪を。商人ギルド長の依頼で内緒で3階建てにして欲しいと言われたとはいえ黙っていて申し訳ありません」


「依頼主さんに黙っていてごめんね。そういう訳だったからコウ君にも黙っていてもらったんだよ。嘘つかせてごめんね」


とエルムとソラは謝ってくれた。


「仕方ないですよ。ギルド長からですもん。あなた方のせいではありませんから。詳しくは後でギルド長から聞きますので・・・」


とハジメが苦笑いで答える。


「本当にすみません。では説明を始めさせていただきますね。まず玄関までの3段の階段ですが、これは地下室の天井を高くするために底上げをしています。地下室自体も大きくなっています。商人ギルドの要望では下に伸ばす予定だったんです。しかしこの辺りには地下水が流れていて、予定地点まで掘り下げると強度不足が考えられましたのでそれ以上下げることはできませんでした。なので天井を高くして予定通りの高さになっています。そして基本的に1階が店舗、2階がキッチンダイニング、3階が住居となっています。まず1階から歩きながら説明していきますね」


とエルムが言い歩き始める。店舗部分の左奥がL字を右に90°回転させた型のカウンターとなっていて反対側の右奥は部屋が2つ出来ている。一番奥の部屋まで来ると


「1階ですが、敷地面積の2/3が店舗となっています。そしてここは商談室として作っていますこの隣の部屋は物置部屋となっています」


とエルムが扉を開けると4畳半ほどの空間が広がっている。続いてカウンターの左端まで来るとソラが


「ここが跳ね上げ式になってるんだけど、この小さな穴にこの鍵を差し込んで回せば上がるようになるよ。それで一回閉めたら勝手にロックが掛かるようになってるから気を付けてね。取りあえず予備も含めて5本渡しておくね。」

もし失くしたら有料だけど私に言ってくれたら作るからね。その時は必ず依頼主さんが来ないと作らないからね」


そう言いながらハジメに鍵を渡す。ハジメはリナリーとコウに1本ずつ渡して残り2本は後でアイテムボックスに入れることにした。


「では続けますね。カウンター内のこの扉を開けてすぐ右の扉が休憩室、左の扉を開けると調剤室へ降りる階段がありますが調剤室へ行くための扉を開けるにはこの鍵を使う必要があります」


と言いエルムが鍵を渡してきたので鍵を開け調剤室へ降りる。階段部分には明かり取りの為の窓が設置されており昼間なら問題なく降りれそうである。7人がハジメを先頭に階段を下まで降りると扉があり、同じ鍵で扉を開ける。部屋に入るとひんやりしている。1階と比べると5℃ほど低い感じである。


「地下水が流れている影響でここはこんな室温になるんですよ。広さは1階部分の1/3くらいの大きさです。1階の通路をもう少し進んだ右側に同じ大きさで地下貯蔵室として作ってあります。そして奥の扉を開けるとストック置きに使えるよう場所が同じ大きさで作られています」


と説明を受ける地下の部屋も家全体が上に伸びたことで活動するのには問題ないくらいの光が窓から入ってくるようになっている。周囲の壁は石で覆われており、地面は木床で来ている。エルムは右隅の木床にある取ってを持ち上げると


「ここに使用した水を捨てられるようになっています」


ハジメが覗き込むと2mほど掘られた穴があった。それは土がむき出しになっている。この世界には環境保全という考えはまだ無いようである。


その後1階に戻り10畳ほどの広さのあるL字型の従業員用の小さいキッチンの着いた休憩室貯蔵室、裏庭へ続く扉を確認し2階へと上がる。


そこは20畳ほどのキッチンダイニングとなっており、その奥に扉があり開けると廊下が広がっていて部屋が3部屋ある。そして3階に上げる階段の前には鍵のかかった扉があり、鍵は跳ね上げカウンターの鍵と一緒であった。階段を上ると右にリナリーとコウの部屋があり右にハジメの部屋とリナリーたちの部屋より一回り小さい部屋がある。ハジメの部屋は調剤室の鍵でロックできるようになっており、他の3部屋は跳ね上げ式カウンターの鍵でロックできるようになっていた。そしてそれぞれの部屋にベランダがあった。コウとリナリーの部屋からは店の前の道が見え、ハジメの部屋からは裏庭が望めるようになっていた。因みに空き部屋からは左隣の家が見えている。


本当に快適な家になった。リナリーとコウの目もきらきらと輝いている。それだけでも嬉しくなった。リナリーとコウは何が必要か調べると言い、我が家探検隊として旅へ向かった。2人を残しハジメたちは1階に降りる。改めてエルムとソラにお礼を述べる。


