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神々の依頼、面倒なんですけどっ!  作者: はなを
第6章 新しい国
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感謝を言葉にするようです

戦闘メイドのアセナとミミは取り敢えず自宅である集合住宅へと帰り、明日から仕事に来ることになり、ウィリアムとパトリシアはすぐに着替えて仕事に取り掛かっている。ハジメ的には今日はゆっくりして欲しかったのだが、


「1か月も仕事をしておりませんので、ゆっくりとさせていただきますので」


とパトリシアに押し切られたのだった。2人は書斎を出て行ったので残ったのはダス国の商人イッチーだけになった。スクナヒコは教会へ行くと言って既にその姿はなかった。


「まずは、海路お疲れ様でした。それでイッチーさんは貿易をしてくれると理解していいんでしょうか?


ハジメが問うと


「えぇ。先ほども言いましたが、ハジメさんから国を出ると分かった時に、ダス国へと誘うつもりだったんですよ。それで私がダス国に帰って準備をし始めた途端に国が島になってしまったんです。なんとかアヴァ国へと渡ろうと思ったんですが、漁師たちは海流が複雑で激しくなっていて船は出せないと言われてしまいまして・・・。どうしようと思っていた時、司祭様からハジメさんの所へ行くから乗って行かないかと言われまして。私的には渡りに船だったので飛び乗った次第なんです。ですので、可能でしたらこれからも取引出来たらとてもありがたいですね」


そう言ってにっこり笑う。


「それを聞いて安心しました。ポーションに関しては今までの販売額の8割でいいです。その代わりお願いがあるのです」


ハジメが話を切り出す。


「ここに住む子等が冒険者になりたい、他の国に行きたいと言った時にお手伝いしてもらえませんでしょうか?」


「・・・独り立ち出来るまで、という事でしょうか?」


イッチーは考え込むように聞く。


「いえ、そこまでの期間は考えておりません。一般的な常識や物価などについて教えていただきたいのです。あと出来ればですが、子どもらが困ったときに相談させて頂けたらと思っているのです」


「なるほど。見守ればいいという事ですね。仮にもダス国王の依頼を受けている商人ですから、そんなことでしたら任せてください。それにハジメさんは太客(ふときゃく)ですからねー。失う訳にはいきませんよ」


イッチーは頼もしく言った。その時メイド服に着替えたパトリシアが2人にお茶を持ってきてくれた。安堵の表情でハジメとイッチーは握手をして、淹れたての紅茶を飲んだ。


話し合いの末、3か月に1度この街を訪れ、1週間ほど滞在することを約束したのである。イッチー曰く、ダス国からここまで初回の航海で2週間程度だったとのことだったので、慣れてくれば2/3くらいの時間には短縮できそうだとのこと。後でチャドに確認することにした。取り敢えず今回も1週間ほど滞在することにし、その間はハジメの家に泊まって貰うことになった。


ハジメがイッチーが滞在することを告げに部屋を出ると、パトリシアは屋敷の玄関先を掃除していた。ハジメが客間の準備を頼むと、もう終わっているとのこと。熟練されたその手際は見事と言うしかない。


パトリシアがイッチーを客間に案内しているうちにBBQの準備をすることにし、裏庭で準備を始める。ここにはピザ窯もあるしバーべキューコンロを錬金術で鉄を捏ねて10台ほど作り、テーブルは神様を持て成した時と同じものを10個くらい作っておく。今日は立食でいいだろう。


アイテムボックスから廃材を出してセットしていく。5台ほど準備したところで、


「父上ーーー」


と声が掛かりその方向を見ると、オーダが手を振っている。その後ろには子供たちが居り、彼等彼女等も


「ハジメ様ー」


と言って嬉しそうに手を振っている姿が見える。ハジメが手を振り返すと


「父上ー。学校を探検してきますー」


と嬉しそうにオーダが言った。年齢が戻ったせいか、とても子供らしい気がした。


「気を付けていっておいで」


ハジメが言うと子どもたちは


「はーい」


と言って答え、オーダを先頭に専門学校の方へと向かって歩いていった。それを見送った後、再び準備に戻った。10台のコンロの準備を終えたころ、裏庭にやってきた3人が居た。


「あれ?ノルとノーリ、セロ。もう荷解き終わったの?」


とハジメが3人の料理人に声を掛けると


「旦那様。私たちは1人者ですし、荷物もほとんどありませんから」


とお茶を零し奴隷になってしまったノルが笑いながら言う。


「それならゆっくりしてて。今準備しているから」


とハジメが汗を拭きながら言うと


「旦那様は休んでいてくださいね。私たちが代わりますから」


と家族の犯罪で奴隷に落ちてしまったセロが言う。


「そうですぜ。俺たち料理人に任せて欲しいですぜ」


クーラの街でハジメ家の料理人をしていたノーリが腕まくりして、ハジメの背中を押した。そうして3人にせかされる様に台所まで連れていかれ、アイテムボックスから(はく)の狩った魔物を取り出す羽目になった。3人は


