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神々の依頼、面倒なんですけどっ!  作者: はなを
第2章 ポーショントラブル
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ファーストインプレッションは悪いようです

ハジメは朝を迎えていた・・・いや迎えてしまった。今日は役場に呼び出される予定であったが、面倒なことになることは確実であるため午前中はゆったりと過ごし心穏やかに時間を過ごすことにした。

リナリーとコウの2人と一緒に朝食をいつものように食べ、笑いあった。コウやリナリーには昨日・今日の事は既に伝えていた。二人は一緒に行こうかと言ってくれたが、情操教育上絶対と言っていいほど悪い影響を2人に与える気がして


「大丈夫だよ。たださ、夕飯はシチューが食べたいな」


と笑って言うと、リナリーは


「分かりました。しっかり煮込みますね」


と腕まくりをして言ってくれた。


ハジメは午前中いつも通りに過ごし、午後1時前にエヴァとベスパが来店した。3人でお茶でもと思ったがその間もなくすぐに役場のウォールから呼び出し状が予定通り来たのであった。3人が町役場の扉をくぐるとウォールが厳しい顔で待っていた。


「予定通りのようですよ」


と一言声を掛けて来た。3人はウォールに案内されて、応接室に入って行った。応接室と言われているだけあって、花瓶に花を飾ってあり、ソファーも柔らかそうな上等そうな革で出来ており座り心地はいいだろうなとハジメは思った。全体的に簡素であったが、上品な家具で囲まれていて清潔感があった。ドアを入って正面にある窓からは居眠りしたら気持ちいいであろう陽の光が入ってきていた。その正面に一人のエルフが面倒臭に逆光の中でソファーに座り、足を組んでいた。その後ろに兵士が2名立っている。とても威圧的な感じを受けるその姿にアランだろうとハジメは思った。まぁここに案内された時点でアランなのだったが。ハジメがウォールの顔を見ると頷いて見せた。


「アランさん、お待たせしました。貴方が用事があるから呼び出せと言ったこちらがハジメさんです」


少し嫌味を混ぜて言い放つ。


「ふん。お前がハジメか。リオン様が気に掛けるほどの人間と思えないがな」


と吐き捨てるように言うと足を崩してハジメを足元から舐めるように見た。少し気持ち悪い感じを受けたハジメであったが、その時にエヴァがアランの視線を遮るように前に出て来た。


「それでハジメさんに用事ってなんですか?うちのギルドの稼ぎ頭なんで、手短にお願いします」


と話す。ハジメは稼ぎ頭になったつもりはなかったが、まぁ早く話を終わらせたいと思っていたため何も言わなかった。


「おや、これはエヴァさんじゃないですか。先代国王に田舎に左遷された。お元気そうで」


と蛇の様に嫌な顔でニヤリと笑った。エヴァはすかさず


「いや、タナボタ国王の胡麻擦り腰巾着こしぎんちゃくと呼ばれたアラン様も随分お偉くなられてお元気そうで」


と同様の笑みを浮かべてやり返す。ハジメはいつか沖縄でみたハブとマングースの戦いのような雰囲気を感じた。ピリピリとした空気を感じた。生死を掛けた一戦とくり広げそうなそんな空気がした。


「まぁ、いい。こんな人間臭いところは早く辞したいからな。リオン様からの辞令を言い渡す。『ハジメ、お前をエルフ国に帰属きぞくとする』。私は人間なんぞ帰属させる必要はないと思うのだが、そういう命令である。ついては私と一緒にエルフの国に来てもらおう」


開いた羊皮紙を丸め直しながら4人を見た。


「はぁ?何言ってるの、馬鹿じゃない?本当にどこまで馬鹿なのかしら」


とエヴァは呆れたように言い放つ。


「き、貴様ーっ!リオン様の優しさで人間ごときがエルフの国に帰属できるのだ、ありがたいと思いこそすれ、その発言はなんなんだっ!」


エヴァの発言に怒りを露わにし、右腰に携えた剣に手を掛ける。ハジメを庇うかのようにウォールは前に立ち、アランに言う。


「本当にお変わりないんですね。とても残念です」


「リオン様のご命令に背くということか。人間風情がっ」


と吐き捨てるように言い、剣を抜き放った。


「言いましたよね、ハジメさんは私の街にとって必要な人材ですと。そのような命令には応じることは出来ません。どうしますか?まさかうちの街に手を出して対立しますか?その剣で私を切れば間違いなくそうなりますよ」


とウォールが静かに凄んだ。アランは怒りに震える手をなんとか剣の柄から離した。


「どうぞ、アラン様お帰りを。これ以上話し合うこともないですし。帰属の話は断られたとリオン様にお伝えください」


と外へ続く扉を指す。アランはハジメの真横を通り扉を荒く開け出て行った。すれ違うときアランの背後に()()()がいることに気づいた。お供の兵士2人の後ろにはそれぞれ()()()()()()()その子たちはハジメと目が合うと、にっこりと笑みを浮かべた。呆気に取られているとハジメを除く3人はふーっとため息を付いた。


「皆さんが言う意味が分かりました。凄まじい人でしたね。ちょっと驚きましたが、色々分かりましたし」


と言う。


「色々分かった?」


と3人がハジメに向かって言う。


「魔力ポーションが流通しなくなったのは、エルフの国と商人の人間関係が悪化したせいと言うことでしたが、そうではなく、作れる人が多数減少したか、居なくなったかということだと思います」


とハジメが答える。


「え?なんでそんな突飛(とっぴ)な話になるんですか?」


とベスパが前のめりで聞いてくる。


「以前より流通が滞りがちになったんですよね?そして私に対しての帰属命令。恐らく前者の魔力ポーションを作れる調剤師の人数が減ったのではないかと考えます。だから供給できる量が減った。このままではエルフの国の収益や他国との関係性に大きく響く。魔力ポーションによって保たれている他国との優位な立場はこのままではなくなってしまう。だから魔力ポーションを作れる存在を収集しているのではないかと思いますよ」


とハジメは言った。


「それが真実であるなら、おそらくこれで引き下がったりはしないでしょう。これから様々な妨害や最悪ハジメさんに言う事を聞かせるために周囲に居る人の命が狙われることが予想されますね」


とウォールが言った。エヴァ・ベスパも頷いていた。

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