実験をするみたいです
「さてと、今日も研究頑張りますかねー」
3人が大人になって早1週間が過ぎ、それぞれ頑張っているようである。それに感化されてかハジメも薬の研究を再開していた。ポーション類は陽を中心に藍、キツネ族のセツが販売をしてくれている。セツが販売に関係出来るようになったのはスムスがクーラの街に住んでくれるようになったことが大きい。それによってハジメは薬関連の研究を行えるようになったのである。
最近では、体力ポーション(改)、魔力ポーション(改)、治療薬1を売り出し、良く売れている。しかし、1商人あたりに売る量は変わっていないため、いまだに提供できる量の方が遥かに多いのが現状である。最近はポーションを1本ずつアイテムボックスに入れれるとかなり圧迫されるため、1000本を収納できる木箱にまずは納めてアイテムボックスに収納している。1スタック100個なので、10万本収納することが出来るようになっている。いちいち自分で詰めなくてもアイテムボックス内で出来るので便利なものである。
ハジメは1Fの鍵を開け階段を<光生成>で照らしながら下りる。一番したまで階段を下りたらそこは調剤室となっている。
<4分裂>
魔法の光を4分裂させて
<光生成巨大化>
調剤机の真上に大きめの光を生み出す。5つの光量を生み出すことで手元に影が出来ない。手術室と同じような原理である。ハジメは成長する調剤道具から神器のビーカーを2つ取り出し
「さてと・・・。まずは体力ポーションと魔力ポーションをそれぞれビーカーに入れてっと」
注ぎ入れる。
「まずは、モノづくりの手からの精製」
ハジメが錬金術スキルを発動させると、2種類のポーションは液体から粉末へとその姿を変える。そしてそれを乳鉢で混ぜ、しっかり混ざったことを確認してフラスコに入れ普通の水を注ぐ。粉が無くなるまでよく混ぜると、真っ黒の液体になった。
<鑑定>
大失敗した薬品:失敗作。なんの効果もない。飲むとかなり苦い。売買できない。
続いて清らかな水、魔力水、精霊の水で試してみるが、やっぱり同じ結果だった。
「精製じゃダメってことだなぁ。じゃぁ今度は親和でやってみるか」
親和は錬金術スキルのLv.3で使う事が出来るようになるモノで、2つの異なる物質を化合することができるものである。
今度は液体のまま体力ポーションと魔力ポーションを合わせてよく混ぜる。
<親和>
混合したポーションが灰色の液体になった。
<鑑定>
失敗した薬品:失敗作。なんの効果もない。飲むと苦い。売買できない。
「まぁ簡単には出来ないよなぁ・・。じゃぁ次」
と再びポーションを混和させて錬金術スキルLv.5を発動する。
<合成>
先ほどと同じように灰色の薬品になった。
「スキルの単独使用では出来ないってことが分かったってことかー。あとは手当たり次第しかないなー。その前にお手伝いさんを呼ぶか」
ハジメは倉庫への扉を開けると部屋の右隅に2体のハジメと同じくらいの背丈の人形が立っていた。ハジメが以前作っておいた人形だった。
<助手>
と錬金術のLV.5のスキルを発動させると2体は命が宿ったかのように瞳が輝き、すたすたと調剤室へと入ってくる。この助手はハジメのスキルレベルの1つ下までのものならば使うことが出来る。
「0号はポーションを精製して、1号は2種類のポーションの比率を1:0.9から初めて0.1まで、魔力ポーションの方を0.1刻みで減らしたものを試験管に入れてよく混和して左から試験管立てに入れて。それを32セット作って。その後で粉の状態で4セットだけ親和を使って。それが終わったら、この部屋の隅で待機しておいて」
とハジメが指示を出す。2人は頷きすぐさま作業に入る。このホムンクルスかなり優秀で、0.01刻みまで道具を使わず調整することが出来る。今回のような実験ではかなりの手助けとなるのだ。
10分程で粉末状態で親和のかかったものが出来上がる。ハジメは4種類の水を入れて調合するがどれも上手く行かなかった。そこでその液体に再度親和を掛けてみるが変わりはなかった。それに更に合成を掛けるがやはり変わりはなかった。
そんな試行錯誤を1日繰り返すが、粉末状、液体状とスキルのタイミングをずらしてみるがまったく手応えがなかった。まだ手持ちのスキルでは対応できないのかもしれない。ハジメの夢である、体力魔力同時回復ポーションへの道はまだまだかなりの道のりがあるようである。
