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神々の依頼、面倒なんですけどっ!  作者: はなを
第6章 新しい国
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船が到着するみたいです

朝方小雨が降ったが今は晴天が広がっている。雨が降ったせいか空には灰色の雲が所々にあったがとても過ごしやすい気候だった。スクナヒコによるとお昼前には船は着くとのことであった。ハジメはオーダ、妖精たちとのんびりと朝食を食べ、書斎でアイテムボックスの整理を始める。


魔法馬などの1点物や大切な物が20マスくらいと開拓時に収集した木が9マス分、861本ほどあるがこれは整理のしようがないのでこのままにしておく。


銅、鉄、銀、金、ミスリルを取り出し木箱にまとめるとそれぞれ3箱ほどになった。半箱で3家族分の農具が出来る程度はある。


お金もかなりの金額あり、子供たちが「冒険者になる」と言えば、支度金を渡すことも出来るし、船長のチャドに頼み、行きたい国に送り届けてもらうことも可能である。米が欲しくなれば、ダス国のイッチーにお願いするしかないが、いかんせん今のところ連絡を取ることが出来ない。顔があまり知られていないダス国ならこっそり密入国は出来る可能性もあるが、犯罪行為は避けたいところだった。


ポーション類はリナリー達の使用分や、コウや道具屋のオースティンに卸してもあと10年近くは問題ないだろう。コウは売り物ポーション分が減ったことで商売出来ていることが分かるが、冒険者になった子等の状態は分かりにくい。伝言(バーバルメッセ)で一方的に状況を伝えることが出来るためハジメ自身のことは伝えることが出来るが、向こうからの情報は伝わって来ないのである。自分の送り出した子たちへの心配は尽きないものの今のところどうすることも出来ない。

ハジメが難しい顔をしているところへ


「オリジナル、難しい顔をしてどうしたんですか?」


と助手0号が声を掛けてきたので、悩んでいることを相談すると、


「はぁぁぁ」


と大きなため息を付かれた。


「オリジナル。私は以前、自分の魔法について良く把握するようにお願いしましたよね?」


ずいと顔を近づけ怒ったように告げる。これはお説教コースが開始されるという前兆である。


「・・・う、うん」


(わたる)から、魔法習いましたよね?」


怒りの鼻息がハジメの右頬に当たる。


「・・・そうか、歩く歩道(ムービングウォーク)・・・。でも魔力マーキングが・・・」


「そうですね。気づけたから、今日は良しとしますけど。そもそもあそこは世界樹になる前に精霊の木があった場所です。その精霊の木はオリジナルの魔力を糧として育っていますから、それをマーキングとして使えばいいのです。もしコウが移動するのなら、オリジナルの魔力を込めた魔石を持たせて居住地の土に埋めて貰えばマーキングとして使うことができるでしょう」


少し怒りの空気が柔らかくなり、こっそりと安堵するハジメだった。魔石とは体内の使用されなかった余剰分の魔力がが固形化したものである。言い換えると魔力の貯蔵庫である。従って、魔物に魔法を使わせることが少なければ少ないほど大きな魔石を手に入れることが出来る。つまり敵に気づかれず1撃で殺すことが出来れば一番大きな状態で魔石を手に入れることが出来るという訳である。


ハジメにとってこの自分の魔力を持つ魔石は錬金術で簡単に作れてしまう。そこらへんにある石に付与(アサイメント)で自分の魔力を与えればいいのである。ものの数秒で終わるお手軽アイテムである。


そうこうしていると、(くれない)が開けられた窓から書斎へ入ってきてハジメの頭上をくるりと一回転し、窓枠へと降り立った。


「主様。船の姿が見えました。恐らく1-2時間ほどで港に入ってくると思います。私は水路まで案内してきます」


そう言うと再び空に飛びあがった。ハジメは立ち上がり出迎えの準備をしようとしたが、結局0号にお説教を受けることになったのである。そのお小言は1号の入室により小一時間ほどで終わりを迎えた。


「0号。オリジナルとの話は終わったのですか?」


「あ。オリジナルの説教で忘れてました・・・」


忘れてましたという顔をする0号に呆れた表情を浮かべる1号。ハジメを説教するのは0号で0号を説教するのは1号らしい。


「本当にもう・・・。オリジナル、私たち6人に名前を付けて欲しいのですよ。私たちは1号でもいいのですが、領民たちは困惑するでしょうし」


それもそうかとハジメは思う。彼らは人形が元であるが、今は人格を持っている。教師という立場になる以上普通の生活を送っておくほうがいいだろう。彼らを動かすエネルギーは空気中を漂っている魔素を取り込むだけでは足りないため、食事をすることで補足出来ている。人形ですと紹介したところで領民たちには理解しづらいだろう。それならば1個人として認識してもらった方が面倒がない。


「じゃぁ、0号は『小言(スウェアー)・・・」


「ん?なんです?イジメですか???」


「ごめんなさい。嘘です。プリモです」


迫ってくる真顔に怯むハジメだった。


「じゃぁ、私がウノ、2号がドス、3号がトレスで、クアトロ、シンコですね。分かりました」


自分の情報も写しているため理解が早い。そうこうしているとたっつんが窓から入って来て


「船が見えるですぞー」


と声を掛けてくる。ハジメたちは慌ててオーダを含めて8人と3匹で港へ向かった。ハジメたちが到着した時、船はちょうど湾に入ってくるところだった。船首で手を振っている2人の姿が見える。数分後ハジメがはっきりと目視するとスクナヒコとダス国のイッチーだった。ハジメが驚いているうちに船は港へと接岸し、スクナヒコとイッチーが降りてハジメの所へとかけて寄ってくる。