「これはコカトリス・・・・。くぅ。興奮します」


「これはグリフォンですね。俺がこれを料理出来るなんて・・・」


「こりゃ、クラーケンかい。腕が鳴るねー」


3人が食材に興奮していた。こうなった専門職は加減を忘れるし、下手に素人が手を出すと怒らることもある。ハジメは3人に


「無理しない程度にお願いね」


と言い、キッチンを出た。そこに執事のウィリアムが居り、


「旦那様。全部自分でしないくても良いのです。その為に私たち使用人が居るのでございますよ。旦那様のように私たち使用人の事を労わってくださるからこそ、主様の為にという気持ちも生まれてくるのでございます。ですので、旦那様はこうやって自らの仕事を進んで行うという使用人の行為を誇って良いのです」


そう言いほほ笑む。前世では単なる一介のサラリーマンだったハジメは奴隷は勿論のこと、使用人も居ないのが普通であったし、看護師の職にあったこともあり自分が、自分がと行動することは当然のことだった。しかし、今は執事のウィリアムもメイドのパトシリアも、料理人たちも居てくれるのだ。


「そうだね。これから沢山頼らせてもらうよ。ありがとうウィリアム。でも傲慢にならないように気をつけないとね。もし気づいたことがあったらきちんと教えてね。じゃぁ俺は出かけてくるね」


顔を真っ赤にしながらウィリアムに言い、外へと続く扉を開けた。精神年齢40歳オーバーであるハジメにとって、甘えるという行為はなかなか経験出来ないことであった。もし前世で結婚していたり、パートナーが居れば甘えるという行為に対してここまでの恥ずかしさはなかったのかもしれないが、独身を通したハジメにとって『甘える』行為はとてもつもなく恥ずかしく感じてしまったのである。


火照った顔をしながら玄関の扉を潜ると、御者のアインツとウノ、エンが馬を馬小屋へ繋いでいた。3人はハジメに気づくと


「旦那様・・・。すみません」


と土下座をした。突然の出来事に驚いたもののすぐに立たせ、どうしたのか聞くと


「クマイエルたちを船に乗せるのが精いっぱいで馬車まで載せれませんでした。本当にすみません」


半泣き状態でハジメに許しを請う。


「あぁ」


ハジメはそんなことで涙目にならなくても・・・と思っていると、


「旦那様、馬車を載せる場所がなかったのでございます」


とアインツが続ける。


「大丈夫だよ。俺が持ってきたから」


そう言ってアイテムボックスから馬車を取り出す。3人は破顔しハジメに涙を流しながら礼を言った。3人によると馬車と馬を乗せ、自分たちは残ると言ったそうだが、司祭スクナヒコが、馬車本体を残して3人に船に乗るように指示したのだそうだ。一時は納得したものの、実際に船が動き、街が遠ざかっていくにつれ、ハジメの持ち物の馬車本体を本当に残して良かったのか後悔するようになったらしい。しかしもう街に戻ることは出来ないから到着したらすぐにお詫びをし、許して貰えなければ死ぬ覚悟だったらしい。ハジメは心の中で面倒ごとの発生源であるスクナヒコを誉めまくっていた。


「それで、クマイエルっていう馬はどの子なの?」


ハジメが聞くと、体と(たてがみ)が黒く、4本の足は白い靴下を履いたようになっている子で、骨太でしっかりとした体躯をしている子を紹介された。スピードはあまり出ないが、大勢の人や重い物などを運ぶときに重宝しているらしい。


その隣にいるのが白馬で体躯はクマイエルよりも2回りほど小さく、すらっとスリムな馬がマレンゴで、早く移動するときにその実力を発揮するらしい。


最後が体と鬣が茶色でスラリとした姿で額に白い星のような毛を持つトラベラーで、とても普段は大人しい性格であり、様々な状況に即座に対応できる賢さを持っていて、小回りも効き、人込みでも動じないそうだ。


ハジメは3頭と3人に、「これからもよろしくね」と頼む。馬たちは「任せろ」と言ってるかのように鳴き声を上げ、アインツたちも頷いた。彼らは馬車の手入れをするとのことだったので、ハジメはBBQで使う野菜でも収穫しようかと街の南西区画へと歩いて行った。


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