ハジメは体力ポーションを1本持ち上げ目の高さでゆらゆらと動かす。それに抵抗するかのように液面が動いている。助手はすでに人形に戻して倉庫に戻していた。
「腐敗」
何の気なしに錬金術Lv.3のスキルを発動させてみる。瓶の中の緑色が少しだけ澄んだ深緑色へと変わる。正直体力ポーションと言われこれを単品で渡されたら見分けはつかないだろう。ハジメは取りあえず鑑定する。
毒薬(遅延):薬効を反転させたもの。即効性はなく、連続して使用することでその効果を最大限に発揮することが出来る。
使用期限:なし
毒薬(普通):薬効を反転させたもの。遅延タイプよりは早く効果は出るが人によっては数時間かかる。
使用期限:なし
毒薬(即時):薬効を反転させたもの。速攻タイプ。内服すると遅くても十数秒で効果を発揮する。
使用期限:なし
因みに上から、普通のポーション、ポーション改、ポーション真の順番である。
「・・・これはアイテムボックスの底に入れておこう・・。・・・魔力ポーションはどうなるんだろ・・・」
ハジメは押さえきれない興味に実行に移そうとする。木箱から青色のポーションを取り出す。
「腐敗」
魔力霧散薬:過剰魔力症候群の治療薬。体内に貯留している魔力を空中へ拡散する。容量は5mlで大人1人分、10mlで魔術師1人分、15mlでエルフ1人分の魔力が体外へ流出する。
使用期限:なし
魔力霧散薬(改):1滴でほぼすべての生物が昏倒する。
使用期限:なし
魔力霧散薬(特化):蒸発したものを吸い込むだけで神以外を昏倒させる。魔力の少ないものは死に至らせることもある。1本で1万人が命を終える。
使用期限:なし
魔力霧散薬(真):蒸発したものを吸い込むだけで神以外を昏倒させる。魔力の少ないものは死に至らせることもある。1本で5000人が命を終える。
使用期限:なし
「・・・・興味本位で作ってはいけないものが出来てしまった・・・・」
ハジメは普通の魔力霧散薬以外の6本を消去でこの世から消した。どうせ消すなら毒薬も持っているよりはいいだろうと思ったこともあった。因みにキュアポーションでは全てが失敗した薬品となった。
「やっぱり新しい植物が必要かなぁ・・・・?・・・ん?あーーーー」
思わずハジメは叫んでいた。
「カビ、忘れてた・・・・」
調剤机に両手をついて本気で凹んだ。元医療従事者としてカビの、ペニシリンの存在を忘れていた。御免なさい、高橋先生・・・・。高橋というのは看護学生時代の薬学の先生である。
「カビは触ったことあるから・・・・」
ハジメはアイテムボックスから『万物の書』を取り出しページを捲るカビを原料とするものは出ていなかった。この『万物の書』はハジメが触ったことのあるモノ限定で利用方法が掲載されるのである。ということはこの世界ではカビは薬にはならいということなのだろう。ハジメは本を閉じる。
「そうだ、アーロンから鞄貰ったんだった。大切なモノ入れにしよう」
とアイテムボックスから縦40㎝×横30㎝×奥行き15㎝くらいのトランクを取り出す。そう、気分転換と言う名の軽度現実逃避である。革製のもので留め具はベルトのような造りになっている。なんともアンティークぽくてハジメ好みであった。そに神器『万物の書』を入れる。『成長する調剤道具』も入れたいが大きさ的に難しそうだった。
「んー。空間拡張して、宝箱にしようかなぁ・・・付与強固、親和魔法」
と壊れないようにトランクに強固を付与して、魔力に対する親和力を上げておく。そして
「『我は願う、この中の広がりを。理を曲げ在ることを』」
取りあえず目いっぱい大きくなるように意識する。このトランクはハジメの宝物であり、誰かれ構わず見せたりするつもりはない。まして売るわけはない。だから自重する必要はないのだ。ハジメがかなりの疲労感を感じるまで魔力を使い、トランクの空間拡張は終わった。ハジメは少し休んでから調剤道具を入れると目に見えなくなった。この空間に対してあまりにも少量だからだろう。まぁ救いなのは手を入れて念じればそれが手に振掴めるということである。見えなくても出し入れに問題はない。
「やりすぎた感はあるけど、一生このトランク使えるなら問題なし」
と気にしないことにしたのだった。防汚、強固を付与することも忘れていない。
「さてと、どっかに植物採取行かないとなぁ・・・・」




