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吾輩は神によって殺され悪魔の手によって過去に蘇った  作者: 赤い獅子舞のチャァ(実際の人物及び団体とは一切関係在りません)
大戦英雄記

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一知花と釈迦

          一知花と釈迦

 翌日、屋敷に帰った僕達を待って居たのは、長い事引き籠っていた筈の一知花だった。

「お帰りなさい、冠者伯父様、修輔、美樹、長い事心配をかけました、私はもう大丈夫です。」

太郎や修輔は何があったのだと言わんばなりに驚いている、僕には心当たりがあったのだが、ここは黙っておこう。

「唐突で驚いたが、これは参拝に行った効果があったと思っておくとしよう、一知花ちゃん、復調おめでとう。」

「姉さま、やっと出て来て下さいましたね、これからは今まで以上に僕が手助けしますから、何かあったら申し付けてください。」

太郎の方はまぁいいとして、修輔よ、お前はこれからもっと勉強して僕の前世に追いつく積りじゃないのか?

そこまで出来ると言うなら多分僕以上だぞ?

「伯父様、有り難う御座います、修輔、貴方はもう何も心配せずに自分のする事を成しなさい、私は仏門に帰依する事に決めました、草葉の陰から見守っているお父様にももうご迷惑を掛けない事と決めました。」

ちょ、おま、まてYO!

なんだって仏に大事な娘を取られにゃならんのだ。

ってか今は姉だった・・・

とにかくこの件に関しては後で良く事情を聴くことにしよう。

いきなりの展開に驚きは隠し切れなかったが、何とか話し合いで阻止出来ないものだろうか。

さらに屋敷から見慣れない三人のメイドが出てくる。

「「「皆様お帰りなさいませ。」」」

神々しすぎて目を合わせられなかった為に見た事は無かったが、声は聞いた事があったぞ?

こいつら、三女神だな・・・

皆ほぼ同じ声でややこしいんだよね・・・

すると、多分言葉数の多い順におきつさん たきさん さよりさんなんだろうな、多分・・・

って言うか、もしかして我が家に関わる者全員の記憶操作でもしたのだろう、誰も、知らないメイドだとは思って居ない様だ。

この三神は恐らく、ワザとこのタイミングでやって来た気がする、愉快犯的な性格なのだろう、多分。

慌てふためく僕を観察でもする気だったのかも知れない。

実際、平静を保っていたら、ちょっと悔しそうな顔をしていたのを見逃さなかった。

ややこしいタイミングで来たよね、ほんと・・・

後で問い詰めるとしよう。

---------------------------------------

しかし、一知花がたったあれだけの短い手紙で、活力を取り戻したのは良かった。

だが、寄りによって仏門って・・・ん?待てよ・・・

まさかとは思うが、寺で名付けをした影響なのか?

そうであるとしたら、素戔嗚として釈迦と交渉する必要があるのでは無いか?

願わくば愛娘を連れて行かれたくはない。

それにしても、復帰していきなり仏門て、仏教の不死鳥、迦楼羅じゃないんだから・・・

と言うか、僕のいない間に釈迦が降臨したとしか思えない唐突さである。

事実この体の体力は既に限界近かったついでに、旅の疲れを訴え寝室に一人籠った僕は、試しに素戔嗚として仏に呼び掛けてみることにした。

”仏陀よ、悟りの王よ、一知花の元へ来ておるのであろう?

我が呼びかけに答えて欲しい。”

すると、思ったより素直に反応が返ってきた。

”これはこれは、かの娘の父にして三大神が一柱、益田修一、もとい素戔嗚尊殿、こうして実際にお会いするは初めてでありますね。”

愕いた事に、姿まで現したのだ。

「ほぅ、まだこの場においでであったか、ゴータマ・シッダルタ、もとい仏陀殿。」

「釈迦と呼んで貰っても宜しいですかな?」

「ではそのように致そう、で、何故に一知花を連れて行こうとするのかね?」

「ほっほっほっほ、これは我が意志ではありません、一知花殿自らの意思です、それに、神道の巫女は生娘でないとならんのではありませんか?」

「あれは、あの子の意思とは無関係であって決して心まで奪われた訳では無い!」

「ですが其れを良しとして居ないではありませぬか?

ですが尼であれば、共に修行して行く者として歓迎いたしますよ。」

「う、しかし、しかしだな・・・。」

「それは益田修一としての其方のエゴではないのか?

お主の業がそうさせたと言っても過言では無いのだが、その上さらにご自分の意を押し付けて居るだけに思えますが?」

「ようやく心を開いてくれたと思うて居ったのだがなァ・・・」

「ご安心召されよ、我ら佛界ならばかの娘の愁いを浄化するに至るであろう、人の魂を昇華し高みに上げる、それが仏教の教えです、貴方のようにご自分の意思のみで高みを極めた者からしたらあまり理解出来ぬ事かも知れませんが、常人はそこまで至る前に寿命が尽きるものなのです、それを手助けせんとするのが我々でありますれば。

何も仏界へ連れ去ろうと言う訳ではありませぬ、それに、嫁に出す事を考えれば対して変わりは無いではありませぬか、どうぞご寛容に。」

うまく丸め込まれたような気がするが、確かにそうであると思えてしまった。

「僕の負けのようだな、これ以上はまさに釈迦に説法になってしまいそうだ。」

「ご心配はもっともでありましょうが、ご安心召されよ、良き尼寺が御座います故に。」

「我が娘の心はまだ完全に癒えた訳では無いという事であれば致し方も無い事、よろしくお願い致そう、釈迦殿。」

仏と和解する事となった、神仏一体とは言え、別の概念から生まれて人の信仰によって広がりを見せる神界と仏界にはこれまでも大きな隔たりは常にあったのであるが、今回の一件でその垣根はほんの少しだけ取り払われた気がした。

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