「やっほー。ハジメくん。ほら貿易必要かと思って、イッチーくん連れてきたよー」


とスクナヒコが言う。


「もう、国を出たならダス国へ来てくれてもいいですのに。スクナヒコ様にご連絡頂いて良かったですよ」


ハジメの手を取りにっこりと笑う。確かにハジメ的には米を手に入れるためにはイッチーと連絡を付けなければならないと思ってはいたのだが、先をよんで連れてくるとはスクナヒコの軽いノリで忘れそうになるが流石神様というところだろう。


「旦那様。お元気そうでよろしゅうございました」


「うん。パトリシアたちも元気そうで良かったよ。これからもよろしくね」


制服姿しか知らないから私服のパトリシアが一瞬分からなかった。ウィリアムは背中に荷物を背負いながら、小さい子たちを連れてこちらに向かってくる姿が見える。彼も私服であったため、その光景は孫と祖父のようであった。


「旦那様・・・」


ウィリアムが色々な感情を込めてそうハジメに言う。国や街に多大な利益を生み出し与え、金策に困っていた自分たちを高額で雇い、親を失った子等を育てる環境を作ってくれたハジメが讃えられることなく、国を追われ、犯罪者扱いされたことは彼にとっては憤慨する事柄だった。


「大丈夫だよ、ウィリアム。明日にでもパトリシアと一緒に書斎に来てくれるかな。今後の相談もしたいから」


にっこり微笑んでそう告げる。


「畏まりました、旦那様」


そう言い頭を下げる。その後降りてきた人々にも無事なハジメの姿に安堵された。どうやら沢山心配をかけていたようである。


取り敢えず皆に街の中を案内しつつ、住居へと向かう。住居から日用品は全て持ち出しているため、そのまま荷物を開ければいいらしい。子供の疲労を考えてまずは孤児院、家族棟、女子棟、男子棟へと案内し、各家庭で荷解きをしてもらうことにする。本日の夕方に呼びに来ることを告げておく。料理人もここへ到着したばかりであるため、今日は(はく)が買ってきた魔物肉のBBQである。


皆が家で荷解きを開始し、ハジメの近くにはオーダとウィリアムとパトリシア、戦闘メイドのオオカミ族アセナとウサギ族ミミ、スクナヒコしかいない。その状態でウィリアムが


「お帰りなさいませ。旦那様、そちらの子はご子息でしょうか?」


問う。説明を忘れていたことに気づく。


「えっと・・・」


ハジメは言い淀む。世界樹と言って通じるのかどうかもわからないし、正確に伝える必要があるのかもわからない。オーダの設定考えるの忘れていたため焦る。


「ウィリアム様。この子はオーダ様。この世界の世界樹でございます」


スクナヒコが聖職者ぽく事実を告げる。


「せ、世界樹様・・・・・」


パトリシアは驚愕の表情を浮かべ、その他の者もフリーズしている。


「えぇ、さようでございます。この世界樹のオーダ様はハジメ様が魔力を注ぎこの世界に根付かせることが出来たのでございます。ハジメ様を父と慕っておりますので、このままご一緒に日々を過ごされることになられるでしょう。そして、こちらの白虎が(はく)様、赤い鳥が(くれない)様。たっつん様とゼニー様はご存じだと思いますが、これらの4匹が各属性王様の右手とされる第1位の妖精様方でございます。彼らもまたハジメ様を主と慕っております」


そう言いながらハジメの顔をみてウィンクをする。どうやらこの世界の常識として世界樹は知られており、今まで世界樹がないことは知られているようだった。


「・・・あの風見鶏のようなたっつん・・様も第1位妖精様だとは・・・」


ウィリアムたちは(かしこ)まる。


「皆さま。彼らはこのようにされることに居心地の悪さを感じられますので、普通に接して欲しいとのお言葉でございます」


「・・・しかし司祭様・・・」


ハジメの常識人である執事長は困惑の表情を浮かべる。


「ウィリアム様。言いたいことは分かりますが、これがハジメ様、と思ってあきらめてください。パトリシア様やメイドさんたちもよろしいですね」


そう言って話を終える。しぶしぶと言った形であったが取り敢えず納得したようだった。ウィリアムとパトリシアたちを連れてハジメの家に帰っているとき、スクナヒコに


「フォローは大変ありがたかったですが、これが僕ってどういうことですか?けなされてますよね?」


と言うと、しらっとした顔で


「え?でもあれで執事さんたちは納得したでしょ?」


と言った。確かにそうである。スクナヒコが言った後4人の強張った顔がいつも通りに戻ったのである。納得はできないが。


不満顔を浮かべて、家の扉を開けるとそこには赤、青、黄、白、桃の色の髪をした男性たちが居たのである。ハジメが彼らを人工生命体であること、自我がしっかりあることを告げそれぞれ紹介した。4人は一瞬驚いてはいたが、口々に


「・・・・旦那様だから・・・・」


と言いすぐに環境に適応していた。ハジメがなんとも言えない気分になったのは言うまでもないだろう。

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