表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々の依頼、面倒なんですけどっ!  作者: はなを
第5章 第1節 東の塔 ~耕す~
118/172

怒られるみたいです

ハジメは自分で作った商人装備一式にとても満足していた。色は無染色であり、縫った跡はまだまだであるが、初回でここまで出来ればいいだろう。


まだ練習が必要だと思ったハジメはサンプルとして各職業の制服を作ることにした。執事たちの制服を作ることにした。基本はスーツタイプでネクタイは太めで表から見える長さは短め、シャツの襟は立てる感じにしてネクタイがしっかり見えるようにする。あとは追加で手袋を作っておく。執事長も同じデザインで色違いということにしておこうと思った。


こうして1日で執事セットが完成した。メイド服に関してはパンツスタイルとスカートスタイルと意見が分かれるだろうと思い、夕食の時にメイドたちに聞いてみると、パンツスタイルは非常に人気がなく、ロングスカートのオールドタイプ一択であった。ハジメは仕事しにくくないかと聞くと、お客様をお迎えする以上、スカートタイプが一番問題となることが無いらしい。そういわれてしまえばハジメには反論できず、仕方なくエプロンの裾にだけフリルを付けておく。


ここまで来るとだいぶ作業速度が上がってきている。あとは農家と養蜂家、掃除の人、御者たちにはシャツと尻尾の所はボタンで出来ていて、大きさに合わせられるようになったオーバーオール、市場で働く人、教師には防水のついたジャージ上下、最近ではすっかり財務担当になったコンにはリクルートスーツ、船乗りには海軍のような黒のセーラー服、裁縫師さんには普段着など。1週間ほどかけてまぁやりたいだけやった。その結果、


【裁縫師レベルが2になりました】


レベルが上がった。そして得たスキルは欲しかった『染色』と『サイズ変更』だった。『サイズ変更』はちょっとした裾上げや袖の調整などが可能になるスキルだった。袖を付け替えたり、大きな穴を縫ったりなどは出来ないがかなり便利なスキルである。


そうして見事に全員分の制服が完成したのだった。その途中で、裁縫師レベルが3まで上がり、スキル『裁縫師の気概』を獲得したことでさらに生産性は高くなった。このスキルは『裁縫師の心得』の上位版で、裁縫速度がさらに向上したしたため1か月かからず各自2セットの制服たちは完成したのだった。


ハジメが『作業空間』を出て書斎に戻るとノックがする。入ってきたのはハジメ専属執事である(ひかり)だった。


「旦那様。最近色々なさっているようですが、何をされているんですか?皆食事以外姿が見えないと心配しておりましたよ」


と少し怒った口調でハジメを問い詰める。


「え、えっとー。制服を作ってました。皆を驚かせようと思って」


とハジメは言って、出来たばかりの執事長の服を着せたマネキンを出す。それを見た(ひかり)


「はぁー。こんなとんでもない制服作るなんて・・・・。旦那様、ご自身で鑑定されましたか?」


溜息をつきながら言う。高級品であるジャイアントスパイダーの糸で出来ているだけなのに、なぜかそんなことを言われたハジメは一応鑑定してみる。


最高級の執事服:ジャイアントスパイダーの糸で紡がれた執事服。耐防刃、耐毒、耐麻痺を備えている。装着者の最も高い能力に+5%される。

        付与:防汚、防水、通気

買取価格:半白金1枚(500万S) 販売価格:半白金貨5枚


ハジメは慌てて全ての服を鑑定するとおおよそ同じ値段であった。


「・・・やっと、しでかしたことに気づかれましたか・・・」


(ひかり)は再度呟き、右手でコメカミを抑える。随分と人間臭い仕草が増えた。


「まぁ、商業ギルドさえ黙らせてしまったら、そうそうバレない・・・と思うし・・・。ここは(ひかり)さん、大人のスルー力で・・・・」


とハジメが(ひかり)の冷たい視線にわたわたしていると、書斎のドアがノックされる。


「旦那様」


とメイド長のパトリシアの声がする。ハジメは助かったと思い、入室を許可した。彼女は一人のメイドを伴って丁寧なお辞儀をすると部屋に入ってきた。


「旦那様。少しお願いがございまして・・・」


いつもきびきびとした態度である彼女が歯切れの悪い口調で言う。それを察したのか(ひかり)