「お二方本当に素敵な家を作ってくださってありがとうございました」


「いえいえ、喜んで頂けたのならこちらも嬉しいです」


とエルムが照れたように笑った。ハジメは料金を渡そうと8000万S入ったお金の袋を取り出し渡した。


「あ、3階建てになったから料金変わりますよね。おいくらになりますか?」


と聞くと、ベスパが鞄から袋を取り出し、


「大丈夫です。残りは商人ギルドが払うことになっていますので」


と告げ、2人に袋に入ったお金を渡す。大きさ的にはハジメと同じくらいである。ハジメは後で詳しく聞くことにして。取りあえず「ほんの気持ちです」と言ってエルムには魔力ポーションを10本、ソラには大工たちの分と合わせて体力ポーション30本と傷クリーム30個が入った袋をそれぞれに渡す。2人は中身を確認するとこれは受け取れないと言うが、無理やりに押し付けておいた。そのやり取りの後彼らは帰って行った。残ったのはエヴァとベスパとハジメだけになった。


「本当に素敵な家になりましたねぇ」


とベスパが嬉しそうに言う。


「それで、なんでポーションがもっと作れるって思ったんですか?」


とハジメが咎めるように言うと


「はぁ、ハジメさん本当に気づいてないんですか?」


とベスパがため息交じりに告げる。


「?どういうことですか?」


「・・・ハジメさん、毎日体力ポーション30本と魔力ポーション10個を売ってますよね?」


とエヴァも呆れたように言う。


「しかも忙しい時間帯はお店を手伝い、時々ではありますが冒険者ギルドで依頼も受けている。依頼を受けない時も街を散歩したりしていますよね?」


「あっ」


ハジメはようやく気付いた。ポーション類40本となれば弟子を数人抱えたベテランの調剤師が朝から夜中まで必死に作ってもしかしたら出来るかもしれない本数である。その本数を作り販売しさらに別枠での販売も行い、そして冒険者ギルドの依頼も受けているのだ、そりゃもっと作れるだろって話になるのは当然である。その事にようやく気づいたハジメが愕然としているとエヴァが


「・・・本当に気づいてなかったんです?」


と驚いたような顔をする。


「・・・はぃ・・・」


とハジメが蚊の鳴くような声で答えるとベスパが呆れたように「そうですか・・・・」と呟いた。


「ですのでここは開き直って販売数を増やして貰おうという事になったんですよ。料金もハジメさんのポーションは少し高めの設定になったことで他の店で売られているのとは別モノって事になってますし・・・。この街を盛り上げるためにお願いしたいのよ。この家の代金はその先行投資と思って貰いたいの」


とエヴァが言う。勿論盛り上げるためっていうのは大方そうだろうが、実際行商人が多く訪れることによって商人ギルドは短期間この街で売買できるようになる商売許可証が売れるのだ。


イヴの街の周辺はダンジョンは存在しておらず、周囲の魔物もランクは低い。だから冒険者ギルドに在籍している者たちのランクも低い。もともとイヴ出身の高ランクの冒険者もいるが大抵護衛などにより街に居ないことも多い。職人の質は高いために商人や職人希望の人が訪れることがこの街の財政の(かなめ)となっているが、かなりかつかつであった。ダンジョンは人の力でどうにかなるものではないからどうしても良い商品、売れる商品というのが必要なのである。今まで武具や家具などはそれなりに売れてきたが、ポーション類は自国生産消費であったため、売れるということはなかった。今はハジメが住んでおり、効果の高い体力ポーションや魔力ポーション、最近では傷クリームという新しい商品も生まれた。期待せずにはいられないということは確かだった。


「分かりました。取りあえず調整してみます」


と言うと、商人ギルドの2人は「よろしくお願いします」と言い、帰って行った。ハジメはようやく一人になったので裏庭へと向かった。裏庭へ続く扉まで来るとリナリーとコウが降りた来た。鍋や皿などを買いに行くと言うので金貨20枚を渡すと2人は


「渡しすぎです・・・」


と言ったが多いに越したことはないと言い、2人を見送った。そして裏庭への扉を開け柱に認識装置を埋め込む。これでリナリーとコウもこの畑へやってこれる。ハジメが裏庭に一歩足を踏み出すと3人の精霊たちがハジメの前に現れる。


「「「ハジメー」」」


と言い抱きついてきた。火事後からあまりここへは来れなかったから寂しかったのだろう。そう思いハジメは頭を撫でていた。

記念すべき50話目のようです。

どうぞこれからもよろしくお願い致します。

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