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神々の依頼、面倒なんですけどっ!  作者: はなを
第1章 旅立つ
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瓶を購入したみたいです

ハジメは商人ギルドで教えて貰ったクララの店に行き扉を開けるとムッとした熱気に襲われ、店に入るとその熱は更に温度を上げ、ハジメの肌はちりちりとした。扉を開けた時鈴がシャラシャラ鳴ったが誰も出てこないのでカウンターまで行き奥に向かって声を掛ける。


「すみません。商人ギルドの紹介できました。ポーション瓶を売って欲しいのですが」


はいと聞こえたが10分程そのまま。ハジメはもう一度声を掛けようかと思い始めた時、奥からハジメの胸くらいまでの身長の女性が出てくる。頭にはタオルを巻き、首にも白いタオルを巻いている。頭の先から足の先までの汗をかき、黒のシャツはぐっしょりと濡れていた。顔はタオルで拭いているものの、後から後から汗が噴き出していた。ハジメにとって幸いだったのはシャツはダボッとしており厚手であり、体の線が出ていないことだった。

少女が頭のタオルを取るとライトグリーンがかった髪が零れ、両耳が少し尖っているのが分かった。端正な顔立ちで小説で言うそのまんまエルフのように感じた。


「いらっしゃいませ。御免なさいね、今一段落したのよ。水飲みながらで申し訳ないけど、許してね。えっと、商人ギルドからの紹介って言ってたけど、何が要るのかしら」


と女性はコップの水を飲みながら尋ねた。


「脱水症状になったら大変ですから、しっかり水分摂ってくださいね。えっとお願いなんですが、適当な大きさの瓶がなくて。300mlくらいのガラス瓶が欲しいんです。」


と元医療従事者のハジメが言うと、


「ありがとう。そうさせてもらうわ。それで300mlくらいの瓶が欲しいのね・・・・。あなた魔力ポーションでも作るの?」


と笑いながら言った。


「はい?」


「醤油さしとかだったら雑貨屋で買うのが普通よ。ここを紹介されるってことは、それなりの本数が必要か、特殊な物ってことになるのよ」


「でもそれで魔力ポーションって話になるのはなぜなんですか?」


極秘ミッション中のハジメはボロが出るのを防ぐために言動に注意することが不可欠である。そのためなぜクララがそのような発想になったのか知りたいのだ。


「あはは、冗談のつもりだったのよ。この街で魔力ポーションを作れるのら、私の弟も喜ぶと思って」


「弟さんが?」


「弟はクリスって言って、冒険者をしているの。一応Bランクなのよ。そもそも、ポーション類はエルフの専売特許的な部分があって、体力ポーションはその必要性の高さから世の中に広まったけど、魔力ポーションはエルフたちがその調薬方法と薬草をほぼ独占してるの。だからイブの街では魔力ポーションは100%輸入に頼っていて、今の価格は30万Sを軽く越えているの、そしてその数も少ないの。だから冒険者が簡単に手を出すのは難しいのよ。それにエルフの街からイブまで輸送に1か月程度かかるから、使用期限も2か月を切っていて、なかなか一般冒険者は手を出せないの。それでも必要だから弟も買っていたの。でもそれは1-2年前までの話。最近はその魔力ポーションを販売していた大手の商会とエルフの間でトラブルがあったらしくてね、ここ1年うなぎ上りに価格が上昇しているの」


とため息をつき、


「だからそうだったらいいなっていう私の願望で言ってみただけなのよ。ごめんなさいね。さて依頼の件ね」


と笑った。


ハジメはここで魔力ポーション用と打ち明けずに良かったと思った。売るにしてもオースティンに相談してからにしようとハジメは改めて誓った。


「実は調薬で色々試すために欲しいんです。実験用って感じです。実験なんでそんなに量を作っても材料が無駄になっちゃいますしね」


と当たり障りのないようにした。


「研究熱心なのねー。そのうち本当に魔力ポーション作って欲しいわー。あ、うちは100本単位からの発注になるけどいいかしら?」


と言われたので、看護師スマイルで返しておく。対人関係にスマイルは必須スキルなのは異世界も同じ。


「それで構いません。あ、申し遅れました、私はアーヴァンさんの家具屋の一つ手前の通りでポーション屋をしているハジメと申します。出来れば体力ポーション瓶もお願いしたいのですが」


「大丈夫よ。こっちも注文助かるわ、ありがとうね。瓶系は全部1個100Sだから100個で1万S、体力ポーション瓶と300mlの瓶だから2万Sになるけどいいかしら?その代わり品質は保証するわ」


と言い棚から一つの瓶をハジメに手渡した。その瓶はかなりの出来栄えで曇り一つなく透明度が高かく、正直オースティンの店で買うものよりも頭一つ飛び抜けていた。それだけ彼女の実力が高いのだろう。そしてその値段はオースティンの店と同じ。買わないという選択肢はなかった。


「えっと、ポーション瓶は週にどれくらい作れるのですか?」


「そうねぇ。数か月前にポーション屋さんが引退した時に契約が終了しちゃったから、定期的な契約しているところはないのよ。今はガラス屋に作ったものを出して売れた代金を受け取っているだけなの。ガラスって割高な割に壊れやすいじゃない?だから丁寧に扱うのが普通だから売り上げもいまいちな状況なの。だからお姉さん頑張るわ。頑張って週に400本かしら」


興奮気味にハジメが聞くと丁寧に返してくれた。


「無理のない範囲なら、300本くらいかしら。それなら他の依頼も受けれるし、お姉さんの生活安泰よ」


とウインクしながら続けた。


「では毎週200本卸していただいていいですか?300ml用は3か月間、月に400本。それ以後は月に100本でお願いしたいんですが・・・」


「大丈夫よ。凄く助かるわ。安定した生活って大切よねぇ。でも実験用の瓶そんなに必要なの?」


と言われた。


「え、えぇ。薬草の量や加える水の量を細かく実験したいので」


と誤魔化した。


「ポーション屋さんも大変なのねぇ」


と納得した様子なので心の中で謝っておいた。クララから大量注文であるため値引きを提案されたが、ハジメは断りその代わりに配達料をクララ持ちにすることを提案し承諾され契約が結ばれた。クララは契約の後、頑張って運ぶわと言っていたが、大人スルー力でスルーしておいた。


「それでは、よろしくお願いします」


と頭を下げ店を後にした。

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