(わたくし)は部屋に戻っておりますので、先ほどの()につきましてはまた後程・・」


と告げる。


「もし、お時間がございましたら、(ひかり)様にも聞いて欲しいのでございます」


と彼女は言う。(ひかり)とハジメは顔を見合わせる。


「実は、このエイダが聞いた噂話がございまして・・・」


と彼女の後ろに控えていた一人のメイドが頭を下げる。噂話程度であるなら、パトリシアなら態々(わざわざ)ハジメの耳に入れることはしない。


「・・・噂話・・・?」


「はい。そうでございます。エイダ、旦那様と(ひかり)様に説明を」


とエイダに促す。


「・・・私はこの国の貴族の娘でございます。貴族と申しましても、男爵家の第五子で三女でございます」


この世界では基本的に長男が跡継ぎで、次男は長男のサポート・・・と言っても何かあったときのスペアであることが普通である。長女・次女は成人前に婚約が決まることが多く、その相手は同格の貴族以上となることが多い。そして、よっぽどのことがなければ、貴族としての生活を強いられるのは男は上2人、女は1人までとされている。これは特定の貴族が一定以上の発言権を持つのを防ぐためとされている。その為、それに当たらない子供たちはそれぞれの道を考えなければならない。


「なるほど・・・。その噂話は貴族関連からのものと言う訳だね」


とハジメが優しく問うと


「はい。そうでございます。私の一つ上の姉はとある貴族様に使える騎士の方に嫁いでおります。その姉から手紙が本日届いたのでございます。その内容に驚き、パトリシア様にご相談したのですが、旦那様にもお伝えした方が良いとなりまして・・・」


と言った。


「そこからは私が。そのエイダの姉からの手紙には『旦那様がイブの街周辺に出兵するかもしれないと言っている。そちらは変わりないか』という内容が書かれておりました。現在私の知り合いに情報提供を呼び掛けておりますが、(ひかり)様と旦那様にも充分にお気を付けて頂きたく参りました」


とメイド長も困った様な顔をしていた。彼女的には本来なら情報をある程度把握した上で伝えたかったのだろうがそう言う話が出ているとなればあまり時間がないかもしれない。そう思って即ハジメたちに報告をしたのだろう。


「2人ともありがとう。こっちでもそれとなく情報集めてみますね。それはそうと、パトリシアさん、エイダさん。ちょっとこれ着てみてくれますか?」


そう言ってハジメは2つのメイド服を取り出す。


「新しいのを作ってみました」


そう言って2人を精霊ズの控室の隣の部屋に押し込んで着替えるようにお願いした。そして10分程して2人は書斎に帰ってきた。


少し長かったり短かったりしたので、そこは裁縫師のスキル『サイズ変更』で調整しておく。因みに全メイドの制服は一緒であるが、メイド長だけエプロンの端に1本の黒い線が付いている。


「・・・この肌触りの良さは・・・?」


メイド長が服を触りながら驚きながら尋ねてくるが、(ひかり)


「メイド長、聞かない方がいいと思います」


と答えておいた。ハジメ的には説明できると思っていたが、それは許されないようだった。


「・・・メイド長、これ皆の分なので、配ってくださいね。着替えたらここに来るように言ってくださいね。微調整しますから。あと、執事長のウィリアムさん呼んできてもらえます?」


とパトリシアにお願いしておく。パトリシアが退室した後すぐにウィリアムが入室してきた。


「旦那様、お呼びと聞きましたが・・・」


執事長に同じように制服を渡し着替えて貰う。その後、ハジメの方を向いて、


「旦那様っ!このような素材は使用人は普通使ってはなりません。当家は商家でございます。このような無駄遣いは・・・・」


どうやら執事長は鑑定が使えるようで、それを見た瞬間からかなりの怒り具合である。ハジメは慌てて


「大丈夫。買ってないから、僕が()()()きたから無料(ただ)だから・・・」


と宥めたが、


()()()()()?狩ってきたんですかっ旦那様っ!!あなたは当家の主人でございますよ。そんな危ないことをして。貴方に何かあれば路頭に迷う人がいるんですよっ!」


と逆効果を示した。「藪蛇」だったと思ったが言葉にしなかったのは褒めて貰いたいところだろう。そうして小一時間怒られたのだった。その後パトリシアとウィリアムによって領民に配られたのだった。微調整は裁縫師たちが行ってくれたので、スムーズに終わったのだった。


因みに、執事長はネクタイは赤色で、部下は青色になっていることだけ追記しておく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